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Dour part12
菜園の階段を登ると城のように所に出た。
「ここにも皿があるといいけど。でも守護神はやっかいね」
ドーアはぶつぶつと独り言を言いながら皿を探した。城の2階に登ってさらに探していると道具屋が見つかった。入ってみると奇怪な魔物が店番していた。
「ちょいと、この皿いくらくらいの価値があるのか鑑定してくれないかしら」
ドーアは皿を手渡した。
「うが。・・・・・がうがーががーうが」
「なんですって、1枚だけじゃ価値がないって?」
闇の魔物をたびたび召喚しているドーアは彼らの使う言葉を良く心得ていた。
「ががうが、うが」
魔物はドーアが8階の武器屋で貰ったレイピアに興味を示した。ドーアはそれも渡した。魔物が剣を抜くと、悪霊が現れて魔物に憑いた。
「ちょ、ちょっとぉ。悪霊に取り憑かれた魔物なんて洒落にならないわよ」
ドーアがびっくりしていると、魔物がきらりと目を輝かせブレインディッシュを手にして逃げ出した。
「こ、こらー、待てー」
ドーアは大声を張り上げながら魔物を追いかけ始めた。
Dour part13
皿を持って逃げた魔物はすばしこく、ドーアは追いつけなかった。しばらく大声を上げながらドタバタした末、やっと行き止まりの通路に追い詰め、呪文を唱えて悪霊を剣に戻した。
「まったく世話の焼ける魔物さんねぇ」
「がう〜ん」
ドーアは道具屋を後にするとまた皿を探し始めた。2階には見当たらず、3階にも無かった。さらに4階へ登って探していると、前方で誰かがこのフロアの怪物と戦っているのが見えた。アレクだ。ドーアはすぐさま追いかけた。
無数の落し穴がある場所まで来たところで、ドーアはアレクに追いついた。
「アレク! こんな所で出会うなんて、あんたの運も尽きたようね。あの世でお師匠さまに詫びてもらうわよ」
ドーアは杖を振りかざして呪文を唱え、爆裂火球を次々と飛ばした。アレクはかわすのが精いっぱいで反撃する余裕はなかった。そのうちアレクはずっこけて倒れた。その時、アレクの懐から赤いクリスタルの載ったブレインディッシュがこぼれ落ちた。そうか、街で情報を聞き回っていた男とはアレクのことだったのか。ドーアはアレクに皿を渡すように要求した。アレクが皿を転がすと、皿は近くの穴めがけて転がった。ドーアは躊躇無く走って皿を手に取ったが、勢い余って穴に落ちてしまった。
Dour part14
「いったぁーい。アレクの奴、許さないわよ」
ドーアは腰をさすりながら起き上がった。ブレインディッシュは2枚とも無事だった。ドーアはすぐさまアレクの追撃を始めた。4階を通りすぎると教会の内部の様なところに出た。周りには目もくれず、アレクの姿を求めてさらに階段を駆け上がった。
なおもアレクを追いかけていると、テーブルが5つ置いてあるやや広い部屋にでた。テーブルの一つには黄色いクリスタルのブレインディッシュが見えた。ドーアは喜々としてテーブルに近づいたが、次の瞬間、持っていたブレインディッシュが勝手に飛び出し、四隅のテーブルへ飛んで行った。ドーアはテーブルから皿を取ろうとしたが、完全に貼りついていて取れなかった。
「どうなってるのよぉ」
どうしようもないので、とりあえずドーアはアレクの追撃を再開した。
上の階へたどりついてみると、そこは生物の胎内のような場所だった。しばらく歩いていると道具屋が見えた。もしかしたら何か情報が入るかもしれない。ドーアが入ってみると老人が出迎えた。
「ねぇ、下の階のテーブルに貼りついた皿は取れないの?」
「ヒヒッ、無理じゃね。もっともあんたが大金を持ってるなら別じゃが」
「ふん、いくらふんだくるつもり?」
「1億Tじゃ」
「ちょいと強欲すぎよ。1万Tにまけなさいよ」
「ヒヒヒ、ダメじゃ。何か貴重なアイテムでもあれば別じゃが」
ドーアは懐を探ったが、出てきたのは街で手に入れた真っ白な皿だけだった。
「ヒーッ、そ、それはプレインディッシュじゃろ」
老人はドーアから皿をひったくるとしげしげと見つめた。
「へー、そんなに高価な物なの?」
「ヒーヒッヒ、皿の上に悪魔を呼び出せるのじゃ。人間には使いこなせぬ物じゃ」
「じゃあんたは何者?」
「ヒヒッ知らぬ方がよい。さあこの鍵を受け取れ。街の隅に開かずの礼拝堂がある。そこでボタンを押せば皿は外れるはずじゃ。ほれ、おまけの転移の羽じゃ」
ドーアは鍵と羽を受け取り、早速街へ転移した。
街の隅を探すと確かに古びた礼拝堂があった。ドーアは鍵を開けて中に入った。中には神脳塔の頂上に座する神を模した像があった。そう言えばミレイが伝言で柴神と言っていたが、それがこの神のことか。その足元には4つのランプと4つのボタンが並んでいた。ボタンの下には説明書きがあった。
”このランプとボタンは聖堂のテーブルに置かれた皿に対応している。皿が置かれるとランプが付く。ランプが付いているボタンを押せば、その皿が外れる。ただし4つのランプが付いたら皿は外せない。ひたすら頂上を目指すべし”
ランプは3つ付いていた。ほっとしてドーアが一つのボタンを押そうとした時、4つ目のランプが付いた。
「ふ、ふざけないでよー。誰よ、4つ目を置いたのは」
ドーアはボタンを押したり叩いたりしたが、ボタンは微動だにしなかった。しかたなく説明書きの通り頂上を目指す事にした。
Dour part15
ドーアは転移の羽で胎内の道具屋の前まで戻った。すぐに上を目指して走り始めた。胎内の2階、3階、4階と走り抜けた。
ドーアは5階に到達した。ここまで休みなく走ってきたので、さすがに息が切れてきた。しばしゆっくり歩いていると、背後から凍りつくような視線を感じた。はっとしてドーアが飛びのくと、肩を熱線がかすめた。
「あっつーぃ。ちょいとなにすんのよ。いきなりぃ」
ドーアが振り返ってみるとギンザの姿が見えた。
「へー、やるじゃない・・・?。ま、まさか記憶を・・」
ギンザの体からどす黒い気が立ち上っていた。この男が記憶を取り戻したとなると容易に太刀打ちは出来ない。ギンザが片手をゆっくり上げると漆黒の球体が現れた。球体はしだいに膨張していく。
「ま、まさか、デイモススフィア!」
ドーアは間髪入れずに防御魔法を唱えた。早すぎはしなかった。鈍い衝撃が襲ったかと思うとドーアの周囲の魔法障壁が白熱の火花を上げた。火花はしだいに紫に変化していく。ドーアは必死に防御強化魔法を唱える。しかし火花は暗い紫色に変化し、ついに障壁が崩れた。ドスッと強烈な衝撃が襲ってきた。ドーアは弾き飛ばされてしまい、通路の端の壁にたたきつけられた。そして近くの穴に落ちた。
Dour part16
ドーアは4階へ落ちた。
「いったぁーい。ギンザの奴、許さないわよ」
衝撃でふらふらしながらも階段を上がり、胎内5階へ戻った。しかし、すでにギンザの姿はない。どうやら上へ登ったようだ。ドーアも登り、神殿1階、2階を通り抜けた。
神殿から階段を上がってみると祭壇のあるフロアに出た。二人の人間が倒れている。一人に近づいてみると見知らぬ男だった。完全に息が途切れており、もう蘇生の見込みはなかった。ドーアはもう一人の方へ近づいてみた。
「アンパじゃないの」
手を当ててみるとかすかに息が残っていた。しかしこのまま放っておけば死ぬだろう。そう言えば昔、無限転移の罠に落ちたときアンパに助けられた覚えがある。借りを返しておくべきだろう。ドーアは蘇生の呪文を詠唱した。ドーアが詠唱を続けると、次第にアンパの呼吸が大きくなり、ついには咳き込みながら目を覚ました。もう大丈夫だろう。ドーアはアンパに一声かけると頂上目指して階段を上った。
Dour part17
頂上に上ってみると、激しい戦いが始まっていた。ギンザがえたいの知れない魔神と戦っている。あれが柴神なのか。すでに復活してしまったのか。バルカ師匠に神脳塔を壊せと頼まれていたことを今更ながらに思い出した。ともかく倒さねばならない相手のようだ。
ドーアはギンザを手伝って攻撃を始めた。しかし柴神の放つ雷撃がすさまじく、トーアは一旦近くの塹壕に身を潜めた。隙をねらっては飛び出して魔法攻撃をかけるが、あまりダメージは与えられなかった。
しばらく戦っているとギンザが倒されてしまった。その代わりアンパが下の階から上ってきて攻撃に加わった。しかしアンパの攻撃もあまり効果を上げていないように見えた。
ドーアは次第に絶望感に捕らえられていった。逃げてしまおうか、と思ったとき、気合いの入った掛け声とともにアレクが現れた。アレクは恐しく攻撃力の高い剣を手に入れたらしく、次々と柴神にダメージを与えた。柴神は大雷撃を乱発し塔は崩れ始めた。アレクが柴神にとどめを刺したのを見届けると、ドーアは転移の魔法を唱えた。だが慌てて魔法を唱えたため、塔の真下に転移してしまった。崩れた土砂や岩がドーアめがけて降り注ぐ。再度転移の魔法を唱える暇がなく、防御の魔法を短く唱えて落石の衝撃をしのいだ。
しばらくして崩壊が止まると、ドーアは瓦礫の下から苦労しながら這い出た。ふう、と辺りを見回すと神脳塔は下部を残して崩れ去っていた。ふと遠くを見るとアレクらしき男が塔から歩き去っていた。
「ちょおっと、まちなさいよぉ」
ドーアは大声で叫んだ。
「結構なお宝を手に入れたじゃないのさ。今日は仇討ちを勘弁してあげるから、その剣をおとなしく渡しなさいよ」
アレクは一瞬振り返っただけで逃げ出した。
「ほーほっほっ。逃げられると思ってんの」
ドーアは杖を掲げて転移魔法を唱え始めた。しかし、その時誰かが後ろから抱きついてきた。
「わーん、心配しましたですぅ。おねーさまぁ」
「ミ、ミレイ、あんたなの。ちょっと離しなさいよ」
「わーん、もう離さないですぅ。一緒にうちで暮らしてくださいですぅ」
ドーアは気が抜けてしまった。どうやら当分ミレイと暮らさなければなるまい。ドーアはアレクの走り去る姿を見て呟いた。「でもアレク、私はあきらめないわよ」
-- The end of Dour --