学習会の歩み PARTV

このページは、第46回学習会以後の学習内容を紹介するページです。

○第46回 2000年11月18日「土」 「不平等の再検討ー潜在能力と自由」(佐藤敏明)
○第47回 2001年1月27日「土」 「中心市街地活性化をめぐる動向と課題ー福島市を中心にー」(今西一男先生)
○第48回 2001年3月3日「土」 「自治体職員評価(勤務評定)の現状と今後」(佐藤敏明)
○第49回 2001年5月12日「土」 「体験的ワークショップ論」(永幡幸司先生)
○第50回 2001年7月14日「土」 「地方分権推進委員会最終報告について」(佐藤敏明)
○第51回 2001年9月29日「土」 「自治基本条例とは」(佐藤敏明)
○第52回 2001年10月27日「土」 「自治基本条例PARTUー会津坂下町における取組ー」
○第53回 2001年12月5日「水」 「松下圭一さんを囲む懇談会」
○第54回 2002年2月16日「土」 「自治体の直面する戦略的課題」(佐藤敏明)

第46回学習会2000年11月18日
「不平等の再検討ー潜在能力と自由」

2000・11・18 佐藤
 1 我々は、NPOと行政の関係を新たな公共性の視点から考えてみた。
   公共事業は、今その「公共」性が問い直されている。
   そしてNPOの出現により、「公共性」は行政の独占物ではなくなっている。
 2 加えて、新地方自治法、介護保険法等の施行によりこれまでの社会システムの再検討がなされてきている。
 3 これまでの社会システムとはどんな社会だったのか?
   経済成長優先のシステム=「所得の平等」の実現?
 4 「豊かな国」は真の意味で「豊かに」なっているか?
   「豊かさ」=「所得の増大」
 5 「不平等の再検討」が必要
 『不平等の再検討ー潜在能力と自由』
<はじめに>
 この著のキーワードを押さえておく必要がある。
「福祉(Well being=a state of being healthy,happy)」とは
 福祉政策や福祉サービスを指すものではなく「暮らしぶりの良さ」を表す言葉である。
「機能(Functionings=)」とは、人の福祉を表す様々な状態や行動を指す。
即ち、最も基本的なもの(栄養状態が良好なこと、回避できる病気にかからないことや早死にしないことなど)から、非常に複雑で洗練されてもの(自尊心を持っていられることや社会生活に参加できることなど)まで含む幅の広い概念である。
潜在能力(Capability=the ability or power to do sth,
      Capabilities=the qualities which sb has for doing things but which may not have been fully developed)」とは、「機能」の集合として表される。
  どの機能を選び、どのようなウェイトを与えるかは、様々な「機能の組み合わせ」の達成を可能にする潜在能力の評価に影響する。
「貧困」とは、必要最低限の基礎的機能を実現する潜在能力さえ欠いている状態
「基本財」とは、所得、富、機会、自尊心の社会的基礎など
 センが「機能」に注目するのは、人の福祉を直接表すからである。
 これに対し所得、効用、資源などは人の福祉の手段や結果を表すものであり、人の福祉そのものとの間にギャップを生じる。
「潜在能力」は、ある人が選択することのできる「機能」の集合であり、これが大きいほど価値ある選択肢が多くなり、行動の自由も広がる。この意味で「潜在能力」は「自由」と密接に結びついた概念である。
序章「問題とテーマ」から
 1 多様な人間性
 2 焦点の多様性
   平等は、ある人の特定の側面(例えば、所得、富、幸福、自由、機会、権利、ニーズの充足など)を他の人の同じ側面と比較することによって判断することができる。
 3 一致と不一致
 4 多様な平等主義
5 妥当性と平等
 6 成果と自由
   不平等評価のひとつの側面は、「成果」と「成果を達成するための自由」との区別である。
 7 機能と潜在能力
   <はじめに>を参照のこと。
    個人が理性的に評価している機能を達成する潜在能力は、社会のあり方を評価する一般的なアプローチを提起する。
 8 「有効な自由」の評価
   「達成された成果」の水準だけではなく「達成するための自由」に注目することにより、成果の評価とそれを達成する自由との間に存在する重要な問題が浮かび上がってくる。
   自由という概念自体が持つ複数性の問題に行き着くだけでなく、成果の観点と自由の観点との乖離についても重要な意味を含んでいる。
   ある人にとって自由は多いほど不利になるかもしれないという可能性がある。
 9 潜在能力と効用の違い
   効用による評価では困窮の程度は相当に覆い隠されてしまうかもしれない。
   効用アプローチとは対照的に、潜在能力アプローチでは、困苦を強いられている人々が基本的な機能を達成する自由を欠いているということを直接説明することができる。
10 潜在能力と機会ー平等と効率性
11 ロールズの視点との違い
   同一の基本財を持っている二人の人間でも、善(望ましいもの)と考えること(それは両者の間一致する場合もあるし、そうでない場合もある)を遂行する自由は全く異なっているということも起こりうる。基本財によって平等(さらに言えば効率性)を評価することは、自由の程度の評価よりも自由の手段を優先することになる。
12 経済的不平等と貧困
   機能と潜在能力という視点は、経済的不平等を評価する際に新しいアプローチを提供する。「不平等の理論」は「貧困評価の理論」と密接な関係にある。
13 階級、ジェンダー、その他のカテゴリー
   潜在能力の視点は、固定化してしまった困窮状態に希望や期待を順応させ効用水準に歪みを生じさせている状況を効用アプローチよりも敏感に捉えることができる。
   自由の手段に注目するのではなく自由を直接取り扱うという点で、より公正である。
   このような違いは、階級やジェンダーやその他の社会的区分の間に見られる不平等や不公正を評価する上で重要である。
14 平等、効率性、インセンティブ
   平等は、他の要件(特に全体的な目的や全体の効率性)との関連において見ることなしには適切に評価することはできない。
15 分析手法と本質的内容
 しばしば目的と手段の混同がおこる。
「成功した開発の特徴づけとして、実質所得の増大と経済成長がしばしばあげられるが、経済的繁栄が人間生活を豊かにすることと1対1で対応しているだろうか」とA・センは問う。
capability approach(潜在能力アプローチ)=「社会変化から生ずる人間生活の豊かさによって、社会変化を評価する」方法と特徴づけられる。
 概念ルーツ
   アリストテレス(「ニコマコス倫理学」)
アダム・スミス
カール・マルクス
 
 直接の動機
 1979年ターナー講演「何の平等か?」
   潜在能力アプローチは、個人が選択できる生き方の幅、すなわち「自由」を広げることを福祉政策の最重要課題とするアプローチということができる。
   センは、必要最低限の基礎的機能を実現する潜在能力さえ欠いている状態を貧困状態と見なす。

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第47回学習会2001年1月27日(土)
「中心市街地活性化をめぐる動向と課題ー福島市を中心にー」

 講師 今西 一男先生(福島大学行政社会学部助教授)

1 はじめにーなぜ中心市街地活性化かー
 1.1 一人ひとりが問い直すべきこと
  ポイント・中心市街地活性化を自らの問題としてとらえる
       ・特にライフスタイルのレベルまで振り返って考える
       ・本当に中心市街地活性化は必要なのか考える
 1.2 矛盾を深めてきた都市政策・商業政策
  ポイント・「商店街VS大型店」という基本問題と商業政策
       ・「計画的市街化」がもたらした都市構造の崩壊と都市政策
       ・今日の新たな問題に混迷する都市政策・商業政策
 1.3 総合的な「まちづくり」の問題としての中心市街地活性化
  ポイント・活性化に向けた問題意識(果たして誰のための活性化なのか)
       ・活性化のための手段(何が有効性を持った活性化施策か)
       ・活性化のためのプロセス(どのように活性化を進めるのか)

2 中心市街地活性化をめぐる動向
 2.1 中心市街地活性化三法は使えるか? 
  ポイント・国土交通省グループ主導の中心市街地活性化
       ・大型店の立地の自由化につながりかねない「大店立地法」
       ・市町村は「都市計画法」一部改正による特別用途地区を使えるか
 2.2 中心市街地活性化法が提示する中心市街地活性化の枠組み
  ポイント・注目される商業政策を進めていく「中心市街地活性化法」
       ・3段階からなる中心市街地活性化法に基づく活性化の手順
       ・極めて高い中心市街地活性化基本計画への関心
 2.3 カギを握るTMO
  ポイント・TMOの主な機能は企画調整と事業の推進
       ・TMOになる機関には四つの種類がある
       ・事業の推進をめぐってわかりづらいTMOの体制

3 事例をとおして考える中心市街地活性化をめぐる論点
 3.1 問題意識をめぐってー「つくる」ことが活性化なのかー
  ポイント・中心市街地のエリア設定に注目する
       ・大きなエリア設定のなかで何でも「つくる」ことを指向
       ・問題意識として果たして「つくる」ばかりの活性化でよいのか
 3.2 手段をめぐってーハードかソフトかー
  ポイント・中心市街地活性化の最大の論点はハード偏重
       ・市街地再開発事業はTMOを介して保留床処分が行われることも
       ・都市再生土地区画整理事業の適用も目立つ
 3.3 プロセスをめぐってー参画と組織ー
  ポイント・総花的な活性化になりがちなだけに市民のチェックが不可欠
       ・事例ではどのようなプロセスに関する論点があるのか
       ・事業の実効性をめぐり住民さらには市民の計画への参画が必要

4 おわりにー問われる内発的な「まちづくり」へのとりくみー
  ポイント・市民一人ひとりが実践すべき活性化のための構造の転換
       ・「活性化」を大義としないために
       ・地域から立ち上がる内発的な活性化こそ議論に値する

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第48回学習会2001年3月3日
「自治体職員評価(勤務評定)の現状と今後」

2000・11・18 佐藤

1 自治体職員評価(勤務評定)の現状

 ○自治体職員の任用原則
  ・平等扱いの原則(地方公務員法§13)
  ・成績主義の原則(地方公務員法§40−T)
 ○自治体の実施状況
  ・Aタイプ(勤務評定制度なし)
  ・Bタイプ(制度あり、ただし機能はしていない。)
  ・Cタイプ(制度あり、昇任、昇格に反映)
  ・Dタイプ(制度あり、昇任、昇格、業績給に反映)
 ○勤務評定の評価方法
  ・勤務評定の目的
  ・勤務評定の対象項目
   ・業績(成績評価)
   ・能力(職務遂行能力)
   ・態度(職務態度)
  ・評定基準(相対評価と絶対評価)

2 勤務評定の問題点

 ○最近の自治体の傾向
  ・成果主義、目標管理型勤務評定
  ・業績給の実施
  ・自己申告制
  ・降職降格制の導入
  ・逆査定(部下が上司を評価)
 ○勤務評定に対する疑問
  ・勤務評定の根幹である評定基準の設定は可能か、そして公正な評定は可能か
  ・勤務評定結果と業績給を合理的に関連付けることは可能か
  ・業績給は本当に職員のインセンティブになるのか
 ○実施に際しては以下の点を前提にすべき
  ・標的基準の明確化、公開
  ・公正な評定システムの確保
  ・政治的評価の排除
  ・評価結果の本人開示

3 勤務評定をめぐる今後の動向とあるべき職員評価は如何?

 ○人事院勧告、各種調査会等からの提言
  ・地方公務員制度調査会答申等
 ○今後のあるべき自治体職員評価は如何?
  ・アメリカ連邦政府職員に適用する人事管理原則(Merit system principles by Office Personal Management)

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第49回学習会2001年5月12日
「体験的ワークショップ論」

 講師 永幡 幸司先生(福島大学行政社会学部助教授)

1 当日は「ワークショップをどう思うか」と言うテーマで、参加者全員がワークショップを体験しました。

2 ワークショップには様々な種類のワークショップがあり、その種類ごとに方法が異なること。
  またワークショップは民主的な合意形成のひとつの手法なので、そのやり方には色々な方法があること。
  等々 詳細は追って報告します。

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第50回学習会2001年7月14日
「地方分権推進委員会最終報告について」

2001・7・14 佐藤

  自治体(特に市町村)の自律的政策確立に向けての課題を考える

1 最終報告の評価
 ・委員会から自治体関係者、住民への訴え
   1)自治能力の実証(事務事業の執行方法、執行体制の総点検)
   2)自己決定、自己責任の覚悟で構造改革に先導的に取り組んでほしい
   3)その中で市町村の自主的合併の推進は有力な選択肢
   4)男女共同参画の実現なしに分権型社会の創造は完成しない
   5)住民へーこれまで以上の政策形成への主体的参画と公共心の覚醒
 ・地方税財源確保の視点(第2次分権改革)
   1)地方の歳出規模と地方税収との乖離の縮小
   2)住民の受益と負担の対応関係の明確化
   3)国から地方への税源移譲にあたっての歳入中立原則
   4)歳入面及び歳出面の自由度を増して行くことが不可欠
 ・残された改革課題(第3次分権改革)
   1)地方財政秩序の再構築
   2)自治体の事務に対する義務づけ・枠付け等の緩和
   3)地方分権、市町村合併を踏まえた新たに地方自治の仕組みに関する検討
   4)事務事業の移譲ー「補完性の原理」を踏まえた国・県・市町村の事務配分ー
   5)制度規制の緩和と住民自治の拡充方策ー自治基本条例に基づく組織運営ー
   6)「地方自治の本旨」の具体化ー憲法改正をも示唆ー

2 地方自治体側の改革への動き
 ・自治基本条例の制定・自治基本法
 ・自治体の組織形態
   議会のあり方
   二元代表制の見直し
   三春町の取組(教育長公募、シティマネージャー制の導入)
 ・税財政問題
   外形標準課税
   新税導入
 ・自治体の政策領域
   「補完性の原理」
 ・政策形成への住民参加のあり方
   NPO(非営利組織)の育成

第51回学習会2001年9月29日
「自治基本条例とは」

2001・9・29 佐藤

 今回の学習会では自治基本条例そのものにはいる前に各自治体での自治基本条例についての認識度がどうなっているかについて話し合いました。
 予想通り福島県内ではまだまだ話題にもなっていない状況にあるようですが、松野先生から会津坂下町が今自治基本条例について町役場と住民の間で勉強を始めているという情報が話されました。
 そこで次回以降の学習会については、取り敢えず県内で先駆的にこの自治基本条例を取り組んでいる会津坂下町の状況を勉強させてもらおうということになりました。
 日程については、追って会津坂下町と日程調整をしてお知らせします。


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第52回学習会2001年10月27日(土)
「自治基本条例PARTUー会津坂下町における取組ー」

 講師 武藤忠右衛門氏(会津坂下町総合政策課課長補佐)

1 経過
 平成11年11月会津坂下町振興計画審議会を開催し、
 @誰もが共感できる計画であること
 A自主、自立の精神にたった計画であること
 B住民の声をできるだけ反映することを盛り込んだ内容で第4次会津坂下町振興計画策定方針を決定した。
 手段として町民の公募と町職員による49名の「まちづくり2001委員会」を組織し、25回にわたる策定作業と4回の講演を行い平成12年11月に策定素案を住民に報告した。
 これら一連の行動の中で生かされた、まちづくり活動への住民参加をどう保障するか、さらに住民意識を醸成していくか検討された。

2 ねらい(目的)
 地方分権一括法施行後の自治体の政策形成過程での住民需要を的確に把握することと、振興計画の策定過程で芽生えた住民参加と自立の精神を育てるため「まちづくりにおける住民参加のしくみやまちづくりにおける情報公開へのしくみ」を定める基本条例を定めることとした。

3 組織
 本年6月に庁内に「まつづくり基本条例検討会」を14名で設置、同じく第4次振興計画のまちづくり活動へ積極的に参加する母体として、新たに「まちづくり委員会」を公募し、「協働のしくみづくり部会」で検討することとなった。
 現在はまちづくり基本条例検討会と協働のしくみづくり部会の基本条例策定班8名において並行して検討中。

4 基本理念と3原則
 協働のまちづくりによる住民自治の実現のため、町、住民、企業の相互信頼と協力するしくみを明確にする。
 まちづくりの各分野における熟度により本条例の改正や関係条例の整備をすすめる。
 協働のまちづくりをすすめる3の原則として、「住民参加」、「情報の共有」、「協働」とし、町の役割と責務、住民の権利と責務を明確にすることを基本とする。

5 会津坂下町自治基本条例案概要
 1)前文
 2)第1章総則 目的(第1条) 定義(第2条) 基本原則(第3条)
 3)第2章町民参画の原則 
  第1節町民の権利と責務(第4条)
  第2節町の役割と責務(町長及び執行機関の責務(第5条)、審議会等への参加(第6条)、人材育成と支援(第7条))
  第3節町民投票(町民投票制度(第8条))
 4)第3章情報共有の原則(第9条(推進)、第10条(収集及び管理)、第11条(公報・公聴機能等の充実)、第12条(個人情報の保護))
 5)第4章協働の原則 
  第1節町の役割と責務(第13条(説明応答の義務)、第14条(行政手続きの運用))
  第2節協働によるまちづくりの推進(第15条(民意の反映)、第16条(計画策定時等における原則)、第17条(重要な計画の策定手続き))
  第3節コミュニティと連携(第18条(定義)、第19条、第20条(交流と連携)
  第4節議会の役割(第21条)
 6)第5章補足(第22条、第23条)

6 課題
 住民活動等は、趣味の領域が大半であり、町政への参加や地域づくり活動の事例は少なく、熟度が浅い。どう精神を入れていくか。
 行政として、政策形成時に住民の声を反映させることが、その後の行政運営上極めて有効であることが理解されていない。
 また、予想される市町村合併後どのようにこれらの精神を継承、発展させられるか。

7 今後の予定
 会津坂下町では、この条例案について今後の検討を経て、素案ができた段階で住民に公表し、意見を聞き、最終案をまとめ3月議会へ提案する予定です。
 今後の会津坂下町の取組に注目したいと思います。

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第53回学習会2001年12月5日(水)
「松下圭一さんを囲む懇談会」

 講師 松下圭一氏(法政大学名誉教授)

 第53回学習会として企画した「松下圭一さんを囲む懇談会」は総勢17名(本会からは8名)の皆さんに出席していただきました。
 講演前の短い時間ということもあって、一問一答形式で懇談会を進めましたが、松下先生の気さくなお人柄もあって、楽しい雰囲気の中にも今後の自治体、特に市町村のあり方について示唆に富むお話を聞くことができました。
 主な内容は次の通りです。
 1)現在進められている市町村合併について
  ・総務省はあまり市町村合併には本気ではない。
  ・合併によってかえって非効率さが増すのではないか。
  ・合併を阻害する意外な要因としてコンピュターの機種問題がある。
  ・人口規模4千人以下の町村は地方交付税の優遇措置がカットされるので今後の運営は厳しくなる。
 2)自治・分権時代に求められる自治体職員のスキル
  ・書記、技術型からプランナー、プロデューサー型へ
 3)「公共性」の基準については各自治体で決めればよい。
  ・シビルミニマムの議論は情報公開が前提。
  ・公民館なども農村型社会の産物だ。都市型社会に対応すべき。
 4)政策評価について
  ・三重県方式は仕事を増やすだけ。
  ・もう少し政策を細分化して評価をすべき。
 最後に松下先生から本会に「データに基づいた研究を進めてほしい」というアドバイスをいただきました。
 今後の本会の活動に生かしていきたいと思います。

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第54回学習会2002年2月16日(土)
「自治体の直面する戦略的課題」


1第1次分権改革の成果と限界
 1)成果
  ・国の関与の縮小
   関与の類型
    @通達等による事務事業の執行方法に対する関与
    A通達等による事務事業の執行体制に対する関与
    B補助事業に係る補助要綱、補助要領等による関与
    @………大きな成果(機関委任事務の廃止)
    A………半ばの成果
    B………見るべき成果なし
 2)限界(その背景)
  ・改革に対する抵抗
   @………官僚
   A………官僚+業界+族議員
   B………官僚+政界+業界
  ・自治体の総意形成に足並みの乱れが見られた。

2 第2次分権改革の課題
 1)地方税財源の確保方策
  ・財政構造改革との関連(いつから着手するか不明確)
   2001・6・26経済財政運営の基本方針(骨太の方針)
   「国と地方の役割分担の見直しを踏まえつつ、国庫補助負担金の整理合理化や地方交付税のあり方の見直しとともに、税源移譲を含め国と地方の税源配分について根本から見直しそのあり方を検討する。」
  ・地方分権推進委員会の意図
   @自治体の税制面の自己決定・自己責任の拡充や地域住民の受益と負担の関係の明確化の観点から自治体の歳出規模と地方税収入の乖離を縮小すること。
   Aこの方策を検討するにあたって国と地方を通じて国民の租税負担率には制度的変更を加えないこと。
   B地域ごとの地方税収入の偏在は現在以上に大きな問題になるので、財政力の自治体間格差を是正するという地方交付税制度の役割は従前以上に重要になる。
   ーー奨励的国庫補助金、義務的経費の国庫負担金の削減、地方交付税の基準財政需要額の算定基準の見直し
  ・財政構造改革の推進体制

3 第3次分権改革の課題
 1)法令による事務事業の義務づけと枠づけの大幅緩和
   ・介護保険行政等・条例制定権の活用
 2)「補完性の原理」に基づく事務事業の移譲
   ・市町村優先・ナショナルミニマム
 3)政府体系の再編成
   ・市町村合併・連邦制(道州制)・一国多制度(イギリス devolution The Scottish Compact 北欧 free commune)
 4)制度規制の緩和と住民自治の拡充
   ・地方自治基本法・自治基本条例

4 自治体の課題
  「自治体はこの機会に国への依存心を払拭し、自己決定、自己責任の時代にふさわしい自治の道を真剣に模索してほしい。
   そのためには、国に向けていた目を地域住民に向け直し、地方自治の運営の透明性を高め、地域住民に対する説明責任を果たしつつ、行政サービスの取捨選択の方途を地域住民に問いかけ、その判断に基づいて、歳出の徹底した削減を図るという地道な努力の積み重ね必要になる。」
  (岩波講座「自治体の構想」第1巻課題「分権改革の到達点と課題」西尾勝から)
 1)説明責任と情報開示

   「批判勢力のない統治権力は、いともたやすく、説明責任と情報開示の欠如を当然視しがちである。」
   「経済危機の発生には、政府の非民主主義的な性格が深く関わっている。」
    (いずれもアマルティア・セン「貧困の克服」から)
 2)市民参加の保障 政策選択を議論する公共の場を保障する。