日本再生は税制改革から!−税制で意識改革を−


東証株価は遂に1万円を割り、小泉内閣の「構造改革」は行き先に赤信号が灯った。目の前のデフレ退治に財政出動すれば間違いなく財政破綻の時期を早めることになるだろう。巨大な国の借金をちゃらにするためにインフレーションへの誘惑は高まるばかりだ。ハイパーインフレこそ現代版「徳政令」だ。かっての「徳政令」で泣いた人は武士や役人に金を貸した大金持ちだったが、これからの「徳政令」で泣く人は銀行や郵貯の預金者であり、一般国民である。「徳政令」の発動を回避し日本再生のために残された道は現行の不合理税制の改革である。1400兆円といわれる国民資産を国家に供出することを避け、国民が自己責任で有効活用することこそ日本再生の道である。

税金を取るべきところから取らず、取ってはいけないところから取り、税金の取り方を間違え、使い方を誤ったために日本経済は狂ってしまった。日本社会に巣食う目に見えない巨大な寄生虫が血税を吸いつづけているために日本経済は活性化できないのだ。

税金の使い方に無駄はないか?取り上げた税金は納税者に還元されているか?徹底的に見直す必要があるが税金の取り方も使い方以上に重要だ。税金の取り方が国民の意識を変え、国民の行動を変えるからである。産業が活性化せず、消費が拡大しないのは、地方交付税など受益者負担の経済原則を無視したわが国の社会主義的な課税制度にある。行政のスリム化で増税の不安を解消し、国民の自己責任に基づく投資と福祉医療消費サービスが有利となるように税制度を改革する必要がある。税金を払って無責任な政府に下駄をあずけると国民は期待を裏切られることになるからだ。典型的な事例を土地税制でみてみよう。

大化の改新、太閤検地、明治の地租改正のいずれをみても土地税制は歳入の主要手段であると同時に経済的影響の大きい統治の手段であった。明治の初期には土地所有に課す税金で国費の7割以上を稼いだ。農業以外にまともな産業がない時代にはこれもやむを得ない方策であった。「土地が自分のものになる」と喜んだのはつかの間のことで、あまりの重税に土地所有の魅力は殆どなかった。松方デフレで米価が下落し、税金が払えず没収された農地は売りに出され、担税能力がある大地主を誕生させた。第二次大戦の後、高度経済成長に伴うインフレで土地価格が上昇したのに税額が長期にわたって据え置かれたため土地所有が有利となり、土地への執着と土地神話が生まれバブルを発生させたのである。理不尽に膨れ上がった土地のバブルはまだ解消されてはいない。少子化と企業の海外移転で土地需要は減り、土地価格の下落はまだつづくだろう。一物四価といわれる複雑怪奇な土地の不合理税制は今も是正されてはいない。多くの土地が有効利用されず、不良債権の担保として塩漬けにされたままだ。
「公共用地の先行取得」と称して土地の値下がりを防ぐため第3セクターを通じて税金が投入されたが、ことごとく裏目に出て第3セクターに不良資産を累積させることになった。土地価格を吊り上げ不良債権を減らそうとする試みは間違っている。土地の高価格はわが国の都市居住環境の整備を遅らせ、インフラコストを高くして国際競争力を奪うことになるからである。

土地が私的財産とされているために財産相続で巨額の税収が国庫に入る一方で、土地収用にコストが嵩み都市の道路整備や成田空港がいつまでも完成しないことも問題である。憲法第29条に「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」とされているが土地を財産とすることは公共の福祉に適合しないといわざるを得ない。国庫のプラスと日本経済へのマイナスを天秤にかければマイナスの方が大きいだろう。財産権の定義を変更して相続税を撤廃し、土地収用でのゴネ得を阻止すべきである。土地は所有するのではなく有効利用することが肝要である。土地の流動性を高め有効利用が促進されるように土地税制を改める必要があるのだ。値上がりを期待し放置される土地には課税を強化し土地の有効利用を促進すべきである。税制改革で土地が有効利用されれば日本経済は間違い無く活性化し、税収を増加させる手段とすることもできる。

税制改革が日本再生の有力な手段となることは間違いないだろう。

文京区 松井孝司(tmatsui@jca.apc.org)


●不合理「税制」の改革試案

●不合理「税制」の改革試案(2)−土地税制を見直せ!

●土地は財産ではない!?

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