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とりあえずは、店のおすすめスペシャル昼食セットを10人前。 追加で鳥の唐揚げや、小エビのフライ、ミモザサラダなんかを注文する。 その子の為には、子供用にポーションを少なくしたランチセットと、レシスのジュース。 『オレの子』だから、という理由で、少女の払いは、オレ持ちだった。 ふと気がつくと、リナの分の払いもいつの間にかオレ持ちということに決まっている。 なんでそうなったんだか、オレにはどうしてもわからなかった。 ま、いつものことではあるんだが。 「うーん」 首を振りながらリナが戻って来た。 オレの隣の椅子をかたんと音を立てて引き、あまり行儀のいいとは言えない仕草で座りこむ。 オレは、リナの前に、一応半分だけ残しておいた鳥の唐揚げの皿を押しやった。 リナが、半分無意識の動作で、フォークを握り、ひとつふたつ唐揚げを口に放り込む。 それを飲み込んでから、おもむろに口を開いた。 「今、とりあえず、店の親父さんや、近くにいた人に聞いてみたんだけどね、この辺りで、この子を見かけたことはないんだって」 リナのフォークが、次の唐揚げに突き刺さった。 少女は、自分の名前を言ったほかは、ほとんどなにもしゃべっていない。 待ち合わせ場所からここに来る前、リナは一応、その辺りに店を出していたおっちゃんおばちゃんにも聞いて回ってはみたのだが、その人達にも、どうやら心当たりはないらしかった。 「まあ、この街も、そう小さな街っていうわけでもないんだから、この子を見たことがないってのは当然ありうる話なんだけど………。この子って、結構目立つわよねえ」 リナがちらりと少女に目線を投げる。 オレもつられて少女を見た。 少女は大人しく自分用に用意された席に座り、ジュースを入れてもらったカップを両手で持って飲んでいる。 その仕草がまだあどけなさを残していて、可愛らしい。 そのきらきら光る髪といい、整った顔立ちといい、確かに人目を引くには十分な少女だった。 「少なくともこのあたりに住んでる子じゃない可能性は高いわね。まあ、着ているものはそんなに悪いものじゃないし、育ちも結構良さそうだし───、こんなところには足を踏み入れたことのない、どっかのお嬢ちゃんって線も結構有力なんだけど………」 唐揚げつきのフォークをぴこぴこ振りながらリナが言う。 「最悪、この子って、この街の子じゃあないのかもしれないわ。どうしたもんかしらね」 考え深げにリナが自分の分のジュースを手に取った。 いつの間にか、唐揚げの皿はきれいになっている。 さり気なくのばされたリナのフォークから、オレはスペシャル昼食セットのフライをかばった。左手で自分の皿を引き寄せると、代わりにピーマンのいっぱい入った炒め物の皿をリナの前に差し出してみる。 リナが小さく舌打ちして、わざとらしくピーマンにフォークを突き刺した。 「まあ、とりあえず、この子自身の口から事情を話してもらわないと、どうにもならないようだわね」 リナが少女に向き直った。 「ねえ。どうして家族の人がどこにいるのかも言えないの? 家出? そーゆーことなら相談のうえ、協力しないこともないんだけど………」 「………おい、リナ………」 いたいけな子ども相手に何を言うやら。 すると、思いのほか真剣にリナが言った。 「あのね、ガウリイ。あんたがどーゆー環境で育ってきたのかなんてことは興味もないし、聞かないけど。幼心に、家出を決意しちゃう環境ってのは、この世の中には確かにあるのよ」 その目つきが妙に据わっている。 例の「郷里のねーちゃん」がらみで、何かヤなことでもあったんだろうか、もしかして。 引きつるオレを後目に、リナは再び少女に問いかけた。 「ね、事情を聞いた後のことは、相談次第ってことにしてあげるから、これからあなたがどうしたいのかだけでも教えてくれないかな?」 少女がじっとリナを見た。 ことんと音をたてて、テーブルの上にカップを置く。 そして、リナに向かって、何か言おうと口を開きかけた。 その表情が、何かにおびえたように、ふと堅くなる。 オレは戸口の方にちらりと視線を投げた。 何気ない動作だったはずだが、それにリナが敏感に反応するのがわかる。 声をかける必要もない。 リナが剣士としても優秀だということを、こういう時に思い出す。 リナがどこか楽しそうな笑みを浮かべた。 オレ達は黙ったまま、相手の出方を待っていた。 お待ちかねの相手は、定石どおり、オレ達の方を目指してやってくる。
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