What’s? アスペルガー症候群
−「アスペルガー症候群」に関する私的研究ページ−
(2004.3.28更新)
「アスペルガー症候群」とは? (2001.1.1作成/2001.1.22加筆/2003.9.25追加))
- 言語による会話能力があるにもかかわらず、自閉症同様の「かかわり」「コミュニケーション」「こだわり」の障害という三つの特徴を併せ持った、発達障害。(よく、言葉の障害のない「自閉症」と言われるが、言葉はあってもコミュニケーションの手段として使えていない。)
- 幼児期に最もよくその徴候が現れ、以後次第にその症状は薄れていく。成長とともに社会的に引きこもるようになるとか、心理的停滞から感情を失うのではない。 (この点で、他の人格障害や精神疾患とは明確に区別される。また、養育上の欠陥によって起きるのではない。)
- 「早期小児自閉症」が良好な発達をみせ、言語による会話が可能になり「アスペルガー障害」に診断名が変わるに至った場合と、当初からほとんど自閉症の明確な症状を示さない場合とがある。
- 早期からの療育によって、(その特異性は残るものの)社会に妥当な範囲に行動や興味を統制していくことができる。
- そのユニークさが個性として認められる状況下にあっては、良好な人間関係を維持することができる。
- 少しでも適応を良くするために、できるだけ早期に「診断」されることが望ましい。
- 一人一人の在り方は常に個々の例でしかなく、一次的な症状・環境・周囲の対応の組み合わせいかんによって、全く異なる様相を見せる。これらのすべてを一つのカテゴリーの下に説明することには、無理が生ずることが多い。
−よく聞かれる質問への回答事例集(試案)−
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ここに書かれている質問は、アスペルガー症候群のことをよく知らない人が抱く疑問ですので、ご本人にはきついと思われるような表現が多くあります。
告知後の不安定期を乗り越えていない人、自分の障害と上手に付き合っていく覚悟の固まっていない人などの、このような問いを冷静に受け留める事ができない段階の当事者の方向きのものではありません。
ただし、現状では、アスペルガー症候群の当事者が、ここに書かれているようなことを一度も言われずに一生を過ごすことはほぼ不可能です。その時のために、堂々と答えられるようにしておくこともまた、必要なソーシャルスキルの一つとの考えから、敢えて掲載しているものです。
みなさんへのお願い
一般の方々へ 発達障害は生まれつきのものですが、置かれている環境や、周囲の人たちとの関係と対応に大きく左右されて、状態像は変わります。従って、発達障害を持った人が事件を起こした時には、発達障害を持っていることそのものではなく、何らかの他の要因が加わったことが原因と見るべきです。それは、すべての人々と全く同じです。
現在、発達障害を持って生まれた人々に発達障害を持っていることを認め、適切な対応をし、必要な支援を行うことが急務とされています。しかし、発達障害への無理解こそが最大の障害になっているのが現状です。
発達障害に関する各分野(医療・教育・福祉)の進展のために、ご理解とご協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。
発達障害は多くの人に見られるもので、それ自体は特別なものではありません。また、個々の事例は、あくまでも個々の事例でしかありません。報道関係の方々には、特に慎重な配慮をお願いします。
しかし残念なことに、二次障害や、強化された行動障害や、他の合併する症状を、あたかもアスペルガー症候群の特異性であるかのような書き方をしている、興味本位で見識に欠ける記事が散見されています。自閉症を全く理解していないのに、さも分かったように自閉症はこうだと書いてある特集記事も、後を絶ちません。
これらの記事に書かれていることは、発達障害への誤解を広めるだけで、社会にとって何の意義もないものです。このような、本末転倒の、混同した記事に惑わされないように、お願いします!
2003.09.29家裁決定要旨について 2003.09.29の家裁決定からは、以下のことが読み取れます。
これらの事実を警鐘として受け留め、発達障害に対する適切な対応と支援を行う社会が一刻も早く実現することを、切に願うものです。
- 発達障害に対する知識の欠如
- 幼児期からその兆候が明白であったことが、発達障害の発見・診断に結びつかず、遅れを隠そうとするあまりに、全く逆の対応がされてしてしまったこと。
- 特別支援教育の立ち遅れ
- 問題行動からサインを読み取ることのできた人は、何人かいたと思われるのに、継続したケアがされていなかったこと。
- 置かれていた環境の問題
- 置かれていた環境が良好なものとは言えず、間接的・直接的な要因となってしまったこと。
家裁決定は、一個人(当該少年)の状態像を述べているに過ぎません。そして、記述の中には、不適切な対応や環境要因によって生じたと思われる二次的な問題が多く含まれています。事件の報道に際しては、これらの症状をアスペルガー症候群そのものであるかのような、枕言葉的な表現をしないようにお願いします。
「自閉症協会からの提言」へ
発達障害のお子さんをお持ちの親御さん方へ ほとんどの人が犯罪を犯すわけではないのと同じように、発達障害を持っているすべての人が犯罪を犯してしまうわけではありません。発達障害を持ったほとんどの人は、むしろ、迷い・戸惑い・悩みながら、懸命に生活しています。
発達障害を持っていることは特別なことではありません。それ自体が悪いということも決してありません。発達障害を持っているということは、それぞれの障害の特異性を認めて、発達段階に合わせた対応をしていくことが必要になる可能性が、発達障害を持っていない人よりも高いということであり、その良さを活かすためにそれなりのやり方が必要になることが多い人であるということです。
今しなければならないのは、自信を失わないことです。この、社会全体が発達障害の存在に無知であることはできなくなった時代にあっても、今までと同じように、一人一人にとって必要なことを・一つ一つ・地道に行っていく姿勢を失わずに平静を保たれることを、切に願っています。
自閉症のお子さんをお持ちのご家族と先生方へ
報道によって広げられた誤解に対して説明するために。
関連するホームページ・参考図書
参考図書 『自閉症とアスペルガー症候群』 ウタ・フリス編著 東京書籍 『自閉症スペクトル』−親と専門家のためのガイドブック− ローナ・ウィング著 東京書籍 『ガイドブック・アスペルガー症候群』−親と専門家のために− トニー・アトウッド著 東京書籍 『高機能自閉症・アスペルガー症候群入門−正しい理解と対応のために』 内山登紀夫編著 中央法規出版 『アスペルガー症候群と高機能自閉症の理解とサポート』 杉山登志郎編著 学習研究社 『特別支援教育のための 精神・神経医学』 杉山登志郎・原仁著 学習研究社 『あなた自身のいのちを生きて』 グニラ・ガーランド著 クリエイツかもがわ 『高機能自閉症・アスペルガー症候群「その子らしさ」を生かす子育て』 吉田友子著 中央法規出版 『アスペルガー症候群がわかる本』 クリストファー・ギルバーグ著 明石書店
「アスペルガー症候群」の下位プロフィール私案 (2003.1.2作成/2003.9.29加筆)
「アスペルガー症候群」と呼ばれる“状態”には、以下のような対人関係の障壁となる様々な様相があり、その組み合わせと症状の現われ方は一人一人異なっている。また、同じ一人の人であっても、次第に変遷して行く。一人一人の自閉症児・者に接する際には、どの特徴がどの程度の比率で現われているか、見極める必要がある。
これらの症状のために、「人とかかわりたいのに・かかわれない/適切なかかわり方がわからない」という困難が生じている場合と、「人とのかかわり方そのものが異なっている」ために一般的なかかわり方と違うかかわり方をしている場合と、人にかかわることはできているが、本人にとって負担の多いかかわりを要求されて悩んでいる場合とがある。
自閉症スペクトルとの関係
- 言語発達の良い自閉症
- 軽症化した自閉症
- マイルドな自閉症
上記に併存する障害、または状態
- 語用論的障害
- 非言語性LD
- 重度のDAMP(発達性協調運動障害+ADHD)
- 重度のディスプラクシア(生理学的・神経学的な運動機能障害)
- ADHD・強迫性障害・トゥレット障害に共通する行動
- 分裂病質人格障害・分裂病型人格障害と診断され得る状態
「アスペルガー症候群」のライフサイクル(QOLの向上を考える)。
- 『自閉症とアスペルガー症候群』より
- 本人の意識に基づく「診断基準」 2001.1.1作成/2001.1.4追加/2001.1.22加筆
- 「心の理論」に関する私的研究シリーズ 2002.3.10より開始(作成中)
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