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■ Braindish4 〜眠れる神脳塔(かみのうとう)〜 ■

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Dour part7
 ドーアの眠りはまだまだ続いた。密林での女王様のような生活。動物達はひれ伏しドーアを神のごとく崇める。クマが現れて蜂蜜を捧げた。ドーアはそれに口をつけた。(ぶちゅっ)
「ん・・ううん・・」
ドーアは目が覚めた。長い時間眠っていたような気がする。ドーアはゆっくり身を起こした。その時、突然近くで悲鳴が上がり大女が走り去っていくのが見えた。
「なんなの、あれは?」
ドーアは背伸びすると棺から出た。すぐそばにバラバラに崩れたゾンビがいた。宝冠のような装身具をつけている。
「この身なりからすると高貴な身分のようね・・。この棺の主だったのかしら」
ドーアはぞっとした。眠っている間にゾンビが帰ってきていたらどうなっていたことやら。
 ドーアは大女の走り去った方向に歩き始めた。足跡がはっきり残っており、たぶんこれをたどっていけば迷宮を抜けられるであろう。しばらく歩いていると下への階段が見つかった。降りてみると、そこはまばゆい光に包まれた街であった。

Dour part8
 町に着いたドーアは皿に関する情報を集め始めた。まずは道具屋に入ってみた。しかし店主は若く、あまり物知りという感じはしなかった。
「皿? それなら昨日じいさんが持ち込んだ物があったな。プレインディッシュとかいう高価なものだけど買うかい?」
「ちょっと名前が違うわ。わたしが探しているのはブレインディッシュ」
「聞いたことないな。でも関係あるかもしれないじゃないか。5万Tでどうだ」
ドーアは一瞬困惑した。店主はドーアが眉をひそめたので慌てて付け加えた。
「金が無いのかい。どうだい、ここは一つゲームで値段を決めないか? あんたがダイスを振って出た目とその裏の目を足した数を当てっこするんだ。そうだな今日は大サービスで俺は1つだけ数字を選ぶことにしよう。当たれば俺の勝ちで、あんたの有り金全部で皿を買ってもらう。足した数がそれ以外だったらあんたの勝ちで、ただでやるよ」
「いいわよ。数字を選びなさい」
「じゃあ、ラッキー7といこうか」
ドーアがダイスを振ると4が出た。店主は嬉しそうにダイスの裏を見せた。
「あら、2ね。わたしの勝ちね」
店主はびっくりしてダイスを見た。たしかに4の裏に2が刻まれている。店主はほうけた表情で皿を渡した。ドーアが出て行った後、店主ははっと気がついた。
「あの女、魔法使いの身なりだったな。しまった・・幻覚魔法か」
いまさら悔やんでも遅い。

 一方ドーアはすぐさま皿を吟味した。真っ白で何も模様がない。価値があるようには見えなかった。ひっくり返してみると何か異国の文字が刻まれている。
「カン・・レ・キ・。ふうん? まぁ邪魔ならないから持っておこうかしら」
 ドーアは次に武器屋で聞いてみた。
「皿なんて知らないなぁ。でも昨日来た男も同じことを聞いてたよ」
ドーアはお宝を探しているのが自分だけではないと知って心配になった。早く探さねば。武器屋を出て右に歩いていくと流浪の詩人が古詩を吟じていた。こう言う人種は物知りだ。
「ブレインディッシュ・・・。古の神々の頭脳を納めた皿ね。4枚の皿を得るには危機に際しても冷静な心、恐怖に討ち勝つ勇猛な心、悪を憎み激怒する心、人生を楽しみ歓喜する心が必要よ。諦めた方がいいわよ。・・場所? 神脳塔を登っていけば自ずと見つかるはずよ」
その時背後に視線を感じた。振り返ると不気味な雰囲気の男がいた。もしかしたらお宝探している男なのか。ドーアはにらみかえした。
「ふふん、ブレインディッシュは渡さないわよ」
「・・何のことでござる。拙者、そのような物に興味はござらぬ」
「へぇ? じゃあ見つけたら下さるのかしら?」
「構わぬ・・・。ところでお主と以前どこかで会ったことがこざったかな。拙者、記憶を失って難儀してござる」
ドーアはよく思い出せなかったが出まかせを言った。
「そうねぇ。ブレインディッシュを見つけてくれたら教えて上げるわ」

 ドーアはカジノと闘技場にも寄ってみた。闘技場では大女が戦っていた。
「あー、あの女、アンパだ。がさつで口の悪い筋肉女じゃない」
以前究極の武器を探していたときにずんぶん邪魔された覚えがある。もしやまた邪魔しに来たのでは、と心配になってきた。ドーアは急いで探検の支度を整え、塔を急いで登った。

Dour part9
「はぁ、はぁ、息が切れる・・」
ドーアは塔の5階に到着した。1階から4階はざっと見渡しただけで走り過ぎた。そんな所にあればとっくに冒険者が見つけて話題になっているはずだ。5階から上の情報は少ない。このあたりからゆっくり探せばいいだろう。・・・と思っていたら、そこら中に冒険者がいた。何かを探しているわけでもなく、ある者は喜び、ある者は悪夢から覚めたばかりのように青い顔をしている。狂った者もいるようだ。もしかしたら幻覚魔法で冒険者達をいたぶる悪い魔法使いがいるのかもしれない。ドーアは慎重に進んだ。

 6階、7階とドーアは探索したが皿らしき物は見つからなかった。ドーアはさらに8階へと進んだ。ここにも皿は無い。代わりに武器屋が見つかった。こう言う場所まで客が来るのか、と思いつつ入ってみた。
「皿? うちじゃ皿は扱ってないな。そうそう、ブレインダッシュというレイピアがあるけど鑑定してくれないか? 魔法がかかっているらしいけど効果が分らないんだ。礼はするよ」
ドーアは引き受けた。武器屋の隣にある空き地で慎重に剣を抜いた。すると悪霊が現れてドーアに憑こうとした。
「ほーほっほっ。私に憑こうとするなんて千年早いわよ」
ドーアが軽く呪文を唱えると悪霊は剣に戻った。
「うひゃぁ、おっとろしい剣だ。こんな剣はいらないよ」
武器屋は腰を抜かしながら言った。ドーアは礼代わりにその剣を貰った。
 ドーアは上の階へ進んだ。9階は水っぽい場所だった。あちこちで蛙の合唱が聞こえる。10階、11階も同じ状況だった。しかし皿のさの字も見つからない。ドーアはだんだん焦ってきた。もう他の冒険者に盗られてしまったのか?

Dour part10
 ドーアは12階に到達した。しばらく歩いていると広い部屋に出た。そこは水の精霊の住まいであった。
「ここから先には何もありません。進むのは無意味なことです」
精霊はドーアを追い返そうとした。
「ほーほっほっ。しらばっくれる気? あるんでしょ、ブレインディッシュが」
その瞬間、精霊は目をつり上げて攻撃してきた。ドーアもすかさず鞭で反撃したが、相手の水っぽい体には打撃が与えられなかった。フリーズの魔法も効かない。一方、精霊の水撃は強烈で、まともに食らったら体に穴を開けられてしまう。ドーアは苦し紛れに変身魔法をかけた。
「・・・ほーほっほっ、効いたみたいね」
水の精霊は、なんとカジキマグロに変身していた。床の上でバタンバタンとはねている。ドーアはその魚をけっ飛ばして近くの穴へ落とした。魚は11階へ落ちていった。
 精霊の住まいの奥には魔方陣があった。そばには看板があって、金鱗の鼻輪を装着すべしと書かれていた。
「はん、鼻輪なんて趣味じゃないわ。タダでもらっても装備する気はないわよ」
ドーアは構わず魔方陣を踏んだ。

 ドーアは水の底に転移した。深く暗い場所で水面は遠い。ドーアは慌てず呪文を唱え、空気の膜を自分の回りに作り出した。さらに光の魔法で周りを照らすと、青白い顔の冒険者の死体が漂っていた。
 ドーアは所々底からわき上がる空気を取り込んで空気の膜を大きくした。進むにつれて魚達が攻撃しようと近寄ってきたが、空気の膜を恐れて結局あたりを泳ぎ回るだけであった。しばらく進むとまた魔方陣があった。

Dour part11
 魔方陣を踏むと、ドーアは別の水底に転移した。ここには水流の強い場所もあったが、ドーアは呪文を唱え、楽々進むことが出来た。さらにまた魔方陣があり、それを踏むと果樹園に転移した。色々な果物の実がなっていたが、肝心の皿は全然見つからない。ドーアは気が気ではなくなった。果樹園の次は水園、空中庭園と続いた。ドーアは周りの美しい景色には目もくれず皿を探し続けた。

 ドーアは空中庭園の魔方陣を踏み、菜園へとやって来た。しばらく歩いていると前方に白猿達と男が一人いるのが見えた。ドーアが近づくと白猿達は逃げていった。男は街で会った人間だ。
「あら、また会ったわね。ブレインディッシュは見つけたの?」
「・・拙者、昔そなたに火球を食らったことを思い出してござる」
ドーアが今一度男を良く見て内心驚いた。ギンザだ。究極の武器を手に入れて世界を支配する男。だが記憶を失ったと街で言ってたわね、ドーアは思い出した。
「ほーほっほっ。過去の小さな事にこだわると大物になれないわよ。懐に入れている物、ブレインディッシュじゃなくて? いただこうかしら」
ドーアは猫なで声を出した。しかし疑念を持ったギンザは突然すっと逃げ出した。
「ほーほっほっ。逃げられると思っているの?」
ドーアは強力な大地の魔法を唱えて攻撃した。しかしあまりにも力が大きすぎて菜園の床に穴が開いてしまった。ギンザはそこへ落ちてしまった。ドーアが穴から覗くと、ギンザが水園の水の中に落ち、深く沈んでいくのが見えた。ドーアは探知魔法でギンザの位置を探っていたが、突然ギンザの気配が消えた。ドーアはしかたなく諦めた。

 その後とぼとぼと歩いているとテーブルが置いてある広い場所に出た。テーブルの上には何かが盛られた皿が見えた。
「やっとで見つけたわよ。これがブレインディッシュね」
ドーアが皿に手を伸ばそうとした瞬間、突然土ぼこりが舞い上がり守護神が現れた。
「ほほう、これを欲っするのか。ならば我と戦って勝ち取るがよい」
「ほーほっほっ。邪魔する気? 私の魔法の力を見せて上げるわ」
「ははは、我は歓喜の脳皿の守り手。暗い魔力に頼っては勝てぬぞ」
ドーアがすぐさま爆裂火球を飛ばすと、火球は見事に守護神に当たった。しかしその瞬間、ドーアは灼熱の火で包まれたような精神衝撃波を受けた。心の中を幼いときの悲惨な思い出が駆け巡る。はっと気を取り戻すと守護神が斧を振り下ろすのが見えた。ドーアは危うく斧を避け、風の魔法を放った。烈風が守護神を切り刻んだかのように見えた瞬間、ドーアは刃物で切り裂かれるような精神衝撃波を受けた。またしても悲痛な思い出が蘇る。ドーアは遅まきながら魔法攻撃がはね返って来ていることを悟った。ふらふらしながら守護神の攻撃をかわしたドーアは、鞭を取り出し打ちつけた。守護神はわずかによろめいたがさほど大ダメージは無かったようだ。ドーアは鞭を守護神の体に巻きつけて一瞬身動きを封じた。そして素早く杖を突き刺した。
 ドーアがふと気がつくと守護神は消えていた。皿を手にとって眺めると緑色のクリスタルが載っていた。良く見ると脳のような物が中に詰まっている。
「ちょっと気味悪いわね。でも高く売れそうね」


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