kyo
ふと顔を上げると、こちらを見ているガウリイと目が合った。
あたしはあわてて視線を逸らす。
あの視線が………あたしは、怖い。
ガウリイがあたしを見ている、ただそれだけのことなのに。
そう思い始めたのは、何時からだったろう。
変わったのはあたしか………それともガウリイなんだろうか。
あの深い眼差しを一度でも覗き込んでしまったら、
戻ることなんて、きっとできない。
それが判っているのに、
ふと、引き込まれたくなる自分がいることが、
あたしは何よりも、怖い。
好奇心?
それは勿論。
でも、それだけじゃ誤魔化しきれない理由を、あたしは知っている。
がたん、と椅子がひかれる音がやけに大きく響いた。
こつこつとブーツの堅い足音が、あたしの方に近寄ってくる。
あたしはゆっくりと顔を上げる。
判っている。
このままいれば、何がおきるのか。
でも、あたしはただ黙って近づいてくるガウリイをじっと見つめた。
その蒼い目を。
普段は意識しない、その力強い動きを。
掠れた声が、小さくあたしの名前を呼ぶ。
力強い腕が、さらうようにあたしを抱き寄せる。
言葉は全て失われ、
本がかたりとあたしの手から滑り落ちる。
───そして、雨の音は、もう聞こえない───。