*2000-2001年冬*

JuJu Club / Fun Fun
紫雨林 / 戀人
ACO / 四月のヒーロー



2月
Gladys Knight / At Last (推薦!)
「私に言わせれば、ジャンルなんて関係ないの。音楽は音楽よ。全てが音楽なの。音楽、これしかないわ!」
Gladys Knight & Pipsとしてデビューしたのが1962年。ポップ、R&B、ゴスペルなど数多くのヒットを飛ばしてきたグラディス久々のニュー・アルバムです。
冒頭の2曲こそ、今日的なリズムを生かしたR&Bナンバーになっていますが、ぼくは3曲目の「I Said You Lied」に大感動。イントロのスキャットから、温かくハスキーで芳醇な歌声が堪能できる、素晴らしいソウル・バラードです。
続く4曲目「Grandma's Hands」も素晴らしい。ブルージーで思いに浸るような歌がとても印象的。歌詞が感動的!
技巧的な歌手はたくさんいるし、声量で圧倒するタイプでもないけど、まず「うまい」と思ってしまうより「いい歌」を感じさせる彼女は素敵。温和な風貌と相まって暖かな歌声に浸っていたい。
日本盤のみ、ボーナス・トラック「At Last」収録。アルバムの流れを損なうことなく、それどころかラストを締めくくるにふさわしい、6/8拍子の入魂の曲。日本盤をぜひお勧めします。
◇◇◇

ACO / 四月のヒーロー (12cm Single)(推薦!)
あれ、ACOがロング・ヘアー。ちょっとびっくり。
ACOといえば、内省的な微熱サウンドが魅力的なアーティストですが、その辺りは本人も自覚的なようで、「“Abusolute Ego”の制作中は苦しくて、今度はもう少し気楽につくってみようと思った」といったような内容のことを、とある雑誌で語っていました。
が、しかし彼女の性分がそうさせるのでしょうか、出来上がった歌「四月のヒーロー」は、再びまりんこと砂原良徳をプロデュースに迎え、“Abusolute Ego”の中盤、「雨の日のために」当たりを思わせる、スローで雰囲気あるナンバーとなりました。中華ファンとしては、二胡がフィーチャーされているのが注目されましょう。
そしてそして、驚いたのはそのカップリング曲。なんとKate Bushの名曲中の名曲「This Woman's Work」(Sensual World 収録)のカバー!。感想は聴かれた皆さんに委ねるとして、僕なんかはこの曲を取り上げたという心意気でもう感動しまくりです。
◇◇◇

Aiko / 初恋 (Maxi Single)
Aikoさんといえば、アップ・テンポの快活なイメージが一般的には強いのかもしれませんが、ぼく個人は彼女の書くスローな曲がすごく好きだったりします。
ニュー・シングル「初恋」は、久しぶりにしっとりした曲で、6/8拍子のロッカ・バラードです。
ギターがちょっと唸り過ぎの気もしますが(笑)、懐かしさすら憶える雰囲気がなかなかいいです。
Aikoの歌は起伏の多い、相変わらず特徴的なフレーズを聴かせます。
2曲目「アスパラ」はなんと、セカンド・ライン&ニュー・オリンズ・ファンク!
本人曰く「Dr. Johnの“アイコ・アイコ(註)”みたいでしょ。」って、Aikoさん、それ、趣味渋過ぎです。
3曲目「脱出」は少しマイナー調の、アップ・テンポながらどこかしんみりした曲。
廃校で撮影したというジャケット&インナー写真がとても綺麗です。
(註:本当にそういう題の曲があります。1972年くらい(うろ覚え)のアルバムGamboというニュー・オリンズ色一色のアルバムの1曲目に収録されています。)
◇◇◇

Bonnie Pink / Take Me In (Maxi Single) (推薦!)
ここのところ、なかなかいい感じのBonnie Pinkさんですが、3曲入りMaxi Singleの本作は初めてプロデュースを本人とバンド・ドラマーのAnthony Johnsonが当たっており、より自由かつ自然に自分の世界に向かってきたようです。もちろん、全曲彼女の書き下ろしです。
1曲目「Take Me In」はいろんな雑誌でも語られているように、Bonnie流R&Bといえる曲。
しかし、あくまで切なげなマイナー・キーを織り交ぜたメロディーは彼女ならでは。
生ドラムと後ノリ・ベースのバンド・グルーヴが、いわゆる今風J.R&Bとは一線を画した、実に彼女らしいロックっぽい仕上がりです。古っぽいウィリッツァー・ピアノが盛り上げています。
また、スネアの「カ〜ン」という音がインパクト大。おいおい、もちょっとミュートしてもいいんでないかいというくらいにデカい。(ちなみに生音を長めにループしてあるんだそうな。)
2曲目「What About Me」は歪んだギターが先導する、切迫した雰囲気の曲。
3曲目はアコースティック・ギターのストロークで始まる、キレのいいかっこいい曲。
この人はほんとに趣味のいい曲を書きますねー。
ちょっと戴佩[女尼]の「不想」を思わせる曲調です。とここまで書いて、このシングルの彼女、ちょっと戴佩[女尼]の作る雰囲気と似ている気がしてきました。
それにしても3曲は少な過ぎ。早くフル・アルバムを聴きたいです。
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安室奈美恵 / Break the Rules
テレビのCFで彼女の「think of me」を聴いたときは本当にびっくりした。
今までの彼女のイメージを覆す歌。確かに歌声は彼女の声!
僅か15秒のCFだったけど、それだけでこの歌は素敵な曲に違いないと確信した。
アップテンポの曲は今までの彼女のスタイルを踏襲しているようですが、むしろ緩やかなグルーヴの曲にとても魅力を感じました。
3曲目「better days」はミディアム・グルーヴのメローな曲。低めのキーから入る歌い出しは暖かでふくよかな雰囲気が漂い、一人多重デュエット・ボーカルも素敵。
そして一番はやっぱり11曲目「think of me」だな。スローなソウル・バラードを実に心を込めて歌っています。フェイクも入りまくり。
ふっと力を抜いた低音域の歌声がとても魅力的なことを知ったのは新しい発見でした。
彼女にはいろんな人のいろんなタイプの歌を歌って欲しいな、なんて思いました。

1月
紫雨林 jaurim(チャウリム) / 戀人今更ながら推薦!)
いやもう、びっくり。かっこいい!
韓国のバンド、チャウリムは当サイトに来て下さっている方々にもお好きな方が多く、ずっと気になっていたバンド。最新作である3rdが名古屋のCD店に入荷したら買おうと思っていたのですが、いっこうに入荷する気配がないので(泣)、唯一売っていた2ndを買ってきたのですが、いや参りました。
一言で言うと、久々に上質のロックを聴いたなー、と思いました。
ロックなんていう言葉はもはやジャンルとは言えないし、いささか雰囲気めいた言葉なのだけど、不思議とそんなことを思ってしまいました。
それはきっと音の持つ潔さ、素に訴える感性からくるのだと思います。
潔さとそのオトコマエ度(註:メイン・ボーカルは女性です)は、ジュリアナ・ハットフィールドに相通ずるものを感じたのですが、いかがでしょうか。
しかも、音楽の幅はとてもとても広く、半音下降のギターがカッコ良過ぎるハード・チューン「戀人3/3」でいきなりノックアウトしたかと思うと、ファンキーなクラビネット(!)が粘りのあるグルーヴを醸し出す「Charlie」(サビ以外はワン・コード!)があるといった具合。
ラストの生ギター&ストリングス隊バージョンの「戀人3/3(angel)」も素晴らしい。
ジャケットがAORみたいで音に合わない気もするけど、騙されずに(?)ぜひ聴いてみて欲しいです。
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イノトモ / やさしい手。
イノトモさんの本名が井上ともこさんだとは知りませんでした。
それは、さておき。
本作7曲入りミニ・アルバムは念願のホーム・レコーディングを含む、彼女のギター、ギタレレ等を中心としたごくごくシンプルな音にまとめ上げられています。
息遣いまで聞こえてきそうな歌と演奏は、今までで一番プライベートな雰囲気漂うもの。
ぼくは温かな雰囲気がたまらない「消えないもの」が特に好きです。
名曲「愛のコロッケ」の再録収録。
◇◇◇

ACO / ハートを燃やして(12cmシングル)
まず最初に歌と詩ありき。彼女の歌を聴いていると、ついついそんなことを思ってしまう。
生のリズム隊と、分厚いストリングス隊が織り成す怒涛のグルーヴが、いつにも増してスリリングでダイナミック、誰もが指摘するようにとてもロックを感じる仕上がり。
でも、紛れも無い彼女の歌。この声とメロディーは誰にも真似はできない。
来るフル・アルバムが待ち遠しい。かっこいい。

12月
JuJu Club / Fun Fun
これまたお久し振り、一時は風の噂で解散したと聴きましたが、元気な姿を見せてくれました。
JuJu Clubはぼくが聴く数少ない韓国のアーティスト。音楽のタイプも普段ぼくが聴く台湾のアーティスト達とはかなり違っているのですけど、なんかいいんですよね。このバンド。憎めないというか、気になるというか。
ジャケットも毎回おしゃれで、今回のジャケットもとってもいい感じ。
音的にはポップなんだけど、なんかひねくれていて、なのに根アカな雰囲気は彼らならでは。
チュ・ダイン嬢のうまいんだかなんだかよくわからない(実はうまい)投げやりボーカルも健在です。
音的にはテクノロジーを駆使したというとは対極の、いつになくローテク・人力で「せーの」でやりました的バンド・サウンドになっています。
ポップなんだけど「何でそこへ行く?なんでそこでブレイクするねん」て感じの1曲目、半音下降の不思議なコードにチュ・ダイン嬢お得意のトーキング・ボーカルが冴える2曲目、ほっと一息きれいなメロディーのポップな3曲目、どこか懐かしくもとぼけた味わいのノリのいい4曲目、だるいイントロとなんの脈絡もなく始まるブルージーな5曲目(この「あー、あ、んぅがぁー、あ」ていうスキャット(?)はインパクト大)などなど、JuJu World目白押しです。
これで「Ranisanisafa」のようなふわふわたゆたうような曲があったらさらに良かったです。
とか何とか言って結構気に入って聴いています。