*2000年春*

aiko / 桜の木の下
Bonnie Pink / Let Go
Charlotte & Dea/ alabaster nights




5月
上田まり / room (1st album 6曲入り)
上田まり / empty page (2st album 7曲入り)
(推薦!)
上田まり / 待ちわびた休日 (new maxi-single 5曲入り)
『心を癒すメロディーと、日常的でかつ優婉な歌詞で綴られた、6つのラブ・ストーリー。数々のアーティストを感動させた歌声を持つ、上田まり。待望のファースト・アルバム。』
これが、ファースト・アルバム『room』の帯に冠せられたコピー。
これ以上ぼくが何を補足することがありましょうか。偶然点けたテレビで聴いた歌こそが彼女の「待ちわびた休日」。この歌声に一目惚れ(一聴惚れ)しました!。
温かく少しハスキーな歌声。穏やかで深みのある声。そして、優しい彼女のソングライティング。
初期のユーミン、センチメンタル・シティ・ロマンス、キャロル・キング、70年代シンガソングライター、AORの流れを汲むリアル・ハート・シンプル・ミュージック。そしてそこはかとなく漂うソウル・フィーリング。
どのアルバムも佳曲揃いですが、特に『empty page』はお勧め。「砂の時計」「始まらない恋が始まった日」「遠くへ行こう」は名曲です。
もちろん、ボーカリストとして一層力強さが増した「待ちわびた休日」もベリー・グッド。なお、この曲は森永アロエ・ヨーグルトTV-CMソング!
しかしながらぼくが気に入るアーティストはどうして余りプロモーションされていないのでしょう(泣)。
優しくなりたいときも、悲しいときも、ぜひ。
◇◇◇

Charlotte & Dea/ alabaster nights(推薦!)
どんな人たちかまったく知らなかったのですが、ケルトのコーナーにあったのと、ジャケットに引かれて買ってきました。
彼女達はスウェーデン出身。実際聴いてみるとケルトではなく、オリジナルのポップ・ボーカル・アルバムでした。スウェーデン出身といっても、カーディガンズやグラウドベリー・ジャムのような音楽ではなく、Mary BlackやMaura O'Connellといったアイルランド出身のシンガーに通じる清楚で透明な歌を聴かせます。
面白いのはアメリカのポップン・カントリーの影響が感じられることで、それゆえ曲調もスローからアップテンポまで変化に富み、Mary Blackよりずっと明るく元気で親しみやすいものとなっていることです。しかしそこはスウェーデン出身だからでしょうか、土臭くなることなく、あくまで気品に満ちた歌を聴かせます。
ポップなメロディーも満載、これは隠れた名盤ですね。4曲目「That's the chance we take」なんてほんとにポップでいい曲ですよ!
曲も作るし、温かい声とキュートな声のコントラストの利いたハーモニーもいい感じ。とても丁寧に作られたアルバムです。
でもあんまりプロモートしている風でもないし、余り知られないままになってしまうのでしょうか。だとしたら、とっても勿体無いですね。
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cocteau twins/ BBC Sessions
王菲に多大な影響を与えたcocteau twinsですが、活動休止状態なので(たとえ過去のBBCセッションだとしても)このようなアルバムがひっそりと発売されているとは知りませんでした!
アルバムは2枚組で、1枚目は1982年から1983年までのセッションが16曲。
2枚目は1983年から1984年までのセッションが7曲、ずっと飛んで1996年(!)のセッションが7曲収録されています。
彼らの音楽はおよそライブ向きではありませんので恐る恐る聴いてみましたが、これがかなりの質の高さでびっくり。録音もすごくいいです。
初期の彼らの音楽は、かなり陰鬱で重苦しい曲が多いのですが、オリジナルアルバムより音がすっきりしているせいか、意外に楽しめました。(正直言って初期の曲をしっかり聴いたのはこれがはじめて。)
1枚目の10曲目にビリー・ホリデイ「奇妙な果実」の超びっくりカバーが!。く、暗い…。
12曲目以降は明るさが増してきていますね。
2枚目になると、コード進行もシンプルですっきりとし、王菲のカバーに代表されるような一条の光が指し込むような、穏やかな曲調に変わってきているのが良く判ります。
そして、びっくり、2枚目の8曲目から11曲目のセッションではドラムが生ドラム!。硬質でミステリアスな彼らの音楽に生ドラムが軽やかさ、人間っぽさを与えていて、意外にもマッチ。ちょっとした感動。
特に8曲目「serpentskirt」は王菲が彼らのアジア発売盤にゲストボーカルで参加していた曲なので、皆さんも馴染み深いのでは。12曲目「calfskin smack」は名曲。
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Trisha Yearwood/ real live woman
次々に才能ある若手アーティストが発掘され、急速に若返りが起こっているのは、台湾や日本ばかりでなく、アメリカのポップス・カントリー界もしかりのようです。
すっかりベテランの感がするTrisha Yearwoodは、どちらかというと穏やかなバラードで持ち味を発揮するタイプなので、Shania Twainや Faith Hillに較べると地味な印象を持たれるかも知れませんが、曲が彼女の持ち味にはまったときは、信じられないほど魅力を発揮する人です。
久々のこのアルバムでも大きな変化はなく、ミディアムナンバー中心の落ち着いた仕上りになっています。例えば6曲目のゆったりした6/8拍子が心地よい「try me again」、表題曲のバラード・ナンバー「real live woman」など、いい感じです。
そしてなんといっても、10曲目、もう涙無しでは聴けない超メローなナンバー「wild for you baby」にメロメロ。フェンダー・ギターの音で始まるこの曲、絶妙の間合いといい、素晴らしい名唱です。
今なら外資系CD店に行けば、このアルバムを試聴できる店が結構あると思います。ぜひ10曲目を聴いてみてください。素晴らしいですよ!
ところで、この曲はカバー曲のようで、ぼくはずーっと昔聴いた記憶があるのですが、誰が歌っていたか思い出せません。知っている方がおられたら教えてください。(作者Tom Snow/David Batteau,1978)
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Elvin Bishop/ Juke Joint Jump
う〜ん、懐かしいなあ。中学生の頃を思い出すなあ。時は1975年。この頃はまだサザン・ロックが盛り上がっていたなあ。このアルバムもCapricorn Recordsから出てるしなあ。プロデューサーはJohnny Sandlinだし。
今、サザン・ロックと大雑把に言いましたが、彼の音楽(というかこのアルバム)はカントリーの影響はほとんどなく、ブルース、ファンク、セカンドライン、それにソウルといった要素が絡み合い、意外にしゃれた都会っぽさもあったりします。
そしてどの曲もノリノリで陽気、和めます。ギブソンギターの甘い音もかっちょいい。4曲目「Wild River」では胸キュン(死語か?)ピアノのイントロが泣かせます。爽やかな夏のそよ風を思わせるポップな「Sure Feels Good」などいい曲目白押しです。密かにお勧め(笑)。

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4月
Wyolica/ who said“la la...”?(推薦!)
これはかなりいいです。いっぺんで気に入ってしまいました。
グループ名は「ワイヨリカ」と読み、ボーカルのazumiとアコースティック・ギター&コンポーザーのso-toのユニット。ひとことでいうと、ソウル・グルーブを得意とする人たちなのですが、最近とみに多くなった日本のソウル・シンガー達とは違う確かな個性が感じられます。
個人的な話になりますが、ぼくはどちらかというとパワフルに歌い上げるボーカルは苦手なんですが、彼女の声はいい。甘くちょっとコケティッシュで魅力的。ふわりとしていてちょっとチャラを思わせる瞬間も。
さて、歌のほうですが、1曲目こそ、今風のラップを交えた曲ですが、それ以外はかなり、スロー&メローなソウル・フレイバー満載。しかも日本語がちゃんと聞こえてくるのも好感が持てます。実際英語交じりの歌詞はほとんどありません。ソウル・ミュージックではなく、彼女たちの歌としての魅力を感じます。
チャラほど破壊的なところはなく、ACOほど内面に向かい合った感じもなく、柔らかな浮遊感がとても気持ちいいです。これは、歌にアコースティックな感覚を吹きこむso-toの存在も大きいと思われます。
実際アコースティック(ガット)・ギターをバックに歌う「こたえて」などは、ソウルという枠にはすでに捕らわれていない、温かな歌心を感じます。
2曲目「さあいこう」は特に絶品。ずっと同じフレイジングの歌メロでコードだけが変わっていくのがすごいいい感じ。優しさに溢れた、アルバムです。
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Bonnie Pink/ Let Go
2年振り、4作目となるBonnie Pinkの新譜が発表されました。
今までのスウェーデン録音、トーレ・ヨハンソンのプロデュースから離れ、本作はアメリカで録音されています。彼女の今までの歌に耳を傾けてみればわかりますが、決しておしゃれなスウェーデン・ポップスをやっていた訳ではなく、もっとシンプルでアメリカ的なものを感じます。活動の場をアメリカに移したのもうなずけます。
かといって大きな変化を期待すると肩透かしを食うかもしれません。ここに提示されたのは、よりシンプルで素のままの歌。最小限のメンバーによる渋い演奏。全曲で彼女自身もギターもしくはピアノを弾いています。一見淡々とした風情は、2コードの繰り返しの中でメロディーを綴っていくような楽曲に顕著ですが、何度も聴くほどに新たな魅力が増すように思います。
また、彼女のボーカルは今まで以上につやが増し、至近距離に感じられます。特に日本語詞の「過去と現実」などは繊細なメロディーラインと相俟って魅力的です。
特筆はラスト3曲の流れ。ニューヨークのシンガーソングライター、Jonatha Brookeの作風を彷彿とさせる翳りのあるメロディーが印象的な落ち着いた「Rumblefish」、アルバム中最もポップで“♪You Are Blue, So Am I”のふんわりとしたコード進行とブレークがとても心地よい「You Are Blue, So Am I」、そして雨音をバックに、前曲と切れ目なく続く、Bonnieのギターだけによるインスト曲「Refrain」でしっとり幕を閉じます。ブルージーでいて繊細な余韻の残る曲です。

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3月
Red Guitars/ seven types of ambiguity BBC sessions 1983-1986
一体何人の人がこのRed Guitarsというバンドを知っておられるだろうか。
フル・アルバムはRough Tradeから出した1984年の「Slow to Fade」、その後メジャーの引き抜きに合いVirginから出した1986年の「Tales of the Expected」の僅か2枚。しかも、この間にボーカルで曲を作っていたバンドの要が交替するという憂き目に遭っている。
ボーカル/ギター/ギター/ベース/ドラムというシンプルな構成。ギターはコードをじゃらじゃら鳴らすなんてことはほとんどしない。単音もしくは最小限の音で弾くギターフレーズは、半音ずれたり下がったりしながらコード上にない音を跳躍したり行ったり来たりする。キーボードがいないせいもあってとてもシンプルな音だが、それゆえ荒涼としてとてもイギリス的な音。とても複雑な展開の音。その音楽をしっかりボトムで支えている、ぶいぶいうなる紅一点ベースがまた渋くてかっこいい。
その一見不安定でかなり特異な印象を受ける音は、奇をてらった風ではなく、しっかりした歌心を感じる。パンキッシュな曲もどこか思慮深く、かなり心に引っ掛かる、不思議なバンドだ。

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aiko / 桜の木の下
メジャーに移って既にマキシ・シングル4枚、フル・アルバム1枚を発表しているナニワの歌姫aiko嬢の待望の2ndフル・アルバムです。
1stは凛とした佇まいの歌声と曲作りの素敵さが魅力的なアルバムでした。この2ndは1stに較べると渋いバラードは少なめで、かなりパワーのあるすっとばした楽曲が多い印象です。
既にシングルでお馴染み大ヒット曲「花火」、「カブトムシ」、「桜の時」も収録。
改めて聴いても「花火」は本当にいい曲!畳み掛けるメロディー、溢れる言葉、バックで跳ねるファンキーなピアノに思わず気合が入ります。もちろんビートルズチック(?)の「カブトムシ」もほろっと来る名曲。
4曲目「お薬」は粘るスライド・ギターのイントロがノリノリ!
このアルバムで個人的に特に気に入ったのは8曲目の「傷跡」。5拍子のファンキー・ジャズタッチのイントロに続いて6拍子+5拍子の曲が展開する超クールな曲。aikoの息継ぎしてないんじゃというほどの畳み掛ける歌もすごい。4拍子のヒュージョンタッチの間奏もかっこいい。
この後半の「傷跡」〜「Power of Love」〜「カブトムシ」の流れはいい。
「カブトムシ」終了後1分くらいの空白の後、ごっつうやかましい(笑)エセボーナストラックちっく「恋愛ジャンキー」収録。