「a day of my life」 (1999) 原田知世
原田知世さんのことをはじめて知ったのは,もちろん(?)角川映画の”時を書ける少女”。
ビデオだかLDだかで見た。
1983年ということだから,かれこれ17年も前のことだ。
この映画を見た理由は,筒井康隆氏の原作だからだった。
映画と同じタイトルの曲も売れたので,よく憶えている。
可愛い娘だな〜 14歳にしては演技上手いな〜 とは思ったけど,とりみき氏ほどには熱烈なファンにはならなかった。
大売れした”私をスキーに連れてって”もいまだに見ていない。
時は流れてムーンライダーズの結成20周年記念の番組がNHKで放送され,ここに知世さんが登場したのであった。
そういや,鈴木慶一氏が知世さんのプロデュースをやってたって話を聴いたことがあるよな〜
ってなわけで,ちょいと聴いてみるかな〜 ということになり,タイミング良く,ほどなく"clover"が発売された。1996年のことであった。
"clover"は,半分が慶一氏のプロデュース,半分がスウエーデン録音で,ミュージシャンはスウエーデンの人達。
カーディガンズでも知られるトーレ・ヨハンセン氏のプロデュースになっている。
これは素晴らしい作品だったが,どっちかというと,慶一氏がプロデュースした楽曲の方が良いと思った。
翌年には,トーレ・ヨハンセン氏がフル・プロデュースした"I
could be free"が発表された。
この作品は期待を裏切らない傑作であり,各所のベストアルバムに選ばれるなど,評判の高い作品だ。
この後にもスウエーデン録音の"blue orange"が発売され,スウエディッシュ・ポップ三部作と言われた。
この間に,私は慶一氏がプロデュースした旧作などを物色し,"kako"
"Garden" はなかなか気に入った。
ここで選んだ"a day of my life"は,スウエーデンのウルフ・トレッセンが作曲した作品も多いが,演奏者と録音は日本で,知世さんの作詞・作曲した曲も半分ほどある,初のセルフ・プロデュース作品になっている。
アルバムの売れ行きと評価は,おそらく"I
could be free"が最も高いと思う。
今聴くと,なるほどこれは珠玉のポップス集といえるもので,曲も歌詞も粒よりだが,録音が少々雑い感じがする。この荒っぽいところがかえって良い感じもするんだけどね。
これに比べると"a day of my life"は如何にも日本的で,まとまりが良いが,そのまとまりの良すぎるところがあまり刺激的ではない様で,音楽雑誌でもさほど評価が高くはなかったと思う。
私も最初はちょっと物足りない感じがしていたのだけど,いつの間にか愛聴盤になっていた。
サウンドは何気ない70年代のもの。そつがなさすぎる,波状がなさすぎるとも言えるかもしれない。
でも改めて考えると,このさりげなさが彼女の持ち味と良くまっちしていて,たいへん心地よい。何より表現力を増し,自信に溢れたボーカルが素晴らしい。
特に"road and blue sky" "秘密のキス"
"You can jump into the fire"
と言った曲の歌詞は,自分にとって,とても力強い勇気を与えてくれるもので,次第に特別な印象を持つようになった。
シンプルで何気ない歌詞と曲と演奏でも,人の心を揺さぶることが出来るんだよ,と教えてくれた。
あの頼りなげに唄っていた少女は,りっぱに成長し,僕にとってなくてはならない音楽を作ってくれるようになった。