14、ビートルズは現代のマザーグース

 ビートルズがマザーグースを引用した14曲のうち、ジョン・レノン作詞が8曲、ポール・マッカートニー作詞が6曲。

 その中で、マザーグースを意図的に引用したと思われるものは、ジョンが4曲、ポールが4曲の計8曲である。

 それ以外の6曲は、マザーグースに似た脚韻を踏んでいたり、マザーグース的雰囲気を借用したり、特に何も意識せずに引用していたりしたものであった。

 ビートルズは、そのバンド名からして言葉遊び。「クリケッツ」(こおろぎとクリケットをかけた命名)というバンドにヒントを得て、beat と beetle をかけて Beatles となったというが、こういった言葉遊びは、まさにマザーグースに通じるものがある。

 また、ビートルズは1962年から1965年にかけて、58回BBCラジオに出演しているが、その中には Pop Go The Beatlesという、ビートルズ主演番組もあった。

 これは、マザーグースの Pop goes the weasel をもじったタイトルで、ビートルズは番組中でこのマザーグースをアレンジしたテーマ曲 Pop Go The Beatles を何度も演奏していた。いかにもマザーグース好きのビートルズらしい番組タイトルではないか。

 彼らは、マザーグースを引用し、実験的に言葉を操り、新しい意味と解釈を盛り込んで曲作りをしたアバンギャルド(前衛作家)であった。

 常識の世界を軽やかに超越したビートルズは、現代のマザーグースであったといえよう。 

 

ビートルズ関係の参考文献

  (マザーグース関係、『アリス』関係を除く)

 

『ビートルズ全詩集』シンコー・ミュージック、1990年

『ビートルズ・リリックス101』シンコー・ミュージック、1998年

ジョン・レノン『絵本ジョン・レノンセンス』晶文社、1975年

高木宏真『Beatles の音 もっと知りたい』ジャズ批評ブックス、1998年

香月利一『ビートルズソングズ研究読本』シンコー・ミュージック、1998年

香月利一『ビートルズ研究 毒独読本』音楽出版社、2000年

広田寛治『ビートルズ学入門』新潮社、2000年

高山宏之『ビートルズの詩の世界』実業之日本社、1981年

チャック近藤『ビートルズサウンズ大研究』シンコー・ミュージック、1996年

田村和紀夫『ビートルズ音楽論』東京書籍、1999年

『ジョン・レノン大百科』プロデュース・センター出版局、1993年

『ビートルズの社会学』朝日新聞社、1996年

新倉俊一『英語のノンセンス』大修館書店、1985年

『Nowhere Vol.10 作家ジョン・レノン』プロデュース・センター出版局、1996年

『Nowhere Vol.16 ビートルズと日本』プロデュース・センター出版局、1997年

中村敬「英語教育に nonsence の復権を」(『英語教育』大修館書店、1976年10月号)