英語教育 2018年9月号p.22-23
授業に活かせる「英語の世界」
魅力ある教材 マザーグース
──リズムとライムで英語親しむ
1. マザーグースってなに?
Hey diddle diddle
Hey diddle diddle,
The cat and the fiddle,
The cow jumped over the moon;
The little dog laughed
To see such sport,
And the dish ran away with the spoon.
ヘイ ディドゥル ディドゥル
ねことヴァイオリン
雌牛が 月をとびこえた
これはおもしろいと
犬がわらった
おさらはおさじと かけおちだ
国際理解
2. 授業でどう扱ったらいい?
「ソロモン・グランディー」
Solomon Grundy
Solomon Grundy,
Born on a Monday,
Christened on Tuesday,
Married on Wednesday,
Took ill on thursday,
Worse on Friday,
Died on Saturday,
Buried on Sunday.
This is the end
Of Solomon Grundy.
ソロモン・グランディー
月曜日に 生まれた
火曜日に 洗礼うけて
水曜日に 結婚した
木曜日に 病気になって
金曜日に 重くなった
土曜日に 死んで
日曜日に 埋められた
これで おしまい
ソロモン・グランディー
3. 小学校では動作のついた唄を
「桑の木の周りをまわりましょう」
Here we go round the mulberry bush
Here we go round the mulberry bush,
The mulberry bush, the mulberry bush,
Here we go round the mulberry bush,
On a cold and frosty morning.
This is the way we wash our hands,
Wash our hands, wash our hands,
This is the way we wash our hands,
On a cold and frosty morning.
くわの木のまわりをまわろうよ
くわの木 くわの木
くわの木のまわりをまわろうよ
さむい霜の朝に
こんなふうに手をあらう
手をあらう 手をあらう
こんなふうに手をあらう
さむい霜の朝に
【解説】
輪遊び唄である。第1連を歌いながら手をつないで輪になって回り、第2連以下では歌詞にあわせて、手や服を洗ったり、歯をみがくジェスチャーをする。
ちなみに、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』にもこの唄が出てくる。アリスがトウィードルダムとトウィードルディーに出会い、3人で手をつないでぐるぐる回る場面だ。ただし、ディズニー映画『不思議の国のアリス』には出てこない。
【日本では】
よく似た遊び方をするのが次のわらべ唄。江戸時代から現代にいたるまで歌われている輪遊び唄で、唄の中に出てくるれんげとはハスの花のこと。ハスの花は極楽浄土を意味し、唄のように朝開き夕方にはつぼむ花である。
4. ちっちゃなクモさん
Itsy bitsy spider
Itsy bitsy spider climbed up the water spout.
Down came the rain and washed the spider out.
Out came the sun and dried up all the rain.
And itsy bitsy spider climbed up the spout again.
ちっちゃなクモさん あまどい のぼった
あめ ふってきて クモさん まっさかさま
おひさま こんにちは あめさん かわいた
ちっちゃなクモさん また のぼった
【語句】
Itsy bitsy 「ちいさな」。Eency wency、Ipsy wipsy、Teeny tiny、Inky dinkyなどとなっている版もあるが、アメリカではItsy bitsyが一般的。
【解説】
比較的新しい唄だが、映画の中で最もよく歌われている手遊び唄である。左手の人差し指と右手の親指をあわせ、次に左手の親指と右手の人差し指を交互にあわせていくという手遊びで、クモが雨どいを昇っていく様子を表す。
2、3才の子供にはけっこう難しいようで、映画の中でも大人に教えてもらっている場面が数多く見られた。
5. ハンプティ・ダンプティ
Humpty Dumpty
Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses,
And all the king's men,
Couldn't put Humpty together again.
ハンプティ・ダンプティ 塀の上に座ってた
ハンプティ・ダンプティ 落っこちた
王さまのお馬と
王さまのけらい みんなよっても
ハンプティ・ダンプティ もとにもどせなかった
【解説】
フランスをはじめ、ドイツ、デンマーク、スウェーデンと、ヨーロッパ各地に卵の紳士を題材とした唄が伝わっている。ハンプティ・ダンプティの唄は、もとは卵を答えとするなぞなぞであったが、『鏡の国のアリス』によってなぞなぞであったことが忘れられるほどよく知られるようになった。有名な唄だけに、パロディもいっぱいです。(パロディへ)
ハンプティ・ダンプティのイメージは「非常に危なっかしい状態」「もとに戻せない状態」「丸まるとした人や頭」などであることを、ぜひ知っておきたい。
「ハンプティ・ダンプティ」は2本の映画のタイトルに顔を出している。
ウォーターゲート事件を扱った『大統領の陰謀』の原題は"All the President's Men"(1946.US)。このフレーズを聞いただけでマザーグースを聞いて育った人なら「塀から落ちた卵」を連想するだろう。
大統領の側近がどれだけもみ消し工作をしたところで失脚したニクソンを元にもどせない、というニュアンスをこれだけの引用で鮮やかに描きだしている。
また、『オール・ザ・キングズメン』の原題は”All The King's Men”(1949.US)。ロバート・ペン・ウォレンの長編小説『王様の臣下をみんな集めても』(1946年ピューリッツア賞受賞)を映画化したものである。
独裁的な権力をふるった政治家ウィリー・スタークの破滅の物語で、「もうどうにもならない」というような政治腐敗の状況を描いている。
『アンナ・カレーニナ』"Anna Karenina" (1948.UK)の中の子供を寝かせつける場面でも、この唄が子守唄として歌われていた。