本家チュンソフトに次ぐくらいの気合いの入ったノベルゲーム(ハイパーノベル)を作っていたと思われるヴィジットのノベル第1作がこの「あかずの間」です。
第2作「最終電車」、第3作「上野発夜光列車」などはかなり名が知れているにもかかわらず、この「あかずの間」は知名度的にはいまひとつという感じです。その原因は何なのでしょうか。
これはサウンドノベル全体に関して言えることだと思うのですが、『「シナリオの数・分岐」もしくは「文章の量」が少ないものはヒットしにくい』ということが大きいのではないでしょうか。このゲームの場合はおそらく前者が当てはまるでしょう。大まかに分けて2種類しかシナリオがないというのはちょっと厳しいと言わざるを得ないでしょう。
マイナス面はこれくらいにして、今度はプラス面を挙げてみましょう。まずこのゲームで最も目を引くのは「CG」でしょう。全編にわたって非常に美しいCGによる3Dムービーが使われており、それまでのノベルにはなかった感覚で楽しめるものになっています。その技術は見事なもので、これが後の「最終電車」や「上野発夜光列車」につながっているのだと思われます。
シナリオに関しては、「ハイテク閉鎖空間」という設定を生かしたなかなか面白いものになっているのではないかと思います(それだけに数が少ないのが惜しい……)。ところで、その中に1つ『ハッピーエンドがないシナリオ』が存在します。そういうものをどう思うかはおそらく人それぞれでしょう。個人的には後味が悪いのは好きでないので、やはりハッピーエンドが1つくらいは欲しいと思ってしまいます。
登場人物なんですが、かなり変わり者が多いですね。まるで各界の変人ばかりを優先的に集めたかのよう。「普通の人間はいないのか?」って感じです(奈美子さんくらいか?)。この人たちで心理分析の実験をしても役に立つデータが得られるとは到底思えないんですが……。それともこの時代、宇宙に行く権利があるのは変わり者だけなのでしょうか? それなら分かるんですけど……。
「最新の技術に囲まれていても、結局そこにいるのは人間なんだ」というのがこのゲームのテーマかもしれません。ヴィジットのノベル第1作という記念碑的な作品ですので、ヴィジットファンの方は要注目かも。
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