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■ Braindish4 〜眠れる神脳塔(かみのうとう)〜 ■

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Ginza part1
「ふふふふ、ふははは・・・、我ついに世界を得たり・・・」
ギンザは不気味に笑い続けた。究極の武器であるウルサィン・テールムを手に入れ、暗黒神アペロンを倒したギンザにはもう怖いものは無い。もはや誰もギンザの行動を制することは出来ない。この世は暗黒に覆われ、人々の未来には絶望しか横たわっていなかった。事実、その後ギンザは多くの町を破壊した。彼が一閃の光と共に現れれば、頑強な城壁に囲まれた城下町でさえ一瞬の内に廃虚と化した。
 生き残った者達は僅かな希望を持ってギンザの慈悲にすがるしかなかった。とある城の国王もギンザにおもねり、少しでも歓心を買おうと古老の言い伝えを口にした。
「ギンザ様、このようなみすぼらしい城では存分なもてなしは難しゅうございます。いかがでございましょう、神脳塔へ行かれましては?」
「ふん、古びた塔へ押し込めるつもりか」
「いえ、まさか。神脳塔の頂上に住まう者は神界をも制すると言われています。今までそこに住めるほどの力を持った者が居らず荒れ果てたのでございます。ギンザ様なら間違いなく住まわれることでしょう・・・」
国王の言葉が終わらない内に一陣の風と共にギンザは消えた。

Ginza part2
 ギンザは神脳塔の頂上に転移してきた。
「ふふふ、ふははは、感じる、塔の力を感じるぞ。我が意に従い神界への道を開くが良い。さぁ開け!」
と、その瞬間、大雷撃がギンザを貫いた。
「ぐ、ぁぁ、馬鹿な、これしきの雷撃など、ぅぅ」
ギンザは究極の武器ウルサィン・テールムに手をかけた。しかし、ウルサィン・テールムは力を発揮することなくくだけ散ってしまった。不利を悟ったギンザは離脱の秘術を試みたが手遅れだあった。
 強大な力を得ていたはずのギンザの意識が薄れ始めた。意識を失う直前、ギンザは遠い場所から声を聞いたような気がした。
(愚かな。下級の暗黒神を倒した程度でいい気になりおって。お前などウジ虫のごとく地面を這っておればよいのだ)

 ふと気がつくとギンザは遺跡のようなところに倒れていた。そばには筋骨隆々の女が立っていた。
「ひでぇやられ方したみたいだな。闘技場でやられたのか?」
ギンザは頭がずきずきする。
「思いだせぬ・・、ここはどこでござろう・・・」
「ここは、神脳塔の1階だぜ。お前覚えてないのか」
「思いだせぬ・・、拙者は何者なのだ・・」
「ふーん、そんなしゃべり方する奴は冒険者でも修行僧でもないな」
ギンザはよろよろと立ち上がった。目の前の壁に目を向けるとなにやら壁画が描かれていた。塔の上に座している神の姿のようだ。突然ギンザの心に何かしら強烈な怒りが込み上げてきた。
「拙者が誰でも構わぬ。此奴を倒さねばならぬ気がする」
ギンザはふらふらしながら塔の上を目指して歩き始めた。女は肩をすくめて去っていった。

Ginza part3
 ギンザは2階に上った。耳をすますと怪物達がうごめく音が聞こえる。ギンザは慎重に歩を進めた。しばらく歩いていると、突如物陰から鮫のような物が襲ってきた。ギンザは反射的に飛びのくと一刀の元に切り捨てた。
「ほう。拙者はかような技を身に付けているのか」
その後何匹もの怪物が襲ってきたがギンザは軽く撃退した。
 ほどなく3階への階段を見つけて登った。3階では、大きな鳥が床を滑るように飛んでいた。こいつは見かけによらずすばしっこく、ギンザは反撃に苦労した。ギンザは刀を鞘に収めて離脱に専念することにした。しかし鳥達はしつこく追ってくる。十字路のようなところでついに挟み撃ちにあった。ギンザは無意識の内にとっさに手裏剣を放った。ドガッ、ドガッ、と、左右の鳥が落ちた。
「ほほう、便利な武器でござるな」
まるで他人事のように呟くと、ギンザは落ちた鳥から手裏剣を回収した。
 4階も似たり寄ったりの状況だった。ギンザは次第に戦闘の感覚に慣れた。頭は覚えていなくとも体は瞬時に動いた。

Ginza part4
 ギンザは怪物を撃退しながら4階を進んだ。しばらく歩くと魔方陣が見つかった。しかし上に乗っても何も反応がない。近くを見渡すと武器屋があった。なにか分るかも知れぬと思いながら武器屋に入ってみた。武器屋の主人は・・・人間ではなかった。しかし人間の言葉は分かるようだ。
「あの魔方陣、うごく、あれば、宝珠。人間、運んだ、宝珠、地下墓地」
どうやら誰かが宝珠を持ち去ったらしい。たぶん地下の墓地であろう。
 ギンザは神脳塔の1階まで一気に駆け下った。さらに地下への階段を降りた。そこは通路が複雑に入り組んでいた。ふと気がつくと蝋燭が所々で炎を揺らしている。しかしギンザにはまるで昼間のような明るさに見える。
「どうやら拙者、夜目が効くようでござるな」
ギンザはしだいに自分の並々ならぬ能力に気がついた。さらに一直線の通路を進んでいると前の方からゴロゴロ音がしてきた。何ごと、と身構えていると巨大な岩が転げて来るのが見えた。さらに後ろからも。ギンザはとっさに飛び上がって天井にへばり付き、岩が通り過ぎるのを待った。
「不思議な眺めでござるなぁ」
ギンザは手を放してさかさまになっても歩けることに気づき、天井をすたすたと歩き始めた。

Ginza part5
 ギンザは地下二階へとたどり着いた。もう岩が転がっている気配は無いので、地面を普通に歩いている。しばらく探索を続けていると墓地が見つかった。きっとこの中に宝珠があるはずだ。
 ギンザは棺を次々と調べた。墓地の一番奥には不思議なほど綺麗な棺があった。棺を開けると中には若い美貌の女が入っていた。まだ死んでまもないのであろうか、まるで生きているようだ。と、その時、声が聞こえた。
「だぁれ?」
ギョッ、ギョッ。死体が呟いた。さすがのギンザも体が凍りついた。まるで金縛りにあっているようだ。だがその瞬間、一つの記憶が蘇った。
「同じ・・・経験がある。密林の河、そこで見つけた奇妙なかぶり物、そうだ、それをかぶったときに金縛りに・・・」
その記憶が戻ったせいかギンザは金縛りから解き放たれた。冷や汗がどっと吹き出た。落ち着いて良く見ると棺の中の死体は生きているようだ。いや、それなら死体ではないな。そしてまた一つギンザの頭をよぎった。
「この女・・・、以前出会ったことがあるのではござるまいか」
だがそれ以上は思い出せなかった。ギンザはそっと棺を閉じた。

 あらためてギンザは周囲を見回した。綺麗な棺のすぐ近くに杭が打ってあり何やら古びた数珠がかかっている。杭には注意書きがあった。
”宝珠を取るべからず。死してなお生を望む者には安息の場を与えるべからず”
どうやらこれが宝珠のようだ。ギンザは迷ったが、とにかく上へ行くにはこれが必要だ。ギンザは宝珠を懐にしまい込むと4階へ戻った。

Ginza part6
 ギンザは4階の所定の場所に宝珠をかけた。魔方陣を踏むと今度は動作し、5階へと転移した。5階はとても暑い場所であった。暑さにクラッとしたしたギンザにまた一つ記憶が蘇ってきた。地獄の業火と火山の溶岩、そこを走り抜ける彼の姿が思い出された。
 ギンザは上への階段を探してうろついた。何匹かの怪物が襲ってきたが軽く撃退した。さらに進んでいくと涼しい小さな部屋にたどり着いた。ギンザは装束を緩め一息ついた。と、背後から声がした。
「助けてくれ、俺は人間だ」
見ると、大蜘珠がいた。ギンザは一応身構えた。
「本当だ、俺は人間だ。この階の守護神に姿を変えられちまったんだ。元に戻るには詩人に転生の古詩を歌ってもらわねばならんのだ。たぶん街へ行けば詩人がみつかると思う。連れていってくれないか? 礼として9階へ飛んで行ける羽をやるから」
「妥当な取り引きでござるな。よかろう、引受申そう」


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