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■ Braindish4 〜眠れる神脳塔(かみのうとう)〜 ■

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Arek part7
 アレクは塔の上を目指して登った。2階まで登ったところで大蜘珠を従えた人影が見えた。ギンザだ! 究極の武器を手に入れて世界に君臨する男だ。アレクに緊張が走る。素早く剣を抜き、戦いに備えた。
「あいや、待たれよ。この大蜘珠は人間でござる・・・。本人はそう申しておる。誰かに変身させられたらしい。拙者、変身を解くためにこの者を街へ連れていく所でござる」
どうやらアレクが大蜘蛛を見て剣を抜いたと勘違いしたらしい。しかし、この喋り方、この雰囲気、間違いなくギンザだ。世界に君臨する男がここで何をしているのだ?。俺のことをまるで初対面のようなそぶりを見せているのはなぜだ。アレクはともかく剣を収めた。
「よぉ、あんたか・・・。面目ない。俺が分るかい」
大蜘珠が話しかけてきた。この声は聞き覚えがあった。あちこちで宝探しをしているプレディの声だ。アレクは黙ってうなずいた。ギンザが額に手を当てて思案げに尋ねた。
「寡黙な御仁でござるな。以前どこかで会ったことはござらぬか」
この男、本当に俺のことを忘れてしまったのか。アレクは首を横に振り、怪訝な表情で通り過ぎた。
 アレクは塔を登り続けた。3階,4階と進んだ。ここまでの所はたいした怪物はいない。所々レンガの壁が打ち崩されているのが見えた。ギンザが崩したのであろうか。4階を進んでいるうちに魔方陣を見つけた。アレクはそれを踏んだ。

Arek part8
 アレクは5階に転移してきた。近くの看板に5階と書いてあるから間違いない。ここは異様に暑い場所だった。雑魚モンスターを倒しながら進むと、テーブルが置いてある広い場所に出た。テーブルの上には何かが盛られた皿があった。アレクは近づき、これがブレインディッシュだろうなと思いつつ手を伸ばした。と、その時、高熱の火炎とともに守護神が現れた。

「ほほう。これを欲っするなれば、我と戦って取れ」
アレクはサッと剣を抜きはなった。
「はは、剣を抜いたか。我は、冷静の脳皿の守り手。状況をわきまえぬと勝てぬぞ」
次の瞬間、アレクは目のくらむ光りをあび剣を落とした。剣を拾おうとしたが拾えなかった。それもそのはず、アレクは大きな蚤に変身させられていた。
「ははは、良いざまだ、その姿で一生この階をはいずり回るがいい。泣くがいい、悔やむがいい」
だがアレクは動じなかった。ぴょんぴょんと飛び跳ね、守護神の目を攪乱し、足にガブリと噛み付いた。次の瞬間、またしても光を浴び、大もぐらになった。
「はは、これなら飛び跳ねられまい」
そう言うと守護神は真っ赤に焼けた鉄の棒を取り出し、アレクに打ちつけた。ジュッという音と共に激痛がアレクを襲う。アレクはすぐさま地面に穴を掘って逃れた。
「ブレインディッシュに手を出す愚か者め。一生地面の下で暮らすが良い」
守護神はあざ笑った。だがアレクは諦めていなかった。守護神の下まで穴を掘り進み、守護神の真下から飛び出して喉笛に噛み付いた。守護神は焼けた鉄の棒を押しつけてきたが、アレクは必死に食い下がり喉を食いちぎった。
 気がつくと守護神は消え、アレクは人間の姿に戻っていた。皿を手に取ってみると赤いクリスタルが載っていた。しげしげと眺めると中に脳のような物が見える。これはどのようにして使えばいいのだろうか。アレクには推測すらつかなかった。ともかくアレクは先に進むことにした。いつものことだ。先に進めば運命が開けてくる。
 アレクは6階、7階、8階と順調に登っていった。

Arek part9
 アレクは9階に到達した。湿地帯のようであり、蛙の鳴き声がうるさい。ぬかるむ道を進んでいると頭にコツンと二枚貝が当たった。誰が投げつけたのかと辺りを見回したが誰もいない。また一つ飛んできた。痛いというほどでは無いがうっとうしい。良く観察していると、貝が水を噴射して反動で飛び上がっているのが分った。
 さらに歩き続けて10階に到達した。まっすぐで単調な一本道を歩いていたが、進めど進めどいっこうに端に着かない。塔の大きさから考えて不自然であった。どうやら転移魔法が仕掛けられているようだ。アレクは地面に目印の鉄球をおいて転移魔法の位置を確認した。こう言う場合、転移する手前に抜け道があるはずだ。慎重に調べたところ、やはり抜け道があった。一息入れて進むとまた転移した。どうやらこの階にはやたらと転移の罠が仕掛けられているようだ。
 罠を外したり回避しながら進んで行くと、道具屋の看板が見えた。こんな所で商売するやつの気が知れない。ともかくアレクは入ってみた。
「いらっしゃいだーよ」
店主はフードをかぶって片手にランプをぶら下げていた。どこかで見たような気がするが思い出せなかった。
「なにがほしいだーよ」
アレクは店の中をざっと見回した。ありきたりのアイテムばかりであったが、一つだけ綺麗な金の腕輪が目に止まった。アレクは指さした。
「ごめんだーよ。うりもんじゃないだーよ」
それでもアレクは指を差し続けた。
「わかっただーよ。でも仕事してもらうだーよ」
店主は仕事の内容を説明した。地下墓地にしまってある首飾りを取れと言うことだった。往来のために転移の羽ももらった。
「首飾りを取ると悪霊がとびだすだーよ。気をつけるだーよ」
アレクは悪霊退散の護符を持っていたので心配しなかった。

 墓地に着くとさっそく首飾りを探し始めた。だいたいの位置を聞いていたのですぐにそれらしき棺が見つかった。アレクは棺から首飾りを取ると、悪霊に備えた。しかし出てこない。その代わり急に眠くなった。アレクは棺の内側に貼ってある魔法札を見て愕然とした。爆睡の札だ。まんまと罠にかけられてしまったのだ。

Arek part10
 アレクは棺の横で目覚めた。はじめは頭がぼうっとしていたが、次第に意識がはっきりしてきた。棺の爆睡の札をみて完全に目が覚めた。いったい何日、いや何ヶ月眠ったのであろうか。服の状況からすると、さほど長くはなさそうだ。自分の持ち物を調べてみると割れた皿が出てきた。僧皿だ。そういえば魔法を一日後に無効にするとか言っていたような?。役目を果たして割れてしまったのであろうか。
 アレクは羽を使って10階の道具屋に戻った。店主に聞いてみるとやはり1日しか経っていなかった。罠の件を無言で抗議したが、店主は爆睡の札の件は全然知らないと言った。誰かが貼り替えたのか? ひどいことをする奴がいたものだ。
「とにかくご苦労さんだーよ。ほい、これがお礼の金鱗の鼻輪だーよ」
鼻輪? 腕輪ではなかったのか。アレクは内心赤面した。
「とっても便利だーよ。水層で使うだーよ」
それなりに役に立ちそうな物らしい。アレクはひとまず納得して店を出た。

Arek part11
 アレクは11階を何ごともなく通りすぎ、12階に到達した。この階はやたらと穴が多い。ドーアが喜びそうな場所だな、アレクはふとそう思った。しかし、歩いていると穴が攻撃をかけてきた。どうやら穴もどきの怪物だ。アレクは度々打撃を食らった。さらに進むと厳重な防御を施した入り口が見つかった。しかし鍵はすべて外してあり、楽々通ることが出来た。アレクは広々とした場所に出た。
精霊の住まいのようであったが、精霊は留守だった。一般に精霊と言えば美しい女性と相場が決まっているので、アレクは会えなくて残念に思った。奥の方へ行くと魔方陣が見つかった。近くの看板に金鱗の鼻輪を付けろと指示があったので、アレクは素直に鼻輪をつけた。そして魔方陣を踏んだ。

 アレクは深い水の中に転移した。一瞬焦ったが鼻輪から空気が供給されるのが分り、落ち着きを取り戻した。暗さに慣れてあたりを見渡すと哀れな冒険者の成れの果てが無数に漂っていた。看板の指示を無視するような不注意な連中は冒険者に適していない。当然の末路だ。
 アレクは出口を求めて泳ぎ始めた。鎧や剣など重装備をしているので泳ぎにくい。しばらくするとカジキマグロや毒エビが攻撃してきた。鎧を突き通すほどの攻撃ではないのでアレクは無視した。反撃しようにも水の抵抗が大きく、剣を振り回すことなど出来ない。凶暴な怪物に出くわさないことを祈った。
 泳ぎ回っている内に魔方陣を見つけた。乗って転移してみると、そこもやはり深い水の中であった。近くの看板には第二水層とかかれている。水圧のかかり具合からすると百メートル以上の深さの所にいるようだ。砂漠の真ん中の塔でこれだけの水をどうやって維持しているのであろうか。地下に水脈があって汲み上げているのだろうか。そんな事を考えながらアレクは泳ぎ進んだ。
 しばらく泳いでいると急に水の流れが速くなった。水に流されていくと、辺り一面水流が渦巻いている場所に出た。アレクは水の流れに翻弄され同じところをグルグルと回った。とても流れにさからっては泳げない。なんとか別の流れを捉えて移動するしかない。あまりに長い時間グルグルと翻弄されて、アレクはやや頭がぼうっとした。アレクは人魚の姿を見たような気がした。いや、あれは人間だったろうか。さらに長い時間グルグルとさまよった後、やっとの事で渦を抜けることが出来た。


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