再挑戦(初登頂) −(1) 悪天候にもめげず−

 2000年8月16日〜17日

 遂に来た,再挑戦の日。
 今回は,初登頂のみを目指して,以前にも増して用意周到策を採ると共に,
せっかくの機会を逃すまじと,色々実験的要素も検討してみた。

・ 同行者なし
  二人分の荷物を持つのは,結構きついものである。特に雨具。
  荷物重量を減らす目的からも,今回の「絶対登頂登山」を死守すべく
同行者なしの単独行と相成った。

・ 夜間登山を決行
  元来,汗かきの私にとって,一番の悩みが水分補給である。
  特に,高山病対策からも多量の水分を取らざるを得ない富士登山の場合,
この点は非常に重要であると考えられたため,太陽にさらされずに歩ける
夜間登山で山頂を目指し,翌日の行動を楽にすることに重点を置いた。

・ コース設定
  今回のルート設定に際しては,以下の条件で選定した。
@ 夜間登山でも人が多い登山道で登る。
A 高山病になりにくいスローペースの維持が可能。
B 山頂郵便局で登頂証明書を発送したい。
C 最高峰の剣ガ峰には絶対に登りたい。
D 下山は楽して早いルートで降りる。
  こうなると,コースは必然的に決まってくる。結局,
富士吉田口(河口湖側) → 山頂 → お鉢半周 → 最高峰(剣ガ峰) 
                            → 御殿場口・大砂走り下山
  の,縦走スペシャル(とりあえずおいしいとこをいただいちゃおう)コースを選択した...

また,実験的要素として,

・ 富士山の気圧って,本当に低いの?(五合目で20%減,頂上で40%減って本当?)
  高度,気圧は,愛用のCASIO PROTRECKで随時記録を採ることにした。

・ 高山病に,携帯酸素ボンベがどのくらい効果があるものなの?
  うまく(?)高山病の症状が出たあかつきには,酸素ボンベの効き目をじっくり観察してみる
 ことにした

・ 山頂って,どのくらい寒いの?
  小型寒暖計をザックに貼り付けて,こちらも随時記録を採ることにした。

・ 酢の飲料が登山に有効って本当?
  今回の登山の事前情報収集の中で,YAHOOの富士登山系掲示板にて,「酢を事前に
 飲んでおくと,筋肉痛予防にもなり,驚くほど足が進む」という情報を見つけた。
  たまたま,今回の登山の4日前に,九州物産展で「鹿児島黒酢」を入手したこともあり,
 この検証を試みた。1日3回食後に2fingerほどの黒酢に砂糖と水を入れてコップ一杯に
 薄めたものを飲み続けた。
  最初は,むせるわ,臭いわ(蒸れた靴下の臭いを彷彿とさせた)で結構苦労もしたが,
2日もすると味にも慣れてきて苦にならなくなってきた。
  最初に驚いたのが,それまで少々夏バテ気味で冷たい水を飲みすぎた時のような
 胃のだるさが消えなかったのだが,酢を飲み出してから2日後,丁度味にも慣れ出した
 頃からすっかり消えてしまったことだった。
  おかげで,登山当日はべストコンディションで望むことが出来た。
  これは,なかなか効果が期待できそうではないかと,体調の経過調査が楽しみになった。
 

それでは,以下に登山行全体のご紹介をしちゃいましょう。
登山だけではなく,アプローチも含めた全体のタイムスケジュールを
ご紹介いたします。
これから立案される方の,登山行全体の参考にでもなれば幸いです。


登山開始・・・(8/16)

  さて,登山決行の日。
  前日からの天気予報で,山梨県河口湖地方,静岡地方は,夜半雨50%の予報。
  しかし,登山のために体調を維持しつつテンションを高め続けてきた身にとっては
これ以上の延期は不可能との(勝手な)判断から,登山を決行した。

 今回の旅は,新宿駅からスタート。
 新宿15:30→(JR特急 かいじ111号)→大月16:45→(富士急特急 ふじやま)→河口湖17:26
と乗り継ぎは順調に進む。
 しかし,問題は天候。新宿でJRに乗車した時点では,雲が多いながらも日差しカンカン状態で
「これは,天気予報が外れたか?」と内心ほくそえんでいた。
 ところが,大月で富士急に乗ったところで,空がどんより曇ってきているのに気づいた。
 おまけに,「特急ふじやま」の窓がびしょぬれではないか...

 河口湖に向かう電車の車窓で,幾度となく雨がパラつくが,それほど大したことないような
気がしたため,そのまま河口湖駅に到着。
 電車を降りて,改札口へとポツポツと降る雨の中,屋根のないところを急ぎ足で....
と,そのとたん,突然の大粒の雨がザッパ〜ンと降り出した。
 最近多かった,バケツをひっくり返した夕立ち状態に近い。

 普通の登山であれば,この時点でしばらく様子を見るかと考えるところだが,今回の
行き先は,富士山五合目。標高2300m地点なのだから,きっとこの雨雲の上に出て
しまう筈と信じきっていた私に怖いものはない。
(この点,初めての挑戦 の時のアプローチで雲を突き抜けた経験が物を言ったのは
 言うまでもない。)

 河口湖駅の改札を出たところで,温泉旅館の客引きみたいなオヤジどもが5〜6人
うろついているのが見えた。
「はは〜ん,これがうわさの山小屋予約か...どこかのHomePageで読んだ覚えがあるぞ」
と思い出した私は,「この天気じゃ,どこか小屋を予約しておいた方がいいよ」と声をかけて
きたおっさんに「五合目で友人と落ち合うことになっているから..」と変な理由で断った。
 でも,この理由,効いたようで,おっさんさっさと諦めたではないか...ちょっと安心。
 このあと,すぐに発車するバスに飛び乗り,一路「富士吉田口五合目」を目指した。(1700円なり)

 バスの車窓も大雨でジャバジャバ洗われているが,ここまできたら引き返せない。
 後は,前進あるのみ。このときの乗客は,途中の駐車場からの客を合わせても
6組10人ほど。す,少ない...

 結局,バスは予想通り雲を突き抜けて青空がのぞく五合目に18:20頃到着。
 この晴れ間が見えた瞬間は,さすがにほっとした。

 五合目についたところで,広場に並ぶツアー団体が出発するのを見た。
 総勢100人くらいのまさに団体....でも,これでなんとなく一安心。

 夕食代わりに「天ぷらうどん 800円」を食べつつ,登山の準備/ザック内荷物の
再配置にとりかかった。
 うどんも食べ終え,高山病対策の時間つぶしで後30分は粘ろうと考えて
座っていたところ,「当店は19:00で閉店いたします」との放送あり。
 「えっ...そんな早く閉まるの???ピークのシーズンやのに??」と思うが
周囲の店も次々と閉まっていく。仕方なく広場の石に腰掛けて,靴の紐を結んだり
して時間をつぶす。

 広場よりバス停方面を見る。店も左端のしか開いていない。真っ暗。

 周囲は急に暗くなってきたが,わさわさいる人たちの出発にまぎれてこっちも..と
考えていると,なんと,そのほとんどの人はバスで下山してしまったではないか...

 五合目広場で登山準備をしているのは,私を含め,総勢6人だけ..オイオイ...
 誰も出発しないので,こっちも出そびれているうちに,何度となく濃い霧が流れては
消えてを繰り返す。それもかなり濃い霧。

 そうこうしているうちに,唯一開いていた店から出てきた6人連れが出発し,広場にいた
カップルも出発しかかったので,私も意を決して出発した。19:30富士吉田五合目出発。
(高度2305m  気温16.0℃ 気圧 740hPa)

 しかし,この時すでに,次の濃い霧があたりを包み出しており,前が全然見えない。
 ライトの光跡が霧に吸い込まれて近くしか見えない。しかも私は道を知らない..

 仕方なく,遠くに見える先の6人連れのライトと,真っ暗闇から突然現れる下山者と
馬(!)を目印に,ずんずんとまだ広目の道を下って行った。

 途中,見落とすまいと注意していた6合目への登り口も,先行する6人連れに追いついた
ことで無事クリアし,木々の生える登り坂に入って,一路6合目へ。
 だが,20mほど後ろをづ〜っとついて行った6人連れが,途中で急に休憩し始め,
今度はこちらが先行するはめになった。

 あたりは真っ暗,濃い霧,ポツポツ降る雨,そして遠くの空が怪しく光る...こ,怖い..

 後ろでもいいから連れをと見ると,さっき抜いた6人連れは...ついてこない..

 なにより,雷の頻度が増してきたのにびびった私は,とりあえず六号目の山小屋で
様子を見ようと,小屋のライトの元に急いだ。
 ようやく,六号目についた私の前に現れたのは,ビラを配る一人のおじさん...何??

 いきなりのことで,最初はちょっと驚いたが,これが6合目安全指導センターの人であると
わかって,一安心。さっきまで,真っ暗なところを一人ぼっちで歩いていたことを考えると
「地獄で仏」の感があった。このビラは,「富士登山者の皆さんへ」という簡単なルート図や
注意が書かれているもので,小屋の順番を確認する上で,後々非常に役立ちました,ハイ。
 これで気を取り直した私は,おじさんの「お気をつけて」の声に励まされて,さらに上を
目指した.....本当の苦しみがこれから始まるとはつゆ知らず...

 六号目を越えると,またまた闇に逆戻り。おまけに霧の濃さも増して,周りの様子が全然
見えない。判別がつくのは,自分の前3mほどのライトの範囲だけ。


 この写真が何かわかるでしょうか?左上が一瞬出た月,真中の点々は7合目以降の山小屋群の明かり
   右下から横に走る縞模様が登山路横の壁,そして,画面全体に白く浮かぶのが霧です。
   ストロボ炊いて,ようやくこの程度の判別が可能な状態です。はっきり言って,足元以外何も見えませんでした..

 この後,休んでいる時に後続の6人連れがやっと追いついてきたが,よく見ると,なんと
外人混成部隊。そのにぎやかなことったら...
 しかし,この外人たち,すぐに休憩するので,全然道連れにはならず,結局暗黒の単独行は
続くのであった。

 不思議だったのは,霧(雲?)に臭いがあったこと。薄い煙臭のような,なんともいがらい
あんまり好ましくない臭いがする。
でも,おかげでガスの接近が鼻でわかって暗闇では結構役立った。

 このあたりで一番不安だったのは,近づく雷と,今下山道を逆行しているのではないかという
点だった。
 おまけに,さして高くない気温なのに,濃霧のせいで,汗で曇るメガネの曇りが全然取れない。
 何度か視界ゼロ状態に陥り,吹雪でもないのに,まさにホワイトアウト状態。

 ルートに関しては,「登山道」という看板がカーブ毎に出だしてからは解消されたが,そもそも
その表示自体が見えない状態が続いたのだから怖い,怖い。
 大変,心細くて怖かったが,過去の夜間ハイクの経験を思い出し,「冷静に,冷静に」 と,心を
落ち着けてゆっくり登り続けた。やはり,夜間の単独行は,勇気が必要だ...

 そうこうしているうちに,21:00 ようやく7合目「花小屋」に到着。さっきまで,遠くにちらちら
見えていただけの山小屋群にたどり着いただけでも,本当にうれしかった。
(高度2700m  気温16.0℃ 気圧 735hPa)

  ここで一息ついた後,水分(アクエリアス)を3口ほど飲み,次の小屋目指して出発。

 21:30 7合目「かま岩館」に到着。
 ここで,ゼリー飲料(ウィダーインゼリー)とコンビニおにぎりを食して,エネルギー補給。
(高度2780m  気温15.0℃ 気圧735hPa) 

  この頃から,遠くで光っていた稲光がだんだんと近づいてきているのが感じられ,濃霧に
混じって小雨もパラつき出してきた。
  雨はなんとか雨具不要レベルであったが,問題は雷。
  最初は,足元より下で光っていたため,「雷様を下に見る〜」などと頭の中で歌っていたが,
その雷がだんだんと,真横→上空へと移動してくるではないか。
 ほとんど聞こえなかった雷鳴も徐々に大きくなってきて,稲光との時間差も縮んでいく。
 手に持つストックがおっかなくて,捨ててしまおうかと何度も思ったのも事実である。
 (でも,結構値が張ったので,人生を共にすることとした)

 そんなこんなで,ビビリまくりながらも,22:40「東洋館」に到着。
(高度2895m  気温??℃ 気圧721hPa)
 
 ここで,先に出発しかけた外人部隊の後を出発しようかと思ったとたん,特大の雷鳴/稲光と
共に,大粒の雨が降り出した。その勢いは増すばかり。
 せっかく高い雨具を買ったのだからその効果を試すよいチャンスと登山を続行しようかとも
思ったが,なにせこのあたりは岩場で視界も悪い。何よりも雷がひどくなる一方。
 さすがに身の危険を感じて,「なんで山小屋の前にはひさしがないんだ?」と,しばらく小屋前に
立ち尽くしていたところ,後続の女性2人連れが東洋館のオヤジさんに説得されて宿泊のために
入館するのが目に入った。「どうしようかなぁ〜」とまだ悩んでいるところに,そのまた後続の
男3人組みがオヤジさんと話し始めたため,こちらも近づいてオヤジさんに「一泊なんぼ?」と
尋ねてみたところ「5250円,消費税込み」との返事があり,懐事情とも相談したが背に腹は
代えられないと宿泊を希望した。それにつられてか,その3人組も泊まることになり,結局,
その3人と一束の4人で狭い部屋(いや,あれはタダの棚だ!!)に寝ることになった。
 足を折り曲げながら,2人で一枚の布団で寝たのだが,外の大嵐で参っていた後だったので,
その安堵感から,トタン屋根をたたく豪雨と雷鳴を聞きながら,すぐに寝入ってしまった。Zzz..

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