『鳥インフルエンザ問題の今後(99)』



衆院選は小泉自民の圧勝に終わった。改革の推進に期待する声が大きい中、第一次大戦後、北方の城壁ヒンデンブルグ内閣に代わるヒットラーナチスの躍進になぞらえて危惧する話も出る。「陳情相手は亀井さんではなくなるのかな」とお勝手にきたA君。

業界も決起集会を開いてAI対策の具体的な要求を出し、抗議も考えて居るらしいが、何度も云う通り、国の基本姿勢である《清浄国論》に変化がない限り方向性は変わらない。
ワクチンの弊害もサイレントエピデミック(潜在的流行)の危険性の捉え方も、きちんとした科学的根拠をもとにした比較論を踏まえずに、単に清浄国論の方向に合わせただけのものだから、これはこれで説得力に欠けるのであり、逆もまた真なのである。

論理的にも実際面でも無理が多く、それの表現の為の、新解釈に伴う造語も数多く見られる。曰く、その清浄国論を初め、ワクチンの予防的使用、陽性だけの個体集団の淘汰、中古鶏、偽ワクチン等々、医学関係者など原理原則をわきまえる人達に対して程、説明に苦しむことが多くなった。またジャカルタ会議以降の世界三機関の意向との方向性との乖離もひどく日本がむりやり条件を押し付けたかたちだが相手にされていない感じが伝わってくる。
これまでの、このシリーズの一応の結論と現場で考えるうえでの整合性をもとめた勝手な推論の(97)に対しては多くの反響が寄せられた。
それによって、今現在の養鶏家の一番の不安は強毒トリフルの南下よりも、現実のLPAIのHPAIへの変異であることが分かった。

当場指導医師の受け売りを次男坊がしている。
「フィールドでLPAIがHPAIに変異することを最初に聞いたのはカプア博士(於NBITS2002)からです。その変異については学術的に証明されているけれども、現場で知りたいのはどんな場合にそうなるかで、それは分かって居ないのです。今度来年から見直される予定のAI対策の基準92/40/ECではLPAIは対象外であるところからカプア博士がその対策も大切であると訴えたのです。ただ実際の摘発淘汰はイタリーでもHPAIに対してです。結果1800万羽をワクチン導入時までに犠牲にしたことを同女史は「この過ちを繰り返さないように」と日本の加藤先生に伝えて居ます。

普通にはLPAIの抗体があればHPAIの発症を防ぎます。特に、どちらかの亜型が一致する場合は尚更です。南中国の例(日本獣医公衆衛生学会誌)では全く亜型の違うH5N1に対してH9N2生ワクによるT細胞免疫の効果を認めて居ます。ミネソタ大学のハルバーソン教授はそのレポートの中でアメリカの一部ではH5,H7亜型に対してH1N1の不活化ワクチンを使うことも普遍的ではないが普通だとさえ述べて居ます。無論これらは交差免疫を否定する(NHKテレビ、キーパーソンでの喜田教授)日本の学者は一切認めません。

それに普通の理屈ではLPAIの抗体に邪魔されたHPAIは毒性そのものは低くなります。ただ変異はするわけで、それを人に対する危険な変異になるかもと言い募って居るのが日本の学者です。LPAIと出会うことでHPAIによるホットハウスがクールハウスになると考えるのが普通の考えです。現場での馴致も、もっと積極的なワクチネーションもすべてそのねらいです。本来は危険どころか百万の味方の筈です。

ですが本来は防疫上有効はLPAIの存在も、撲滅方針の《清浄国論》の方針のもとではHPAIの摘発を妨げるやっかいな存在となってしまいます。そして摘発を逃れたHPAIの潜在的流行(サイレントエピデミック)が阻止出来なくなるというのです。しかし言い換えると発症を止めることは取り敢えずはHPAIがLPAI化してウイルスの排泄量も著しく減り(前記、学会誌)当面の危険性がなくなることなのです。もし本当にH5N2の抗体が茨城だけにしかないとすれば、H5N1を抱えて飛来する北からの渡り鳥に対して茨城の鶏だけが防御能力を持つことになるのです、そして実は其の抗体は広く日本に分布して見つからなかっただけだとすれば、日本は案外安全かも知れませんよ。
それを見つけ次第殺してしまって居るのは《清浄国論》に沿う事とはいえもったいない話です」

H 17 9 12, I,SINOHARA.