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Unpa part7
「いてぇー。頭がずきずきしやがる」
アンパは薬屋へ言って二日酔いの薬を買った。
「ふぉっ、ふぉっ。ずいぶん酔われましたな。もう一日寝ておられた方がよいようじゃな」
「そうするぜ。で、宿屋はどこにあるんだい」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉ。ありませんな。この街の人間は夜昼となくカジノで遊び続けているので、いりませんのじゃ」
「じゃぁ、どっか静かで暗いところは無いのかよ」
「ふぉっ、ふぉっ。それなら地下二階の墓地がよろしいじゃろ」
墓地というのは気乗りしなかったが、アンパはともかく休みたかったので地下二階へと向かった。
地下二階を探してみると確かに墓地があった。来るときはなんで気がつかなかったんだろうと思いながら、寝るのに適した場所を探した。墓地の一番奥には綺麗な棺があった。
「へぇ、豪勢な棺だな。どこかの国の貴族の棺かな」
アンパはちょっと興味がそそられて、開けてみることにした。
ギィーと音がして棺のふたが開いた。アンパは中を見てギョッとした。まるで生きているような女が横たわっている。まさか吸血鬼じゃないだろうなとよく見ると、どこかで見た覚えのある女だ。
「思い出したぜ、魔女ドーアだ。穴に落ちるのが好きなボケ女じゃないか」
アンパは思わず合掌した。昔、迷宮で難儀しているこの女を何度も助けたり、助言してやったことがある。今度ばかりはあたいの助けが間に合わなかったらしい。アンパは哀れに思い念仏を唱えた。
ヒヤッ。アンパは肩に冷たいものが触れたような気がして背筋がぞくっとした。ゆっくり振り返ると、そこには体が崩れかかったゾンビがいた。
「うわっ」
アンパは驚いてバランスを崩し、棺の縁に足をひっかけてしまい、棺の中に顔面から倒れ込んだ。(ぶちゅっ)
「げー、ぺっ。死体と口づけしてしまったぜ」
アンパはすぐさま棺から飛び出るとゾンビに蹴りを入れて倒した。
「ちっ、脅かしやがって」
と、その時棺の中からうめき声が聞こえてきた。恐る恐る棺を見ていると、女がむっくりと起き上がった。
「ひゃー、成仏してくれー」
アンパは一目散に駆け出して墓地を後にした。
Unpa part8
アンパは街に戻って薬屋に文句をつけた。
「ふぉっ、ふぉっ。それじゃぁここの隣の空き家を貸してあげましょうかの。本当は3千万Tで売り出しておるんじゃが、なかなか買い手がつきませんでなぁ」
「げ、カジノでバカ勝ちしてもそんなに稼げねえだろ」
「安い方ですじゃ。デンエンチョウフとかなら1億も珍しく有りませんぞ」
「どこの話だよぉ」
「まぁとにかく鍵を貸しますじゃ」
アンパは空き家で十分休息を取った。ついでに空き家を物色してみると護符が見つかった。中には干し草が入っており、香りをかぐと一瞬クラッとして幻覚が見えた
「こいつぁ、耐魔じゃないか。これが有れば魔法は怖くないな」
アンパはちゃっかりいただいてしまった。パブで食事を済ませ、再度闘技場に出た。
今度は魔法を使う対戦者もアンパに歯が立たなかった。アンパはあっさりと優勝してしまった。優勝賞金もがっぽり稼いだのでバーで祝杯を上げようとしたが、なぜかバーは閉店していた。
Unpa part9
アンパは優勝金の一部を薬屋に礼として渡した。ついでに霊酒で祝杯を上げた。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉ。たいしたお手並みですな」
「ふん、たいしたことないな。もっとつえぇ相手は居ないのかよ」
「あぁ、それでしたら塔の上に住んでいるギリス司祭が強いですじゃ」
「司祭がねぇ?」
「何やら一子相伝の奥義を身に付けておられるとか。あまりに多くの対戦者を殺したので悔やんで司祭になったと聞いてますじゃ」
「へー、少しは強そうだな。塔の上には簡単に行けるのか?」
「さぁ、冒険者で塔の上から帰って来た者は居りませんのでな。そうじゃ、途中の階まで飛んで行けるという便利なアイテムが道具屋にあったようじゃが」
アンパは早速道具屋へ行った。店主は若い男だった。
「転移の羽かい? あるよ。へっへへ、でも、ここは一つゲームで値段を決めないか? 三目ならベでどうだい。あんたが先手で良いよ。あんたが勝てばただで譲ってやるよ。その代わり引き分けか負けたときは有り金全部もらうけど」
「三目並べ? やったことないな」
「簡単だよ。3x3のマス目に石を置いていって、縦横斜めどれでもいいから自分の石を直線で3個並べればいいんだ」
「いいだろう。じゃ、あたいはまず1−1に置く」
「へぇ? じゃ俺は2−2だ」
「あたいは1−2」
「俺は1−3」
「ふん、あたいの勝ちだな。次は1−3だ」
「おいおい、そこにはおれの石が置いてあるよ」
「それがどーした。文句あるのか」
アンパは店主の石の上に自分の石を乗せ、恐ろしい形相で睨み付けた。哀れ若い店主の髪は全て抜け落ちてしまった。
「うわ、勘弁してくださいよ。羽はただで差し上げますよ」
Unpa part10
アンパは転移の羽を使った。何やら湿った場所へ転移してきた。
「飛んできたのはいいけど、ここはどこだろう」
しばらくうろついていると”11階”という看板が見えた。親切な塔だ。
「あと何階上ればいいんだ?」
ともかく上へ行けばいいはずだ。アンパは上へ登る階段を探し始めた。しかし、この階も地下の迷路に劣らず通路が入り組んでいた。延々と何時間もさまよっているうちに腹が減ってきた。
「しまった。食料を買っておけばよかったな」
もう転移の羽は消えてしまった。街にも簡単に戻れない。
しばらく歩いていると床の上で何か大きなものがはねていた。
「お、でっかいカジキマグロじゃねえか」
カジキマグロは何か言いたそうに口をぱくぱくさせた。
(お願いです。水のあるところへ連れていってください。私は水の精霊ですが、悪い魔法使いに姿を変えられてしまったのです。水さえあれば元に戻れるのです)
水の精霊は必死になってアンパの心に呼びかけた。しかし鈍感なアンパには何も聞こえなかった。
「こいつはご馳走だぜ」
がぶりと魚に噛み付き、食べ始めた。
(あぁ・・。これも運命なのかしら・・)
アンパはバリバリと骨までかみ砕いて平らげてしまった。合掌。
Unpa part11
アンパは12階へたどり着いた。あちこちに生えているキノコを食べながら進んだ。本当は毒キノコなので普通の人間が食べたら間違いなく死ぬのだが、アンパの胃袋は小々の毒など平気だった。
広々とした場所を抜けると魔方陣が見つかった。近くに看板が立っていた。
”これより先は水層。金鱗の鼻輪を備えるべし”
「鼻輪だぁ? まぁいいか、進むか」
アンパは深く考えずに魔方陣を踏んだ。
アンパは第一水層へ転移してきた。深い深い水の中だった。アンパは空気を求めて必死にもがいた。しかし水面のきらめきははるか上の方に見える。周りには無数の冒険者の溺死体が漂っていた。
アンパはしばらくもがいていたが、全然息が苦しくないことに気がついた。実は水の精霊を食べたことで水中での行動能力が身に付いたのだ。そんなこととは知らないアンパは水中を自在に動ける自分が不思議だった。しかし長くは悩んだりはしなかった。
水層には魚やエビが豊富に泳いでいた。アンパはそれらを捕らえて賞味した。第二水層も同じような状況であった。一部水流が渦を巻いている箇所があった。どうやら一人の冒険者が強い流れに翻弄されてグルグル回っているようだった。しかしアンパは人魚のごとくすいすいと泳ぎ抜けた。
第二水層を抜けるとそこは果樹園だった。
「うん、うめぇ。魚もいいけどこの果物もいけるぜ」
さらに進むと水園にでた。美しい蓮の花が咲き、トンボが飛び交っていた。アンパはその美しい風景に見とれることなく先へ進んだ。水園は途中で道が途絶えていた。辺りを見回すと水園の中に何本もの柱や壁が立っており、その上に道があるようだった。アンパは柱に登り、さらに道を進んだ。