道州制(廃県置州)について


道州制とは?

 「道州制」とは日本をいくつかの地域国家(道または州)に分け、そこに中央省庁の多くの権限を移譲することにより、中央集権制に基づく東京への一極集中、上意下達の体制を改め、真の地方自治を実現するための制度です。中央省庁の下請け・出先機関となっている都道府県を廃止・再編成して、日本を「州」(=地域国家)からなる連邦国家にするのです。
 すでに明治10年福沢諭吉は『分権論』という本を書き、中央政府は通貨と国防と外交だけを担い、あとは全部地方に権限を移すべしと「地方分権」の必要性を説いています。「政権=ガバメント」と「治権=アドニミストレーション」を区別して治権の分権化を提案し、地方に居住する人民の幸福を謀る道路橋梁堤防の営繕、学校社寺遊園の設立などを全国一様にする弊害を指摘し、「政府の手を以って自ら事を行えば結局浪費乱用の弊を免れ難し」と述べ「浪費乱用は世界万国の通弊」としています。地域における公的事業には費用対効果を見極める経営能力が要求され、近年一部の自治体で「新公共経営=ニューパブリックマネジメント」の導入を試みるようになっています。昭和44年頃、経営の神様松下幸之助氏が「廃県置州論」「北海道独立論」を展開されたのも、政府・行政の非効率を無視できなかったからでしょう。
 一方首相の諮問機関である地方制度調査会も広域行政の必要性から、早くから府県の廃止を検討してきましたが、地方の長である知事は総理大臣の任命によるとする中央集権的性格の強いものでした。中央政府を残したまま府県を廃止する地方分権を「砂時計型」とすれば道州制は「ダイヤモンド型」であり「地方分権には2つの型」があることになります。

道州制の具体案

 道州制に賛意を示す国会議員、県知事も多く、特に大分県の平松知事は道州制論者として知られ、「九州府構想」(註1参照)が発表されています。また道州制の具体的提案には大前研一氏の著作「平成維新」(註2参照)などがあります。大前氏は「道州制」を第2次廃藩置県と位置づけており、日本は基本的に産業基盤を担う「道州」と生活基盤を担う「コミュニティ(町)」の2つの階層で十分としています。重要な点は中央の権限を移譲するに十分な規模の受け皿を創ることです。

 今日、「地方分権一括法」が施行されても、権限移譲には地方自治体が積極性を欠き、自治体合併に反対する区町村も存在し、現行の市区町村のもとでの地方分権の限界を露呈しています。(裕福な自治体の住民が貧しい自治体との合併を拒否することは当然です。東京の千代田区は固定資産税など約2500億円の税金を都に徴収されることを不満とし、独自の千代田市構想を発表しています。)
 自立をめざす自治体には合併を強制することなく、都府県レベルでグループを形成した上で分権すれば、権限移譲の機能を十分に発揮できる可能性が高く、問題の多い官僚支配を打破できるでしょう。道州制によって中央と地方の役割分担を明確化し、これまでの中央集権的、画一的な行政を改め、中央の権限を狭めるとともに、地域ごとに異なったニーズに柔軟に対応出来るシステムを構築し「地方分権の基盤」とするのです。さらに、近年交通・通信システムの発展により地域社会の活動範囲は拡大化の一途をたどり、インフラ整備、環境保全、犯罪防止の観点からも広域行政の必要性が叫ばれるようになっていますが、道州制はその要請にも応えるものです。
 道州制では借金漬けで首が廻らなくなった町村は住民が決議して自治体を解散し、「州」にすべての権限を移譲する選択肢もあり得ます。返済不能の巨額の債務を背負う中央政府も、一度解体、精算して新たに創設する州政府に債務返済の下駄を預け、ダイアモンド型地方自治で財政健全化を目指すことも道州制での重要な選択肢になります。

道州制導入による地域の自立・活性化

 国民の個人資産を、税金などのかたちで国家に供出することを止め、自分の資産を自分自身と地域のために活用するのが道州制です。自分のことは自分で決める国づくりこそ道州制の目的であり、民主主義に相応しいものです。道州制の導入は中央集権制と政官業の癒着で派生している既得権を解体するための有力な手段となり、規制改革による地域経済の活性化で地方自治体の自立に大きく寄与することは間違いありません。当然のことですが、創設される新しい州の首長と議員は地方自治の精神に則り、住民の手で直接選出する公選制とし、地域住民の厳しい監視下に置くべきです。地域住民の厳しい監視がない州政府では、真の地方自治は望めず、税金の無駄遣いを阻止することもできません。

 このように道州制は、真の地方自治を確立し、無駄の少ない分権型社会の可能性を秘めるシステムとして注目を集めているのです。「道州制」「廃県置州」の導入こそ日本再生のための骨太の構造改革と言ってよいでしょう。


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(註1)大分県知事平松守彦氏の「私の分権論・道州制論」

(註2)大前研一著「平成維新」「平成維新Part2」「地域国家論」「チャイナ・インパクト」「新・国富論」「新・大前研一レポート」(講談社刊)、「平成官僚論」(小学館刊)、「新・資本論」(東洋経済新報社刊)他 「州」=「地域国家」という表現は大前氏の著書からの借用です。

●道州制リンク集

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