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■ Braindish4 〜眠れる神脳塔(かみのうとう)〜 ■

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Ginza part7
 ギンザは大蜘珠を連れて下へ降りた。大蜘珠は動きが鈍く、他の怪物から守ってやらねばならなかった。しかしギンザはその役を難なくこなした。2階まで降りてきた時、一人の剣士と出くわした。剣士は大蜘珠を見るとサッと剣を抜いて身構えた。
「あいや、待たれよ・・・」
ギンザは剣士を制して事情を説明した。相手の剣士は黙って剣を収めた。大蜘珠はこの剣士の知り合いらしく何やら話しかけ、剣士は黙ってうなずいた。剣士の寡黙な態度を見ていると何かが記憶をよぎった。
「寡黙な御仁でござるな。以前どこかで会ったことはござらぬか」
相手は黙って首を横に振った。
「ふふふ、本当に寡黙でござるな」
と、言った瞬間、ギンザにまたしても一つ記憶が蘇った。そう、笑い声。確かに笑っていた、大笑いしていた記憶がある。しかしなぜ笑っていたのかは思い出せなかった。剣士は奇妙な表情を浮かべながら去っていった。
 ギンザ達は地下へ降り、複雑な通路を抜けてさらに降りていった。ついには街に到着した。

Ginza part8
 ギンザ達が街の中に入ると、街はパニック状態になった。
「ば、ばかやろー。街の中に怪物をいれるんじゃねー」
男の怒声や女の悲鳴があちこちから聞こえる。兵士達は盾をかざし槍を構えた。僧侶は聖水や聖骨をかざし、フレイルを振り回した。
「各々方、落ち着き召されい。人間でござる。人間でござる」
ギンザは大音声を上げ、群衆を制した。ギンザが繰り返し説明すると群衆は落ち着きを取り戻したが、まだ疑念の目で見ていた。ギンザ達はさっそく詩人を探して古詩を歌ってもらった。変身はすぐに解けて男の姿が現れた。
「恩に着るよ。おれの名はプレディ。おっと、これは礼の羽だ」
ギンザは9階への転移の羽を受け取った。群衆はやっと納得して散っていった。

 ギンザが詩人の所を立ち去ろうとしたとき、一人の女が詩人に話しかけてきた。良く見ると墓場で見た女だ。やはり生きていたのか。じっと女を見つめていると女が振り返って鋭い目を向けてきた。
「ふふん、ブレインディッシュは渡さないわよ」
ギンザは面食らってしまった。ブレインディッシュのことは全然覚えていない。これも失われた記憶の一つであろうか。ともかくこの女は何か自分の過去とかかわりがありそうな気がした。
「ところでお主と以前どこかで会ったことがこざったかな。拙者、記憶を失って難儀してござる」
「そうねぇ。ブレインディッシュを見つけてくれたら教えて上げるわ」
女はそう言うと背を向けて立ち去った。

 街に来たついでにギンザは装備を整えることにした。まずは武器屋へ行って手裏剣を注文した。
「あ〜ん? そんなものここには置いてないぜ。道具屋へ行ってみな」
ギンザは道具屋に入った。出てきた男は痩せた若い男だった。
「あぁ手裏剣ね。異国物があるよ。どうだい、ここは一つゲームで値段を決めないか? ここに8本の蝋燭がある。あんたが先手でお互いが交互に火をつけて、最後に火をつけた方が勝ちだ。ただし、火は最低一本つける、二本以上つけても良いけど同時に点火しなきゃだめだ。あんたが勝てばただ、おれが勝てば有り金全部貰うよ。いいかい?」
店主は試しにマッチを一本シュッとすり、ギンザの前でちらつかせた。するとギンザの脳裏に昔の戦いの記憶が蘇ってきた。自分がどんな技を使えるのか思い出した。
「よかろう」
店主は蝋燭を8本並べた。それぞれの間隔は片腕を伸ばしたくらいだった。まずギンザが1本点火した。すると店主はマッチ3本を擦り、1本を手早く口にくわえて両手と共に同時に3本の蝋燭に火をつけた。
「へへ、どうだい。結構練習したんだぜ」
ギンザはマッチを4本擦った。
「・・分身の術」
なんとギンザは二人に分身してそれぞれ両手で同時に4本に点火した。店主は唖然として手裏剣を渡した。

Ginza part9
 ギンザは羽を使って9階に転移してきた。床はぬかるんで、あちこちに水たまりが見えた。前方にチラッと剣士の影が見えた。いや、気のせいだったろうか?ギンザはゲコゲコ蛙が鳴いている通路を先へと進んだ。所々に水刃を飛ばしてくる厄介な生き物がいたが、なんとか始末することが出来た。
 ギンザは10階へ進んだ。やや複雑な通路であったが難なく通過し、11階も簡単に通過した。

 ギンザは神脳塔の12階に到達した。あちこちに不気味な赤い色をしたキノコが生えていた。一目で毒キノコと分るしろものだ。しばらく進むと何重にも鍵のかかった部屋があった。ギンザは時間をかけて鍵を探しまわり、ついには全ての鍵を見つけた。
 鍵を開けて部屋に入ってみると、そこには水の精霊がいた。
「あぁ、また守護神の眠りを妨げる冒険者が来たのですね。これ以上進むことは私が許しません」
水の精霊はいきなり攻撃をかけてきた。ギンザは即座に刀で切ったが、相手の体は水で出来ているので、切っても切ってダメージを与えられなかった。手裏剣も効かない。一方、水の精霊が放つ高圧の水流は岩石をも切り刻む力を持っていた。ギンザは攻撃をかわすのが精いっぱいであった。必死に逃げ回っているうちにギンザは魔方陣を見つけ飛び乗った。それを見て精霊は微笑んだ。

Ginza part10
 ギンザは第一水層に転移してきた。恐ろしく深い水の中だった。だがギンザは水遁の術を心得ていたので慌てなかった。もちろんいつまでも息が続くわけではなかったが、空気を見つけるには十分であろう。ギンザは周りに漂う溺死した冒険者をかきわけて空気を探した。暗やみに目が慣れると水底からは所々空気がわき上がっているのが見えた。わき上がる空気を捕らえるのは常人には難しいことだが、水遁の術に長けたギンザにとっては簡単なことであった。
 ギンザは空気を補充しつつ水中を進んだ。時たま凶暴なカジキマグロが襲ってくるので難儀した。水の抵抗が大きく素早い動きが困難なのだ。もたもたするギンザを見て毒エビなどもちょっかいをかけてきた。エビはカジキほどの敏捷な動きはしなかったが、甲殻に被われているためダメージを与えにくかった。さらに小魚までも攻撃をかけてきた。さすがに小魚の攻撃でダメージを受けることは無かったが、うっとおしくてかなわない。

 水中を進んでいるうちにギンザは魔方陣を見つけた。乗ってみるとまたしても深い水の中であった。しかも今度は所々水流が渦を巻いており、ギンザは難儀しながら泳いだ。
 しばらく泳いでいると、湖底にテーブルが見えた。テーブルの上には何かが盛られた皿が置いてあった。もしやブレインディッシュなのか? ギンザが取ろうとして手を伸ばした瞬間、突如逆巻く濁流が涌き起こり、守護神が現れた。

「ほほう。これが欲しいのか。なれば我と戦って取れ」
ギンザは闘志に燃えた目を向けた。
「ははは、我は、激怒の脳皿の守り手なり。真に怒り無くして我を倒せぬぞ」
ギンザは刀を抜いて切りつけた。しかしあまりに水の抵抗が大きすぎる。守護神は余裕を持ってかわし鉾を突き出してきた。ギンザはかわしきれず傷を負った。空気の補充もままならず、ギンザの血管がドクドクと大きく波打ち始めた。ザクッ、また足に鉾が突き刺さった。ギンザは逃げることも出来ず、力を失いつつあった。
「ブレインディッシュに手を出す不埒者め。あの世で後悔するが良い」
守護神はとどめを刺そうと近づいてきた。空気が不足して爆発寸前のギンザの脳に記憶がまた一つ蘇った。塔の頂上で雷撃に打たれる自分の姿であった。その瞬間、ギンザの心は激しい怒りで満ちた。ギンザは刀を収め、近づいて来た守護神に素手で挑んだ。鉾を払いのけ守護神の首を力ずくで締めつけた。怒りにまかせたその力はすさまじく、ボキッと首の折れる音と共に守護神は消えてしまった。

 空気を補充して、まさに一息ついたギンザは皿を手に取って眺めてみた。皿の上には青いクリスタルが載っていた。良く見ると中に脳が詰まっているように見える。見ている内にまた一つ記憶が蘇った。街で会った女と究極の武器を巡って戦っている姿だった。女が火球を放ち、ギンザは燃え上がった。だが実際燃えたのは変わり身の木の幹であった。

Ginza part11
 ギンザは魔方陣を見つけて踏んだ。転移した場所は果樹園であった。しばし休息したギンザは果樹園を通り抜け、さらに水園、空中庭園を通りすぎた。空中庭園の一角にある魔方陣を踏むと菜園に転移した。
 菜園には色々な野菜が手際よく植えられていた。しばらく歩くと奇妙な光景が見えた。
「おぉ面妖な、白猿が野良仕事をしてごザル」
その声を聞きつけて猿達がギンザの周りに集まった。
「心配致すな、拙者怪しいものではござらぬ 通りすがりの者でごザル」
言葉が分かったのか猿達ははしゃぎ始めた。その中の1匹がとれたての野菜をギンザに手渡した。
「ほほう、これを下サルのか。食べよと申すか」
またしても白猿達は喜んだ。
 しかし後ろから来た女の姿を見て猿達は散ってしまった。良く見ると街で会った女だ。彼女はブレインディッシュを要求してきた。昔の戦いを思い出したギンザは渡すのをためらった。女は甘ったるい声でしつこく言い寄ってくる。ギンザはまた火球を食らってはたまらじと逃げ出した。すると女は強烈な魔法で足元の床に穴を開けてしまった。
 ギンザはドボンと水園の水の中に落ちてしまった。しかも水が渦を巻いている場所で、どんどん深い場所へ引き込まれていく。ギンザは必死に渦から逃れ、丁度目の前に見えた魔方陣を踏んだ。


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