犀川渓谷の自然


 辰巳ダム建設によって水没させられる一帯は、犀川の上流域から中流域への移行部にあたり、人工化されておらず、草原、渓谷が、切り立つ岩肌の厳しさとあいまって神秘的な自然美をみせている。都市化のなかで人工化された河川ばかりが目に付く今日、市街地にほど近く手付かずの自然が残る極めて稀な地域である。
 人口45万人の都市・金沢の都心から車でわずか15分ほどのところにこのような自然の姿の川が生き残っていることは、現在の日本の河川の現状を考えると、ほとんど奇跡的とさえいえる。

 生息する野生動植物も多く、暖地性のコモチシダ、イブキシダなどのシダ類、ヤマセミ、アカショウビンなどの野鳥、テン、ユビナガコウモリそしてハコネサンショウウオなどから、最近では国の特別天然記念物のカモシカも見られ、生態学的にも貴重な地域であり、すぐれたビオトープであるといえる。

 海岸、湖沼、河川、森林等、都市化の進行するなかで身近な生物の生息環境が破壊され消失し、あるものはその数が減少しまたあるものは絶滅の危機にあるなど、生物多様性の維持が重要課題となっている。
 いま、ビオトープ保全が強く求められている。

 先に改正された都市緑地保全法において、動植物の生息地・生育地を保全する必要があるとして自治体行政に強くその保全を求めてもいる。

 辰巳ダム建設計画のために実施された県の環境評価書で、法令により指定されたもの、特に保護すべきものはなしとして、詳しい調査は不要としているのは、今日の環境保護・野生生物保護の流れに逆行するものである。

 ダム建設により貴重な犀川渓谷の自然が失われることを許してはならない。

本間勝美(辰巳の会常任理事)


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