王子と乞食にも・・・ さて、16世紀半ばのロンドンを舞台にした、マーク・トウェーンの『王子と乞食』(1882)を見てみよう。
王子のエドワードと乞食のトムは、ひょんなことから入れ替わってしまうが、 以下は、物語の後半、王子エドワードが、にせの王子トムの即位式でわきかえるロンドン橋にさしかかる場面である。
They stepped upon London Bridge, in the midst of a writhing, stuggling jam of howling and hurrahing people...and at that instant the decaying head of some former duke or other grandee tumbled down between them.
彼らはロンドン橋へさしかかった。橋は祝いでわきかえり、人々は押し合いへし合いしていた。ちょうどそのとき、元公爵か高官の腐敗した首が、転がり落ちた。
ロンドン橋の喧噪が描かれ、ロンドン橋のさらし首まで描写されている。実際、1550年代には、毎週2、3人の割合で処刑がおこなわれ、橋門の上にさらされたという。
そのときの国王は、ヘンリー八世。『王子と乞食』の王子エドワードの父親で、前述のトマス・モアも、このヘンリー八世によって処刑されている。
ウィリアム・ウォレスの首がさらされ、『王子と乞食』の舞台となったロンドン橋は、1209年から600年以上もロンドンの町の変遷を見続けたが、1831年に取り壊された。
取り壊しの際に、礼拝堂の跡から、橋の設計者のピーター司祭の棺がみつかったという。
新しく造られた橋は、わずか130年余で撤去され、現在のコンクリート製の橋が1973年に完成した。
このとき撤去された橋は、アメリカのアリゾナ州レイク・ハバスに移築され復元されている。
今回は、「ロンドン橋」の唄の歴史というよりは、橋そのものの歴史に重点を置いてみた。
映画や児童文学をとっかかりにして、マザーグースやイギリスの歴史を調べてみると、またいろいろなものが見えてくるように思う。
最後に、イギリス関係のホームページをご紹介します。
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●参考文献●
加藤憲市 『イギリス古事物語』(大修館書店)
出口保夫 『ロンドン橋物語』 (東京書籍)