ソノラマ新戦史1 |
航空戦史シリーズは100冊をもって、この新戦史シリーズへ移行しました。といって も中身は変わる訳ではないのですが。この巻の表紙の折り返りには<新戦記シリーズ>いよ いよスタート!!、という紹介文があったりします。 さて、記念すべき第一冊はジェット機時代の戦闘機パイロットの空戦について、いろい ろとまとめたものです。ジェット機空戦(空対地技術含む)の解説と、戦闘機の技術的な 紹介、ベトナムを始めとする戦例が一冊にまとめられています。ジェット機空戦というの は、実際に体験したものでないとわからない点が多いと思いますが、できるだけ分かり易 く、かつ詳しく紹介されています。 この本一冊ではなかなかビシッとくるテーマではないと思いますが、ベトナム空戦もの なんかを読んでいるときに専門用語でわからない点や、詳しく紹介されていなかった場合 なかなか重宝する一冊です。 |
ソノラマ新戦史2 |
分かり易く言えば、「メンフィズ・ベル」、ヨーロッパ戦線のB−17の激闘の記録 です。空戦小説ですが、B−17爆撃機隊のメンバーが何を考え、どう戦ったのかが、 分かり易く描かれています。 舞台は米重爆隊の悪夢となった街、シュバインフルト爆撃行です。物語自体はフィク ションですが、当時の爆撃機隊がどういったものであったかが、生き生きと描写され、 読み応えは結構あります。翻訳物特有の読みづらさというものはありますが、それは ちょっと辛抱すれば、なかなか面白い小説に仕上がっています。 1943年の米重爆隊は昼間精密爆撃戦法を取っていますた。これはB−17という 優秀な爆撃機と装備されたノルデン照準機の精度の良さ、それに補充を補う生産性によ るものですが、出撃のたびに大損害を受け、各爆撃戦隊はイギリスに進出して3ヶ月と 経たないうちに、最初のメンバーのほとんどを失うような消耗戦を演じていました。 そして、舞台となるシュバインフルトの作戦を最後に1943年の昼間爆撃は中止され P−51が援護につく1944年まで昼間戦略爆撃は休止してしまいました。 日本のソロモンでの激闘は、航空消耗戦の代名詞のように言われていますが、1943 のヨーロッパは、それをさらに上回る死闘が繰り広げられていたのです。あまり、日本 ではこの戦いを描いた書物が少ないのですが、興味ある方はその雰囲気をつかむのに 最適な本だとおもいます。 |
ソノラマ新戦史6 |
僕の知る限り、日本で最も素晴らしいアメリカ魚雷艇史の1冊です。太平洋戦争開戦か
ら終戦までの全期間に渡って、太平洋で暴れまわったアメリカ魚雷艇について、その戦歴
を余すところなく、まとめてあります。
アメリカ魚雷艇隊は、単に対艦戦のみばかりではなく、船団護衛、沿岸偵察任務、特殊
部隊の輸送等、アメリカ海軍の尖兵として過酷な任務を達成しました。それだけに決して
楽な戦いを続けていた訳ではなく、日本の駆逐艦や航空機に多数が撃沈されています。 手ごろな値段で「アメリカ魚雷艇史」を学びたい方には最適な一冊です。少し手に入りに くい書ですが、それだけ読み応えもあるといえます。 |
ソノラマ新戦史8 |
第一次世界大戦からフォークランド紛争までの39隻の艦艇の最後をまとめた書です。
このシリーズはこのあと4冊出ていますが、最初の一冊ということもあって、比較的有
名な艦艇を中心にまとめられています。 |
ソノラマ新戦史11 |
三菱が零戦の次に送り込んだ日本海軍初の局地戦闘機が「雷電」です。万能機であ った零戦はその完成度の高さと操縦性の良さから、海軍搭乗員に格闘戦思考を決定付 けました。これが速度性重視の迎撃機であった雷電に対して不遇の半生を与えること になります。雷電が輝いたのはB29によって本土が焼き尽くされようとした時、日 本海軍が消滅する直前のことでした。 発動機の開発能力に劣る日本で、大馬力の発動機は爆撃機用の大型のものしか用意 できませんでした。これが雷電の特徴であり宿唖であった、太い胴体と絞り込んだカ ウリングという特徴ある機体を生み出したのです。速度性と上昇力、強武装という迎 撃専用機として開発された雷電は、零戦がその限界を暴露した対大型機戦闘において その能力を発揮し、本土防空の主力となりました。 本書は局地戦開発の経緯、困難だった開発、発動機とプロペラ軸、油圧系の不調に 泣かされながらも前線に出撃し、本土上空で排気タービンを装備できないためがゆえ の超高空戦の苦闘で終えた雷電の全ての活動が記録されています。渡辺洋二さんは多 くのパイロットや整備員、開発者に取材を行っており、その豊富な聞き込み調査が本 書の中身を深いものにしています。また本土防空のみならず、南西方面の油田防空部 隊の活動にも多くの紙面を割いている点も、本書の価値を高めている点の一つだと思 います。 雷電自体はその機体性能を活かす状況に恵まれませんでした。発動機、排気タービ ン、プロペラ、油圧、電送系といった日本の技術力の低さが原因の装備の貧弱さが最 後まで祟ることになります。しかし、全力を尽くして防空戦に出撃した雷電とそのパ イロット達の戦いぶりは決して恥ずかしいものではなく、重爆キラーとしてその名を 轟かすこととなります。 |
ソノラマ新戦史12 |
原題は「アイアンボトム・サウンド」という有名な戦記です。イギリス海軍の将校 の視点から、初期のソロモン海戦について見ています。第一次ソロモン海戦から、比 叡の撃沈、タサファロング海戦あたりまでが、戦場で艦長や連絡士官としての立場か ら描かれています。本書は戦史シリーズの多くの海戦記の中でも、恐らく屈指の一冊 です。一度ご覧になれば理解できると思いますが、迫力ある海戦シーンのオンパレー ドです。1942年のソロモン諸島は海戦史上もっとも激しい戦いの繰り広げられた 舞台の一つですが、その場にいるような臨場感とともに海戦のあらましを、連合軍の 視点からとらえることができます。 第一次ソロモン海戦は日本側からの視点でみると、果敢な奇襲による圧倒的な勝利 ということになりますが、連合軍側から見ると錯誤と誤解の連続の結果というのがわ かります。また夜戦での日本水雷戦隊の魚雷戦の脅威や、闇夜のレーダー戦と不期遭 遇による激しい砲撃戦、連合軍艦隊の夜戦戦術等が海戦記として荒々しいタッチで描 写されています。連合側から見たソロモン海戦史は日本では邦訳の数が少ないので、 そういった観点からも価値ある一冊といえます。僕自身戦史シリーズではお気に入り の一冊です。興味ある方は是非お読みください。 |
ソノラマ新戦史14 |
史上最大の戦車戦と言われている1943年のクルスク会戦について、時系列順に 各種の記事や命令、部隊状況等をまとめていったものです。一貫性のある文章ではな いので非常に読みづらいのですが、中身は相当深いものがあります。独ソ両軍の視点 から部分部分の情報を集めてきて会戦全体の情報を捉えようとしている書なので、か なり読み込まないと何が書いてあるのかわからないほど、文章としては整合性がとれ ていません。ですが逆に個々の記事については重みのあるものばかりなので、クルス ク会戦の資料としては1級のものであるということは断言できます。 本書の構成は、最初にクルスクという戦場の地形、主要な将軍達のプロフィールが 挙げられた後、開戦準備、ドイツ軍の攻勢開始、両軍激突、ソ連軍の逆襲の4章とな っており、それぞれは細分化された関連記事で構成されています。個々の記事という のは両軍の作戦日誌や従軍記者の記事、日付順に両軍の司令部や部隊の動きをクルス クという戦場を中心にマクロ的にとらえてます。
クルスク戦はイタリアに連合軍が上陸してきたためにドイツ側が中止して終りとな
ったのですが、実質的にはドイツ機甲戦力を消耗させることに成功したソ連軍の勝利
といえます。これ以降、ソ連機甲部隊に対してドイツ軍が全面攻勢に出ることはあり
ませんでした。またクルスク戦はドイツ側が新型戦車を中心とした部隊の質で戦おう
としたのに対し、ソ連側は何十もの防御陣地と圧倒的な大兵力で対抗しました。結果
はドイツ側の息切れといった状況になってしまったのですが、両軍の機甲戦を最も端
的にあらわす戦場ともいえます。 |
ソノラマ新戦史15 |
本書は未入手なので、新装版戦記文庫の 紹介のほうを宜しくお願いします。 |
ソノラマ新戦史16 |
「入門・海上自衛隊」とも呼ぶべき一冊です。海上自衛隊の発足からの歴史、装備
の調達と開発の状況、1980年代までの海自を取り巻く防衛状況と、その対応策と
しての防衛戦力についてまとめてあります。 本書の使えるところは各年代の護衛艦隊の編成と各級指揮官が紹介されているとこ ろです。また海上自衛隊が経験した救難 ミッションもほぼ全て掲載されています。 また、戦後のソ連海軍の動きも記述されており、自衛隊がソ連の軍事的な動きに左右 されながら、行動していることも理解できます。 発刊が89年というまだソ連が元気だった時期の書なので、今の状況には対応して いるものではありませんが、海上自衛隊の歴史書としては一番まとまっている書では ないでしょうか。 |
ソノラマ新戦史18 |
「日本はどのくらい連合国の潜水艦を沈めたのだろう?」という疑問を解決してく れる本です。ちなみに僕が初めて買った戦史シリーズの本でもあります。そうかあ、 買い始めてから10年になるんだなあ(しみじみ)。 個人的な感傷はおいといて、非常に資料価値に溢れた良い一冊です。連合軍の沈め られた潜水艦、破損した潜水艦が「何時、何処で、日本側の何に、どのような状況で」 攻撃されたかが分かり易く紹介されています。日本側の海上護衛戦の報告では景気良く 「潜水艦撃沈」の文字がおどっていますが、どこの国でも潜水艦に対する戦果は過大に なるものです。そこで、この書は本当はどのくらいの戦果を挙げたのかをしっかり証明 してくれています。しかもこの書は単に撃沈戦果のみではなく撃破についても詳しく書 かれている為、日本護衛陣と連合国潜水艦部隊の死闘が文字どおり全て掲載されている といっても過言ではないでしょう。潜水艦戦に興味のある方は是非一読ください! |
ソノラマ新戦史19 |
説明しづらい本です。今風にいうと戦記シュミレーションでもないなぁ。架空の 第三次世界大戦に題材を取った現代機甲戦の戦術フィクションとでも言いましょう か。戦略的な要素はほとんどありません。ドイツのアウトバーンと田園を舞台にソ 連の一個機甲師団とカナダの機械化旅団戦闘群の激突を描いています。機甲部隊の 高速打撃戦と、対戦車防御戦がなかなか迫力ある文体で進められています。 戦史シリーズのフィクションものの全てにいえるのですが、ひじょうに影が薄い。 しかもこの題材は架空の現代戦なので、その薄さに輪をかけているようです。戦術 アクション小説としては相当読めるのですが、シリーズの中ではかなり浮いた存在 になってしまったようです。1980年ぐらいの機甲戦構想とその当時の兵器につ いては学ぶことができます。兵器の紹介文のあり、軽く読むのにはよいかもしれま せん。 |
ソノラマ新戦史20 |
巡洋艦の誕生から現代までの流れを、色々に出来事や戦闘に沿って追いかけてい
きます。最も、日本海軍の記事が中心になるのは仕方がないことでしょう。 本書はこの大雑把の流れを順に追っていきますが、メインは条約下での列強の巡 洋艦の開発になります。この時期が最も巡洋艦という艦種に焦点が集まったことも あり、各国の各タイプの紹介が挙げられています。もっとも紙面の過半は日本の巡 洋艦にさかれているため、日本艦ファンにとっては良い本なのですが、他の国のフ ァンにとっては記事が薄く感じるかもしれません。 巡洋艦建造史としては本書はひじょうに分かり易くまとめられており、装備した 兵装に関してもしっかりとした解説が付いているのも有り難いです。巡洋艦につい て基本事項を知りたい人向けでしょう。 |
ソノラマ新戦史21 |
日本が太平洋戦争で使用した液冷エンジン装備の唯一の戦闘機である三式戦闘機「 飛燕」についての書です。日本機というのはどの機体も大なり小なり発動機に泣か されていますが、「飛燕」はその中でも最も不幸な機体でしょう。機体設計はすぐ れ、軽戦志向の陸軍としては重武装で、一撃離脱に充分な機体強度と格闘戦もでき る機体バランスは、エンジンを挿げ替えた五式戦で証明されています。本機の最大 の特徴であり、そいて長所を全て消してしまった弱点がエンジンなのです。 川崎航空機といえば液冷機です。日本の液冷機といえば「飛燕」と「彗星」のイ メージが付きまとって、とかく悪く思われがちですが、一概のそうともいえません。 1937年頃の陸軍を主力機は川崎の九五戦ですが、運動性が良いと評判の液冷機 でした。生産数も五0O機を越え、日本機は空冷ばかりだというセリフの反論材料 になります。 もともと液冷機は正面面積を押さえることができ、空力的にも空冷より好ましい といえます。反面、空冷に比べて被弾に弱いという弱点もありますが。結局液冷機 が日本に定着しなかったのは、液冷機を用いるだけの基礎工業力がなかったという ことに回帰します。「飛燕」の苦闘は、言い換えれば日本工業の能力の底の浅さが アメリカの工業力にかなう術もなかったということです。 本書はDB601の国産化と「飛燕」開発の苦難の道から始まり、「飛燕」の戦場 であるニューギニア戦、フィリピン決戦、本土防空戦での活躍、終戦直前に光輝い た五式戦の開発と作戦について述べられています。僕自身は「飛燕」で思い付くの は「244戦隊」なのですが、この防空戦隊についてもしっかり理解することがで きます。スマートな「飛燕」が好きな方も大勢おられると思いますので、一度読ま れてみてはどうでしょうか。 |
ソノラマ新戦史22 |
1943年頃より、Uボートの狼群作戦はその効力を完全に失っていきます。そ れがいったいどうしてなのか。また、Uボートの艦長や護衛艦の艦長は、新たな事 態にどう対処していったのかについて、詳しく述べられた書です。 Uボートがその神通力を失ったのは、連合側の新兵器の登場と、それを効果的に 活かすことができるようになった対潜護衛作戦戦術の向上のためです。この頃より ヘッジホッグ、HF/DF、護衛空母、高性能ソナー等の新兵器と、大西洋各所に 配備された対潜哨戒機の活動が活発になりました。ドイツ側もUボートに各種の捜 索電波探知装置を搭載したり、補給用Uボート等の投入で、Uボートの活動力を拡 大しようとしましたが、連合側の護衛戦術に押し切られた形となりました。 本書では1943年を中心とした大西洋の通商破壊戦をまとめたものです。激し いUボートと護衛部隊の死闘が各編に描かれており、Uボート戦の興味のある方に は是非その知識の拡大のために、読んで頂きたい1冊です。かなり細かな点まで、U ボート側と護衛側の双方からまとめてあるため、相当深い点まで勉強することがで きます。 |
ソノラマ新戦史23 |
撃沈戦記の第二弾、今回も31隻の艦の最後がほとんど無作為に選ばれています。 PARTTに比べると少しマイナーな艦が揃ったのが特徴です。「翔鶴」「愛宕」 「武蔵」といった日本海軍好きならだれでも知ってるような艦も、もちろんありま すが、ツボをついたマイナーな艦に目がいってしまうのもしょうがないようなライ ンナップです。 幾つか挙げてみますと、日本海軍が海戦で失った初めての大型艦である巡洋艦「 高千穂」、フランス最大の潜水艦だった「スルクフ」、桜花によって撃沈された唯 一の艦であるアメリカ駆逐艦「マンナート・A・エーブル」、イタリア潜水艦のト ップエースである「レオナルド・ダ・ビンチ」等、まあ名前ぐらいしか知らないよ うな艦が続々と登場します。中には陸軍輸送潜水艦や、誘導爆弾「バット」に襲わ れた海防艦「粟国」等、よっぽど詳しく勉強している人ではないとしらないものま であったります。 撃沈戦記はPART4まであるのですが、バランス的には「2」が質量ともに一番 だと思います。個人的にはもっと続けてほしかったシリーズなのですが、とりあえ ず4冊並べて本棚に置いておくのもよいのではないかと。 |
ソノラマ新戦史24 |
第二時世界大戦末期、連合軍爆撃機パイロットを震え上がらせたドイツの新型戦闘 機、メッサーシュミットMe262の話です。といっても、あまりにも有名な戦闘機なの で一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。「シュワルベ」のニックネームで 呼ばれたこの機体は、第二次世界大戦最強の戦闘機でありながら、上層部やヒトラーの 無定見に振り回され、戦場を駆けた時には既に遅かった不運の機体でもあります。Me 262の誕生から変遷、戦場での活躍とその最後をしっかりまとめたのが本書です。 ドイツのジェット機開発はハインケル社がその先陣をきっていましたが、政治的事情 (ナチス政権に対しておぼえが悪かった為)ほとんど日の目を見ず、少し遅れていたメッ サーシュミット社が、その栄冠を取ることになりました。他にはアラド社もジェット爆 撃機を実戦配備しています。ドイツでは戦闘機よりも、より攻撃的な爆撃機のほうが重 視されており、ヒトラーの攻撃的な性格も反映して、当初Me262は爆撃機として整備さ れることになりました。しばらくして、実験部隊としてノヴォトニー戦闘機隊が整備さ れ、迎撃戦闘機としての真価を徐々に発揮することになります。 しかし、戦場はドイツに移りつつあり、圧倒的な連合軍に寡兵で立ち向かうMe262隊 は苦戦を強いられました。基地上空は連合軍の戦闘機に制圧され、航空攻撃によって、 燃料や補充機も満足に届かない状態では充分な力は出し切れず、遂に敗戦によってその 戦歴を絶たれることになりました。 本書ではここに述べたMe262の一生を、ノヴォトニーやガランドといったエース達の 戦いと共に、順に追っていきます。ドイツの戦闘機パイロットは不遇な扱いを受けるこ とが多かったのですが、本書ではそれらの癖のあるパイロット達がMe262と共に、戦場 の空で、どのような活躍をしたのかも詳しくかかれている為、ドイツエースに興味のある 方にも充分満足できる作品です。またMe262を取り巻く開発環境も説明に相当の紙面を 割いてあり、色々な意味でMe262のことを知りたい人には最適の一冊でしょう。 |
ソノラマ新戦史26 |
ベトナムの航空戦といえば、F−4とMig21の空中戦やB−52による北爆が有名で すが、最も大規模で一般的な作戦は攻撃機による戦術対地爆撃でした。本書はこれま で戦闘機パイロットに比べて、スポットライトを浴びることのほとんどなかった爆撃 機・攻撃機パイロットの活動についての1冊です。 北ベトナムでの紛争勃発から、大規模な航空攻撃の端緒となった「ローリングサン ダー作戦」、SAM「ガイドライン」とMigが激しい迎撃を始めた最盛期の航空戦か ら、アメリカがベトナムから撤退する直前の最後の戦闘までを、海軍の攻撃機乗り2 0人以上の証言を基に再現しています。また、攻撃機乗りは撃墜率も高く、捕虜とな ったパイロットも多数に上ります。そういった捕虜生活の話も多数載せられています。 華やかな戦闘機乗りと比べて、対地支援や爆撃任務についたパイロット達は戦果も 見え難く、何時果てるともしれない過酷な任務を黙々と務めていました。また、その 無差別攻撃(実際にはこう言える攻撃です)によってベトナム人からもっとも憎まれた のも彼らです。ヤンキーステーションやディキシーステーションから爆装して発進し た攻撃機は、数百機が母艦に帰ってきませんでした。 実際に作戦行動に出たパイロットの証言をまとめたものなので、攻撃機の対地攻撃 戦術や作戦行動中の問題、政治的要素で揺れ動いた作戦指揮のつけをパイロット達が 払っていた事実等がありありと映し出されています。パイロット達の心理描写もしっ かりしているので、感情移入やパイロット心理の理解にも繋がると思います。 地味ですが航空戦の一面を端的にあらわしたテーマなので、気が向いた時に読まれ てはどうでしょうか。 |
ソノラマ新戦史27 |
戦史シリーズの中でもかなりの名著です。僕自身もドイツ機甲部隊の基礎知識のかな りの部分をこの書から得ています。本書はドイツ機甲部隊の成立と発展、そしてドイツ 機甲部隊の代名詞とも言える電撃戦について述べられています。またドイツのみならず そのライバルとなったソ連やイギリス、フランスの機甲部隊についても言及されていま す。 ドイツ機甲部隊を作ったのはハインツ・グデーリアンですが、グデーリアンの着想が どう現実化していったのか、装備の質・量ともに劣るドイツ機甲部隊が連合軍をどうし て撃破することができたのかが、分かり易く説明されています。本書は機甲部隊の成立 とその戦闘の経緯、及び編成面に重点をおいています。ドイツ戦車の戦術的な戦闘等の 記述はほとんどありませんが、作戦面から各軍団・師団の動きはかなり詳しく述べられ ており、1943年までの主要な戦場について機甲部隊の動きをしっかりと捉えられます。 残念な点は1943年のクルスク戦で記述が止まっていることです。ページ数的な制限も あり、またドイツの機甲部隊を電撃戦という観点から捉えると、クルスクまでの記述も 納得行く点はあるのですが、敗戦までの通史的な書としていれば本書の価値はさらに高 まったと思います。しかし、ソ連側の機甲部隊の動きにも力を注いでいる書はなかなか ありませんし、装備についても記述が豊富なので基礎書としては最適です。是非、一読 をお勧めします。 |
ソノラマ新戦史30 |
航空関係で多数の著作を出されている渡辺洋二さんの短編シリーズ第一弾です。本書 もWW2を中心に、面白いテーマの短編が11も入っていて、かなりお特な本となって います。 短編は、「南太平洋の零観たち」、「ソロモン上空、日米エスコート作戦」、「ダバオ上空 月光対B-24」、「空対空特攻『金鵄隊』」、343空の話が2本、研3の話や、B-26、「 プリンツ・オイゲン」に対する英雷撃隊の作戦、幻に終ったカナダの重要撃機CF-105 「アロー」の開発秘話等です。
僕としては、一番最後のCF-105の話と、「金鵄隊」の話が初めて読んだ話で興味深い
ものでした。1つの話につき20ページほどでまとめてあり、気軽に読めるのも良いと
ころです。テーマとしても、マイナーなものが多く、意外な発見も得られることから、
かなり楽しんで読みました。知らない話ばかりではなく、B-26の活動の流れを見るとか、
343空の話をコンパクトにまとめてある等、知っていそうだが、なかなかまとまって
いない話も多く、そういった店では、知識の整理に役立つかもしれません。 |
ソノラマ新戦史32 |
英国空軍の大戦中最大の基地であったタングメーア基地群の戦闘機隊に所属 して、海峡を横断して激しい空戦を繰り広げた、ニュージーランド人パイロッ トの自伝記です。しかし、この空戦記で面白いのは、著者はハリケーンやスピ ットファイアを乗機としていたのではなく、イギリス最初の本格戦闘爆撃機、 重戦闘機のタイフーンを愛機としていたのです。 タイフーンはスピットファイアやハリケーンの陰に隠れて、あまり注目され る機体ではありませんが、頑丈な機体に大出力のエンジンを搭載した、大型の 戦闘爆撃機です。「英国の戦い」以後、ドーバー海峡を挟んで、両軍戦闘機部 隊の殴り合いが44年まで続くのですが、その攻撃機部隊の中核となった戦闘 機です。タイフーンの空戦記というのは、僕は本書の他に読んだ事がないので その点からはひじょうに貴重な一冊です。 ニュージーランドより、航空志願兵として、イギリスに旅立ってから、著者は 訓練やその後の激しい戦いを経験します。しかし、戦友を失いながらも陽気に 希望を持って戦い続けた戦闘機部隊であったことは、本書を読んでいればすぐ にわかります。一パイロットの感情や、戦闘機部隊の気質等がよくあらあれた 空戦記に仕上がっています。 |
ソノラマ新戦史33 |
ヘリコプターの歴史について、ばっちり知っているという人は、かなりの航空ファンの 方以外には、そうそういないと思います。特にヘリコプターは今でこそ、民生用に飛び回 っていますが、軍事的要求に伴って発展した技術であるため、ヘリコプターの歴史=軍事 用途としての発展史、といえます。 そういったヘリコプターの軍事的通史として、この「ヘリコプター作戦」があります。 テーマが漠然としており、ヘリという存在が比較的地味な活動を生業とするため、なかな か知名度のある作戦というのは思い付きませんが、各種の特殊作戦や救出作戦に今では、 ヘリは欠かせません。またベトナム戦争では、米軍の第一騎兵師団を始めとして、ヘリに よる空中機動が作戦の根幹となりました。 本書では、ヘリの誕生を、その前身であるオートジャイロから順に見ていき、その進化 と戦場での活躍を、任務や国別にまとめあげたものです。第二次世界大戦でドイツのフォ ッケが戦場を飛んでから、フランス・アルジェリア戦争、さらにはベトナム戦争、フォー クランド紛争と、ヘリは戦争の最も重要の兵器となっていきました。 また、主要な軍事ヘリは写真をとりまぜて、その性能と特徴について説明されています。 対戦車ヘリや艦載対潜ヘリ等は、そこそこ名前が知れていますが、少数機しか量産されて いない汎用ヘリはマイナーな存在なため、あまり知られていないものも多く、そういった 機体についても利用された戦場とともに読み解くことができます。 タイトルから中身が想像し難い本のため、積極的に手に取り難いのですが、中身はかな り密度の高い軍事ヘリ入門書となっています。 |
ソノラマ新戦史34 |
色々な戦記に引用されている1冊。原題は「DESTROYER CAPTAIN」という75年に イギリスで発行された書です。イギリスで発行されているので、当然イギリス駆逐艦 の話です。作者は大戦期間のほとんどを駆逐艦で過ごした生粋の駆逐艦乗りで、大西 洋や北海を所狭しと駆け回りました。 イギリス駆逐艦の戦記は日本ではあまり数が出ていないようです。確かにイギリス 駆逐艦が活躍した海戦といって思い付くのは、ノースケープ海戦ぐらいで、どちらか というと地味で過酷な対潜任務に就いていたのですが、その活躍は目立たないだけで イギリスの勝利にはなくてはならないものでした。 作者は有名な作戦に艦長として多数参加しており、全編通じて激しい海戦の連続して 続きます。流れを追っていくと、「レベドリー」艦長としてPQ17船団の護衛と、マ ルタ島補給船団の護衛任務、「グレンビル」艦長としてビスケー湾とドーバー海峡で の作戦、特に有名なのが43年10月23日にビスケー湾で起った夜戦で、イギリス側がド イツ水雷艇に大敗した海戦です。この余波を受けて「グレンビル」は地中海に左遷さ れてしまいます。地中海ではアンツィオ上陸作戦の支援と護衛任務に就きました。 さらに、アンツィオで艦首を吹き飛ばされた「グレンビル」艦長となってノルマンデ ィ上陸作戦に参加しています。 読んでいても、一癖ある艦長と乗組員の活躍、イギリス駆逐艦の日常の作戦等が詳 細に書かれており、面白いの一言です。艦長から見た海戦記としては1級のものでは ないでしょうか。 |
ソノラマ新戦史37 |
日本人に戦争の飛行機と問うと、一番多く出てくる解答が、このB−29です。戦
争末期に日本中に焼夷弾の雨を降らせ、恐怖のどん底に陥れたのが、この空の要塞で
す。銀色に鈍く光る大きな機体は悪魔の象徴でした。 本書はB−29の誕生とその戦闘経緯をまとめたものです。有名な機体でもあり、 かなりの出版物が出ていますが、指揮した本人が書いているだけあって、臨場感とい う面では、一番だと思います。各作戦もかなり詳しく書いてあり、日本の本土防空戦 記といっしょに読むと、より戦記が理解できるかもしれません。 |
ソノラマ新戦史38 |
戦史シリーズの中でも多分人気のない本の一つではないでしょうか。戦史シリーズ の読者層はWW2系に偏っていると思われるので、現代戦でしかもアフリカの内戦の 傭兵物語というのは、手が出難いかなと感じます。実際に僕も本格的に戦史シリーズ を集めようと思うまでは買いませんでした。 が、中身はなかなか濃いものです。日本ではほとんど知られておらず、知っていて も政治的に話が中心になってしまうので、あまり受けないアフリカ内戦ですが、実際 には激しい戦いが延々と続いています。しかも傭兵の話ですから中身が詰まるのも当 然かなと思います。日本では傭兵といってもピンと来ませんが、世界中にはまだまだ 多数の傭兵が活動しています。自主的に戦場に身を任せているということだけあり、 傭兵達には個性的でドラマ性の強いキャラが多くいます。60年代のアフリカ内戦は傭 兵市場として最も活況を呈した場所でもあり、様々な傭兵達が色々な思惑と共に戦い に参加しました。アフリカの傭兵は最後には線香花火のように消えていきましたが、 それまでは戦場の華として戦い続けました。
本書はコンゴ、ナイジェリア、スーダン、アンゴラの4つの内戦について語られて
います。この中で傭兵達は近代兵器の扱える熟練兵として重宝されることになります。
各陣営の戦意のない烏合の衆である正規兵達を訓練しながら、ヒットエンドランによ
る奇襲で大きな戦果を挙げていきます。また各国が自国の利益のために様々な諜報機
関によって関与していますが、この実行部隊として用いられたのが傭兵でした。 |
ソノラマ新戦史39 |
新戦史16「日本の海軍力」の姉妹編です。タイトル通り、今度は航空自衛隊に ついての基礎知識をまとめてあると言ってもいいでしょう。戦史シリーズ200冊 の中でも空自についてのみ、かかれた書はこれ一冊のみということもあり、なかな か際立った書でもあります。 第一章は「ソ連の太平洋艦隊で反乱だ!主力艦隊が反乱軍に乗っ取られて日本に 向け航行中!」というストーリーなのですが、この艦隊に対してF−1の対艦攻撃 と、F−15隊とMig31の空中戦が展開されるシュミレーションが展開します。 空自も「スクランブルだ、緊急出動!」をストーリー化しているのですが、少し 無茶な設定かなって感じもします。 2章以降は空自の編成、空自の主力機「FX」選定の歴史(F−86、F-104、 F-4、F-15)、空自のパイロット(イーグルドライバー)の養成について、空自 の整備員の話、装備機やその兵装、SAMについての記述もあります。また後方部 隊の編成についてもページを割いており、記事が少々古いことを差し引いても、内 容が幅広く充分楽しめます。 空自に本格的な興味を持ってる人や、既にかなりの知識を持ってる人には、内容 的には物足りなく感じると思います。僕なんかはあまりまとまった空自の知識がな かったので、それらをまとめるのにはちょうどよい書物でした。 僕がこの本で一番興味深かったのは、全日空機墜落事故の際の現場での空中管制 についてでしょうか。あとは87年のソ連機領空侵犯事件の際のスクランブル体勢な んかもまとまった記事で目を引きました。あと、「日本の陸軍力」という書は出て いないんですが、どうせなら3部作にしてほしかったと思うのは僕だけでしょうか。 |
ソノラマ新戦史40 |
ジェットランド海戦を参加した一水兵の立場から展開したものです。といっても、 フィクションでも翻訳でもないというのが本作品の異色なところでしょうか。戦前 に出たイギリスの小説を元に、実際の資料等で肉付けして、日本の読者にも読みや すい体裁をとった本なのです。第一次世界大戦の海戦記としてはかなり面白い一冊 だと思います。 本書はイギリス本国艦隊の戦艦「フォーミダブル」に主人公の新兵が配属になっ たところから始まります。第一次世界大戦当時のイギリス海軍の風習や編成、艦隊 の日課等を織り交ぜながら、第一次世界大戦を取り巻く海軍状況を説明してくれて います。で、主人公は開戦からしばらく「フォーミダブル」に乗り続けるのですが、 少し海戦史に詳しい人ならご存知の通り、「フォーミダブル」はUボートの襲撃で、 1915年にドーバー海峡で沈んでしまうのです。主人公達は「フォーミダブル」から 辛うじて生還したのち、駆逐艦「マンスフィールド」に転属となり、この艦に乗っ てジェットランド沖海戦に参加することになります。「マンスフィールド」はビー ティ隊に参加していたため、海戦当初から激戦に巻き込まれ大破してしまいます。 本海戦は結局、中途半端な結果に終りますが、当初の巡洋戦艦隊同士の殴り合いは 凄絶なものがありました。「クイーン・メリー」の轟沈や「ウォースパイト」の死 闘、主砲全てが使用不能になった「フォン・デア・タン」等、被害が続出したので す。 あまり、ド派手な戦闘描写は少ないのですが、「イギリス海軍の一日」という世 界に浸りたい人のはよいかもしれません。もちろん主題であるジェットランド沖海 戦では一番最後のクライマックスとして海戦のあらましが「マンスフィールド」の 勇戦とともに描かれています。あまり紙面を割いていないのが少し不満ですが。 有名な海戦なので、知っておられる方も多いネタとは重いますが、変わった切り口 から海戦を捉えているので、機会があれば読んでみてはいかがでしょうか。 |
ソノラマ新戦史41 |
ソノラマ戦記の中で「ドイツ装甲師団」がドイツ陸軍の基本書だとすると、空軍 の基本書と呼べるものが、この「ドイツ空軍戦記」です。ドイツ空軍の基礎書とし ては「ドイツ空軍全機発進せよ」(ジョン・キレン著、早川書房、1983初版発行)が 非常に良い本なのですが、この書もそれに匹敵する良い本です。 ドイツ空軍は、ドイツの他の2軍(陸海)に比べて、非常に個性的で特殊な組織 です。上級幹部が戦略自体を左右しており、政治的にも非常に強烈な動きを見せよ うとします。その成立過程や極端な兵力整備、優秀な機体とパイロット達といった 単なる組織としては希に見るドラマ性が内包されています。 その不可思議な組織の成立から、東部戦線に対する電撃戦の開始、そしてドイツ 空軍の幹部の一人であったウーデットの自殺までが、本書の内容です。丁度、戦争 の真ん中で戦局が転回しはじめる時期までを本書の内容としています。ちなみに終 戦までの続きに関しては、続編の「続ドイツ空軍戦記」が新戦記46として刊行さ れています。 戦争前半はドイツの電撃戦が神通力を発揮していた時期なのですが、この電撃戦 にはドイツ空軍の力が欠かせませんでした。敵空軍力の殲滅と、陸軍に対する近接 支援が、機甲部隊の突進を支えたのです。もっとも戦略侵攻能力が欠けていたこと は「バトル・オブ・ブリテン」で暴露してしまいますが。 本書の内容として、ドイツ空軍の作戦や部隊編成、上級幹部達の動向、空軍の新 型機開発や生産体制の混乱についてが、わかりやすく書かれています。ドイツ空軍 の主要部隊や人物について学びたいのであれば、まず本書を手に取ることをお勧め します。戦史シリーズの中では他にも幾つかのドイツ空軍の書が発行されています が、わかりやすさという観点からなら、この本からではないかと。 |
ソノラマ新戦史42 |
撃沈戦記シリーズ第三弾、今回は少し薄いですが読み応えは前2作に負けていません。
もともと、「シーパワー」誌に連載されていたものを戦域・時期別にまとめたものなの
で、こじんまりとまとまった艦艇の短編が21隻分もぎっしりと詰まっています。 この撃沈戦記シリーズは結構頻繁に再版がかかったようで、まだ本屋でも偶に目にする ことがあります。興味のある方は手にとってみてはどうでしょうか。 |
ソノラマ新戦史43 |
新戦史27「ドイツ装甲師団」の続編です。といっても単に前回の続きという訳で はなく、今回は装甲部隊を運用した人物と作戦に視点を移して、装甲部隊をソフトウ ェア面から分析しています。装甲部隊の指揮官が取った作戦についての特徴を捉え、 何故電撃戦が成功したのかという点を解説しています。 具体的にどんな指揮官について論じられているかというと、ドイツ装甲部隊の父と 言われたハインツ・グデーリアン、砂漠の狐−エルヴィン・ロンメル、総統の火消し− ヴァルター・モーデル、元祖親衛戦車旅団−ミハイル・カツコフ、ドイツ最良の将帥で あるマンシュタインといったところでしょうか。他にもスターリングラードやクルス ク戦、SS装甲部隊、44年夏期攻勢などが、章を割いて解説されています。 各章が独立した短編風になっていることもあり、パラパラとめくったりもできる読 み易い書なのですが、前編同様にかなり充実した内容です。僕自身もドイツ装甲部隊 について読み始めた頃には、この本にはかなりお世話になりました。各章が一人の人 物、1作戦についてのみで構成されているのも読みやすい一因です。 クルスク戦以降の東部戦線はお手軽な書物があんまりないのですが、簡単に触れて みようという読み方なら本書は使えると思います。もっとも全体像をとらえるの には少し難がありますが。部隊編成等も丁寧に調べられているので、そういう観点か ら見たい人にもどうぞ。あと、機甲部隊の写真等も掲載されていません。僕個人とし ては11章の第1装甲軍の全周包囲脱出戦(44年3月〜)が一番興味深かったです。 |
ソノラマ新戦史44 |
空母の誕生から、その発展をまとめた1冊です。視点は主に技術史的なところと、 空母戦術の発展について述べられています。主に日本海軍の各級空母の装備について 詳しくまとめられており、各国の空母との技術的対比を行うのにも最適な書です。 特に空母そのものを捉えただけではなく、機動部隊の運用や艦隊戦術、また、それ に伴う空母や随伴艦の装備についてがしっかりと理解できます。戦記的な面はそれほ ど多くを割いた本ではありませんが、空母機動部隊を理解する上での基礎的な知識を まとめてくれた良い本でした。 空母というハードウェアと、運用するソフトウェアの2点を口語に比較出来る点が、 この本の一番の特徴だと思います。各国の空母についての記述がありますが、僕自身 の希望としては、もう少しアメリカ艦についての記述が欲しかったところです。日本 海軍については、相当詳しいところまで掘り進めることが出来ます。 |
ソノラマ新戦史45 |
渡辺洋二さんの航空戦記短編集の第二弾、永井喜之さんと木俣滋郎さんの海戦短編
集が撃沈戦記シリーズとすれば、この「大空」シリーズはその航空版とも言えるでし
ょう。 中に収められているのは、上記の「震電」の他に、「ワイルドキャット」の話、ヨ ーロッパでの超高空戦闘、日本戦闘機の性能比較、零戦の初戦果の話、302空、131空 「芙蓉部隊」の話、北方戦域での航空戦、常陸教導飛行師団と天誅戦隊の話の9本の 短編が収められています。それぞれが一冊の話に出来そうなテーマ(実際に302空や 芙蓉部隊はソノラマ戦史で一冊の短編としてまとめられています)を簡潔に密度濃く書 き上げているので、読んでいて充実感のある短編集です。 僕自身は、Ju-86Rやスピットファイア6型、9型の成層圏での戦いを描いた話と、ワイ ルドキャットについての活躍を描いた話が、特に面白く読めました。色々なタイプの話 が載っているので、誰でも楽しめるのが、この短編集のいいところだと思います。 |
ソノラマ新戦史46 |
新戦史シリーズで出ている「ドイツ空軍戦記」の続編です。前作はソ連侵攻までを描いていたのに対して、
今回は1942年より終戦までの死闘について描かれています。
前作では英本土航空戦での挫折以外は、ほぼ電撃戦で順調に戦果をあげていたドイツ空軍ですが、戦線が
膠着し、消耗戦の感を呈してくると、回復力に劣るドイツ空軍は徐々に消耗していきました。また戦略攻撃能力
を持っていなかったドイツ空軍は、相手の航空工場を襲って生産力の低下を計るといったことが行なえず、
戦線で敵を落とし続けるしかなかったのです。 また、ヒトラーの攻撃力重視や、新型機開発の失敗による航空行政の混乱等もドイツ空軍の死期を早めた原因でした。 これらの日本ではあまりなじみのない、大戦後半のドイツ空軍のあらましが分かり易く解説されています。 是非、お勧めの一冊です。 |
ソノラマ新戦史48 |
渡辺洋二さんの航空戦記短編集の第三弾です。今回も細かいが充実した短編が8作 掲載されています。中に収められている短編は、ラバウル航空隊の最後の輝きとな った44年1月17日のラバウル上空大空中戦、ほとんど量産されなかったマイナー水 戦「強風」の活動について、日本海軍の対潜航空作戦について、2回のB-29体当 たりに成功した244戦隊の四宮中尉の話、戦争末期に教育と実践の2足の草鞋を履か なければならなかった陸軍練成飛行隊の話、各国の偵察機の性能比べ、F6F夜戦 型の活動記等です。 渡辺さんの本はひじょうに読みやすいので、その航空戦の世界にどんどん引き込 まれてしまいます。今回もテーマとしての魅力や、その豊富な取材に裏打ちされた 発見がたくさんありました。特に強風やF6F夜戦はまとまった記述を読んだこと がなかったため、面白いの一言でした。また搭乗員の逸話が多く含まれているのも、 リアリティを増す一因だと思います。表紙の強風も迫力抜群でいい感じです。 |