por斎藤祐司
１９６５年９月５日、コロンビアのボゴタ生まれ。本名、フリオ・セサル・リンコン・ラミレス。
始めての闘牛。１９７８年１月６日。コロンビアのボゴタ。１２歳。
ノビジァーダ・コン・ピカドール（見習い闘牛士）、デビュー。１９８０年１月１３日。コロンビアのボゴタ。１４歳。
トマール・デ・アルテルナティーバ（正闘牛士認定式）
１９８２年１２月８日コロンビアのボゴタ（１７歳）。パドゥリーノ、アントニェーテ。テスティーゴ、ホセ・マリア・マンサナレス。
コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバ（正闘牛士確認式）
（コンフィルマシオンは世界で２カ所だけ。マドリードと、メキシコ・シティー。南米の闘牛士は２カ所でやる人もいる。）
１９８３年７月３１日メキシコ・シティー（１７歳）。パドゥリーノ、リカルド・サンチェス。テスティーゴ、セサル・パストール。
１９８４年９月２日（１８歳）。パドゥリーノ、マニリ。テスティーゴ、ペペ・ルイス・バルガス。
マドリード、ラス・ベンタス闘牛場。出場２０回。耳１３枚。プエルタ・グランデ５回。
−−−ラス・ベンタス闘牛場「プログラム」より−−−
９１年６月６日の、プエルタ・グランデのファエナは今でも語りぐさ。ラス・ベンタス闘牛場で一年間で４回連続プエルタ・グランデの記録は、これからも破るのは非常に難しい“歴史的大記録”で、ある。
コロンビアの貧しい家庭に生まれたセサルは、異国スペインで一夜にして大スターになる。それまで、コロンビアで稼いだお金を持って来て、スペインの闘牛場の興行主に金を払ってまで闘牛をやっていた男。１９９１年５月２１日マドリードのラス・ベンタス闘牛場。（闘牛観戦記「突然、炎のように」に、収録）闘牛服を牛の返り血で真っ赤に染め、満員の観客を感動させた。派手でもなく、突飛で受けを狙った技をする訳でもない。
ただ、シンプルな技の積み重ね。しかし、目の肥えた観客は、この中に本物の凄さを見た。牛に向かい、ムレタを振るまでの緊張感のある“間”、距離のの取り方、牛を誘うときの、牛と自身の体の間にムレタを置くスタイルなど、人々を驚かせた。
また、何十ｍも離れた所から牛を誘って、牛を動かしパセをする様は、まさにセサル・リンコンの真骨頂。他の、追随を許さない。闘牛のエキスを濃縮した技だ。
それは、８０年代のエスパルタコを代表とする、退屈で無気力な闘牛を見てきた人々に、本当の感動を教え“闘牛の未来”を予感させた。
彼を、一番意識し、そのスタイルを実践しているのはホセリートではないだろうか。
９１年マドリードで４回連続プエルタ・グランデ（耳９個）の“歴史的大記録”を作った。これは、それまでのどんな有名な闘牛士でも出来なかった記録だ。恐らくこの後も破るのは至難の業だろう。
１０月コロンビアに帰国、熱狂的群衆の中、凱旋パレード。その先には、元、前、現大統領の３組の夫妻が待っていた。コロンビアの国民栄誉賞を受賞。コロンビアの英雄になる。
９０年代の闘牛界に革命を起こした。
無名の闘牛士は１９９１年５月２１日を境に、大闘牛士の道を歩む。スペイン中の闘牛祭から呼ばれる。現代スペインのサクセス・ストーリーの１つ。９２年の高級住宅街にプール付きの一軒家を建てる。
９２年、C型肝炎発病。９３年出場回数をおさえる。
この名声と金の、兄弟を両手にした男の名、フリオ・セサルとは、スペイン語のジュリアス・シーザーのことである。
最近の闘牛士は、ほとんど牛を誘うときにムレタを牛の方に出して誘うが、それは、９１年にセサルが見せたやり方だ。今、主流になっていることを、あの当時正確にやっていたのは恐らくセサル・リンコンだけだろう。
でも、最近ちょっと落ちたかな。９８年は大怪我ばかり。５月２３日オビエドで右肩骨折。治って出てくると８月２１日にビルバオで腓骨骨折。いつも、危ない技ばかりするからこんなことになる。
９７年１０月２８日にやった、セサルとのインタビューで「いつも怪我か多いので心配です」と言ったら「それは、私も、私も、私も・・・」と、言って笑っていた。
９８年６月８日サン・イシドロの最終日。“ビア・デヒタル”のＴＶ中継のインタビューで、オビエドでの骨折でその日出場出来なくなった無念さを語り、「この怪我で最後に願いたい。もう沢山だ」と、言っていた。
嗚呼。なのにまた、ビルバオで・・・。
ついていなかった９８年のシーズンを後に、南米帰って復活して下さい。出来ればまた来年サン・イシドロで勇姿を観ようと思っています。
セサル。あなたの闘牛を楽しみにしているのは、何も、おいらだけじゃない。闘牛ファンの多くがそれを望んでいるんですよ。
ビバ・コリーダ！ビバ・トレロ！ビバ・セサル！オーレ！
−−−東京闘牛の会（TTT）会報 『闘牛』 に載せたものに加筆した。−−−
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