メル・ギブソンが主演、製作、監督し、アカデミー賞最多の5部門を受賞した『ブレイブハート』<Brave Heart> (1995.US)にも、ロンドン橋が出てくることに気づかれただろうか
。マザーグースの唄としての引用ではないが、ロンドン橋の歴史を知る手がかりとなるので、紹介したい。
舞台は、13世紀末のスコットランド。イングランド王エドワード一世の侵略で、家族を皆殺しにされたウィリアム・ウォレス(M.ギブソン)。
彼は、自由と解放をめざして抵抗軍を組織し、1297年、スターリング・ブリッジの戦いで勝利を収める。しかし、翌1298年のフォルカークの戦いで、イングランド軍に破れる。
史実を元にしているが、もちろん脚色も多々ある。映画では、ウォレスとイザベラ(ソフィー・マルソー)の恋愛が描かれているが、史実では、イザベラがフランスからエドワード二世に嫁いだのは1308年。ウォレスが死んだあとであった。
さて、映画のラストの場面。スコットランド貴族のロバート・ブルースの軍が、イングランド軍と対峙している。そのブルースの独白を聞いてみよう。
ROBERT THE BRUCE:After the beheading, William Wallace's body was torn to pieces. His head was set on London Bridge, his arms and legs sent to the four corners of Britain as a warning.
打ち首のあと、ウィリアム・ウォレスの体は八つ裂きにされた。見せしめとして、その首はロンドン橋にさらされ、腕と脚はイギリスの東西南北へ送られた。
1305年、ウォレスは、形ばかりの裁判のあと、ロンドンで八つ裂きの極刑にされる。映画では、処刑直前のウォレスの叫び声 "Freedom!" が印象的であった。
彼の首はロンドン橋、右腕はニューキャッスルの橋、左腕はアバディーンでさらしものになったという。
このように、ロンドン橋の橋門は罪人の首をさらす場所として使用されたが、ウォレスがその第1号であった。
1381年にはワット・タイラー、1535年にはトマス・モアの首もさらされたが、このロンドン橋のさらし首は、17世紀の終わりごろまで続けられた。
これは、1616年ごろに描かれたロンドン橋の絵です。
右下の橋門の上に、長い串にさされた「さらし首」がたくさん見えます。それにしても、昔は、こんなにびっしり、橋の上に家が建ってたんですねぇ・・・。これじゃぁ、「ロンドン橋も落ちる」わけです。