「Beautiful freak, eels」 (1996)


  鰻達という奇妙な名前を持ったこのバンドのことは,ミュージック・マガジン誌で知り,ドリームワーク・レコードがはじめて送る新人ということ,ジャケットが変だということで,一度も音を聴かずに購入した。
  ボーカルとソング・ライティングを務める"E"という人が中心のバンドで,Eによる個人バンドの色彩が強いみたい。
  これまでに3枚のアルバムをコンスタントに発表し,安定して人気を保っているようだが,日本ではブレークというところまでは行っていないようだ。
  その3枚のジャケットにはどれも子供が登場している。
  Eという人は青少年期に大きな環境の変化(お姉さんが自殺したり)を受け,トラウマを体験している様に伝えられている。
  そのせいか,米国の音楽としては(ワタシの音楽の聴き方が脆弱なためだろうけど),異例に暗い様に感じる。
  その雰囲気を最も伝えているのがこのアルバムだ。一番ロック寄り,バンド的な音かもしれない。
  2枚目の"electric-shock blues" は前半エレクトリックな,後半はとてもフォーキーなサウンド作り。最新作の"daisies of the galaxy"は相当にフォーキーな音だ。
  フォーキーな部分とエレクトロニックな部分とを併せ持つ点で,最初ベックの個性と類似する点があると感じていたけど,両者の最新作を聴くと,まったく異なると感じた。
  eels の一番気に入っているところは,渋いEのボーカル(ちょっとドン・ヘンリーに声が似ているかも)とサウンド作り,そしてやはり歌詞。
  非常に内省的で,神経症の様な過敏な感情を歌にしている。暗いユーモアや絶望感を漂わせる雰囲気は,一時期の戸川純の歌詞の感触とちょっと似ているが,純ちゃんの様には芝居がかってはいない(貶しているんではないよ。純ちゃん大好き。誤解しないでね)。
  たぶんEよりも,自分の方がずっと安全な場所にいる幸せな人なわけで,他人の不幸を楽しむ様な歌詞の聴き方は良くないと思ってしまうこともある。
  それはそうと,繰り返し聴く鰻達の音は暗いポップスで,これって案外自分自身の性格を反映しているのかもしれないな〜