*2003−2004年冬*


Ashanti's Christmas
Joss Stone / The Soul Session
Deniece Williams / Gonna Take A Miracle:The Best of



2月
Deniece Williams / Gonna Take A Miracle:The Best of Deniece Williams(特薦!)
“Listen to the smoothing voice of an angel on a heartful anthology of her career.”
輸入CDに貼られたシールの文句ですが、まさにこの言葉がすべてを言い表しているのではないでしょうか。
透明でどこまでもよく伸びる歌声。天使を思わせるけど、神がかっているのではなくてキュート。ミニー・リパートンも目じゃない美しいハイトーン・ボイス。そしてなにより、ポジティブで楽しくなる曲の数々。
ポップでソウル。今は現役を引退してしまっているけど、こんな素敵なシンガーを今まで知らなかったなんて、とても損した気分。
収録曲は全部で16曲。1976年のデビュー・アルバム『This Is Niecy』から、映画「フットルース」の挿入歌となった1984年の「Let's Hear It For the Boy」までがまんべんなく収録されています。
なんといっても素晴らしいのはMaurice Whiteのプロデュースのもと、スイート・ソウル全開の『This Is Niecy』からのナンバーの数々。生楽器、ストリングス、ブラスセクションが織り成すグルーヴ、自在に宙を舞うボーカルがほんとに素敵。
そして収録曲のうち10曲が彼女の手によるナンバーで、曲作りの才能も見逃せません。
例えば5曲目「God Is Amazing」はゴスペル曲なのですが、これも彼女のオリジナルで驚かされます。
1983年になると打ち込みのリズムを使用し時代を感じてしまうのは否めませんが、Curtis Mayfieldのナンバー「I'm So Proud」などは素晴らしい出来で、Lee Oskarのハーモニカ・プレイが光ります。
ラストは「Let's Hear It For the Boy」で陽気にダンス!

1月
The Go-Betweens / bright yellow bright orange
過去のアルバムが日本でもリマスターで再発され、再評価が高まるオーストラリアのバンド、ゴー・ビトウィーンズの最新アルバム。
彼らはデビューが1981年、一時活動が途絶えるが、2000年に復活、これは復活後2作目のアルバムでもあります。
1曲目「Caroline and I」の冒頭のギターの音で思わず嬉しくなってしまいました。
ぼくがFeltとか、ネオ・アコースティックの音楽に夢中になっていた頃にフラッシュ・バックする音。
甘酸っぱくまっすぐなギター・サウンド。決してうまくはないけど、訥々とした味のある爬虫類系のボーカル。
『♪She never wanted, she never wanted to see the rain』のリフレインと美しいメロディーが心に引っかかる3曲目「Mrs. Mogan」がお気に入り。
◇◇◇

Kate Rusby / Underneath the Stars
店頭で『Eva Cassidy亡きあとブリティッシュ・トラディショナル・フォークを背負って立つのはこの人だけ』というディスプレイに思わず手を取ったのがこのアルバム。
前作がデビュー10周年を記念したアルバム“10”でしたので、かなりのキャリアの人ですが、アルバムジャケットから感じられる雰囲気のように、キュートで柔らかい歌声がとても魅力。
下で紹介したLynn Morrisonの透明な美しさとはまた違った、どちらかといえば温かでのどかな、人懐っこい音楽です。
収録曲の多くは、トラディショナルの歌詞にケイトが曲をつけたもの及びケイトのオリジナル。
ケイトが弾くギターに、シターンと呼ばれるギターを柔らかくしたような音の古楽器、ダブルベース、アコーディオンといった楽器を主軸としたシンプルな演奏は余分な音も不足感も無く、いい按配で心地良い。
1曲目「The Good Man」の冒頭のミュートの掛かったギターのカッティングは、どこか初期のRy Cooderに通じるような土臭さも。
彼女のオリジナル曲「Falling」は、Nanci Griffithに通じる優しさ、素朴さが感じられます。
◇◇◇

Alicia Keys/ the diary of alicia keys(推薦!)
アリシア・キーズ、期待の2nd・アルバムの登場です。
デビュー作でグラミー賞を総なめした彼女、本作でも作曲、プロデュース、ピアノと才能を発揮。
現代を生きる女性らしく、一部では今日的なヒップホップ的リズムを取り入れながらもその割合は控えめ、メロディーに重点が置かれた、ソウルにより近い音楽といえるのではないでしょうか。
個人的には、6拍子のソウル・バラード「If I Ain't Got You」がお気に入り。ここではオーソドックスかつディープなサウンドに乗って、張りの有る堂々とした歌声を聴かせます。
オルガンが渋い魅力を放つ、マイナー調の8曲目「Dragon Days」もクールでかっこいい。
ラストを飾る「Nobody not Ready」がフュージョン・ソウル・タッチというのも意表を突いていいです。
◇◇◇

Joss Stone / The Soul Session(推薦!)
ハスキーで存在感の有るボーカル。跳ねたリズムに、ボトムを支える安定したベース、オルガンに、カリッとしたエレクトリック・ギター。素晴らしいソウル・フィーリングに耳を持っていかれる。
そう!そうだよ、聴きたかったのは、これ!と思わず唸りたくなる、流行のヒップホップとは無縁の正統派ディープ・ソウル。ディープ・R&B。
しかも歌っているのは16歳、白人女性のイギリス人と聞いて二度びっくり。。
全曲カバー曲ながら有名曲は外した選曲。ファンキーな曲よし、サザン・ソウル・バラードもよし。
実は知っている曲は1曲もなかったのですが、変わったところでは元ラヴィン・スプーンフルのジョン・セバスチャンの「I Had A Dream」をカバー。
他にはアレサ・フランクリンの「All the King's Horses」、カーラ・トーマスの「I've Fallen in Love with You」など収録。
なんでも初めは、全曲ソウル・カバーにするつもりではなく、アルバムをつくる過程でこうなったのだとか。次作ではまた違う展開が期待できるかもしれませんね。
なお、日本盤はジャケット違いで、そちらは顔正面からのショットです。
プロデュースはBetty Wright。
◇◇◇

Lynn Morrison / Cave of Gold, Celtic Lullabies(推薦!)
このリン・モリスンという女性シンガーのことはよく知らないのですが、先月買ったプテュマヨの子守歌集に収録されていてとても良かったので気に入ったのです。
彼女はスコットランド人でケルティック・フォークのシンガーのようで、検索した限りではこのアルバム以外のリリースは見つかりませんでした。
収録されている曲は2曲を除いて、トラディショナル・ソング(スコティッシュ・ケルト)のアレンジ曲。
表題にあるように、ケルトの子守歌集のようです。
彼女自身が弾くピアノ、ハープ(キーボード?)を中心に、ホイッスル、アコーディオン、ギター、フィドル、チェロ等最小限の楽器による演奏によるもので、彼女の透明で清楚なくせのないボーカルが心地良い。
ゲール語で歌われているのと、厚い女性コーラスを配しているので、アイルランドのクラナドに通じる雰囲気があります。
全体的にはもの悲しい歌が多いのですが、柔らかく子どもを寝かしつけるような2曲目「Cradle Spell of Dunvegan」、優しさに溢れる6曲目「The Bressay Lullaby」がとても良いです。
2001年製作。Greentrax Recordings Ltd.CDTRAX 212


12月
寺井尚子 / ジャズ・ワルツ(推薦!)
26日の中日新聞夕刊に、彼女のインタビューが載っていたのですが、その中で彼女はこのように語っています。
「自分の音楽がどんどん膨らんできて、ひとつのレコーディングが終わると、次が頭のすぐそばに待っている状態です。太い音、潤いのある豊かな音を目指して、バイオリンの可能性を広げたい。」
今、最も勢いのあるジャズ・バイオリニスト、寺井尚子の最新作の登場です。
1曲目はショスタコビッチのジャズ・アレンジ曲「ジャズ・ワルツ」で幕をあけます。文字通りワルツのもの悲しい旋律の曲。クラシックとジャズの融合なんて形式ばったりしていないところが、いかにも彼女らしい好演。
2曲目冒頭、いきなりクラシカルかつパッショネイトなバイオリン・ソロの太く堂々とした音で始まるのは、オリジナル曲、その名も「アパッショナータ〜情熱」。名曲です。
4曲目「ラグな気分で」は、軽快なラグ調のアップテンポのリズムに乗ったとっても楽しく陽気な曲。でも、テクニックは全開。ラクに弾き流したりはしておりません。
5曲目「魅惑のワルツ」はハープの音のようなイントロ、つまりピチカート奏法でいきなり始まり意表を突かれます。
7曲目「風に舞う」はまさに風のように流れる旋律が心地良いフュージョンぽい曲。
それにしてもアルバム全体から流れるこの“パッション”はどうでしょう。熱いインプロビゼーションもバラードでの語り口も、まさに寺井ワールドと言えるのではないでしょうか。
7曲の寺井尚子およびバンド・メンバーのオリジナル曲はますます冴えを見せ、また、アイリッシュ・トラディショナルの名曲「ダニー・ボーイ」や、ジョージ・ハリソンのビートルズ時代の曲「アイ・ミー・マイン」の意外なカバーも収録。
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Ashanti / Ashanti's Christmas(推薦!)
とても心温まるクリスマス・アルバムがアシャンティから届けられました。
(アップできる頃にはクリスマス終わっていますね。すみません。)
全体を緩やかなトーンでまとめられていて、程よくソウルフル。
ことさらゴスペルっぽく声を張り上げず、とても優しげな歌い方が、可愛らしい声質にとってもマッチしています。ドリーミーでスイートなオリジナル曲4曲を中心に、「きよしこの夜」、「もろびとこぞりて」といったお馴染みの曲も収録。
「Christmas Time Again」ではクリスマスの思い出を語るセリフが楽しく、「This Christmas」は楽しい雰囲気がとてもいいです。
「きよしこの夜」は6拍子に変えてほんのりゴスペル・ソウル。
全10曲、29分30秒のコンパクト・アルバムです。
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Putomayo Presents Dreamland
世界のいろいろな音楽のコンピレーションと特徴のあるイラストで有名なプテュマヨレーベルの新作。
その中でも「プテュマヨ・キッズ」という子どもたちのための企画盤。
世界の子守歌を集めただけあって、どの曲も心安らぐ温かな曲ばかり。いろいろな国の曲ながら、どこか共通した感覚があるのは面白いところ。
収録国は、Benin(西アフリカ、ギターになんとカルロス・サンタナ参加), Madagascar, Canada, South Africa, Mexico, Australia, Brazil, Scotland, USA, Japan(なぜか日本だけ三線のインスト), Argentina, Tatarstan/Russia。