2.犀川渓谷の貴重な自然を破壊する


 このように、辰巳ダムはまったく必要のないムダなダムであるが、ただムダだというだけでなく、実に有害なダムである。

 辰巳ダムによって水没することになる犀川渓谷には、非常に豊かな自然環境が残されている。45万人の人口を擁する都市の都心からわずか10キロほどのところに、人工の構造物がまったくない自然の川が残されているのは、全国的にもきわめてまれなことである。犀川渓谷の自然のページ参照)
 犀川渓谷は、都市に残された貴重な自然環境として、ぜひとも保護されなければならないものである。

 また、深いV字谷であるため、犀川渓谷の自然環境は、周囲の環境とは異なった、雪国としては独特のものになっている。イブキシダやコモチシダといった暖地性のシダ類の繁殖の北限となっていることは、その特徴をよくあらわしている。
 石川県は、ダム建設にあたってイブキシダなどを他へ移植し保護するとしているが、これはまったく見当はずれである。これらの暖地性シダ類は、南の地方では別に珍しいものではない。シダが貴重なのではなく、南の植物が雪国で繁殖している環境そのものが、貴重なのである。

 この貴重な自然環境を、辰巳ダムは破壊するのである。


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