研究会の歩み PARTZ

このページは、第97回研究会以後の内容を紹介するページです。

○第97回 2008年2月21日「木」「自治基本条例は必要か〜会津美里町職員WGの試み〜」(小池大介氏)
○第98回 2008年5月8日「木」「『市町村議会議員の政策形成に関するアンケート』の調査結果について」(柏村秀一氏)
○第99回 2008年6月5日「木」「ミッション『まち』を売り込め〜文化事業をPRの種として〜」(安藤光輝氏)
○第100回 2008年7月5日「土」「ふくしま自治体政策フォーラム『自治体研究の最前線』」(佐藤徹氏・岡本三彦氏・沼尾波子氏)
○第101回 2008年10月2日「木」「飯舘村の地域づくり〜『大いなる田舎・までぃライフいいたて』を目指して」(藤井一彦氏)
○第102回 2008年11月6日「木」「会津若松市議会議会基本条例制定に関わって」(松野光伸氏)
○第103回 2008年12月4日「木」「規制緩和と地域交通」(岩本正寛氏)
○第104回 2009年1月8日「木」「道州制のゆくえー論議の現在と未来ー」(鎌田司氏)
○第105回 2009年1月22日「木」「財政健全化法をどう活かすか」(菅原敏夫氏)
○第106回 2009年2月5日「木」「海外の地方自治制度」(山下茂氏)
○第107回 2009年5月7日「木」「地方都市における『土地利用の秩序形成とコンパクトな街づくり』の実現に向けての研究」(湯澤敏行氏)
○第108回 2009年6月4日「木」「平成合併検証の論点整理」(今井照氏)
○第109回 2009年7月2日「木」「柴田町の合併協議離脱までの経緯」(宮城県柴田町議会議員5名の方々)
○第110回 2009年10月1日「木」「道州制を考える」(市川喜崇氏)
○第111回 2009年11月5日「木」「B級グルメが地方を救う」(田村秀氏)
○第112回 2009年12月3日「木」「韓国の地方自治」(申龍徹氏)
○第113回 2010年1月14日「木」「これからの地方自治体、自治体職員を考える」(佐藤敏明)

第97回研究会2008年2月21日
「自治基本条例は必要か〜会津美里町職員WGの試み〜」

 報告者 小池 大介氏(会津美里町)

 合併や町議会からの提言を受け、町当局にまちづくりのルールとしての自治基本条例制定がつきつけられた。
 これに対し、自治基本条例の検討作業を委任された「町役場若手職員WG」は、自治基本条例制定ありきではなく、町の現状を踏まえた上でホップ・ステップ・ジャンプ方式を考えた。
 「情報共有と住民参加のまちづくり条例」から始まり、成長していく条例のあり方を提示した。新しい試みである。
 今後の町役場若手職員と住民の協働作業から目が離せない。また、自治体議会改革が喫緊の課題でもある中、自治基本条例制定を提言した町議会議員の果たす役割にも注目したい。

1.条例検討の背景
(1) 計画等の位置づけ
  ● 町第1次振興計画(基本計画:期間H18〜H22)において、「住民と行政の協働によるまちづくりを進めるための指針を明確にし、具体的な取組みを実施していくための条例の制定を検討します。」と明記。
  ● 町集中改革プラン(H17〜H22)では、協働のまちづくりを推進するために平成19年度に「協働によるまちづくり基本方針」を策定する旨明記。
(2) 議会からの要請
  ● 町振興計画を受け、平成18年度12月定例会において、「速やかに条例制定すべきである」旨の一般質問が出され、「H20に条例化の検討を行う」旨の答弁。
  ● 平成19年9月21日議会より「会津美里町行財政改革推進に関する提言」(58項目)が町長に提出され、自治基本条例の制定をはじめ、住民参加手法の検討、行政情報の積極的公開等の提言があった。

2.条例検討に当たっての方針
(1)「自治基本条例ありき」ではない検討を
  ● 「自治基本条例」の学習
   ・ニセコ町職員をお呼びし、ニセコ町のまちづくりや自治基本条例についての職員研修会を開催。
   ・文献等による学習
(2)若手職員WGによる検討という選択
  ● まずは、職員による内部検討が必要と結論
  ● 自治基本条例だけでなく、住民参加条例等いわゆる「まちづくりのルール(条例)」の基本的理解をはじめ、本町に必要な条例、策定手法等の検討を行うこととした。
  ● 検討作業は、若手職員公募による「まちづくりのルールに関する条例検討ワーキンググループ(WG)」を設置して行うこととした。

3.WGの中間報告概要
(1)まちづくりとは(目指すべき姿)
  ● まちづくりとは
  ● よりよいまちづくりとは、
  ● 「まちづくりのルール」として規定したものが、自治基本条例、住民参加条例。
(2)まちづくりの推進方法に係る現状と課題
    よりよいまちづくりの基本原則は、「情報共有」と「住民参加・協働」
  ◆ 「情報共有」に係る行政側の課題
  ◆ 「情報共有」に係る住民側の課題
  ◆ 「住民参加・協働」に係る行政側の課題
  ◆ 「住民参加・協働」に係る住民側の課題
(3)課題解決の方向性
  ● まず、行政側が変わり、住民からの理解と信頼を得ることが必要
  ● 行政運営を「情報共有」と「住民参加」を基本原則としたものに転換していくことが必要であり、それを担保する制度の構築が必要。
  ● 「情報共有」と「住民参加」に関するルールの制定が必要。
  ● 「ルールの制定」とは、「条例化」を意図している。 
  ● 課題解決の手法として、「自治基本条例」と「住民参加条例」の制定について検討。
(4)本町が目指す条例
  ● 以下の類型に基づき比較検討
   @総合型の自治基本条例
   A組合せ型の自治基本条例
   B住民参加条例制定→実践・改革→住民起点の行政運営へ→自治基本条例(総合型)制定へ
  ● 比較検討の結果は以下のとおり
   ・今すぐ「総合型」の条例を制定できる状況にはない。
   ・まず、行政活動への具体的な住民参加手続きを規定する住民参加条例を制定し、それに基づく実践を積み重ねていくべき。
   ・実践と改革に裏付けられてこそ、住民の思いと本町らしさが込められた「生きた自治基本条例」=「わがまちの憲法」をつくることができる。
  ★ステップ1(ホップ)ともに考える土壌づくり(H20着手)
   「情報公開と住民参加のまちづくり推進条例(仮称)」の制定
  ★ステップA(ステップ)ともに考え行動する土壌づくり(協働の実体化)
  ★ステップB(ジャンプ)ともに考え行動するまちづくりの体系化
   会津美里町らしさが込められた「自治基本条例」の制定

4.条例策定体制・スケジュール
 <住民参加条例策定に向けた今後の取組み内容>
  ● 住民への周知
  ● 検討組織の設置
   ・行政検討組織
   ・住民検討組織
   ・アドバイザー
  ● スケジュール
   平成21年9月議会での議決を目途に取組む(施行:平成22年4月1日)   

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第98回研究会2008年5月8日
「『市町村議会議員の政策形成に関するアンケート』の調査結果について」

 報告者 柏村 秀一氏(矢吹町)

 はじめに
 テーマ「自治体の『自立』の検証
 ■「平成の大合併」では「合併か」「自立か」
 ■では、合併しなかった自治体が自立した自治体といえるのか?●答は・・・「NO!}
 ■すなわち、自治他の「自立」とは合併自治体・非合併自治体を含めた概念なのである
 ■したがって、「自立」の概念を仮説を立てて考えてみた

 問題意識と仮説
 ■自治体の「自立」の仮説
  ●「財政力」「改革力」「地域力」
  ●それを支えるのは、「役所」「議会」「住民」の関係、とりわけ議員の果たす役割が大きいことに着目
 ■すなわち本論では、自治体の「自立」の仮説(「財政力」「改革力」「地域力」)を提起し、それを「役所」「議会」「住民」との関係から立証する

 自治体の「自立」の構図
  ●「自立」の三条件、「自立」の三要素

 本論の特徴
 ■第一の特徴は、自治体の「自立」の仮説、すなわち「財政力」「改革力」「地域力」の指標を、単なる絶対値での比較ではなく、類似団体と比較したこと
 ■第二の特徴は、「役所」「議会」「住民」との関係について、現職・元議員(合併自治体のみ)1476名を対象にアンケート調査を実施したこと

 本論の特徴(アンケート調査)
 ■福島県内60市町村議会議員(現職・元職議員)の方々1476名(非合併自治体762名、合併自治体(現職)278名、合併自治体(元議員)436名)を対象に調査を実施
 ■調査は、議会と役所、役所と住民、議会と住民との関係について、現在と以前とを比べる方法で実施
 ■アンケートの回収率は56.4%、半数以上の現職議員・元議員が回答

 結論
 ■市のレベルでは強い相関関係で立証、町村においても一定の創刊関係で立証
 ■自治体の「自立」には「財政力」「改革力」「地域力」が必要であり、そのためには「役所」「議会」「住民」との関係がきわめて重要であることが証明
 ■すなわち自治体の「自立像」とは、「役所」「議会」「住民」の関係が(議員を中心とした)信頼関係により構築され、「財政力」「改革力」「地域力」を高める努力を行っている自治体

 本日のテーマ「市町村議会議員の政策形成に関するアンケート調査結果を掘り下げる
 ■調査は、「行政」「住民」「議会」の関係について他の自治体と比較してどうか、また以前と比較してどうかを尋ねた
 ■以前との比較とは、非合併自治体は概ね5年〜10年間、合併自治体は合併前と合併後の比較
 ■調査自体は、現職議員及び旧自治体の元議員に対する意識調査

 本日の論点
 ■【論点1】合併自治体と非合併自治体との違いはどこにあるのか
 ■【論点2】合併自治体の議員、もしくは元議員が抱えている課題は何か、それは「行政」にとっても同じ課題か
 ■【論点3】議員と、政策主体である「行政」「住民」との関係は今後どうあるべきか

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第99回研究会2008年6月5日
「ミッション『まち』を売り込め〜文化事業をPRの種として〜」

 報告者 安藤 光輝氏(国見町)

 1 国見町観月台文化センターの紹介
 2 文化事業の氏名
 3 自分が経験してきた役所的(風)なPRとは?
 4 役所の持つPRの手段
 5 メディア別の特性
 6 地元新聞に取り上げてもらうための常識
 7 後援申請先の一覧
 8 PRの原稿のポイント
 9 ラジオ・テレビへの働きかけ
10 いくつかの壁
11 想いを遂げるために

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第100回研究会2008年7月5日
「ふくしま自治体政策フォーラム『自治体研究の最前線』」

1  開    会
 
  今井 照氏(福島大学)

2 自治体政策研究会100回の歩み
 
佐藤 敏明(福島市役所)

 研究報告 1  『創造的政策評価(CPE)の時代』 
  
  佐藤 徹氏(高崎経済大学)

 研究報告 2 『住民投票ー意思決定への住民参加ー』
 
 岡本 三彦氏(東海大学)

 研究報告 3 『自治体における社会的基盤(プラットホーム)構築とその財源』
 
 沼尾 波子氏(日本大学)

分科会@「佐藤徹さんを囲んで」
 
〔進行〕木村淳一氏(大河原町役場)
〔事例紹介〕柏村秀一氏(矢吹町役場)
「自治体経営への取組み〜総合計画を確実に実施するために〜」

分科会A「岡本三彦さんを囲んで」
 
〔進行〕庄子まゆみ氏(南相馬市)
〔事例紹介1〕小池大介氏(福島県庁)
「まちづくりのルールに関する条例検討WG『最終報告』」
〔事例紹介2〕清野一浩氏(福島市役所)
「『協働』は、市民自治への道しるべとなりうるか?ー福島市における『市民との協働』の取組みー」

分科会B「沼尾波子さんを囲んで」
 
〔進行〕佐藤一彦氏(本宮市)
〔事例紹介1〕武田与司弘氏(本宮市)
「本宮市(旧白沢村)と日大経済学部波尾ゼミとの交流について
〔事例紹介2〕安藤光輝氏(国見町役場)
「福島県国見町の財政構造の変化について」
 

  

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第101回研究会2008年10月2日
「飯舘村の地域づくり〜『大いなる田舎・までぃライフいいたて』を目指して」

 報告者 藤井 一彦氏(飯舘村)

 1 住民参画による地域づくりの経緯
 2 第4次総合振興計画の取組み
 3 第4次総合振興計画の地区別計画
 4 地区別計画の進め方
 5 第4次総合振興計画の地区別計画施策
 6 地区別計画への行政支援
 7 第4次総合振興計画の行政施策
 8 第5次総合計画策定に向けて
 9 「スローライフ」から「までぃライフ」へ
10 「までぃ」とは・・・
11 ”までぃライフ宣言”の位置付け
12 までぃライフによる計画
13 やるきつながりプラン(地域計画)
14 つながりプラン
15 までぃライフ推進と評価の仕組み
16 自立に向けて
17 村づくりの成果(飯舘村に住んでいることに誇りや自信が持てるようになっている)

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第102回研究会2008年11月6日
「会津若松市議会議会基本条例制定に関わって」

 報告者 松野 光伸氏(福島大学)

1 条例制定の経緯など
  (1)一般的背景
      地方分権
      市町村合併
  (2)直接的背景
      政治倫理条例制定の「挫折」(2006,12)
      議長による「議会のあり方」(素案)の提起
        議会基本条例制定の検討を
  (3)議会制度検討委員会の設置(2007.7) *議会の附属機関(「任意の委員会」)
      議員(会派代表7名)
      公募市民(1名、10月より)
      学識経験者(1名、10月より)
  (4)議員主導、事務局補佐での検討
      基本理念、改革検討事項(及び優先順位)、検討主体の確定
      先進事例(栗山町、伊賀市等)の学習・検討
      委員長・副委員長名での原案提示
  (5)議会全体としての検討
      消極的会派(委員)への対応
      議長・副議長の関わり方
      会派代表者会議・全員協議会とのフィードバック(学習会も)
  (6)19回の検討委員会
      長時間の協議
      適切な整理と原案提示(事務局職員)
      公募市民・学識経験者委員の役割
  (7)議員政治倫理条例とセットでの制定
      倫理条例制定の意義・目的の明確化
      議会の「意思表明」が明確に

2 会津若松市議会基本条例の特徴
  (1)市民を多様に代表する機関としての議会の特性の強調
      「多様な市民の多様な意見を多様に代表できる、という合議機関としての特性を最大限に生かしていくために」(前文)
      「議会の構成員として、一部団体及び地域の代表にとどまらず」(第3条)
  (2)議会が首長と対抗する基盤は市民参加であることの強調
      「市民の積極的な参加を求めていくことが必要である」(前文)
      「このような市民参加を礎として、市民との活発な意見交換を図り」(前文)
      市民との意見交換会、広報広聴委員会(第5条)(第6条)
       ・議員政治倫理条例制定の目的(前文、第1条)
  (3)市民参加を基盤とした政策立案主体としての議会の強調
      「市民との活発な意見交換を図り、そこで得られた意見を大切にしながら、議員同士自由闊達な議論をたたかわせ、そのような中から、論点や課題を明らかにしたり、意見を集約していくことが必要である」(前文)
      「把握した市民の多様な意見をもとに政策提言、政策立案等の強化に努める」(第2条)
      政策討論会の開催(第13条)
       「常任委員会は、議会における政策立案及び政策提案を積極的に行うものとする」(第14条)
  (4)その他
      附属機関の設置(第7条)
      議決責任の明確化(第8条)
      市長等の反問権(第9条)
      議会図書室の充実(第17条)
      予算の確保(第21条)
      *議決事件の追加、政策形成(論点)情報の提供等は規定されず

3 会津若松市議会の自己変革への歩み
    …を踏み出したことを評価したい。(全国自治体議会で18番目、市議会で7番目)
  (1)意見交換会の開催
       広報広聴委員会の設置
       第1回地区別意見交換会の開催
         市内15地区で
         全議員を5班のグループ編成で
         事前確認と「自前」での開催
       市民294人が参加
         215人の意見・要望・質問
  (2)政策討論会の開催
       意見交換会での意見等を整理
       政策課題の設定
         全体会と4分科会に振り分け
         市民にも広報
       第1回政策討論会の開催
         全体会
         テーマは水道民間委託問題
  (3)政策形成サイクルとしての位置付け
       意見交換会と政策討論会のフィードバック
       委員会と政策討論会とのフィードバック

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第103回研究会2008年12月4日
「規制緩和と地域交通」

 報告者 岩本 正寛氏(福島大学院生)

1.公共交通機関の主体と根拠
  (1)住民目線で見た公共交通機関
  (2)経済学的性質で見た公共交通機関
  (3)会計的性質で見た公共交通機関

2.公共交通と公共政策
  公共交通機関主体との政策的な関わりの可能性
   @渋滞緩和の推進/バスレーンの整備
   A環境負荷低減の推進/PTPSの整備
   Bモーダルシヒトの推進
   Cモビリティマネジメントの推進
   Dタウンモビリティ確保の/ユニバーサルデザイン導入の推進
   E条件不利地などのモビリティ確保/事業経営への参入
   Fインフラストラクチャーの整備
   G許認可及び事業監督業務/行政手続き等の制度構築と実施
   H総合交通体系と都市計画の関連づけ
   I港湾などの管理
   J産業遺産・文化財の管理保存

3.規制緩和の推移と変化
  (1)一連の規制緩和の推移
   ・2000年道路運送法改正
   ・2002年道路運送法改正、
   ・2006年道路運送法改正
  (2)他の交通機関と規制緩和
   ○各種交通機関の根拠法と主要な改正内容
  (3)規制緩和の影響
   ・出入退について免許制が許可制・届出制に、運賃の設定が上限運賃制に
   ・事業主体が多様化
   ・基礎的自治体の担うべき役割が肥大化
   ○道路運送法改正による道路旅客輸送分野の制度上の改正点

4.自治体政策としてのモビリティ維持・確保政策の現状と課題
  (1)課題
   ・専門の職員はいない、やることは専門的
   ・参考にすることと、模倣することは異なる
   ・予算をどう確保するかという課題
  (2)考えられる政策手法
   ・基礎的自治体が担うべき手法(補助金交付、「福祉バス」的手法等)

5.自治体主導の生活交通を整備するときの工夫
  (1)基本構想策定の段階
    @デマンド交通は万能にあらず
  (2)経路設計
    Aあちこち回るバスは実は不便
    B停留所間隔は広すぎず、詰めすぎず
  (3)その他
    C時刻設定はわかりやすさ重視、しかし過度の追求は考えもの
    D運賃もわかりやすさ重視、しかし過度の追求は考えもの   

6.まとめにかえて
  ・規制緩和の結果、基礎的自治体の担う役割はそれまでよりも大きなものとなってきている。しかし、公共交通の整備に関する専門家がいるわけでもない基礎的自治体において移動制約者のモビリティを確保する政策を展開することは、実に厳しいことである。
   この状況下で賢く合理的な公共交通機関の維持と整備を政策的に展開することが求められている。


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第104回研究会2009年1月8日
「道州制のゆくえー論議の現在と未来ー」

 報告者 鎌田 司氏(共同通信社編集委員兼論説委員)

 T なぜ道州制なのか
 1 「政高民低」の論議
 (1)世論調査結果は「反対」が60%超す
   ○2006年12月日本世論調査会面接調査(2007年調査もほぼ同様の結果)
    「賛成」「どちらかといえば賛成」計29%
    「反対」「どちらかといえば反対」計62%
   ○理由:「賛成」「議員や職員が減り、経費の節約ができる」 49%
            「広域的な課題に取り組める」 24%
        「反対」「行政単位として道州は広すぎる」 46%
            「今の都道府県に愛着がある」 30%  
 (2)小泉内閣以降の道州制に冠する動向
   ○小泉内閣で道州制特区推進法の動き(2008年4月施行)
   ○安倍内閣:「3年以内に道州制のビジョンを示す」(安倍首相)
         初の道州制担当相。道州制ビジョン懇談会設置
   ○麻生内閣:道州制を積極的に推進
 2 道州制論議の現在
  (1)自民党道州制推進本部

   ○2007年6月「第2次中間報告」:「スケッチを描いた」
   ○11月「道州制推進本部」を設置。谷垣政調会長が本部長。
   ○2008年7月「第3次中間報告」「限りなく連邦制に近い道州制」
  (2)内閣府・道州制ビジョン懇談会
   ○2007年3月渡辺喜実道州制担当相の諮問機関として設置
   ○経済界主導の論議
   ○2008年3月「中間報告」
  (3)日本経団連
  (4)道州制特区

   ○2007年4月北海道を対象にスタート

 U 県の役割は終わったか
 1 国の役割を限定する
 (1)地域主権型道州制
 (2)限りなく連邦制に近い道州制 
 2 都道府県の現在
 (1)市町村への権限委譲が不可欠
 (2)広域的課題にどう対応するか

 V新たな「国のすがた・かたち」をどう構想するか
 1 国役割の再定義が必要
 (1)「平和」「環境」「貧困」
 (2)霞ヶ関の解体再編
 2 地域からの論議と実践が不可欠
 (1)道州制は究極の分権である
 (2)関西広域連合
 (3)沖縄単独州

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第105回研究会2009年1月22日
「財政健全化法をどう活かすか」

 報告者 菅原 敏夫氏((財)地方自治総合研究所)

 T 自治体財政 今!

 U 自治体財政健全化法と長、自治体議会・監査委員

 V 自治体財政健全化法
  1.実質赤字比率   第1指標
  2.連結実質赤字比率 第2指標
  3.実質公債費比率  第3指標
  4.将来負担比率   第4指標
  5.資金不足比率

 W 比率に影響を与える要因

 X 自治体財政健全化法の問題・公会計

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第106回研究会2009年2月5日
「海外の地方自治制度」

 報告者 山下 茂氏(明治大学公共政策大学院教授)

 T 国際比較のすすめ

 U 地方自治システムの国際比較と我が国の特徴
   ー国際的な比較:地方自治単位設定+その自治(意思決定>行政執行)機構などー
  ○国際比較の視点
   ・一国だけとの比較は意味がない
   ・歴史的経過を吟味する必要がある
   ・地方自治制度の法的枠組み、統治機構、役務提供等には各国それぞれの特徴がある
   ・それらの特徴を日本に適用し、参考になる項目を採用すればよい

  V 地方分権の国際的な動向
  ○英国(United Kingdom of Greaat Britain and Northern Ireland = "Britain")
   ・UKの4地方区分=England+Wales+Scotland+Northern Ireland
   ・スコットランドDevolution=権限移譲)
   ・イングランドでのRegionレベルへのDecentralisation(地方分権)の頓挫
  ○フランス
   ・1980年代の分権改革
   ・2003年憲法での地方分権の充実強化
  ○「補完性」+「近接性」の原理in欧州評議会(CE)「欧州地方自治憲章」

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第107回研究会2009年5月7日
「地方都市における『土地利用の秩序形成とコンパクトな街づくり』の実現に向けての研究」

 報告者 湯澤 敏行氏(福島大学院生)

 第1章 はじめに
   ・研究の趣旨 人口5万人から10万人程度の地方中小都市における今後の土地利用と街づくりの提案を行う
 第2章 戦後わが国における国土(開発)と土地利用計画について
 第3章 地方中小都市の現状と課題
   1経済とくらしの視点(都市的開発を目指した国策導入からの現状比較)
   2街づくりの視点(地方中小都市の土地区画整理と都市計画道路)
   3土地利用の視点(現状と課題)
   4行政庁と住民からの視点
 第4章 中小都市得調査及び海外事例調査
   1中小都市へのアンケート調査による現状及び問題点
   2ヨーロッパにおける城郭都市(旧市街)と土地利用
 第5章 土地利用の秩序形成などに関する事例調査研究
   1安曇野市の事例
   2鶴岡市の事例
   3三春町の事例
   4松本市の事例
 第6章 地方中小都市のあるべき街づくり・土地利用の検討
   1時代の潮流と地方中小都市を取り巻く課題(地方中小都市のまちづくり・土地利用をめぐる課題)
   2地方中小都市の進むべき方向性と土地利用調整システム(提案)
    ・進むべき方向性(経済的自立、居住環境の改善、スプロールに対する土地利用コントロール、コンパクトシティの実現への超長期ビジョン、過疎地域の対応
    ・土地利用調整システム
   3日光市(旧今市市を中心)をモデルとしたケーススタディ
    ・土地利用の秩序形成への基本方向
    ・街づくりの基本方向
 第7章 結論

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第108回研究会2009年6月4日
「平成合併検証の論点整理」

 報告者 今井 照氏(福島大学)

 ☆合併検証プロジェクト
 1 目的
  「平成の大合併」が日本の地方自治においてどのような歴史的意味をもつのか、ということを明らかにするために、全国的規模で合併検証作業を行う。
  「平成の大合併」については、合併後5年程度を経過したところで、分野別、地域別、主体別に検証作業が広く行われている。しかし、合併全体を貫く研究が不在のため、こららの検証作業が単発的、散発的なものにとどまりがちで、成果を十分に活かしきれないでいる。
  そこで、「平成の大合併」全体の研究基盤を築き、合併検証作業をネットワーク化することで、地方自治研究に資することを目的とする。

 2 課題
  (1)研究基盤形成
   @合併データベース
   A合併資料収集、合併誌作成
  (2)意識調査・聞き取り調査
   @合併検証のための意識調査
   A合併の政治過程、行政過程、合併検証のための聞き取り調査
  (3)「合併・非合併」、「合併前・合併後」比較分析
   @自治体政治動向
   A自治体行財政動向
   B地域社会の動向

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第109回研究会2009年7月2日
「柴田町の合併協議離脱までの経緯」

 報告者 宮城県柴田町議会議員 大坂三男氏、白内恵美子氏、水戸義裕氏、森淑子氏、我妻弘国氏

 何故、柴田町、大河原町、村田町の3町は2度にわたって合併協議をしたのでしょうか。合併が政争の具として使われたという経緯も話されましたが、賛成派、反対派の多数派工作先行で合併是か非かの議論の深化が図られなかった点もあったのではないでしょうか。
 以下、今回報告をいただいた皆さんの合併反対理由について、「柴田町の自立をすすめる議員の会」平成20年10月5日発行チラシ2号から、それぞれ引用します。
 ○大坂三男氏
  「柴田町は過去の借金の返済に苦しんできたが、もともとは税収の多い比較的ゆたかな町です。18年度の自主財源を比較すると柴田町は約55億円、村田町は約18億円、大河原町は約34億円です。柴田町財政は立ち直りつつあります。これからは身の丈にあった町政運営を心がけていけば、住民サービスを向上させることが可能となります。やっと、使えるようになった自分達のお金(財源)は柴田の住民のために使うべきです。」
 ○白内恵美子氏
  「合併すると『国から200億円もらえる』『120億円もらえる』とのうわさがありますが、真っ赤なウソです。絶対にだまされないでください。宮城県市町村課の試算によれば、国からの地方交付税は、合併した場合、10年間で7億4,500万円減額となります。11年目からは1年間で5億3,800万円もの減額です。合併するとお金がもらえるのではなく、逆に大幅に減らされるのです。交付税が減れば財政規模が小さくなり、住民サービスは現在より低下してしまいます。」
 ○水戸義裕氏
  「合併によるメリットは国・県にとって都合が良くても自治体にとっては良いとは限らない。合併は国の自治体リストラ、地方経費の削減が目的。合併したため財源難になった市町が多いのが現実です。合併して何もいいことがないと嘆いている声だけがきこえてきます。何のために、誰のための合併なのでしょうか。地方自治の主役は住民です。国や県からの押し付けでなく、住民自らの考えで地域の将来を決めるべきです。」
 ○ 森淑子氏
  「現在、町では毎年17億円余の借入金返済をしていますが、この金額は平成26年からは約9億円減少するので、様々の施策が可能となります。学校施設の耐震診断で補強が必要とされているのは船中体育館・槻中・船中の3施設です。借入金返済には3年の据置期間がありますので、22年度には船中体育館から順次建て替えに着手する予定です。今年度、学校施設整備基金も創設され5千万円積み立てました。22年3月に合併した場合、建設計画はどうなるでしょうか。」
 ○我妻弘国氏
  「H20年7月の県市町村課発行の資料によると『1人当たりの歳出額で、一番効率のよい人口規模』は15〜20万人となっている。国も行政サービスの種類ごとに最適な人口規模について発表しています。病院経営の対象範囲は20万人。防災事業やごみ焼却施設の建設と運営は10〜30万人。介護サービスの供給は20〜30万人。消防事業は20〜30万人。その他徴税、商工会運営なども同じ程度。3町合併は、人口規模から見ても不適切です。今、あわてて合併に走るのは混乱するだけです。」

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第110回研究会2009年10月1日
「道州制を考える」

 報告者 市川 喜崇氏(同志社大学)

 T序論
 1.道州制とは
   (1)都道府県よりも大きな広域的自治体の設置
   (2)国から権限移譲を求める議論が一般的
   (3)同時に現行の都道府県事務の多くを市町村へ移譲する議論が一般的
 2.道州制の様々なタイプ
   (1)道州の性格
   (2)自治体の階層構造
 3.道州制の目的とされているもの
   (1)東京一極集中の是正
   (2)地方分権(国からの権限移譲・職員の移管)
   (3)行政減量(都道府県数の減少、国との機能の重複の解消)
 4.最近の流れ
   (1)1990年代初頭に一時興隆
   (2)2000年分権改革実現と平成の大合併の進展を受けて、再び活性化
   (3)第28次地方制度調査会答申(2006年2月末)〜「道州制の導入が適当」
   (4)全国知事会会議(松江)で道州制をめぐり激論(2006年7月)〜結論先送り
   (5)安倍内閣発足(2006年9月)後に活発化

 U道州制導入の是非を考えるための諸論点
 5.東京一極集中是正か旧県庁所在地の衰退か
   (1)道州=欧州の中規模国家と同等な規模
   (2)現実に起きるのは、道州内の一極集中化の進展ではないか
 6.平成の市町村大合併は道州制を可能にしたか
   (1)まだまだ多い小規模市町村
   (2)道州制の論拠のひとつが崩れる
   (3)それでも道州制をやろうとすると…
 7.都道府県は狭小か
   (1)広域行政(区域を超える広域需要と課題への対応)の比較〜市町村と都道府県
   (2)都道府県を越える連携の例
   (3)北東北3県の広域連携の事例(県外事務所の共同設置、3県合同地方債)
   (4)現状で、困っているわけではない
 8.超大規模自治体の出現をどう考えるか
 9.都道府県は「空洞化」しているか
   (1)平成の大合併後も、都道府県の補完・支援機能は(減少したが)依然として必要
   (2)政令市・中核市・特例市による「空洞化」論
   (3)保健・福祉事務の市町村への移譲が進んだ(進みつつある)
 10.世論は?
 11.国政にたいする閉塞感?

 V道州制を導入する場合の諸論点(仮に導入するとすれば…)
 12.二元代表制か議院内閣制か
   (1)知事の権力
   (2)ポピュリズムを心配する議論
   (3)議院内閣制にしたら、知事のリーダーシップが阻害されないか
 13.道州の財政調整をどうするか
   (1)道州制=財政的自立という議論からすれば、財政調整(地方交付税)は廃止すべき
   (2)しかし、財政調整なしでやっていけるのは、関東、近畿、東海あたりまでだろう
 14.国の権限の何を移譲するか
   (1)何でもかんでも道州に移管すればよいというものではない
   (2)都道府県と国が重複するものは積極的に道州へ
 15.区割りの問題〜相当困難な作業となるだろう
   (1)問題なく区割りできそうなのは、北海道、近畿、九州くらい?
   (2)個別の問題

 Wおわりに
 16.私自身の立場〜消極的
   (1)現在の市町村規模では道州制は困難
   (2)東京一極集中是正にはならない
   (3)いわゆる「効率的投資阻害論」について
   (4)「未知との遭遇」
   (5)「分権のため道州制導入が必要」という議論について
 17.今後の見通し?
   (1)自民と民主のマニフェスト
   (2)道州制積極派議員の選挙結果
   (3)自民党政権の終焉(=族議員政治の終焉)
   (4)原口総務大臣
   (5)協議の場の制度化について

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第111回研究会2009年11月5日
「B級グルメが地方を救う」

 報告者 田村 秀氏(新潟大学)

 1 はじめに
 2 B級グルメによるまちづくり
    ブームとなったご当地(B級)グルメ
   (2)ー1 宇都宮餃子
   (2)−2 讃岐うどん
   (2)−3 工場見学と食による観光振興
 3 B級グルメを科学する
 4 B級グルメの課題と展望
 5 最後に福島は?

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第112回研究会2009年12月3日
「韓国の地方自治」

 報告者 申 龍徹氏(法政大学)

 1 歴史
 (1)前近代的な地方制度
 (2)近代的意味における地方制度の形成
 (3)米軍政(1945〜1948)
 (4)地方自治法(1949)の制定

 2 韓国憲法第8章「地方自治」(第117条・第118条)及び地方自治法
  ■セマウル(新しい村)運動
  ■斑常会
  ■地方自治法の構成
  ■地方自治団体の事務(法第9条)
  ■地方自治団体の事務区分(○市・道事務 ○市・郡・区
  ■地方分権の流れ
  ■住民の権利保障
  ■住民参加制度の運用
  ■地方議会の専門性強化
  ■済州島特別自治道の推進
  ■住民自治センター
  ■地方分権促進特別法の分権課題
  ■行政区域の統合問題
  ■韓国の地方自治の特徴
  (1)地方自治制度の運用期:多様な問題発生→経験共有(日本制度の紹介)、著作豊富
  (2)地方自治の意味合いの相違:手段性:国家競争力優先・南北対立
  (3)集権的な仕組み(法第8章国家の指導監督)
  (4)民主制<能率性、儀式中心文化→制度的規律と実態の乖離を当然視
  (5)政治力の影響課題(大統領制の特徴)

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第113回研究会2010年1月14日
「これからの地方自治体、自治体職員を考える」

 報告者 佐藤 敏明(福島市役所)

 T はじめに
  ◆これまでの研究会で取り上げた主なテーマ
   ・自治体政策研究会で学んだこと

 U これまでの地方自治体、そして自治体職員
  1.時代認識 
   ・現在の不況は1929年の世界恐慌を超えるもの 
   ・2009年衆議院総選挙結果の意味するもの 
   ・これからの「国民生活の保障」をどのように考えていくか 
  2.地方自治体の現状 
   ・多くの自治体の実態 
   ・福島県の現状
  3.自治体職員は
   ・福島県の自治体職員の現状

 V これからの地方自治体、そして自治体職員は
  1.地方自治制度の改革
   ・地方自治制度改革の現状 
   ・自治基本条例等の動き 
   ・議会改革の動き(議会基本条例の制定) 
   ・自治体組織改革論 
   ・今後地方自治法改正を視野に、議院内閣制を加味した地方自治体のあり方が模索されるべき 
   ・新しい「生活保障論」に基づく中央政府、基礎自治体、広域自治体の役割分担と連携 
  2.地域主権(?)を考える
   ・「地域力」をめぐって
  3.従属、恩顧=庇護主義的垂直型ネットワークから
    互酬性の規範と市民的積極参加のネットワークによる水平的な協調精神に基づくソーシャルキャピタル形成へ
  4.これからの自治体職員は
   ・時代は時々刻々と変化している。普段の研究を怠らない。
   ・特に自分の自治体をよく知るということ
   ・自治体職員は地域住民と共に
   ・職場の雰囲気と合わないと感じて生きていくことも、ある意味では大事

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