*2004年秋*


Coco d'Or
Mark Knopfler /Shangri-La
高田みち子 / Night Buzz



11月
高田みち子 / Night Buzz(特薦!)
某誌で記事を見つけ、これはきっと好きな音楽に違いないと確信して、買いに走った一枚。
敬愛するアーティストに、ジョニ・ミッチェルやキャロル・キングを挙げ、70年から80年代の匂いがし、ポップス/ジャズ/フュージョン/ロックなどのジャンルと時間軸をクロスオーバーする魅力に溢れていると書いてある。これがメジャー・デビューアルバムだそうだ。おまけにかわいいイラストは、『レコード・コレクターズ』ファンはきっと知っている、レコスケくんでおなじみ本秀康さんである。
早速CD店を捜したが見つからない。おかしいなあ、と思ったらジャズのコーナーで発見。CDの帯には『ジャズ/ボーカル』とある。
確かに、ジャズのフィーリングを湛えた曲はあるけど、特にジャズっぽいわけではなくて、やはりこれは良質の歌ものだと思います。
11曲中、10曲がオリジナルでどの曲も粒ぞろい。
柔らかでさわやかな2曲目「chocolate」や4曲目「カナリア」は、『Wyca』以降、静と和を感じさせる音世界に移行したEPOを思わせるところがあります。
3曲目「雨は優しく」は落ち着いた曲調が印象的で、『雨、雨、雨のせいね』という歌詞がずっと耳に残ります。
5曲目「Night Buzz」はエレクトリック・ピアノとブラシ・ドラムが静かでムーディーな夜を思わせる、趣のある曲。耳元で語りかけるような、静かな歌声が美しく響きます。
7曲目「春を待ってる」と10曲目「The Tracks Of My Tears」はアルバム中異色の曲で、彼女の間口の広さを感じさせます。「春を待ってる」は、ウッドストック一派、John SebastianやThe Bandを思わせるような、土臭いギター、オルガン、ハーモニカをフィーチャーし、余韻を消した音作りにくらっとくる、ダウン・トゥ・アースなナンバー。
「The Tracks Of My Tears」も土臭い音作りが印象的ですが、こちらは唯一のカバー曲で、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズの曲。リンダ・ロンシュタットも歌っていました。
一拍めで、グッと溜めるアレンジとゴスペル・フィーリングが最高!
8曲目「Your God」は6拍子のソウルフルなスロー・ロック。ブルージーなギターが泣かせます。
9曲目「夕焼けと嘘」はミディアム・テンポのスムースなナンバー。松たか子への提供曲だそうです。
ラストナンバー「僕らの樹」は、ピアノをバックにしっとりと、そして力強く歌われるナンバー。

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Laura Pausini /Resta In Ascoito
イタリアの国民的歌手、ラウラ・パウジーニのイタリア語ニュー・アルバムです。
ぼくは初めて聴くのですが、少しハスキーでパワーのあるボーカルです。
生楽器を主軸にしたキレの良いロック・ナンバーと盛り上がるバラード曲が並び、お国柄かマイナー調を基調とした激しさのなかにも少し翳りを感じさせるメロディーが印象的。
すっと耳に馴染むポピュラーなところに、スティービー・ニックスに通じるものをぼくは感じました。
◇◇◇

Nitty Gritty Dirt Band /Welcome To Woody Creek(推薦!)
1967年デビューの長寿アメリカン・カントリー・ロック・バンド、ニッティー・グリッティー・ダート・バンドの正真正銘のニュー・アルバムです。
ひとことで言うと、これすごくいいですわ。メンバーは、Jeff Hanna, Jimmy Ibbotson, Bob Carpenter, Jimmy Fadden, John McEuenという最も安定した布陣(Jonn McEuenは2001年に復帰)。
カントリーといってもポップありロックあり、泣かせるバラードあり、スワンピーなインスト・ナンバーもあり、スライド・ギターが渋くかっこいい曲あり。
12曲中9曲がオリジナルでありながら、とても初めて聴いたと思えないほど(もちろんいい意味で)、すんなりと耳に馴染むポップさ。昔から知る人にとってもカントリーとロックが程よく溶け合った本作は気に入ること請け合いです。
使用楽器を見ているだけでも楽しい本作。ハーモニカ、フィドル、マンドリン、ピアノ、ハモンド・オルガン、ギター各種、リズム隊が歌心たっぷりに曲を盛り上げています。
カバー曲も素晴らしく、「She」はしっとりとした名バラード(コステロが歌っていた曲とは別の曲)。
ビートルズのびっくりカバー「Get Back」は陽気なカントリー/ブルーグラス調に様変わり。これがまったく違和感なく、実に楽しいバージョンに仕上がっています。

10月
冨田勲 /ダフニスとクロエ
シンセサイザー奏者第一人者の冨田勲「月の光」発売30周年記念として、RCA9作品が紙ジャケットの廉価盤で発売されました。
実を言うと当時、洋楽一辺倒であった僕は彼のアルバムをまともに聴いたことがありませんでした。
シンセサイザーが発明された頃は、どんな音でも出せる魔法の楽器というイメージが強かったのを思い出します。実際は予備知識もなく触ると「びょょょ」という変な音しか出なかったりするんですが。
それだけに、彼が『箪笥』とも『電話交換台』とも言われた『馬鹿でかくて単音しか出ない』シンセの前で写っている写真が妙に気になったものです。
と、前置きが長くなりました。つまり今聴いてこそ価値がわかるアルバムではないかなと、そんな気がしています。今聴いてなお新鮮。
鳥の鳴き声も、分厚いオーケストラも、一人で独創性を膨らませて創ったかと思うと感慨深いものがあります。
今回買ったのは、1979年の作品。ラヴェルの「ダフニスとクロエ」組曲題2番、組曲「マ・メール・ロワ」を取り上げています。今、なぜかボレロが聴きたかったのでこれにしました。
ライナーノーツで板東玉三郎さんが書いている「機械を使って表現しているのに、湧いてくる感動は人間的なあたたかいものである」というのは的を射た言葉ではないでしょうか。
◇◇◇

Dolly Parton /Live And Well
ドリー・パートンの2枚組最新ライブアルバムです。
ライブは2002年の12月12日と13日、テネシーで行われたHalos & Hornsツアーのものです。
1枚目は最近のアルバムのナンバーを中心に(多分)構成された、カントリー/ブルー・グラスナンバーが並びます。MCもまるまる入っていて結構長く喋っていたりおちゃらけがあったり(残念ながら、英語がわからないので内容はわかりませんが)。DVDが同時発売されているようですので、英語のわかる人はDVDで見たほうが楽しいかも。
2枚目の後半は、彼女の代表曲、コンテンポラリー曲が並んでいます。「9 to 5」、「Jolene」、そしてもちろん「I Will Always Love You」も収録しています。僕はあまり歌い上げ過ぎない訥々としたDolly Partonの「I Will Always Love You」が好きです。こちらが原曲ですしね。
Disc.2-10曲目のレッド・ツェッペリンのカバー「天国への階段」が秀逸です。
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ケイコ・リー /Who's Screamin'(推薦!)
ケイコさんの新譜はとてもいい。何枚か持っているけどこれは一番のお気に入りになりそう。
1曲目「All Of You」を掛ける。シンプルな演奏。一切の余計な音がない、静寂感。
それでいて絶妙なタイミングでなくてはならない音を鳴らす。
例えば2曲目「I Thought About You」はウッド・ベースとのデュオで始まり、2バースからしっとりとピアノが入ってくる。
曲によって、時にはピアノ、時にはギターをメインに据え、時には電気楽器をフィーチャーし、歌を盛り上げる。一見シンプルでいて、いろんな表情をみせる歌たち。
そんな素晴らしい演奏に寄り添い歌うケイコさんの声。余計な力みやこぶしを付けずにシンプルに歌う。
それがまたいい。ジャズを普段聴かない人にもアピールするのはこの素直さなのかとも思ってしまう。
声質そのものがステキな楽器なのです。
6曲目「Someday My Prince Will Come」は、ちょっと気分を変えて8ビートにアレンジされていて、都会的な雰囲気。分厚いコーラスもみんな彼女の多重ボーカルです。
12曲目「Time After Time」は僕の好きなシンディー・ローパーの曲。
ゆったりしたムードにほっこりしていると、13曲目「Who's Screamin'」で不意打ちを食らう。
アルバム中唯一のオリジナル曲は、バリバリのファンキー・ミュージック。
ラストはインスト・ナンバー「Milestones」。ケイコさんはスキャットで参加。ファンキーに幕を閉じます。
ジャケット写真がなんかいつもと違うなと思ったら(何だか艶かしい?)、写真は荒木経惟でした。
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Isabelle Antena(アンテナ)/easy does it
おー、懐かしいなあ。随分長い間音沙汰がなかった気がしますが、3年振りなんですね。
アルバムの内容は品の良いボサノバ・ナンバー集。オリジナル曲6曲、夫との共作3曲を中心に、ヘンリー・マンシーニ「Nothing to Lose」、ジョアン・ドナード、アントニオ・カルロス・ジョビンらの曲を取り上げています。
8曲目「Your One and Only」は彼女のセカンド・アルバム『Hoping For Love』の5曲目に入っていた「4と6の間に」という短いインタールード曲を、完成させたものだそうです。
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Mark Knopfler /Shangri-La(推薦!)
これいい。すごくいい。渋い。胸に沁みる。
マーク・ノップラーの新譜は、ダイアー・ストレイツ時代の「マネー・フォー・ナッシング」を思わせるようなロック・チューンは少なく、全体的に落ち着いた静かな曲調が多いのに、単調になったり退屈になったりするどころか、感動したまま最後まで聴けてしまう。芳醇で少し贅沢な気分にまでなってしまう。
歌声まで、以前のぶっきらぼうさは影を潜めて、穏やかに響く。
2曲目「Boom, Like That」はマイナー・キーの枯れた味わいにぐっとくる。
最高に好きなのは、9曲目「Whoop De Doo」。渋い。渋すぎる。泣けます。
13曲目「Donegan's Gone」はライ・クーダーとクラプトンを足したみたいなナンバー。
ラストはなぜかタンゴのような妖しい曲「Don't Crash the Ambulance」で終わります。
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Richie Furay /In My Father's House
今は牧師さんをしているらしい、リッチー・フューレイが何年か前に出していたアルバムに、ライブ曲3曲のボーナス・トラックが追加されてリマスターで発売になりました。
全曲、神について歌ったいわゆるクリスチャン・ミュージックながら、曲調は彼の昔からの特徴であるウェスト・コースト・ロックです。
クレジットを見ると、ポコ時代の朋友、Rusty Youngの名前があって、何だか嬉しい。
3曲目「Peace that Passes All Understanding」はJohn Hallの「Power」とそっくりなんですけど(笑)。

9月
原田郁子 /ピアノ(推薦!)
日本の3ピース・バンド、クラムボンのピアニスト/ボーカリスト/ソング・ライターの初ソロ・アルバム。
一聴して、いい意味でとてもピアニストらしいアルバムという印象を受けました。
アルバム・タイトルもそのまんま『ピアノ』。音の中心にあるのは、彼女が弾くスタインウェイ・ピアノの深い響き。ポップ、クラシック、弾き語り、ウィンダム・ヒル風のインストルメンタル曲、曲の揺れ幅は意外に大きかったりするのですが、全体を支配するのは淡くふわふわした感触。
ちょうどジャケットのように、綺麗な色合いなのだけど何かはっきりしない不思議さ、でも裏ジャケットでは海辺を歩く穏やかなポートレート。表裏の微妙なバランス感覚。
それが音にも反映しているように思うのは考え過ぎでしょうか。
1曲目「たのしそう かなしそう」のイントロの力強いピアノのリフ。ドラムのフィル・インに続いてどこか引きずるような独特のボーカルが乗っかる。ポップなメロディーなのに、どこすこやかましいドラムが不思議と悪趣味にならずかっこいい。不思議なバランス感覚の曲です。
3曲目「かじき釣り」はNHKみんなの歌にも合いそうな、コミカルな曲。ちょっと長いけど(笑)。
5曲目からラストにかけては静かで淡い雰囲気が続き、この流れが特にぼくは好き。
5曲目「なみだとほほえむ」は落ち着いたドラムが、南部ロックを思わせなくもない。切ないナンバー。
6曲目「流れ星」は静かでシンプルな曲。ミニマルなリフレインが続く。
7曲目「ワルツ」はピアノ・ソロの静かなインスト曲。ちょっとリズ・ストーリーを思い出しました。流れるようなイントロ部分は即興だそうで、本人曰く『二度と弾けないっす。』
ラストの「トゥインクル」は永積タカシ(@ハナレグミ)作曲。
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Paul Weller /Studio 150(特薦!)
ポール・ウェラーのニュー・アルバムは初のカバー集。収録曲は幅広く、知っている曲はあまり多くはなかったりするのですが、全体をソウル色で統一したかのような雰囲気が格別で、何よりも曲への愛着が伝わってくるような素敵なカバー集です。
1曲目「If I Could Only Be Sure」は、ギターのリフ、オルガンの音がノーザン・ソウルの雰囲気を盛り上げる曲。冒頭から渋く、かっこいい。
かっこいいと言えば4曲目「Bottle」。ギターのストローク、畳み掛けるようなドラムとベース、スピード感みなぎるボーカルがかっこいい。ハードに吹きまくるフルートも効果抜群。
5曲目「Black Is the Color」はニーナ・シモンも取り上げていたトラディショナル・ナンバー。アコースティック・ギター弾き語りによるマイナー調のしんみりした曲であるが、もの悲しいバイオリンの音が曲をよりいっそう盛り上げている。
陰鬱な気分がすっと晴れるように続くのは6曲目、「Close to You」。そう、誰もが知っているカーペンターズの曲であるが、しっとりしたソウルナンバーにすっかり衣装替えされていて、それがまたいい。ホーン・セクションやギターの音が、まんまソウル。
まるで、ザ・バンドの曲かと思わせる、どっしり超いぶし銀の8曲目「One Way Road」はなんとオアシスの曲だそう。原曲は聴いたことないですが、このアレンジは最高です。
10曲目「Thinking of You」はシスター・スレッジの曲。ライトな感覚のソウルでほっと一息。このアルバムは一曲一曲の良さはもちろん、全体の流れもいいです。
11曲目「All Along the Watchtower」はもちろん、ボブ・ディランの有名曲。ドラムのリズム取りが半分の速度になっているため、原曲の畳み掛ける感じではなく、どっしりとして不穏な雰囲気を醸し出しています。
本編ラスト「Birds」はニール・ヤング作の美しいバラード曲。ピアノとオルガンをメインにした美しい雰囲気は、アルバム最後を締めくくるのにふさわしい曲です。
なお、日本盤には2曲のボーナストラックが入っています。ボーナストラックは本編の流れを止めてしまうことがあるため個人的には好きではないのですが、この収録曲はなかなか良い曲です。
◇◇◇

Coco d'Or ココドール(推薦!)
ココドールとは、元SPEEDのhiro(島袋寛子)のジャズ・プロジェクト。普段からジャズは良く聴いているのだとか。ポップ・シンガーのジャズというと、ソウルやヒップホップを入れたり打ち込みを多用したりと流行りの音を想像するかもしれませんが、これは正真正銘のジャズ・アルバム。
リズム感の良さとか、高音の張りのある元気な歌声はSPEED時代からのものですが、それより驚かされるのは、声を張り上げないときの、少しハスキーでゆったりとした歌声。こんな柔らかい歌い方の出来るシンガーだったんですね。
選曲もまたすばらしい。hiro自身これは絶対歌いたかったという「Fry Me To The Moon」、ジャズ・スタンダードの「You'd Be So Nice To Come Home To」、「イパネマの娘」、「Very Thought Of You」といった有名曲から、Deniece Williamsの「Free」、Art Brakeyで有名な「チュニジアの夜」といった渋い曲まで入っています。
アレンジが面白いのは、Fried Prideのファンキーなギターをバックにアップテンポで歌う「Summertime」。
そして、ハイライトは「Spain」。本人曰く『苦戦した』そうだが、この激しく難しい曲を歌いきっていて、むちゃかっこいい!スキャットも聴き物です。
たっぷり16曲入りで最後まで一気に聴けます。お勧めです。
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長谷川都 /愛ゆらら (Single)
2ndアルバム『折々』を出した後、休業宣言をしてファンを悲しませたのですが、今では精力的にライブ中心に活動を再開してうれしい限りです。先日名古屋でライブがあり、生のピアノ弾き語りを観たのですが、美メロディーは健在、終始にこやかで歌うことを楽しんでいて素敵でした。
そのライブの冒頭で歌ってくれたのが「愛ゆらら」。去年インディーズから出した今のところ最新のシングルCD「愛ゆらら」収録の曲です。
このCD、3曲入りなのですが、なぜかピアノ・レスの構成で、アナム&マキがギターで参加しています。
従って、ライブでのピアノ弾き語りとはまた違ったゆったりした感じのアレンジです。
はやくフル・アルバム出してくれないかなあ。
CDは都さんのHP、www.hasegawamiyako.comで購入出来ます。
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Keri Noble /Fearless
ケリ・ノーブルはテキサス生まれのシンガー・ソングライターでピアノも彼女自身が弾いています。
購入したのは日本盤なのですが、輸入盤はジャケット写真はもう少し厳しい表情をしています。
なぜそんなことを書いたかというと、日本盤のジャケットで受ける印象より、(もちろん繊細ではあるのだけど)ざっくりした印象、リアルな印象があるからです。
ピアノを弾きながら歌うメロディーが美しく、特に冒頭の4曲は名曲揃い。
後半はやや寂しげな曲が多いでしょうか。
オリジナル・アルバムでのラスト曲「If No One Will Listen」はストリングスをフィーチャーしたじわじわ盛り上がるとても美しいバラード曲です。