ソーシャルスキルって、どこまで必要なの?

「自閉症」は社会性の障害だから、最も大切なのは「ソーシャルスキル・トレーニング」だということには、異論はありません。だって、身に付いていないと、本当に困ることだから。それこそ、普通なら生まれつき備わっていることを、意識して"教わらなければならない"のです。たとえ、見掛け上はちゃんとやっているようでも本当に解かっているわけではないので、「何が・欠けていて」「何を・どう指導したらいいか」知っている人が、日常の様々な場面で、根気よく教え続けなければならないのです。(さもなくば、一生かけて介助するしかありません。でも、たいていの場合、介助者の方が余命が短い。)

よく言われている項目の中で、以下のものは円滑な人間関係を維持するために、というよりは自分が困らないために、最低限の必要なことでしょう。

  1. 呼ばれたら返事をする。呼ばれたら相手の顔を見る。
  2. 人が指差しした方向を見る。どこかよく判らなくても、とりあえず関心を示してそっちを向く。
  3. 相手の顔の表情が意味する「感情」を知る。
  4. 相手の顔の表情やしぐさなどを見て、何をしているのか分かる。
  5. 自分がしたことに対する相手の反応を見て、○なのか×なのか見分ける。
  6. 他者が痛がったり苦しがったりしている時に、自分がどうすればいいのか分かる。
  7. 自分が悪いことをした時には、(その行動に対して)素直に謝る。
  8. 相手の好意に感謝の気持ちを表す。「ありがとう」と言える。
  9. 自分が落とした物は拾う・倒した物は直す・こぼした物は拭く。
  10. 自分の所持品と他人の所持品を識別する。
  11. 人に借りた物は慎重に取り扱い、使い終わったら返す。
  12. 時間や場所で行動を仕切り、始める前には「したく」を終わったら「片付け」をする。
  13. みっともない服の着方をしない。
  14. 声の大きさとしゃべり方を、場所や状況によって調節する。
  15. 何かしている人の動きを邪魔する位置に立たない。
  16. 話をしている人の間に立ったり、人の視線を遮る場所に立たない。
  17. 順番を守る。並んでいる列の一番後ろにつく。
  18. 勝ったり負けたりすることを引き受ける。
  19. 興味を持った物に、すぐに手を出して触らない。
  20. いきなり人に触ったり・抱きついたり・叩いたりしない。
  21. 他に人がいる所では、独り占めしない。
  22. 他に欲しい人がいる時には、みんなで分ける。
  23. 他の人が話している時には、話し終えるまで待つ。
  24. 自分が話し始めるタイミングをつかむ。
  25. 相手の態度から、自分が話し終える必要を感じ取る。
  26. 自分の「こだわり」を通して良い場所(プライベートな場面)と、自分の「こだわり」を抑えなければいけない場所(社会的な場面)を区別する。
  27. ルールがあって全員がそれに従わなければならない場所(社会的な場面や構造化された場面)と、話し合って決めていく場所(プライベートな場面やまだ決まりができていない場面)を区別する。
  28. 人に言われたことやどこかに書いてあったことは、いつでも・どこでも「同じ」なのではなく、一定の条件が付いていることを知る。

自閉症児(ADHD児やLD児にも当てはまる)にこういう指導をする必要があるのは、「他人に誤解されるような行動をしない」ということで、いわば「自己防衛」のためのスキルです。基本的に、「自分の行動が他者にはどう見えているか、本人は分かっていないので教えてあげる」という姿勢が必要です。いきなり、「わがまま」だの「人の気持ちを無視した」だのと言われるのは、本人が一番困っているのに助けてあげないで、谷底に突き落とすようなものです。

まあ、もっとも、「これができれば苦労しない!」「これができても、苦労する!」ことばかりですが…。だいたい、こういう事の基礎となる基本的な概念となる、時刻・場所・位置・大きさ・長さ・形の識別などができていなかったり、注意や運動能力や言葉の理解力に遅れがある上に、興奮しやすかったり何かにのめり込みやすかったりする子どもですから、「状況判断」する前に「状況を認識できない」というところから取り組まないといけません。


しかし、真の意味での《社会性》というのは、そんなことではないらしいのです。でも、ここから先は、本当に"しなければならないこと"なのか、私には分かりません。どうしてトモダチが必要か、ということも含めて。それから、↓のことが解かっていなくても他者と居られないということはないので、"どこまでが必要なのか"についても分かりません。

えっ、できていない人の言うことには「説得力がないって?」・・・ごもっともなご意見です。


          

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