*2006年春*


Eilis Kennedy / Time to Sail
A Tribute to Nicolette Larson, Lotta Love Concert



4月
A Tribute to Nicolette Larson, Lotta Love Concert(推薦!)
1997年、脳浮腫のため不幸にも45歳の若さでこの世を去ったニコレット・ラーソン。
このアルバムは翌年サンタモニカ市立公会堂で行なわれたトリビュート・コンサートの模様を記録したもの。
今年になってひょっこりとRhinoから発売されました。
参加ミュージシャンをざっと挙げると、Carole King, Linda Ronstadt, Bonnie Raitt, CS&N, Little Feat, The Section, Jackson Browne, Rosemary Butler, Emmylou Harris, Dan Forgelberg, Joe Walsh, Jimmy Buffett, Micheal Ruff, Valerie Carter他。
1曲目は、二コレットのデビュー・ヒット曲「Lotta Love」を参加ミュージシャン合同による演奏&歌で始まります。
後の曲は、参加ミュージシャンが自分の持ち歌を披露するというトリビュートとしてはやや変則的な構成。
でも、これがとてもいい。泣ける曲多数。
しっとりしたBonnie Raittの「Love Has No Pride」は名曲だし、Carole Kingの「Up On The Roof」はドラムのリズム取りが通常よりゆったりしていて胸に沁みる。
Little Feat featuring Bonnie Raittによる「Cold, Cold, Cold」はファンキーでかっこいい。Bonnieの歌はまるでローウェル・ジョージが歌っているみたいに違和感が無くて、はまり過ぎでこわいくらい。
しかし何と言っても感動的なのは、ラストの「You've Got A Firend」でしょう。
1st VerseをCarole King, 2nd VerseをBonnie Raitt, BridgeをLinda Ronstadtが歌い、CS&N, Rosemary Butler, Emmylou Harris, Jimmy Buffett, Micheal Ruff, Valerie Carterらがハーモニーを付けています。

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Astrud Gilberto / Jungle
これは2002年(国内盤は2003年発売)、デビュー40周年記念としてつくられたアスラット・ジルベルトのオリジナル・アルバム。
アストラット・ジルベルトというとボサノヴァ・シンガーとして非常に有名ですが、このアルバムではなんと12曲中10曲を書き下ろしており、コンポーザーとしての才能も見逃せません。
アストラッド・ジルベルト=ボサノヴァをイメージして聴くと、その幅広い音楽性に驚くかもしれません。
ボサノヴァはもちろんですが、土着的なアフリカのリズムを取り入れた1曲目「Jungle」、限りなくブルージーな4曲目「Inspite Of The Odds」、ほんわかムードが愛らしい5曲目「Xaxado Do Safado」などさまざまな音楽が詰まっています。
6曲目「コモ・フェ」は往年の彼女のイメージそのままの暖かなボサノバ・ナンバー。
7曲目「Red Umbrella」はトム・ウェイツを彷彿とさせるオールド・タイミーで陰鬱感のあるブルーズ/ジャズ・ナンバー。枯れたトーンのエレクトリック・ギターのプレイがかっこいい。
8曲目「Rebola, Bola」は男性ラップも入ったヒップホップとサンバ(サディコにも聞こえる)の間を行ったりきたりする不思議な曲。
9曲目「Dancing」はスローなジャズ・バラード。
ラスト「The Look Of Love」はバート・バカラックの曲をサンバ・テイストでカバーしています。

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Olivia Mewton-John / Stronger Than Before(推薦!)
乳癌を克服しカムバック、来日公演も果たしたオリビア・ニュートン・ジョンの来日記念アルバム。
このアルバムはもともとアメリカのギフトショップ「Hallmark」のみで2005年9月から期間限定発売され、収益の一部が゜乳癌センターに寄付されるというものでしたが、来日記念盤としてここ日本でのみ一般販売されることになりました。
オリジナル・アルバムとしては7年振り、限定発売が実にもったいほどの仕上がりです。
全体的な印象は、穏やかなカントリー・ポップス/ロック。トリーシャ・ヤーウッドやリンダ・ロンシュタットが好きな人にもお勧めです。
曲の流れも良く、嫌いに思う曲がひとつもありません。
ゆったりしたバラードナンバーの表題曲や「When You Believe」、ゴスペルぽい「Phenomenal Woman」、オルガンの音も爽やかで軽快な「Pass It On」、クラプトンが作りそうな、ちょいレゲエアレンジのサザン・カントリー・ナンバー「That's All I Know For Sure」、娘のクロエ・ラッタンジーが作詞した「Can I Trust Your Arms」など収録。


3月
平原綾香 / 4つのL(推薦!)
彼女の声は誰にも似ていない。ハスキーで存在感がある独特の声。
低い声はかなり低く太く聴こえるけど、決して重くはない。
そしてときどき驚くほど高音まで駆け上る。
平原綾香さんの新譜はそんな声の魅力と、曲自体の素晴らしさ、流れるような曲構成が十二分に堪能できる、素晴らしいアルバムです。
1曲目はNHKトリノ・オリンピックのテーマ曲として有名な「誓い」。
改めて聴いてやっぱりいい曲です。特にテレビでは流れないブリッジの部分『♪祝福の鐘を空に鳴らし、大切な人に届けよう、oh oh〜』の気合いの入った歌唱が素晴らしい!
このアルバムの特徴は全16曲が収められていて、interludeと称した短めの曲が間に4曲挿入されているのですが、これがどれも曲として成立していて、アルバムをより印象的にしています。
3曲目「Circle Game」は宇多田ヒカルを思わせるミディアム・テンポのヒップ・ホップ・テイストのナンバー。彼女のイメージからは異色のナンバーですが、これがぴったりはまっています。
5曲目「I Will Be With You」はオルガンのような懐かしい音、スネアがわりのフィンガー・スナップが印象的な、ゆったりしたソウル・ナンバー。
8曲目「スタート・ライン」は管弦楽隊&森の木児童合唱団を大フィーチャーした荘厳な曲。
10曲目「はじまりの風」では二胡をフィーチャー。
11曲目「アリエスの星」では父、平原まことのソプラノ・サックスをフィーチャー。
彼女自身が作曲した14曲目「Eternally」は跳躍の激しいメロディー、ときどきブルージーになる独特の節回し、美しい多重コーラスが印象的なワルツナンバー。転調も多く歌うのは難しそう。
アコースティック・ギターのアルペジオで始まる15曲目「Music」は、サビに向かって盛り上がる感動的なナンバー。素晴らしい、名曲です。
スケジュールがタイトで歌い込む間もなくレコーディングで落ち込むこともあったと打ち明ける。そんなことがまるで嘘のような素敵な1枚です。
16曲目、ボーナストラックは「誓い」のドラムレス・バージョン。
この曲はなかったほうが、あるいは無音時間を大きく取ったほうが「Music」での感動の余韻が残り、アルバムの余韻が良かったのでは。
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Eilis Kennedy / Time to Sail (推薦!)
アイルランドのシンガー、アイリス・ケネディ、2001年発表のデビュー・アルバム。
日本ではオーマガトキから2005年11月にめでたく発売になりました。
現在は海辺の町でカフェ&レストランを夫と共に経営し、毎週水曜日のセッションは必ずアイリスがトリを務めているらしい。そうした流れで多くのミュージシャンと知り合いアルバムを製作するように勧められていたのだそうです。
他のアイルランドのシンガーがそうであるように、彼女の歌声もまたとても清楚で透明なものです。
伝承歌を歌っていても、堅苦しさや古臭さがまったく感じられず、むしろ音の感触がとてもポピュラリティーに飛んでいるのが注目すべきところでしょう。
それ故、アルバムを通して聴いても、物悲しさで落ち込んだり単調に感じたりすることはありません。
最近出た彼女のセカンド・アルバム(輸入盤)も、伝承歌を敢えて伝承歌系統のミュージシャンを起用せずレコーディングしているらしく(未聴)、そんなところにも彼女らしさを感じます。
言語はゲール語と英語が半々くらいです。
伝承歌で面白いのは、3曲目「ファクトリー・ガール」が軽快で楽しく、普段使われないカリンバやスライド・ギターがフィーチャーされています。
5曲目「ロード・フランクリン」はペンタングルがアルバム「クルーエル・シスター」で取り上げていた曲。
10曲目「ブラック・イズ・カラー」も有名なトラディショナル曲で、最近はポール・ウェラーが取り上げていました。
2曲目「時の流れを誰が知る」はサンディー・デニーの名曲。
4曲目「クレージー・マン・マイケル」もまた、サンディー・デニー在籍時のフェアポート・コンベンションの曲のカバーです。

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Sakura / Soul Essense
ここ最近、オーガニックでナチュラルな音楽志向が目立っていたSakuraさんですが、前作がレイド・バックし過ぎた反動か子育てが落ち着いたのか(?)、新作「Soul Essense」はジャケット・デザインやアルバム・タイトルにも現れているように、原点回帰ともいえる持ち前のソウル色を久々に前面に出したアルバムになりました。
2曲目「Bye Bye Baby」はファンキーなブラスとリズム隊がビシビシ切り込んでくる、クラシカル・ソウル・ナンバーでかっこいい。
4曲目「Best Of My Love」は英語曲で、ハッピーなアップテンポのソウルナンバーです。
♪パパッ、パパッという切れのいいラッパと、張りのあるボーカルが素敵。
6曲目「Buddy To Boo」はゆったりしたテンポが心地よいソウル・ナンバー。『シシラ』以降のファンも納得の曲。
後半はゆったりした曲が続きます。
7曲目「again」はJanet Jacksonのカバー曲。ぼくは原曲を知りませんが、ピアノだけをバックにしっとりと歌うバラード・ナンバー。
ラスト8曲目「Why」もまた、とてもSakuraらしいミディアム・テンポの温かな雰囲気漂うソウル・ナンバーです。

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寺井尚子 / 夜間飛行
ジャズ・バイオリニスト、寺井尚子さんの最新作です。
収録の11曲中7曲がオリジナル曲。
小難しいアドリブをかますより、情熱的なメロディーをふくよかに丁寧に奏でるタイプ。
いや、かなり難しいハードな演奏も行なっているかもしれませんが、とても親しみやすく耳にすんなり馴染んでくるのが、彼女の音楽の特徴でしょうか。
なので、いっそうポピュラリティーが増しているように感じますが、精神的にはよりジャズに向かっているように感じます。
カバー曲では、ウェザー・リポートの「Bird Land」、タンゴの超有名曲「ラ・クンパルシータ」、スタッフの「And Here You Are」などを取り上げています。
6曲目のオリジナル曲「夜間飛行」はギターのカッティングとカホンがリズムを先導するエネルギッシュな曲。ジャズでドラムではなくカホンというのが面白く、独特の乾いた雰囲気のリズムを叩き出しています。
7曲目「レイジー・エンジェル」はステファン・グラッペリを彷彿とさせる、フレンチ・ジャズのようなオールド・タイミーで芳醇に香り漂う曲。
9曲目「少年時代」はファンキーでセカンド・ラインぽいリズムが私好み。