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■ Braindish4 〜眠れる神脳塔(かみのうとう)〜 ■

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Unpa part12
 アンパが柱の上の魔方陣を踏むと菜の花畑に出た。
「今度は野菜か。まぁいいや、とにかく食おう」
アンパは歩きながら野菜をかじった。畑を進むと白猿達が野良仕事をしていた。どうやらここは彼らの畑のようだ。野菜をかじっているアンパを見つけて一匹の白猿がやってきたが、ぽかりと一発殴るとキーキーと悲鳴を上げて逃げていった。

 さらに進むと上への階段が見つかった。登ってみるとそこは城の中のようであった。
「いったい、いつになったらギリスにあえるんだよぉ」
アンパは城の中を進み2階に到達した。遠くで女の叫び声が聞こえた気がしたが、気にせず3階、4階へと進んだ。さらに歩いているとややひらけたフロアがあった。真ん中にぽつんとテーブルが置いてあり、近づいてみるとテーブルの上に何かが盛られた皿が置いてあった。
「丁度よかった。飯にするか」
アンパが皿に手を伸ばそうとしたとき、爆風と共に守護神が現れた。

「ほほう。これが欲しければ我と戦って取れ」
「けっ、このアンパ様に戦いを挑むとは度胸がいいじゃないか」
「はは、何も知らぬのか。我は、勇猛の脳皿の守り手。恐れるものは何も無い。だが心してかかるがいい。力だけでは我は倒せぬぞ」
「うるせー」
アンパはいきなり強烈な蹴りを入れた。が、しかし、相手の体をすっと通り抜けてしまった。その瞬間、後ろからガツンと衝撃を食らった。
「ははは。我の実体はこっちだ」
「くそー、幻覚魔法かよ。なんで耐魔が効かねぇんだ」
「はは、そんなちゃちなもの神の御技に効くと思っているのか」
ガツン、今度は横からの攻撃だ。ガツン、今度は正面に見えている守護神が実体だったようだ。アンパは完全に翻弄されて次々と衝撃をくらい、ふらふらと倒れてしまった。
「ははは、ブレインディッシュに手を出す不届き者め。あの世で後悔するが良い」
守護神は最後の攻撃をかけてきた。アンパはその気配に気がついてぎりぎりの所でかわした。(そうだ。気配だ)アンパは目をつぶると気配を頼りに攻撃を始めた。ビシッ、ドガッ。次々とアンパの攻撃が決まった。さらに何度か攻撃を決めると守護神の気配が消えてしまった。
「手間かけやがって」
 アンパは目を開け、皿に手を伸ばした。
「あれー、なぁんだぁ。食い物じゃないのか」
すっかり息を切らしたアンパはその場にへたり込んでしまった。皿の上には黄色いクリスタルが載っていた。よくよく見るとクリスタルの中に脳みそが詰まっているようだが、とても食えそうな代物ではなかった。アンパはがっかりしたが、せっかく苦戦して得た物なので持っていることにした。

Unpa part13
 階段を登ると教会の内部のようなところへ出た。
「ふーん、ギリス司祭はここにいそうだな」
アンパはステンドグラスで彩られた部屋を探し回った。階段を登ってさらに上の階も探してみた。しかしギリス司祭らしき人物は見つからない。しばらく探していると5つのテーブルが置いてある部屋に出た。真ん中のテーブルにはボタンのような物が付いており、さらに教会文字で解説が付いていた。
「ちっ、教会文字じゃ読めねぇや。まぁいいや、ボタンを押しちまおう」
アンパは何も考えずにプチッとボタンを押した。すると懐に入れていた皿が飛び出して四隅のテーブルの内の一つに収まった。
「なんてこった。ぴったりくっついて外れねぇぜ」
アンパの怪力を持ってしても皿はびくともしない。結局アンパは諦めてしまった。

Unpa part14
 その後もアンパはひたすら登り続けた。まるで怪物の胎内のようなフロアを5つ抜けた。最初のフロアには大ヤドカリがたくさんいて、味良し、量良しでアンパの旺盛な食欲を満たした。その後のフロアで、空中を漂う魚とか飛び跳ねる虫とか食べてみたが、中身がスカスカで腹の足しにはならなかった。
 さらに登っていくと神殿のようなところに出た。ここにも空中を漂う魚がいたがこれは結構身が詰まっていてうまかった。さらに大コウモリが飛んでいたので叩き落として食べてみたが、これはひどく苦い味がした。
「もっと旨い物は無いのかよ・・。あ、いや、あたいはギリス司祭を探しに来てたんだっけ」
アンパは神殿を二つ抜けてさらに登っていった。

Unpa part15
 階段を登るとそこは祭壇であった。奥の方で誰かが祈祷をしている。アンパはもしやと思って近づいた。
「あんた、ギリス司祭かい?」
「むぅ、何者だ。塔を目覚めさせた者はお前か? 頂上へ行くつもりか?」
「あたいは格闘家のアンパ。あんたと戦いたくて探してたんだ」
「ふ、儂はとうに戦いから身を引いた男。相手はしてやれぬ」
「あっ、あー、けちな奴だな。せっかくここまで来てやったんだから戦えよ」
「ふ、ならば一子相伝の奥義を見せてやろう」
アンパは即座に身構えた。この男からはただならぬ闘気が漂っている。男の影がふっと消えたかと思うと、次の瞬間背後から脇腹に手が伸びてきた。
「こちょこちょこちょ」
どうやらアンパをくすぐっているつもりらしい。
「な・に・・やってんだぁー!」
アンパはおちょくられて、完全に頭に来た。怒りに委せて殴りかかった・・が、ギリスは次々と攻撃をかわして一発も当たらない。
「ぜい、ぜい、この野郎。うろちょろしやがって」
アンパは息が切れてしまった。ギリス司祭は目を細めた。
「・・・待て、筋は良さそうだな。儂には子供がおらぬので一子相伝の奥義を伝える相手がおらぬ。どうだ、我が手ほどきを受けてみぬか?」
「まさか、”こちょこちょ”じゃねぇだろうな」
「ははは、安心しろ。一撃で10人の相手を倒せるお得な技だ」

 アンパは半信半疑で手ほどきを受けたが、さすがに言葉にたがわず恐るべき技であった。ギリスの拳から繰り出される衝撃波はすさまじく、一瞬の内に周りの巨木がなぎ倒された。アンパは元々筋が良かったので、練習を繰り返す内に少しずつ衝撃波が出始めた。
「ふむ、後は修練次第だな。そうだ。もう一つ技を教えてやろうか」
「まさか、”こちょこちょ”じゃねぇだろうな」
「わははは、よくぞ見破った。さすが我が弟子じゃ」

Unpa part16
 アンパが祭壇で修練を繰り返していると、下の階からだれか登ってきた。良く見ると1階で出会った男のようだが、別人のような雰囲気を持っていた。アンパが声をかけようとしたが、先にギリス司祭が声を上げた。
「おぬしか、塔を目覚めさせた者は。頂上へは行かせぬぞ」
「・・ふふふ、ふははは。我は、塔の力を得たる者なり。お前のような者に邪魔はできぬ」
その男からは邪悪な気配が漂っていた。気の短いアンパはすぐさま司祭の前に出て攻撃をかけた。
「どりゃー」
空気を切り裂く鋭い蹴りが男を直撃した。しかし男は片腕でこともなげにアンパの蹴りを受け止めた。
「奥義だ! アンパ、儂と同時に撃て」
ギリス司祭が叫ぶ。アンパは司祭と同時に奥義を放った。凄まじい衝撃波が男の服をずたずたにした。それでも男はけろっとしている。
「ふはははは、無駄なことを」
男は笑いながら片手をすっと上げた。するとその手の周りにどす黒い気が集まってきた。男が手を振ると、暗黒の気がアンパに向かって飛びかかった。
「危ない!」
ギリス司祭が前に飛び出てアンパをかばった。だが暗黒の気はギリス司祭の心臓を突き抜け、さらにアンパにも痛烈な衝撃を与えた。

 アンパは、ゴフッと咳き込むと目を覚ました。頭がくらくらする。気がつくと、目の前には棺で眠っていた魔女ドーアがいた。
「あたいも・・・死んだのか」
「はん、これで昔の借りはかえしたからね」
ドーアはそう言うとくるりと背を向け、頂上への階段を登っていった。アンパが改めて辺りを見回すと、ギリス司祭が倒れていた。すでに死んでいる。
「ちくしょー、あの男。仇を取ってやるぜ」
アンパは深々と息を吸い込んで目を完全に覚ますと、頂上への階段を駆け上がった。

Unpa part17
 頂上に上がってみると、ギンザが巨大な魔神と戦っていた。近くの穴にはドーアが潜んでいた。
「何なんだよ、あの魔神は」
アンパが一瞬考えている間に、ギンザが倒された。死んだのか?とあっけに取られているアンパに魔神が雷撃を放った。
「うわっ」
アンパは近くの穴に飛び込んで雷撃を避けた。とにかくあの魔神は敵らしい。ギンザよりも数倍も禍々しい雰囲気を持っている。アンパは気合いを入れると穴から飛び出し魔神に攻撃をかけた。ドーアも穴から出て攻撃魔法をかけた。しかし魔神は心臓が凍りつくような笑い声を上げながら反撃してきた。ドーアはすぐに穴に戻ってしまった。アンパは魔神の攻撃をなんとかかわしながら蹴りを入れたが全然効いてないようだ。
 このままではやられる、とアンパが思ったとき、後ろで咆哮がした。すっと黒い影が魔神に向かったと思うと、魔神が悲鳴を上げた。黒い影の正体は剣士アレクだった。魔神をめった切りにしている。
「あいつ、すげーぜ。前よりも強くなってるぜ」
アレクとは別の町の闘技場で戦って1回負かしたことがあった。その後逆に負かされてしまったが、力はほとんど拮抗していた。だが今はまるで別人のように強い。

 魔神が最後の絶叫を上げると塔は崩れ始めた。アンパは崩れ落ちる岩の上を敏捷に飛び移りながら下敷きになるのを避けた。塔が下部を残して崩れさり、もうもうと煙る砂塵が落ち着くと、アレクが岩の上で気を失っているのが見えた。
「惚れちまったぜ」
アンパはアレクを起こそうとしたが止めた。このままじゃ力の釣り合いが取れないじゃないか、夫婦喧嘩だってまともにできない。アンパはさらなる武者修行の旅を決意した。
「待ってろよ。あんたにふさわしい強い女になって戻ってくるから」
アンパはそう言い残すと塔を後にした。アレクはそうと知らず平穏に気を失っていた。

-- The end of Unpa --


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