子供たちへ
君たちは、いい時代に生まれた。子供の時代と言っていい時代に。
子供のためなら金に糸目をつけない大人たち、
子供の機嫌を損ねないことを子育てだと勘違いしている親たちに囲まれて、
まるで一国の王子様やお姫様であるかのように威張ってはいないだろうか?
傷つかないように、自信をなくさないように、大事に大事に育てられた君たちは、
いいこを演じながら、それらが壊れてしまうのを恐れてはいないだろうか?
世間体第一のオドオドした大人たちを見上げながら、
ひとまえで恥をかかなければ、また、バレさえしなければ
何を考え、どんなことをしても許されると思ってはいないだろうか?
子供たちと真剣に向かい合ったことのない、友だちみたいなやさしすぎる大人たちのもとで、
赤ん坊の心のまま、体だけ大きくなってはいないだろうか?
みんなが皆が自分のことに夢中になっている、死角だらけのこの社会の中で、
ひとり、袋小路に迷い込んでいないだろうか?
欲しいものがすぐに手の届くところにある自分の部屋に居て、
他人は自分の為に利用するモノだと思ってはいないだろうか?
輝く個性と、信じられないような残忍さとが同居するこれからの世の中には
善と悪とが二極に分かれて攻めぎあう単純なストーリーはもう、通用しないに違いない。
そんな中にこぎだしていく君たちは、
よほどしっかりした根を張って自分というものを確かにしておかなければならない。
そのために、先を行く大人たちは君達に
どれだけ子供らしい子供時代を用意してあげられるだろうか。
愛される喜びをどれほど味あわせてあげられるだろうか。
人の心を伝えられるだろうか。
生きている自分の幸せを感じられるひとになって下さい。
自分とは違う、さまざまな゛ひと"を許せるひとになって下さい。
理解できないことを切り捨てて、自分に都合のいいことしか拾わない
身勝手な人間にならないで下さい。
ひとの行動にはそれぞれ理由があって、
ひとの存在にはそれぞれ意味があるのですから。
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