『所見』執筆者氏名等の非公開の撤回について

(2000年1月12日掲載)


 県が市民グループをだまし討ちにして公共事業評価監視委員会に提出した秘密文書の執筆者氏名等が、情報公開において非公開あつかいされていましたが、辰巳の会の異議申し立てののち、県が非公開を撤回しました。

 異議申し立てとは関係なく「事情変更」が理由だとしていますが、公開で審議する情報公開審査会に諮問すればかえって傷が深くなるだけだと公開に踏み切ったものと思われます。


『所見』執筆者氏名等の非公開の撤回について

2000年1月11日

兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会
事務局長 碇山 洋

(1) 辰巳の会が情報公開条例にもとづいて『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』およびそれに関連する公文書を昨年10月7日に入手したところ、『所見』執筆者の所属・氏名等が非公開とされ、黒塗りされていた。辰巳の会は、この一部非公開を不服として、谷本知事あてに異議申立書を提出(12月1日)していたが、「公文書部分公開決定撤回通知書」(河開第221号、1月5日付)と黒塗りされていない公文書が、1月7日、郵送で届いた。
 いったん非公開とされていた部分がすべて公開されており、異議申立書における辰巳の会の道理ある主張を前に、県が一部非公開を撤回せざるを得なかったわけで、今後の情報公開制度の運用に影響を与える市民運動の貴重な成果である。
   (この間の経過については、http://www2u.biglobe.ne.jp/~saigawa/archive.html 参照。)

(2) 異議申立書で公開を求め、今回公開された情報は、以下のとおり。
   (下線部が、いったん非公開として黒塗りされ、今回公開された部分)

 @辰巳ダム継続の結論を得るために県が市民グループをだまし討ちにして公共事業評価監視委員会に提出した秘密文書『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』の執筆者に関する情報

氏名 藤田裕一郎
所属 岐阜大学工学部

 A県河川開発課職員が岐阜大学を訪ねて藤田氏に『所見』執筆を依頼した際に同行した監視委員に関する情報

氏名 川村国夫
所属 金沢工業大学

(3) 「撤回通知書」は、「請求のあった下記公文書については…(中略)…部分公開の決定をしましたが、その後の事情変更により、部分公開とした決定を撤回し全部公開することとしました」としているが、どのような「事情変更」があったのかについては何も述べられていない。「撤回通知書」の到着に先立って、県行政情報サービスセンターから電話で趣旨などの説明があった(1月6日)が、今回の部分公開決定撤回は異議申し立てに対してのものではなく、部分公開決定(10月4日)以後の事情の変化を考慮して河川開発課が独自に行ったものであるという説明であった。あわせて、ことを荒立てないために異議申立書を取り下げてほしいという河川開発課の意向が伝えられた。

 これは受けいれがたい話である。

 辰巳の会が異議申立書で問題としたのは、県による情報公開条例第9条の曲解、恣意的濫用であった。しかし、「撤回通知書」は「事情変更」があったから全部公開するとしている。つまり、部分公開決定時点における県の条例の解釈・適用に誤りはなく、ただ事情が変わったから全部公開するというのである。「異議申立書を取り下げてほしい」という話とあわせ、一部非公開を撤回せざるを得なくなっても、条例の解釈・適用における誤りを認めようとせず、問題をうやむやに終わらせようとする行政の旧態依然の体質には失望の念を禁じえない。「異議申立書の内容を検討した結果、全部公開することとしました」くらいのことがなぜ言えないのか、市民感覚からはとうてい理解できないことである。

 辰巳の会は、異議申立書の取り下げを拒否した。

 県が言うようにほんとうに事情変更による公開であるのなら、“10月4日時点の事情における非公開”にたいする異議申し立てについて県情報公開審査会で審議されなければ、県の条例解釈・適用の是非が不問に付されることになる。知事に対し、異議申立書について情報公開審査会に諮問することを求めるものである。また、あわせて、情報公開審査会に対し、知事からの諮問の有無に関わらず、異議申立書について審議されることを求めるものである。

 条例の解釈・適用の誤りを認めずにいながら情報公開審査会での公開の審議を避け、問題をうやむやに終わらせようとする県の姿勢は、看過できるものではない。


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