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■ Braindish4 〜眠れる神脳塔(かみのうとう)〜 ■

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Arek part12
 水層の魔方陣から転移すると、そこは果樹園であった。色とりどりの果物が実をつけている。アレクは鼻輪を外し、果物をかじりながら休息した。剣や鎧も水気を切って丁寧に手入れした。剣士のたしなみである。
 一息入れた後、アレクはまた進み始めた。果樹園を通りすぎると水園があった。白い花が咲き乱れ、虫達が飛び交っていた。さらにその上には空中庭園があった。柱を登ってみると、一段と素晴らしい眺めが得られた。これだけの庭園は大国の王宮でもめったに見かけない。
 空中庭園の一角にある魔方陣を踏むと菜園に転移した。色々な種類の野菜が植えられている。誰が手入れしているのか不思議に思って歩いていると、野良仕事をしている白猿達が見えた。彼らはアレクを見るとキーキーと威嚇の叫び声を上げた。アレクはもめ事は嫌いなので、すぐさま通りすぎた。

Arek part13
 菜園から階段を上がると城のようなところへ出てきた。床は黒檀のように黒光りしている。自分の影が不気味に映る。この階には機械仕掛けの衛兵と怪物が配置されていた。機械の衛兵は攻撃力が高く、気を抜くと大怪我を追わされる。一方、機械の怪物は簡単に倒せるが、再生機能が付いていてすぐに復活してしまう。
 苦労しながら城の1階を抜け、2階に到達した。何やらドーアの叫び声が聞こえる。かかわりにならない方がいい。アレクは急いで駆け抜けた。3階に上ってみると何やら機械の球のようなものが飛んでいる。切りつけると簡単に落とせたが、剣を良く見ると所々刃こぼれしている。やはり機械を切るのは剣にとって良くないようだ。
 さらに進むと今度は光弾をとばす機械兵士に出くわした。動きは鈍いが防御力がとてつもなく高く、剣がはじきかえされる。アレクは戦闘を回避しつつ進んだが、ついに狭い通路で挟み撃ちにされてしまった。アレクはとっさにカナヅチで攻撃を試みた。キーン、と最初跳ね返されたが、頭に付いたランプを割ったとたん機械兵士は動きを止めた。どうやらそこが弱点のようだ。

 アレクは城の4階に到達した。ここの機械仕掛けの怪物は灼熱の体を持ち、さかんに火炎を飛ばしてきた。切りつけると剣が熱でなまってしまう。またしてもカナヅチで倒すしかない。カナヅチは重く、振り回すのはずいぶんと疲れる。
 さらに進むと無数の落し穴がある通路に出た。アレクは落ちないように慎重に歩を進めた。あと少しで通路を抜けるという時、後ろで鋭い声がした。
「アレク! こんな所で出会うなんて、あんたの運も尽きたようね。あの世でお師匠さまに詫びてもらうわよ」
振り返ってみるとドーアが杖を構えて呪文を唱えている。未だに師匠の仇と思っているのか。やっかいな女だ。ここは逃げた方がいい。しかし逃げる間もなく、次々と爆裂火球が飛んできた。まともにくらったら一瞬で丸焦げになる。必死に逃げ回っているうちに、アレクはバランスを崩して倒れてしまった。その衝撃で持っていたブレインディッシュがこぼれ落ちてしまった。
「あらアレク、あんたもブレインディッシュを持っていたの。ほーほっほっ。おとなしく渡せば命は助けて上げるわよ」
嘘だな、とアレクは直感し、ブレインディッシュを近くの穴めがけて転がした。案の定、ドーアは皿を追いかけて一緒に穴に落ちてしまった。その隙にアレクは逃げ出した。

Arek part14
 アレクは城を抜けると、教会の内部のようなところへ着いた。へたにのんびりしているとドーアの追撃にあってしまう。急いで通路を抜けると上への階段が見つかった。登ってみるとそこもステンドグラスで彩られた場所だった。なおも進むとやや広い場所に出た。テーブルが5つ、真ん中と四隅においてある。テーブルの一つにブレインディッシュが載っているのが見えた。しかし今はドーアから逃げるのが先決だ。それに詩人の話が本当ならブレインディッシュはさほど重要でない。アレクは横目でちらりと見ただけで通りすぎた。
 アレクはズンズンと神脳塔を登っていった。次の階はまるで生き物のような壁が続く通路であった。アレクにとってはこう言う場所もお馴染みのものであった。不気味な怪物が次々と襲ってきたが、アレクは楽々撃退した。アレクはこのようなフロアを5つ登った。不思議なことにトラップはすべて外されていた。だれかが先にここを通過したのであろうか。気をつけてみると所々に怪物の死骸があり、いずれも食い散らした跡が残っている。共食いではなさそうだ。まだ見ぬ凶暴で飢えた怪物がいるのであろうか。アレクは思わず武者震いした。

Arek part15
 さらに階段を上るとそこは神殿のようであった。ここの大コウモリは色々な魔法攻撃をかけてきた。金縛りの呪文を飛ばしてくるやっかいな大コウモリもいた。
 しばらく進むと上への階段があり登ってみた。ここも神殿のようだ。小さく仕切られた部屋が無数にある。アレクはそれらの部屋を次々に抜けていった。ふと気がつくと一部の扉に小さな印が打ってある。その印を見てアレクは驚いた。魔導師バルカが使っていた印だ。
 アレクはバルカの印を頼りに進み始めた。そして行き止まりの部屋にたどり着いた。部屋の中を子細に調べると、一枚の敷石にバルカの印が打ってあった。敷石を外してみると、その下には魔方陣が刻まれていた。アレクは躊躇無く魔方陣を踏んだ。
 アレクは狭い部屋に転移した。中央の台座に”四練の迷宮”と大きく書いてある。アレクは眉をひそめた。以前も似たような場所を経験したことがある。ぴょんぴょんと息もつかず飛ばなければならない場所だった。みっともなくて剣士の腕が泣くというものだ。バルカはそんなことをさせるためにここに導いたのであろうか。

Arek part16
 アレクは部屋の四隅に穴があるのに気がついた。アレクはその一つを選んで落ちてみた。落ちた場所はアイテムがたくさん落ちている部屋だった。アレクはその一つを取ろうとして手を伸ばした。その瞬間、全てのアイテムが空中に浮き上がり高速で飛び始めた。スピードは次第に増し、いちいち目で追っていられない。ドガッ、飛んでいるアイテムの一つがアレクにぶつかった。すさまじい衝撃だ。またひとつアレクめがけて飛んできた。アレクはさっとかわすと剣で叩き落とした。それと同時背後から衝撃が来た。何度も衝撃を食らったら死んでしまう。アレクは必死にアイテムを回避しながら叩き落とした。全てを叩き落としたとき、上に戻る階段が現れた。

 アレクは息を整え、2番目の穴に落ちてみた。そこには山のように骸骨が散らばっていた。アレクがそのひとつをうっかり踏むと、すべての骸骨達が起き上がってアレクに襲いかかってきた。百柱以上の骸骨だ。しかもアンデッドだ。アレクは手持ちの魔力消耗剤を自分の周りに並べ、足場を動かさずに骸骨を倒し始めた。四方から同時に襲ってくるので忙しい。全てを始末して階段を上がったとき、アレクは完全に息を切らしていた。

 しばらく休息を取った後、アレクは3番目の穴に落ちた。辺りを見回したが、何も見えない。しかし何かがいる気配はする。グサッと腕に何かがささった。どうやら見えない敵のようだ。気配を頼りに攻撃しようにも、周囲すべてから気配が感じられるので焦点が絞れない。さらにまたグサッと何かが胸に刺さった。幸い鎧の装甲の厚い部分だったので怪我はなかった。落ち着いて良く見ると床に薄く影が見える。アレクはこれを頼りに攻撃を始めた。しかし全てを倒したとき、アレクもそうとう怪我を負っていた。

 アレクは傷の手当てを済ませて気合いを入れると、最後の穴に飛び込んだ。落ちてみて驚いた。綺麗な絨緞が敷いて有り、美しい貴婦人たちが座っている。
「まぁ、勇者様。助けに来てくださったのですね。ありがとう」
貴婦人たち次々に礼の言葉をかけた。アレクは一瞬鼻の下を伸ばしたが、すぐに過去何度も蜘蛛女にやられた記憶が蘇った。サッと一瞬早く蜘蛛の糸をかわした。すでに貴婦人の姿はなく、醜怪な蜘蛛がうごめいていた。アレクは飛び交う蜘蛛の糸に絡められぬよう注意して戦った。さすがに何度も痛い目を見ているので、日ごろから戦い方を研究していた。ほどなく全ての蜘蛛を始末した。

Arek part17
 上に戻ると、”四練の迷宮”と書かれた台座の上に剣が現れていた。以前持っていたプラネット・パスタに似ている。アレクが剣に手をかけるとどこからか声が聞こえた。
(・・いそげ・・頂上へ・・柴神が降臨した)
バルカの声だ。アレクは急いで神殿に戻り、さらに上へ続く階段を登った。そこには祭壇があり、誰か見知らぬ男が死んでいた。そのそばに別の階段があった。

 階段を上がると、すでに頂上では激しい戦いが行なわれていた。ギンザが倒れている。死んだのか? アンパが柴神に蹴りを入れているが全然効かないようだ。ドーアもいる。穴から一瞬飛び出ては火球を飛ばし、またすぐ穴に戻っている。こちらもあまりダメージを与えてないようだ。
「おおーっ」
珍しくアレクは一声おめくと、柴神に撃ち込んだ。ザクッ、あっさりと柴神の片腕を切り落とした。柴神はすさまじい形相で雷撃を浴びせかえした。だが、アレクは物ともせずにさらに攻撃をかけた。スバッ、また一つ柴神に傷が増えた。
 柴神は驚きの声を上げた。
「おお、その剣はプラネット・パスタ・デラックス。なぜ人間が使えるのだ」
アレクはなおも攻撃をかけた。次々と打撃が決まる。柴神は狂ったように大雷撃を乱れ打ってきた。その衝撃で塔は崩れ始めた。さらに柴神はアレクを押しつぶそうと自らを鉄槌と化して落ちてきた。アレクの突き上げた剣はそれを確実に捉えた。
 大音響と共にどどっと神脳塔が崩れ始めた。アレクは落下する岩盤の一つに乗って一緒に落ちた。塔の各階は次々に壊れ、水層付近からは大量の水が流れ出た。砂塵が空高く舞い上がり、神脳塔はわずかに下部を残すのみとなった。

 アレクは崩れた岩盤の上で意識を取り戻した。あちこちが打身で痛い。だがともかく、バルカの依頼は果したようだ。これだけの大仕事をやったんだから報酬をもらいたいな、とアレクは心の中で呟いた。すると剣がキラリと光った。なるほど、これが報酬か。アレクは満足そうにパッパッと埃を払うと塔を後にした。
 しかしこれで全てが終わったと思うのは間違いだった。塔からやや離れたところまで歩いてきた時、塔の方から叫び声が聞こえた。
「・・お・・、・・・・・よ・」
振り返ってみると、ドーアが何か叫んでいる。どうせろくなことじゃない。アレクは塔に背を向けると一目散に駆け出した。アレクは心の中で叫んだ。
(報酬はいらん、ドーアをなんとかしてくれぇぇ)

-- The end of Arek --


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