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スズメバチの体のしくみ |
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スズメバチの成虫の体は,頭部,胸部,腹部の3つの部分に分かれています.頭部には2本の触角があり,ここで匂いを感じている他,6角形の育房を作る際の形や大きさを測るための定規の役割も果たしています.触角には,オスには13,メスには12の節があり,形も違っているので,オス・メスを見分けるのに役立ちます. 頭部の左右には,多数の小さな個眼が束状に集まった複眼があり,頭部の中央(複眼と複眼の間)には3個の単眼があります.複眼は物の形や動きを見る働きをしており,単眼は明暗を区別して複眼の働きを助けています. |
オオスズメバチ(メス)の体
顔を正面から見たとき,中央の鼻のように見える部分を頭楯といい,形や模様からハチの種類を見分けるのに役立ちます. 頭楯の下には丈夫な大顎(大腮)があり,餌を狩ったり巣材を囓り取ったりする外役活動の他,戦いの際には武器の役目もします.こうした役割は働きバチが担うため大腮(大顎)がよく発達していますが,オスバチは外役活動を行わないため大腮はあまり発達せず,細長い顔をしています. スズメバチの舌は短く,やすりのようにザラザラしていて,樹液などを舐めとるのに適していますが,蜜腺が奥の方にある花からはうまく吸蜜できません. |
コガタスズメバチの頭部正面 | オオスズメバチの頭部正面 |
オオスズメバチの働きバチの顔面 |
スズメバチの触覚 (松浦原図) |
オオスズメバチのオスバチの顔面 |
頭楯 | 大顎(大腮) | 舌 |
* 頭楯:とうじゅん,大腮(大顎):おおあご
胸部は前胸,中胸,後胸の3つに分かれ,4枚の羽と6本の脚(足)がついています.脚の先には一対の鋭い爪があります.その真ん中には吸盤の役目をする褥盤があり,つるつるの窓ガラスにもピタリと吸い付いて止まることができます. ハチの羽は,後翅にかぎがあって,羽を開く時,前翅の縁の部分に引っかかって一緒に動くので2枚のように見えます.腹部はオスが7節,メスが6節からできています.メスは腹端が尖っており,先端には毒針があってこれで人を刺すことがあります.オスには毒針がないので,腹部の先端はメスのように尖っていません. 毒針は産卵管が変化したもので,メス(女王バチと働きバチ)のみが持っています.毒嚢や毒腺と繋がっていて刺すためだけに使用されます.そのため産卵に用いられることはなく.卵は産卵管の付け根付近から産み落とされます. |
コガタスズメバチの胸部背面 | オオスズメバチの翅(前後翅の一部) | 翅をつなぐかぎ(顕微鏡写真) |
スズメバチの腹部(松浦原図) | コガタスズメバチのメス(左)とオス(右) |
スズメバチの成虫は胸部と腹部の間がくびれています.これは狩りバチ全般の特徴で,相手に毒針を刺す時に,体を”くの字”に曲げて刺しやすくするためです. |
オオスズメバチの毒針 | コガタスズメバチのオス交尾器 | 脚先の鋭い2つの爪と間にある褥盤 |
* 頭楯:とうじゅん,褥盤:じょくばん
スズメバチの幼虫は育房の中に,頭を下にしてぶら下がっており,成虫が与える餌を食べて育ちます.そのため,巣内を歩き回ることはありませんから,脚はなく眼も退化しています.卵からかえった幼虫は4回脱皮して5齢(終齢)幼虫になります.育房は5齢幼虫が口から出す繊維によってふたをされ,その中で蛹を経て成虫になります. 頭部には丈夫な大顎がありますが,互いに噛み合わせることはできません.これは餌が働きバチによって十分にかみ砕かれているため噛む必要が無く,餌を丸呑みにしてしまうためです.この大顎は,終齢幼虫が空腹時に餌を催促する時に使われます.大顎で育房の壁をこすりガサガサという音を立てて餌を要求します. 一方,成虫は終齢幼虫が出す透明な栄養液を口移しで受け取り,エネルギー源にしています.スズメバチはミツバチのように蜜や花粉を貯めませんから,幼虫が出す栄養液がその役割を担っています. 幼虫の中央に見える黒い筋は消化管です.幼虫は蛹になる直前まで糞をせず,不消化物を腸内にため込んでいます.蛹になる直前に1回まとめてする糞は,幼虫によって育房の底に塗り固められ,巣盤全体を強化するのに役立っています. |
モンスズメバチの幼虫(松浦原図) | 左から卵,2齢幼虫,3齢幼虫,1齢幼虫 | 5齢幼虫 |
モンスズメバチの5齢幼虫 | 整然と並ぶオオスズメバチの5齢幼虫と蛹 (蛹の白いキャップをはずしてある) |
ここで使用している電子顕微鏡写真は阿達直樹氏のご好意により転載しました. 走査型電子顕微鏡画像資料集には昆虫以外にもたくさんの素晴らしい画像があります. |