天然酵母を使ったパンのお話

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[NO 1 天然酵母と出会って7年] [NO 2 天然酵母パンとよく合うジャム] [NO 3 季節の贅沢 杏酵母]   

[NO 4 酵母と仲良くなろう]  [NO 5 恐るべし 酵母の力]  


 シャンツェでは天然酵母のパンを朝食にお出しています。 

10年程前にホシノ酵母と言う市販されている粉末の天然酵母と出会い、

天然酵母パンのおいしさに取り付かれてしまい、今では酵母から手作りするようになりました。

 天然酵母と言っても、野性酵母や自然醗酵種、酒種など様々な種類がありますが、シャンツェには

常に10種類以上の自家製酵母があり、酵母の状態や焼くパンの量に応じて使い分けています。

現在酵母の元にしている材料は

 ・ 山で採ってきた山葡萄やサル梨の実から

 ・ 季節折々の生の果物から、杏、リンゴ、ブルーベリー、キウイなどなど

 ・ 干し葡萄、ホシイモなど乾物から

 ・ 酒粕、小麦胚芽などから

いつでも2〜3種類の酵母パンを召し上がっていただくようにご用意しています。

どのパンも、イースト菌の3〜6倍の時間を掛けてじっくりと熟成させています。

それぞれに国産の小麦粉のうまみが活き、素朴な風味が味わえますが、

酵母の種類と醗酵状態によっても様々に味の変化が楽しめます。

 天然酵母のパンはすっぱくて固くて食べにくいというイメージのある方、反対に天然酵母のパンと

言ったってたいした違いはないと思っている方、どうぞ色々なパンを味わってみてください。

そしてシャンツェのパンの中に好みの味が見つかればうれしく思います。


NO 6  天然酵母パンを支える素材たちー小麦粉編

国内産小麦の特徴 

 シャンツェのパンはすべて国内産の小麦粉を使用しています。

 小麦にはグルテンという粘り気と弾力のある成分があり、グルテンが多いものは強力粉、

少ないものは薄力粉、中間は中力粉と分類されています。

グルテンが多いほど膨らむ力が強いので、パン作りには外国産のグルテン成分の多いものがよく利用

されています。

 シャンツェでは主に、北海道産の「はるゆたか」という小麦粉を使用しています。

国産小麦の中で最もグルテン量が多く外国産に近いふくらみがあり、北海道という土地柄、

農薬の使用も少なく、輸入の小麦粉のようにポストハーベストの心配もありません。

しばらくは、この「はるゆたか」にぞっこんでした。

しかし製パン用小麦として高まる人気に供給が追いつかず、手に入りにくいときもありました。

そんな時、他の国産小麦をつかってみたりしましたが、やはりふくらみの面では「はるゆたか」に勝るものは

ありません。 仕方なく、外国産の小麦粉を使ってみればなんとよく膨らむことでしょう。

材料の配合も条件も同じなのに、粉の種類が違うだけで国産小麦の倍も膨らむのです。

国産小麦がパン作りに向かないと言われるのも当然……と思いかけていました。

 ところが、この様に同時進行でいろいろな小麦を食べ比べていると、味の違いがはっきりと

わかる様になってきました。

軽くて、サクッとする外国産の小麦粉。 目がつまり、かみ応えのある国産小麦粉。

フカフカと空気を含んだパン。 かみしめて、うま味の広がるパン。……

 口当たりの面ではそれぞれの良さがありますが、

風味の面では国産小麦のほうがずーーと味わい深いのです。

よくふくらむ=おいしい粉ではない事を、その時身をもって(舌をもって)知りました。

 国産小麦のうま味と香り、そして薄力粉と強力粉の両方の性質のよさをうまく引き出すことによって

おいしいパンを作ることが出来ます。

 私達の暮らす風土の中で育った作物を大切に味わっていくという点からも、国産小麦が

もっとパン作りに利用されてほしいものです。

人気の高い「はるゆたか」

北海道江別市の江別製粉製(0120−415757)

全粒紛は皮や胚芽の混ざったもので、1〜2割ほど

加えることで、香ばしさと風味も増し、栄養価も高い。


NO 5   恐るべし、酵母の力

仕込んだばかりの定番レーズンコーボ(左)と

初挑戦! シロップ煮にした杏を取り出したあと

に、りんごを入れておいた所、酵母になりそう。

発酵し始め、泡が出始めてきた。 嬉しい!

1週間後に杏&りんご酵母パンが焼き上がるか?

冬になり、スキー、スノーボードのお客さんで賑わうようになるとパンを焼く量もぐっと増えます。

が、こちらの都合とは別に寒い冬には酵母の発酵力が弱くなり時間がかかる為、時々はイースト

のお世話になります。

 昨年は夏から秋の間、天然酵母のパンのみで用意してきました。 天然酵母のパンを食べ慣れていると

たまに作るイーストのパンは、それはそれでおいしく、忙しい時にはとても助かる便利なものですが、

やはり物足りなく思えてしまいます。

発酵した生地を成型する時もイーストで強制的に膨らまされた生地の感触は何だか頼りなく、天然酵母の

どっしりとした弾力のあるパン生地に頼もしさを感じます。

 8月に作ったブルーベリーの酵母、昨年は冬場まで持ち越せず夏限定で味わいましたが、今年は

夏の終わりにハチミツ(酵母の栄養)を混ぜ込んでおいたおかげで、冬にもブルーベリー酵母パンを焼くことが

出来ました.。

今は夏の元気な盛りの酵母と違い、力つきそうなほど弱々しい発酵力ですが、控えめながらしっかり旨味を

抱き込み、こぶりで硬くてムッチリした(.……失敗するとネッチョリになってしまいます)パンが出来ました。

冷蔵庫の中で休眠しながらもホソボソと菌の命をつなぎ、寒い冬にも力を出し切ってパンになってくれた

酵母の力に感動、感謝し、いとおしささえ感じてしまうのです。

 天然酵母のパン作りは、作る人の気持ちも熟成させ膨らませます。

自然の持ち味とゆったりとした時間が作り出すパンはおいしくて安全というだけでなく、

食べ物が恵みである事やその生命の力を教えてくれるのです。

色は夏の最盛期に作ったものより落ちていますが

パンそのものの味が、発酵に時間が掛かったせい

もあるのか落ち着いた、粉の味が生きたものに

仕上がっています。 フォッカッチャにして食べると

また美味。 ワインのおつまみにも最高!!

次回以降

パンに使う素材の話や、レシピなど紹介していく予定です。


NO4  酵母と仲良くなろう          9月

 この夏は、杏酵母、ラズベリー酵母、ブルーべりー酵母など、この時期にしか味わえない

パンをたくさん焼きました。

 

 

 夏は気温が高いので発酵がさかんになる為、天然酵母のパン作りもしやすい反面、

思った以上に短時間に発酵が進んでしまう事もあります。 

うっかりすると膨らみすぎてしまい、ダラリとダレテしまったパン生地は焼いても

張りがありません。 冬の間、待てども待てども膨らまず夜遅くやっと膨らみだし、

一人、シーンとした厨房でパンが焼きあがるのを待っていたのが嘘のようです。

 こうして数々の失敗を繰り返しながら、酵母のペースがわかってくるとうまい付き合い方が

出来るようになってきます。 酵母菌という微生物の活動するがままに任せ、

ちょうどよいタイミングで手を加えることによって、おいしいパンを焼くことが出来ます。

酵母は周りの環境に対応しながら着々と活動を続けていきます。 

熱を加えて焼き上げるまで生きているのです。

気温や湿度、そしてバターやミルクなど加える物、酵母の種類や古さによっても、

発酵状態が左右され仕上がりはいつも違います。 

それを不便と思うか、面白いと思うか、、、、、

そう、一番のコツは酵母にほれ込むことかもしれません。

相手の状態を見きわめ、ゆったりと付き合うゆとりが必要です。

自分の思い通りにしようとするとかえって振り回されます。 

恋人のように寄り添って、すべてがうまく折り合って、良いパンが焼きあがったときは、

オーブンを開けて、一人ニンマリしてしまいます。

 そしてそのパンを、おいしいと味わってくれる人がいればますます顔も緩むというものです。

 

NO3      季節の贅沢  杏(あんず)酵母  7月

 もうすぐ梅雨明け夏本番

シャンツェでは杏のシャムも仕上がり、その時一緒に仕込んでおいた杏の酵母も完成しました。

 杏などの果実から酵母を採る場合、瓶に果物と水を入れ暖かいところに放置しておくと

皮などに住み着いていた酵母菌が活動を始め発酵してきて、

5日くらいでサイダーのように泡が出るようになります。

 この液をそのままパンつくりに使えるのはせいぜい一週間、その後は発酵力がなくなります。

そこで、この液に小麦胚芽を混ぜ、その後も時々ぬかみそを混ぜるようにかき混ぜ小麦胚芽を

補充していくと発酵を保つことができ長く酵母として使うことができます。

うっかり混ぜるのを忘れると、すっぱくなってしまうこともぬかみそと一緒です。

 ぬかみその他、ヨーグルト、キムチ、納豆等発酵食品のパワーが最近注目されていますが、

天然酵母のパンも菌により熟成されたうまみと栄養成分が優れたものであることが見直されています。

そんなことはさておいて、まずは出来立ての杏酵母でパンを焼きましょう。

淡いベージュのほんのり杏色、そしてかみ締めると酸味の中にかすかな杏の香りが、……

確かに杏からの贈り物であることを実感しつつ、贅沢な気分にひたれるのです。

次回は、ラズベリーからとブルーべリーから採っている酵母の話を載せる予定です

 

NO2  1月25日

 天然酵母のパンは、ふんわりふかふかのパンとは違いゆっくりと時間をかけて熟成され、

少し重く硬めのパンに焼きあがります。 噛み締めてじっくりと味わううちに、粉の甘味と

酵母のうまみが感じられてきます。 まずパンのみを味わっていただくのが一番です。

パン好きの方の中には、何もつけずに小さくちぎって噛み締め、噛み締め食べて下さる

方もおり、嬉しい限りです。

 果物のジャムとも良く合います。 シャンツェのジャムは新鮮な果物と砂糖だけを煮詰めて

作ったので、果実の味が生きているのでしょう。 天然酵母のパンとの相性もよいのです。

作っているジャムの種類は5種類、杏、ブルーベリー、ネクタリン(黄桃)、プルーン、

林檎(ジャム用に最適の紅玉を使用しています)、どの果物からも天然の酵母を取り出すことが

出来ますが、そのパンを食べることが出きるのはその季節だけの旬の楽しみです。

 雪がとけ、住み込みのアルバイトの人たちが帰るとすっかり春!

ジャム作りのシーズンが始まります。 次の冬までの間、それぞれの季節ごとに

果物を作っているおなじみの農家を訪れるのも大事な年中行事です。

大なべでジャムを煮るのは家族全員の仕事です。 子供たちも皮をむいたり,きざんだり

つまみ食いにも忙しく、大張りきりです。

建物中に、果物の甘い香りが広がり幸せな気分に包まれます。

 私たちの暮らしは、どんどん便利になる一方で自然に根ざしたものから離れつつあります。

自分もその中で生きているのが現実ですが、ささやかながら

季節の実りをジャムにして、山のぶどうでジュースを作り、自家製酵母でパンを焼く……

そんな時間を通して、食べ物が自然の恵みであることや、自然に沿ったすごし方を

感じたいと思っています。

子供たちにもそんな生活を楽しんでおいてほしいし、幼い時の体験が財産になるよう

願っています。

そしてシャンツェを訪れてくれる方にもそうしたものでおもてなしをしていきたい。

………いろんな思いをたくさんつめこんで

              ゆっくりと膨らんでいくパンの発酵を見守るのです。……

 

no1

一般にも天然酵母のパンというものをずいぶん見かけるようになりました。

シャンツェで自家製のパンをお出しするようになって10年、

天然酵母のパンと出会って7年になります。

 イーストは、パン生地を同じ時間で、同じ品質のものが作られるように人工的に加工された

もので、均一に強力に発酵させる力があります。

 天然酵母は、もとの酵母菌の力をそのままパン作りに利用しているもので、天候、温度、湿度等

自然状況によってパンの出来上がりが大きく左右されます。

味はもちろんのこと、微生物の活動のままに、自然の成り行き任せで小麦粉(パン生地)が

熟成されていく、その過程を味わうことにも魅力があるのです。

季節ごとに,梅,ブルーベリー,りんご,ぶどう,天然の山ぶどう等から自家製酵母として

取り出し培養してパン作りに利用しています。

それぞれに,独特の香りと色,食感があり季節の味が楽しめます。

 冬場は元になる素材が少ないので,干しぶどうから酵母を起こしたり,市販のホシノ酵母を

使ったりしています。

天然酵母のパンは出来上がり迄に時間がかかるのと,仕上がりにむらが有るなどの理由で

一度にたくさんはできません。 すべてのパンを天然酵母で作っている訳では有りませんが

お客様の中にも,素朴で味わいのある天然酵母のパンのフアンは確実に増えています。

 粉と酵母,天然塩,そしてアルプスの水のみで作ったシンプルなものから,

バターやミルクを加えたリッチなもの,そして酵母の種類によっても味わいは様々です。

 好みも有りますが,特に天然酵母のパンを希望される方は予約時か

4〜5日前までにお申し出ください。 もちろん料金は一緒です。     

次回は発酵の写真を載せます。                                                      1998年12月12日

 

 

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