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時代劇が変わった!?〜SFXと<真田太平記>

 

 時代劇というと、およそ科学とは縁遠いように思える。ところが<真田太平記>では、電子映像、コンピューター・グラフィックといった科学の力で、これまでのテレビドラマでは見られなかった迫力ある合戦場面や忍びの格闘シーンが、次々と生み出されている。映画でおなじみのSFX(スペシャル・エフェクス=特殊効果)を活用した、新しい映像づくりだ。

 その躍動感あるダイナミックな時代劇づくりの舞台裏をのぞいてみると――。

 

 

 

 

 

 13頭の馬が100頭に変身!

迫力ある合戦シーンや忍びの格闘場面は、<真田太平記>には欠かせない見どころのひとつだ。ところが、騎馬隊にしても10頭くらいでは迫力が出ない。忍びの人並みはずれたアクションにしても、俳優のナマの演技では不可能だし、スタントマンでも限界がある。

そこで登場したのが、DVE(デジタル・ビデオ・エフェクト)だ。

 ブラウン管の1つの画面は、約6億個の細かな点で作られている。その粒子の1つ1つをデジタル信号に変えると、スイッチ一つで自在に移動できるようになる。そうした原理を利用して、ある画面に別の映像を合成させたり、画面の一部を縮小・拡大させたりすることができるビデオ特殊効果装置である。

「番組のタイトルバックの冒頭、雲をバックに何十頭もの騎馬が走って来るシーンがあるでしょう。100頭ぐらいいるように見えるけど、使った馬はわずか13頭なんですよ」と、「タネ赤視してくれたのはこの番組の美術を担当している内藤政市チーフ・ディレクター。ロケのとき丹沢の川原で撮影した13頭の騎馬の疾走シーンを何重にも合成させたものだという。ちなみに背景の空は、NHK特集の取材班が撮ってきたワシントンの夕空で、その一部を拡大して合成、しかも赤く着色したものなのだそうだ。それにしても、まったく違和感がないから不思議だ。

 

 

 

 

 100mジャンプも可能

 機能的には、こうした縮小・拡大・合成のほか、映像の回転、スローモーション、コマ落とし、残像(被写体が尾を引いて動いているように見える効果)といった表現も可能で、忍びが活躍する<真田太平記>には、まさにうってつけの新兵器といえる。

「池波正太郎さんの原作では、忍びの活躍が非常に科学的に描かれているんです。つまり、1日50里(約200km)も走ったり、何mも跳躍するといった超人的なことができるもの、厳しい鍛錬の結果なわけですね。それを映像で表現するとなると、荒唐無稽なことは、まずできない。かといって、普通の人間ではとてもじゃないが演じきれるものでもない。

 そこで電子の力を借りて表現してみようじゃないかということになったわけです」(演出担当の大原誠チーフ・ディレクター)。

 たとえば、第1回放送で、お江が20mもある谷底に飛び降りるシーンが登場したが、お江を演じる遥くららさんが飛んだのは、わずか2m。素ラジオで遥さんが踏み台から飛び降りる絵を撮って、それをロケの時撮影した谷の実景にDVEで合成。さらに遥さんの姿を縮小させて跳躍距離を強調し、あたかも20mも飛び降りたように見せた。

 技術的には、100mでもジャンプさせることもできるが「それじゃ、ちょっとやりすぎだしね。荒唐無稽の一歩手前でやめるようにしてます」(大原ディレクター)。

 また、忍びの動きに残像効果をつけると、実際にはそれほどの動きでもないのに、不思議なスピード感が出るという。

 

 

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