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合唱千夜一夜  「歴史でもなければ随筆でもない、四方山話ですが・・・    第1夜〜5夜はこちら 

第6夜

 大分期間があいてしまいました、第1夜〜5夜までは上記「倉庫1」に入っていますのでご覧ください。
 さて、今夜はギリシャの「劇」についてのお話となります。
 我が国の「和歌」がそうであったようにギリシャの文芸(詩歌)も活字を通して鑑賞されるものではなく、節をつけ「歌われ」「聴かれる」ものでした。そこにはキタラやリラといった竪琴類や、アウロスといった管楽器が伴奏楽器として使われていました。また、劇にしても台詞だけで進んで行くのではなく、様々な形で「音楽」と密着していたと考えられます。それは、16世紀フィレンツェのカメラータがギリシャ劇を手本として今日の「オペラ」の原型を作ったことからも推測できることです。
 ところで、この野外円形劇場で演じられた古代ギリシャ劇では、歌や踊りを受け持つ一群の人々を「コロス choros」そして彼らの居る場所は「オルケストラ orchestra」と呼ばれました。そうです、現在のコーラスやオーケストラの語源はここにあったのですね。
 第6夜にしてやっとコーラス(合唱)にたどり着き一安心・・・したついでに、叙事詩を歌い語る吟遊詩人は「ラプソードス」、叙情詩は「メロス」と呼ばれていました。もう分かりますね、現在のラプソディ「狂詩曲」やメロディ「旋律」の語源でもあるのです。ヨーロッパの芸術はギリシャに始まるということがここからも分かりますね。
ちなみにこのころの楽譜はこのように石に刻まれたものから解読されています。 2008.3.19


歌声資料室  合唱や声楽に関する本やCD(特に古楽を中心に)の紹介です。     こちらには別館 ARCHIVがあります。

 お薦めCD

タ イ ト ル 演   奏 デ  ー  タ 感      想

「ひとときの音楽」
 波多野睦美(メゾソプラノ)
 寺神戸 亮(ヴァイオリン・リーダー)
 アンサンブル・レ・ボレアード
 AVEX
AVCL-25043
3000円
 波多野睦美と寺神戸 亮&バロック・アンサンブルによるバロック期の美しい歌。
 パーセル、ヘンデル、チェスティ、バッハによる、抒情的な声楽作品集ですが、特にパーセルの「美しい島」「ダイドーのラメント」 バッハのマタイ受難曲「私を憐れんでください」が聴きものです。余分な装飾を一切排除した歌声からは、その作品が持っている本当の「美しさ」が感じられます。
 器楽だけの演奏で「G線上のアリア」が入っていますが、器楽が歌う美しさを見事に出している演奏となっています。

「ワン・ヴォイス」
Catherine Bott(ソプラノ)
L'OISEAU-LYRE
POCL-1716
2500円
 本ホームページのタイトルのもとになったCDで、邦題は「ワン・ヴォイス」といいます。
演奏者を見てもらえばわかるように、古楽声楽界でよく知られているキャサリン・ボットが中世トルバドゥール、トルヴェールの愛の歌を器楽の伴奏なしに、声一つで演奏したものです。

彼女の澄んだ歌声にのったフランス語の詩を聴いているとDox est li cans, biax est li dis「甘美なるは歌、美しきは言葉」が実感できます。
 音楽の本質が聴ける時間が持てますよ。

「Musicalische Exequien」
Himlische Cantorey
Alsfelder Vokalensemble Bremen
I Febiarmonici(インストルメンタル)
Wolfgang Helbich(指揮)
NAXOS
8.555705
1000円
 自分が死んだ時に演奏してもらいたい曲、という永遠の「話題」がありますがシュッツのこの曲を選ぶ人は案外少ないのではないでしょうか。
 切り詰められた器楽にのって歌われる合唱と独唱は、初めて聴く人にとっては「地味」そのものと受け取られるかもしれません。しかし、言葉の意味を一つ一つかみしめて聴くうちに「死」を静謐の中で受け入れるということが伝わってくるのです。
 また、カップリングされている「イエス・キリストの十字架上の七つの言葉」もバッハの「マタイ受難曲」と双璧をなす曲で、一聴の価値があります。
 NAXOSレーベルの録音はいつもながら自然な「音場」を作り上げ、廉価盤とは思えない雰囲気を聴かせてくれます。

談話室  「世間話」のコーナーです。