*2004年−2005年冬*


Linda Ronstadt / Hummin' to Myself
RIKKI /結ぬ島へ−リッキの奄美島唄−
長谷川都 /満ちてゆく・こころの声



2月
長谷川都 /満ちてゆく・こころの声(推薦!)
つー」こと、長谷川都さんの最新3曲入りシングルです。
暖かくて、柔らかくて、凛としていて、少し儚げで、せつない。
そんなどこを切っても長谷川都さんの人となりが感じられる3曲です。
ゆったりしたメロディにのって歌われる1曲目「満ちてゆく」。『♪どうにもならないことだらけ』と歌いながら、『♪何より大事なんだ、あなたと出会えたこと/満ちてゆく、ふたりの想いも月も海も』と歌われています。
2曲はアップ・テンポで軽快な「おんなじ空の下」。3曲目「こころの声」はどことなくコミカルなリズムが面白い曲。
自分の分身を生み出すような真っ直ぐな歌詞は相変わらずです。
たった3曲なのが惜しい!早くフル・アルバムを作って欲しいですね。
なお、このアルバムの購入は、長谷川都さんのオフィシャル・ホームページあるいはamazon.co.jpで購入が可能です。

◇◇◇

Julia Fordham /That's Life(推薦!)
ジュリア・フォーダムと言えば、デビュー作の「Happy Ever After」の入ったアルバムくらいしか知らなかったのですが、これはなかなかいいです。
シンプルでアダルト。とても落ち着いて聴ける曲ばかり。
ギター、ベース、生ドラム、オルガン、ピアノの的確で控えめな演奏が曲の良さを引き立てます。
ルックスに似合わず、太く特徴のある声も以前と変わっていません。
アルバムの中では、軽快でソウルっぽさも伺わせる4曲目「Jump」がお気に入りです。
ところで、彼女は現在はアメリカ在住ですが、イギリス出身のアーティストだったんですね。
2004年8月国内リリース。ちなみに同時期に、ベスト的選曲のライブ・アルバム「That's Live」(笑)もリリースしています。

1月
RIKKI /結ぬ島へ−リッキの奄美島唄−(推薦!)
美しい声。リッキの歌を久し振りに聴いてそう思った。
張りがあってゆったりして、こぶしの後にすっと消えていく透明な声。
2002年発表の『シマウタTRICKLES』、『蜜』の2枚は、ポップス+島唄+エレクトロニクスの融合といった趣のやや実験的な作品でしたが、このアルバムのアレンジはずっとシンプルで、少ない音数のなかで、RIKKIの美しい声がすっと前面に浮かび上がります。
冒頭3曲と、ラストの曲がRIKKI作のオリジナル曲、残り7曲が奄美民謡。
アコースティック・ギターを中心にアレンジされた楽曲は、しかしロック/ポップス・ファンにこそ聴いて欲しい。決して「民謡」などと構える必要は何もありません。
奄美の言葉が判らなくても(ブックレットには、言葉の解説付き)、声が、音が、とても優しく響く。
楽曲ごとに控えめにフィーチャーされた三味線、二胡、ハルモニウムといった楽器が、楽曲に彩りを添えます。
ラストの「リッキの六調」が唯一ラストに相応しく賑やかな曲。お囃子入りのお祭りぽい曲です。

◇◇◇

笹川美和 /数多
希有のソングライター、笹川美和さん待望のセカンド・アルバムです。
冒頭から、彼女独特の起伏の大きなメロディー・ラインを持つ「数多(あまた)」から始まります。
前半はこの曲に代表されるように、1stアルバムの流れを汲む曲が並んでいます。
1stに比べると、ゴツゴツした疾走感は幾分和らぎ、アイルランド民謡に通じるエスニックな味わいが増したようです。アレンジも柔らかな感じがします。
有名曲「あなた あたし」、「止めないで」は2曲目と4曲目に収録。
中盤は1stになかったやや内省的な曲もあります。
7曲目「香水」はずっと2コードの、レゲエではないのだけどブレイクの多い曲(ダブというのでしょうか)。
8曲目「女神」は宮沢りえをイメージしてつくったというスローな曲。静かな情熱を感じる曲です。
10曲目「亡者」は陰鬱なジャズ・アレンジの曲。アバンギャルドな演奏も。
11曲目「美しい影」は8ビートのリズムを強調したロック調ナンバー。再び勢いある歌が聴けます。
ラスト・ナンバー「時」はストリングスとピアノをバックに、静かに歌われるバラード。
時の流れに逆らえず、でも歩いていこうと歌われます。
それにしてもこのジャケット。裏ジャケットも中にも彼女の写真はなし。文字と空白のみ。
彼女がまだ21歳と聴いてまたびっくり。
◇◇◇

The Pat Moran Quartet /バードランドのパット・モラン[2in1]
小粋、軽快、快調!
女性ピアニスト、パット・モラン(本名ヘレン・マジェット)を中心に男性ベーシスト、男性ドラマーに、専属の女性ボーカリストという4人編成で、しかもプレイヤー全員がボーカルを取るという面白いグループ。
ピアノ・ソロあり、ピアノ・トリオのインストあり、ピアノ+ボーカル曲あり、トリオ+ボーカル曲あり、混声コーラス曲有りとフォーマットも実に多彩。
パット・モランはクラシックから転向したピアニストで、端正で綺麗なピアノを弾きますが、ソロでアグレッシブに弾くときはむしろクラシックの片鱗が感じられたりします。
女性ボーカリストはベヴ・ケリー(またはベヴァリー・ケリー)といって、この人も有名な人ではありませんが、ぼくはこの人のソロ・アルバム『Love Locked Out』を持っていたりします。
話は脱線しますが、この『Love Locked Out』は、ポートレート写真や貝殻、マーガレットをコラージュ風にあしらったジャケットが綺麗で、しばらく実家に飾っていました。
ちなみにベヴァリー・ケニーというジャズ・シンガーもいますが別人です。
斬新で粋なグループであったにも関わらず、2枚のアルバムを発表して解散してしまったようです。
このグループが持つ軽やかさが逆に、ゴリゴリのジャズ・ファンやディープなボーカル・ファンから軽視されたのでしょうか。
こういうフレキシブルなバンドは居ないだけに、今の時代ですと注目されると思うのですが。
さて、このアルバムは1957年発表の2ndアルバム『While At Birdland』と、1956年の1stアルバム『The Pat Moran Quartet』の2in1。
2ndはカルテットに加え、トランペット、サックス、トロンボーン、フルートも客演していて更に軽快に飛ばしています。1曲目「Thou Swell」はクリスマスに流してもぴったり来る感じです。
ベヴのボーカルは、あっさりした歌い方ながら溌剌として、いい感じです。ちょうどボサ・ノバ歌手に通じるような素直な歌い方です。バラード曲でもあまり重くならず安心して聴けます。


12月
Linda Ronstadt / Hummin' to Myself
最近、国内外問わずポップ・フィールドのアーティストがジャズ・スタンダードのアルバムを多く発表するようになりました。また、ジャズ・フィールドのアーティストと捉えられている人たちでも、ポップ・フィールドとクロスオーバーしているアーティストは多いと思います。
共通していえることは、無理にジャズを意識することなく、好きな歌、いい歌を素直に歌っていること。
そんな中、届けられたリンダ・ロンシュタットの新譜は、ジャズ・スタンダード集。
彼女の場合は以前もネルソン・リドルと組んだアルバムを発表しましたが、こちらはChristian McBride他のジャズ・マンと組んだ少人数編成。レーベルもVerveから出ています。
収録曲は「Cry Me a River」以外は余り知らないのですが、昔Libby Titusが取り上げていたコール・ポーター作の「Miss Otis Regrets」を取り上げているのがうれしい。
ミュージカルのための曲だそうで、『オーティス嬢は本日お昼をご一緒できないことを遺憾に思っておられます、奥様・・』という歌いだしではじまる、オーティス嬢が去っていった恋人を銃殺し死刑になってしまうという、かわいそうな内容の曲。
「Blue Prelude」ではChristian McBrideの華麗なベース・ソロが聴けます。
リンダ・ロッシュタットは今58歳だそう。いつまでも変わらない、張りのある声にびっくりです。
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笹川美和 /止めないで (Single)(推薦!)
本屋でたまたま掛かっていたこの曲を聴いて、いっぺんで気に入ってしまいました。
『時を止めないで、時を止めないで・・・』というリフレイン、勢いと起伏の激しいメロディーにくらりとくる。
ブズーキ、マンドリンといった楽器が、アイルランドの冷たい空気を感じさせる。
まるでロー・ホイッスルかケーナのようなどう聴いても尺八には聴こえない、ひらひら舞う尺八の音がいっそう吹き抜ける風を感じさせる。
もうじき発売される2ndアルバムに期待!
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笹川美和 /事実(推薦!)
で、こちらは2003年11月発売のファースト・アルバム。
久し振りに強い個性を持ったアーティストに出会いました。
彼女の曲はいろんな表情を見せる。時には日本の民謡のようだし、島歌、アイルランド民謡、アフリカのリズムとコーラス、中島みゆき的フォークにも影響をうけているように感じる。
リフレインを多用した歌詞と起伏の激しいメロティーがインパクト大。そしていつまでも耳に残る。
一見ポップな3曲目「黒子」も中間部の『あなたの腕で死にたくて』という歌詞に耳を惹きつけられる。
4曲目「どうぞ」は、「止めないで」に通じる『雨は降る、止むことはなく』というリフレインがやはり印象に残る。
6曲目「笑」は『笑い、笑え、泣き、笑え』のサビは、どことなくアフリカのコーラス隊のようにも聴こえる。
7曲目「為什麼」はなんと中国語まで駆使。曲は中華というよりブルース色が強いでしょうか。ここでもことばの波がすごい。
10曲目「尽くす」はアルバム中、もっともハードなアレンジの曲で、荒れるギターの海に埋もれることなく、ひとり多重コーラスが美しく響く。後半までずっとハードなテンションで駆け抜け、突如終わる。(ビートルズ@オノ・ヨーコが開発した一アーティスト一回限り使えるエンディング手法(笑))。
間髪入れず始まるピアノ曲「ならば」との繋がりもよく出来ている。
ラスト曲「ただただ」のイントロのギターのような音はなんだろうと思ったら、リュートだった。
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Vanessa Paradis /Bliss
こちらは、2000年発表のアルバム。
評判が良かったのは知っていたのですが、当時1曲目を試聴して、中近東ぽいというかとんがった音作りだったので全編とんがったアルバムと思い込んでいました。
実際聴いてみると、最初の2曲以外は、意外にもアコースティックなつくり。
3曲目「When I Say」はストリングスとギターの爪弾きが何か夢の続きを見ているようなふわふわした感覚を醸し出しています。
それは6曲目「Les Acrobates」にも感じられ、特にこの曲の持つ柔らかさは格別。
7曲目「La La La Song」は少し憂いを含んだ都会的な雰囲気が漂う曲。
9曲目「St German」は夫ジョニー・デップとの共作で、ボサ・ノヴァタッチの曲。
このアルバム発表前に母になったブァネッサ、11曲目からは母親モード全開。
11曲目「Firmaman」にフィーチャーされているはきっと彼女のお子さんリリー・ローズの声でしょう。
12曲目はその名も「La Ballade De Lily Rose」。
ラスト「Bliss」は再びジョニー・デップとの共作で母親になった希望に満ちた歌です。