子どもからのS.O.S.

ー早期発見でできることー

自閉症の子どもの多くは、赤ちゃんの頃は「普通だった」とか「手のかからないおとなしい子どもだった」、と言われることがよくあります。いつまでも眠っていてなかなか起きないとかあまり泣かないのは、「家族がゆっくり休めて良い」と言われます。哺乳力が弱かったり偏食がひどくても、「体重が増えていれば順調です、大丈夫」と言われます。興奮しやすかったり、生活リズムがなかなかつかなくて毎晩いかにして眠らせるか苦心惨憺するのは、「幼児には"よくあること"だから頑張って付き合ってあげなさい」と言われます。

自閉症の診断がつきやすいのは、3〜5才の頃です。言葉が出なかったり、出たとしてもオウム返しだったり、特定の物の名前しか言わなかったり…。こういう「言葉の遅れ」があるととっても分かりやすいし、最も心配されるところです。が、言葉が出ていても、物を一直線に並べたり、普通の子どもがあまり興味を示さないものに夢中になっていたり、いつも同じ事ばかり繰り返していたり、人がたくさんいるところを嫌がったり、他の子どもと一緒にいても別の遊びをしていたり…。いわゆる、徴候というものはちゃんとあります。

自閉症に周知した専門家が診れば「一歳半の時点で発見できる」そうです。しかし、そういう機会に恵まれる人の方が圧倒的に少ないので、だいたい、「目に見えて明らかな遅れ」や「何か困ったこと」が起きてから、高名な先生のいる病院に予約して、2〜3年待たされてやっと診断がつくというのが現状です。

でも、できれば、できるだけ早い内に発見して欲しいです。但し、心配するあまり、生後間もない赤ん坊が「こっちを向いてくれない。この子は自閉症だ、どうしよう!!!」と大騒ぎされても困ります。どんな子どもでも、"自分の思い通りにならない"のが世の常です。自閉症であろうとなかろうと、親が勝手に筋書きを決めてしまうのが間違いなのです。子どもの方は、そうなろうとして生まれてくるのではありませんから。

自閉症の子どもを早期に発見すれば、"できること"はたくさんあります。

  1. どういう場面で・誰に・接近し、どういう状況で・どういう人に・回避防衛反応を示すかを観察すれば、子どもの「人とのかかわり方」の特徴を知ることができます。そして、本人にとって安心できる人との距離を保ちながら、全く孤立させないための方策がたてられます。
  2. 発語がない場合は、しゃべれない理由を正確に知ることができます。人との関わりが稀薄で他人の声を特別で有益なものと認識していないのか、他人に要求する必要性を感じていないのか、聴覚系の混乱があって音の識別ができていないのか、聞こえているのに自分には関係ないと思っているのか…。いろんな原因が考えられます。でも、自閉症だという大前提を抜かして普通の言葉の遅れとして指導してしまうと、だいたいは逆効果になってフラストレーションを貯める一方になってしまうか、全く意味の通じていない文例の丸暗記に終始してしまいます。
  3. おしゃべりなのに、言葉をコミュニケーションの手段として使えていない場合は、しゃべれるが故のトラブルを頻繁に引き起こすので、かえってタイヘンです。一見すると物知りで賢そうですが、たいていはその場や状況にふさわしくないこと・他人が聞きたくもないことばかりを、相手の様子を無視してしゃべりまくります。でも、「人に対して言っている言葉」ではなく、「自分が言いたいことを言っているだけ」です。でも本人は全然気づいていないので、適切な"しゃべり方"を教えてあげる必要があります。
  4. 「こだわり」が強い場合には、適正な方向付けをして、社会的な枠組の中に行動を統制して行くことができます。自閉症者が何かに「こだわる」ことは、息をするのと同じことなのです。「こだわり」なしには、自閉症者は何をすることもできません。社会的なニーズに応えることができれば職業に、できなくとも趣味にまでは発展させてあげたいです。特に、強度行動障害といわれるほどの日常生活に支障をきたすような強い「こだわり」は、成人後まで見越して修正していかないと、本人が不幸になります。
  5. 「感情」的な動機が一切ないのに感情的に受け取られてしまったり、認知や注意の障害があってしてしまう奇異な行動から「悪い子」のレッテルを貼られてしまうのを、防ぐことができます。最も不幸なのは、自分の親からそう思われてしまうことです。
  6. 逆に、認知や学習能力が優れてい過ぎるために、その場の状況にふさわし過ぎる態度を杓子定規に身に付けていたり、ルールに固執して他人に注意したり間違いを指摘しまくってしまうような場合もあります。一見、物分かりのよい「良い子」ですが、社会的な感情や要求がないために全てを規則・法則・原理・原則・理論・論理にして乗り切っているだけだということを忘れないで下さい。
  7. 不安や恐怖が強い子どもは、様々なことを恐れます。それを、知らない人には「気にしすぎだ」「オカシナことを言っている」「バカバカしい」と一蹴されてしまうでしょう。でも、本人にとっては本当に恐いのです。分かってあげて下さい。また、強迫的な思い込みに囚われている場合は、「誰かに言われたこと」や「どこかに書いてあったこと」を鵜呑みにして、教条的に守ろうとしているのです。是非、その言外の真意を教えてあげて下さい。
  8. これらのことが分かっていて、"こういう子ども〜♪"として育てれば、二次的な障害(その多くは鬱病)を防ぐことができます。それが、いちばん大切なことです。

今日、本当に言いたかったこと。

私たちは、人に助けを求めることができません。

だから、人知れず泣いています。

でもね、

だいたいの場合、逆の扱いを受けます。

だから、

もっともっと泣いています。


            

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