東名ハイウェイバス各駅停車の旅


東京→御殿場 渋滞にも負けず

10月8日日曜日午前6時52分、総武線地下ホームに到着。今日は3連休の中日である。本来ならば道路が混雑しない平日に実行したかったが、休みが取れないのであればやむをえない。名古屋の宿とも絡めると、結局中日出発になってしまった。総武線快速ホームから八重洲南口まではかなりの距離があることは百も承知だが、このルートが家から最も早いと思われるので仕方ない。
既に乗車券は先週、会社の帰りがけにわざわざ八重洲南口まで下見がてら赴いたときに購入済みである。そのとき東名ハイウェイバスの乗り場は八重洲中央口から出たほうが近いと認識したにもかかわらず八重洲南口から出るのは、ひとえにトイレのためである。旅に出るのにこんなにドキドキすると同時に緊張するのは、久しぶりだ。

そんなこんなで7時5分頃にバスターミナルへ。本日乗車するバスは、東京駅7時30分発静岡駅行急行305便と、静岡駅11時30分発名古屋駅行急行557便である。やはり東名ハイウェイバスに乗るからには、初めは全部停まるやつに乗って行きたい。ところが東京から名古屋への直行便は超特急クラスばかりで、全停留所に停まる急行は静岡で分断されている。従って、静岡で乗り換える必要が出てくる。わざわざ静岡駅まで行かずとも東名静岡バス停で乗り継ぐことも可能なのだが、そこはそれ、終点まで行かねば全部乗ったことにならない。さらに途中の停留所から乗り込むと、一番前のいい席を逃す可能性がある。
この急行乗り継ぎは静岡以西は急行便の本数が減るため選択肢が限られてくるのだが、その中で最も早く東京を出るものを選択。あまり遅いと渋滞に巻き込まれかねないし、名古屋での時間を多めに持ちたかったからだ。静岡駅での乗継時間は1時間だが、バスが遅れても当然待ってはくれない。その場合は電車で行けばいいやと開き直っての乗り継ぎである。
*東名ハイウェイバスは2006年12月15日にダイヤ改正を行い、静岡以西は各駅停車となる東京駅〜名古屋駅の特急便が多数登場したことにより静岡駅〜名古屋駅間の急行便はさらに減便された。現在10月当時の行程は不可能になっている。
八重洲口1番乗り場には7時10分発の昼特急大阪行が改札を行っていて、静岡行のレーンで次のバスを待っている人が15人近く並んでいた。昼特急大阪行は座席指定制なので、乗車前にいちいち確認して改札作業を行っている。そのため定刻より数分遅れて発車していった。ドリーム号の間合い運用なので3列シートなのだろう。2階の一番前に座って大阪までの景色を堪能したい気分になる。次回はこれに乗車しようかな。
前に並んでいた15人は、7時20分発の特急浜松駅行があり全員がそちらに乗車してしまう。浜松行の乗車レーンは別にあるのだからそっちに並んでくれればいいのに、30分前に来てもトップじゃないのかと絶望しそうになったではないか。結局7時30分発静岡行バスは1番乗車となった。景色がいい左側1番前の席に座る。4番目くらいに乗ってきた酔っ払いのオッサンが「今日は日射しがあるからな、俺ァ右側に座るんだ」と誰ともなしに喋っている。しまった、左側はつまるところ南向きだからほとんど日射しを受けるではないか。単純に景色だけを考えて左側に座ったのに、まさか思考回路でこんな酔っ払いに負けるとは。まさか奴は東名バスのプロか?

20分発の浜松行に乗り遅れた人が「切符は浜松だが乗車は静岡までで構わない」条件で乗ることになったりして、乗客は15人弱で出発。客層は若い女性の2人組や酔っ払いのオッサンなど様々。既に次の8時発超特急名古屋行を待っている人がいた。やはり名古屋行は30分前では遅いのか。以前の下りは宝町から首都高速に乗っていたそうだが、今は上り同様霞が関ランプかららしい。さっそく山手線の内側に入るのは、銀座有楽町の混雑地域を避けるためなのだろう。日比谷公園の東側を走り、外務省と財務省の間を抜け、忌まわしき内閣法制局がある4号館を見ながら首都高速に乗線。
環状線からすぐに3号線に入る。道路は空いているのにやけにゆっくり走っているなあと思ったら、しっかりと時速60キロを守っているのであった。出発時に「安全運転を心がける」と車内放送があっただけのことはある。いっぽう対抗の上り車線はやはりというべきか、渋谷付近で混雑していた。まあ8時前じゃな。今日の東名高速は予想通りというか、横浜から厚木にかけて渋滞があるとのこと、早速電光掲示板が教えてくれる。
用賀を過ぎて東名高速に入るとようやく時速95キロ程度で走り出す。100キロを超えないあたりは流石である。東京料金所を過ぎたところにあるのが最初の停留所、向ヶ丘。「むかいがおか」と発音していたが、こちらが本来の読みなのだそうだ。次はほとんどのバスが停まる江田だが、ここでも乗車はなし。横浜青葉ICを過ぎて港北PAの合流地点からいよいよ渋滞が発生する。そのままのろのろと横浜町田ICを通過。一旦は流れ出したものの再び海老名SAの合流地点で止まってしまった。やはり合流地点が渋滞のネックである。

厚木ICを過ぎると流れが良くなるが、徐行して通過するバス停の時刻表を見ると20分近く遅れている模様。さらに今度は御殿場出口付近で渋滞との電光掲示板表示。大井バス停で初めて途中乗車があった。途中乗車の場合は運転手に行き先を告げて乗車券を発行してもらうが、名古屋まで行くらしい。御殿場か静岡で乗り継ぐということなのだろう。このバスは20分近く遅れているから、最低20分は待ったに違いない。大井松田ICを過ぎると左ルートと右ルートに分かれる。バスは左ルートを行くが、左と右は実際のところ平行していてルートに違いがあるわけではない。上り線に3車線の新ルートを作ったので従来の上り線を右ルートとして再利用しているということらしい。実質4車線区間であり、かなりすらすらと車も通っている。

御殿場→静岡 絶好のロケーションを行く

足柄SAを過ぎると御殿場出口が近づくが、左車線だけ混雑している。御殿場で出る車線だけが混雑している模様だ。と思ったら、バスも出口付近で出口車線に変更。御殿場バス停はICに併設されているのだが、料金所付近にバス停があるのでそこまで行かねばならないのだ。御殿場ICは第一出口と第二出口があり、混雑を避けようとする努力が伺える。バス停がある御殿場第一出口は、東京方からの非ETC車の出口が実質1車線しかなく、渋滞の原因が判明する。今の時間帯だと富士や箱根への旅行客が多い時間帯なので、ETCレーンはスカスカなのに自家用車のETC装備率が低いために、どの車も非ETCレーンに並んでいるのであった。名古屋方からの非ETCレーンが2車線あるのもこれまた疑問である。構造的にどう考えてもおかしい。

10分以上かけてバスはようやく御殿場バス停へ。乗降共にあり、さきほど大井で乗車した客も降りた。ここで次の名古屋行を待つようだ。結局30分近く遅れている。御殿場は東京方面の直通電車も新宿発着の「あさぎり」しかないということでバス路線が意外と使われているらしく、乗降客数は東京名古屋静岡を除けばトップクラスであるという話だ。新宿から御殿場・箱根行きの小田急バスもあるくらいである。ここまで途中休憩もなく、だんだん尿意を催してくる。休憩は愛鷹PAで行うそうだが、愛鷹は沼津の先とあってもう少し時間がかかる。

沼津バス停もIC併設型だが、御殿場とは違い料金所の外に出てしまう。沼津は大きな街のくせに急行便以外停まらないのだが、このバス停の構造も関係しているかもしれない。確かにこれは時間的ロスが大きい。沼津の次がようやくPA併設型バス停の愛鷹で、10分の休憩。とりあえずトイレに行くが、PAの規模自体はあまり大きくなく、売店をちょっと拝見しただけでバスに戻る。彼方に駿河湾が見え、ロケーションはいい。ここまで来てしまえば、あとは駿河湾に沿って走るだけ。蒲原バス停の景色の良さや由比PA付近の国道1号・東海道本線との並走をたっぷり楽しむ。乗降は富士や蒲原で少しある程度。清水で「静岡まで」と言って客が乗ってきたのはびっくりした。静岡バス停はIC併設型であり、半分弱の人がここで降りた。おそらく静岡以西へ乗り継ぐのであろう(静岡駅での乗継ぎは認められていないようである)。結局30分の遅れを取り戻せぬまま11時頃に終点静岡駅に到着した。

静岡→浜名湖 なにげに乗車ゾーン

静岡駅では30分の待ち合わせで急行名古屋駅行に乗り換える。静岡の駅ビル内をふらふらと歩くが、特に目を引くようなものはない。景色が見やすい席をゲットすべく、15分前に乗車列へ。誰もいなくて、案内はあるがここで良いのか少し不安になる。
急行の名古屋駅行は僅か6人の客を乗せて発車。と思ったら静岡ICバス停で10人くらい乗車して先ほどと乗車人員は変わらなくなる。中にはさっきの急行静岡駅行きで見かけた人もいる。再び東名高速に乗車し、日本坂トンネル付近ではなんと本線上に信号機を見かける。帰宅後調べてみたら、昔、このトンネルで大火災事故があって、その教訓としてここだけは信号機があるのだそうだ。この付近ではさっきの御殿場とは逆で、下りに3車線の新線を作ったので旧下り線を上り線右ルートとして再利用している模様。静岡付近では一番混む所なのだろう。

焼津西や菊川でそれぞれ2〜3人ずつの乗車があり、さっきの静岡行よりも混んでいるかもしれない。また、大井川では10人くらいの待ち人がいたが誰一人として乗らなかった。バス停を良く見たら、静岡発中部国際空港行のバスも出ているみたいで、そっちの待ち人なもかもしれない。IC併設の吉田バス停でも3人の乗車。実は吉田町は東海道線上に駅がなく、東京や名古屋へ乗換えなしに行くには高速バスが最適な交通手段である。そんなこともあって東名間バス停の中でも乗降客は多い方であるらしい。東名超特急もわざわざ料金所付近まで出向いて停車する。静岡〜浜松北間で超特急が唯一停車するのが吉田バス停であるという事実も非常に興味深い。沿線自治体の規模に必ずしもとらわれず、乗降客数の実態に即した停車駅選定が覗える。

浜松ICを通過。東名間主要都市の中で、浜松は珍しくバス停がない。最寄りは浜松北バス停で、ここは遠州鉄道の駅にも近いのだそうだ。ここでは乗る客1名、降りる客2名。その浜松北バス停付近で、静岡を同分発車のはずがおそらく御殿場までの渋滞に巻き込まれて遅れていた超特急名古屋行と、続いてやはり遅れているだろう昼特急大阪行に抜かれる。鉄道の如く多くの種別と停車駅パターンがあるのが東名ハイウェイバスが他の高速バス路線と違う大きな箇所であるが、鉄道と違ってどこで追い抜きがあろうと構わないのが東名ハイウェイバスのダイヤ作成に自由性を与えていると思う。

浜名湖→名古屋 横風びゅーびゅー

浜名湖SAに到着し、10分の休憩。浜名湖は東名間で凡そ4分の3の位置にあるだけでなく、東京〜大阪間でのほぼ中間点に位置する重要地点である。SAには先ほど抜かれた超特急と昼特急も休憩していて、見事なバスの3並びが見られる。どう見ても急行が一番みすぼらしい。ここで超特急に乗り換えた人もいたみたいだった。確かに超特急の方が名古屋到着は早いだろうが、正式なバス停でもない(浜名湖SAと浜名湖バス停は100mくらい離れている)のに、そんなことができるのか。
新幹線も東海道本線も国道1号も浜名湖の南側を通るのに対し、東名高速(と天竜浜名湖鉄道)だけは北岸を走る。吉田バス停同様のそういった特異性もあってか、東名超特急も浜名湖バス停に停車する。休憩所で普段は見られない北岸からの景色を堪能しようとするが、風が強くてそれどころではない。超特急に遅れること数分、昼特急はまだ停まっていたけど急行名古屋行は出発。長距離を走るから休憩時間が違うんだろうが、昼特急にはまたどこかで抜かれてしまうんだろう。

三ケ日バス停付近ではこれまでも何度か見た工事中の高架橋を見かける。これがいわゆる第二東名なのだろうか。現状の東名高速が今日のような日曜日でさえも一部を除いて普通に流れているのに、更にもう1本作る必要性はあまり感じられない。IC併設の豊川バス停は、久々に料金所の外にあるバス停。ここから本線上に戻るときに、先ほど浜名湖で追い抜いた昼特急に再び抜かれる。本宿バス停が近づくと、鉄道の架線柱が高速道路に寄ってくる(防音壁のため、架線柱から下はよく見えない)。やがて架線柱が複雑に分岐し、駅の様相を見せてくる。もしかしたら名鉄の本宿駅ではないだろうか、と思う間もなくこちらも本宿バス停に到着。ここまで鉄道駅と高速道路のバス停が近い例はあまり見かけない。「鉄道駅まで徒歩45分」とか「付近を45分間隔で路線バスが通る」などが一般的な高速道路上のバス停群の中で、交通アクセスの良さはダントツだと思われる。

豊田バス停から客が降り始める。この頃になると、バス停ごとの類型が見えてきた。IC併設型のバス停は料金所まで降りたところにバス停がある。その中でも沼津、豊川、岡崎は料金所の外に出てしまい、菊川と吉田は料金所の中にはあるが入場車線を横切る必要がある。秦野、掛川は例外で本線上にバス停がある。一方PAやSA併設型は、愛鷹や富士川の完全に駐車場付近にバス停があるものと、日本平、牧の原、浜名湖のような、駐車場を出て本線に向かう途中にバス停があるものに分かれる。秦野と掛川が例外になっている理由は、バス停よりもICの方が後からできたのではないかと推測される。

バスは名古屋ICで東名を降り、名古屋インターバス停に停車する。ここは地下鉄本郷駅が近いらしい。旅も終わりに近い。今までは5〜6分の遅れだったが、名古屋市街地に入ってきたので渋滞が目立つようになってきた。名古屋インターの次の星が丘バス停で降りるべきかどうか迷うが、降りたところで慢性的に混雑している東山線に乗るしか途はないので、中央線に乗換え可能な次の千種駅まで我慢してみることにする。その星が丘は付近への路線バスの一大バスターミナルとなっており、その規模に驚く。星が丘を過ぎると東山公園や本山など、ほぼ東山線の上の道路を走っている模様。渋滞もひどくなり、千種駅前で降りることを決意。

結局東名間の完全走破はならなかったが、千種まで来れただけでも大満足である。今回は渋滞らしい渋滞に遭わなかったという幸運もあって、とてもいい旅になった。事故渋滞なぞに遭ってしまったら全く動かないからな。あとから聞いた話だと東名高速は平日のほうが混雑が激しい(長距離トラックのせいで)そうで、そういう意味でもいい旅行であった。
これでバス旅行に目覚めてしまったのだが、次なる目標は東京から京都大阪への「昼特急」か、新宿から中央道経由名古屋行「中央ライナー」がいいかなと思っている。いずれにせよ移動だけで半日〜1日を使う旅になるため、当日の行程にはかなり余裕を持たねばならないのが、時刻表信者には難しいところである。そして最終目標は上野〜青森間を10時間かけて結ぶ「上野青森号」。おそらく「キング・オブ・昼行バス」である。さてさてこれに乗れるまで興味が続いているのか不安であるが、昼特急だけは乗っておきたいと思うこのごろである。

 

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