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■ Braindish4 〜眠れる神脳塔(かみのうとう)〜 ■

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Dour part1
 ピシッ、ピシピシッ。今日も密林に鞭の音が響き渡る。
「ほーほっほっ、さぁゴリちゃんバナナを取ってきて、チータは肩を揉むのよ」
魔女ドーアが密林の動物達をアゴでこき使っていた。街がギンザと言う男に次々と破壊されてしまい、ドーアはやむ得ずここへ逃れてきた。人里離れた密林まではギンザの破壊の手は伸びてこない。しかもここは結構居心地がいい。
「いたぁー、こら、チータ、爪を立てるんじゃないわよ」
ピシ、ピシ、とまた鞭が飛ぶ。密林の動物達にとってはとんだ災難であった。

Dour part2
 ドーアが密林で暮らし始めてどれくらい経ったであろうか。いくら女王様のような暮らしと言っても、所詮相手は動物。だんだん人恋しくなって来た。妹のミレイのことや師匠の仇のアレクのことが心に浮かぶ。
「アレク、あなたは本当にお師匠様の仇なの? 聖域でお師匠さまの霊が現れた時には違うとも取れる言葉を残してたけど。お師匠さま、バルカさま、もう一度現れて真実を聞かせて下さい」
ドーアは無駄だと知りつつ召霊の呪文を唱えた。しかしバルカほどの魔導師の霊はそんなに簡単には呼び出せない。ドーアは動物達に八つ当たりした。

Dour part3
 ドーアはだんだん密林の暮らしに飽きてきた。しかし他に行く当てもない。アレクの消息も分らない。ドーアはまた召霊の呪文を唱えてみた。今度はいつもより長く唱えてみた。すると声が聞こえてくるような気がした。
(・・・ドーア・・・、ドーア・・・)
「お師匠さま? お師匠さまなの?」
(・・・バナナが食いたい・・)
「はぁ?」
ドーアは思わず手に持ったバナナを見た。
「いいですけど。どこにいらっしゃるの」
(・・こっちだ・・、こっち)
声のする方向をみると、草木が揺れている。だんだん揺れが大きくなり、ついに人影が現れた。
「きゃはは。ドーアおねーさま、お久しぶりですぅ。探しましたですぅ」
「ミレイ! どうしてここへ? アオーシャの巫女が聖域離れちゃだめでしょ」
「あーん、バルカ様に伝言たのまれたんですぅ。さっきの声似てたでしょ?」
「お師匠さまの伝言! アレクのこと?」
「あんなむっつりスケベ男の事はしらないですぅ。柴神が復活しそうだから神脳塔を壊せって」
ドーアはがっかりして座り直した。
「今更厄介事が増えたって世の中変わりゃしないわよ。お宝でもくれるんだったら引き受けてもいいけどね」
「あ、そー言えばお宝があるって・・。お皿とか言ってましたです」
「皿ぁ? マイセン製の高価な食器セットとか?」
「いにしえの神々の頭脳が詰まったブレインディッシュが4枚あるとかって」
「・・・古の神々の・・・。ほー、ほっ、ほっ、それは高く売れそうね」
ドーアは久しぶりに気力が沸いてきた。ドーアは、付きまとうミレイを転移魔法で追い払うと、自らも神脳塔の門前に転移した。密林には静寂と安らぎが戻った。

Dour part4
 ドーアは塔の門をくぐり1階を探索した。取り立てて珍しい物は無いようだ。階段は二つあり、上、下どちらでも行ける。
「さーて、わたしのお宝ちゃんはどっちかしら」
ドーアは杖を床に立てた。杖はぷるぷると震えた後、下への階段の方に倒れた。
 地下に降りてみるとそこは迷宮であった。方向音痴のドーアはこう言うところは得意でない。杖の方位魔法もここでは効果無く、自力で迷宮を進むしかなくなった。長い時間さまよった後、やっとで地下二階への階段を見つけた。
 地下二階はさらに複雑な迷宮であった。お宝の皿は全然見つからない。しばらくうろうろしている内に何か大きな看板が立っているのが見えた。
”この看板を見た者はもう迷宮から抜けられない。ぎゃはは、ざまぁみろ”
「なんですってぇ、看板のくせに生意気だわ」
ドーアは目をつり上げて呪文を唱えると、ファイヤーボールを看板に撃ち込んだ。看板はあえなく燃え尽き、崩れてしまった。良く見ると通路が続いている。看板は通路を塞ぐための偽装だったようだ。
「ほー、ほっほっ。こんな簡単なトリックに騙されるドーアさんじゃないわよ」

 ドーアはさらに長い時間迷宮をさまよった。そしてついに行き止まりにたどり着いた。看板に”行き止まり”と書いてあるから間違いない。
「同じトリックじゃ芸がないわねぇ」
ドーアはファイヤーボールで看板を焼き払った。しかし看板の後ろは壁であった。
「はん、このドーアさんにたてつくとは度胸のある壁ね」
ドーアは目を見開いて不気味な呪文を唱えた。次の瞬間、大地がぐらぐらっと揺れて、周りの壁がドドーッと崩れ落ちた。
「ほら道が出来たじゃない。ほーほっほっ。私ってなんて賢いのかしら」

Dour part5
 迷宮をさらに進むと墓地に出た。お宝がないかとしばらく棺を漁っていると首飾りらしき物が見つかった。ドーアが何気なくその首飾りを手に取った瞬間、棺に貼ってあった悪霊召喚の札が怪しい光を放った。
「ふふん、この程度の悪霊はドーアさんの相手じゃないわよ」
ドーアを取り囲んだ悪霊達は杖の一振りで消えてしまった。ドーアは手に取った首飾りを吟味してみたが価値はなさそうだった。
「でも癪に触るわねぇ。だれがこんな罠を仕掛けたのかしら。私だけ引っかかるなんて許せないわ」
ドーアは首飾りを棺にほうり込み、棺に爆睡の札を張りつけた。誰か引っかかるだろう。

 さらに墓地を物色していると奥の方に綺麗な豪華な棺が見えた。
「お宝、お宝」
ドーアは期待して棺を開けたが、中に入っていたのは上等な毛布一枚だけであった。奇妙なことに死体は入ってなかった。ドーアはがっかりするとともに、疲れを感じた。そういえばずいぶん長い時間迷宮をさまよった気がする。
「丁度いいわ。ここで寝ちゃおっと」
ドーアは毛布にくるまり、棺のふたを閉めて眠りに就いた。
 棺の中はとても心地よく、ドーアはぐっすり眠り、夢を見た。幼い頃の自分と妹のミレイ。貧しかったがそれなりに楽しい日々。二人は野原で菫を摘んでいた。ふと気がつくとなぜか忍者が現れて二人を見つめている。ドーアは夢の中で「だぁれ?」と尋ねた。忍者は何も答えず静かに煙のように消えてしまった。

Dour part6
 ドーアは棺の中で眠り続け、夢を見続けた。魔導師バルカの元で厳しい修行に明け暮れた日々。修行が進むに連れて自分の力に自信が涌いてきた。次々と高度な魔法が身に付く。修行の辛さは全然苦にならなかった。もう昔のおどおどした幼い少女の面影はない。きりりと引き締まった美しい、とっても美しい顔立ちのドーアは一人前の魔女として人生を歩み始めた。
 そしてアレクとの出逢い。夢の中のドーアはアレクに恋をしていた。いや、それは現実の事だったろうか。そして次は忘れようとしても忘れられない師匠バルカの死。師匠の傍らにはアレクが立っていた。あなたが殺したの、あなたなの、答えて!「アレク・・」
 ドーアはさらに夢を見続けた。色々な遺跡をさまよい、多くのお宝を手にした。歯向かう魔物はことごとく倒した。強い、強い、なんて強いのかしら私は。


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