*1999年夏*



8月
Moody Blues 「Strange Times」
突然ですが、Moody Bluesです。なんと新譜です。なんと8年振りです。
ところで、ぼくのこのバンドに対する印象は、イギリス田園叙情派ポップスであり、プログレ・バンドと思ったことは一度もないです。この新譜はさらに叙情派ポップスに磨きが掛かっています。
1曲目がちょっとぱっとしなかったので不安になったりしましたが、2曲目以降が実にいい。
全体にイギリスっぽくて甘酸っぱくて湿った空気感がいい感じで、とても温かい。本末転倒かもしれないですが、中華ポップスに通じる温かさが心地よいです。
3曲目「Soon Or Later」はアップ・テンポで軽快ながらあくまでもまろやかな温度感がいいし、6曲目
「Love Don't Come Easy」は聴きようによっては張宇がつくるバラードのよう。
7曲目「All That Is Real Is You」は6/8拍子の曲。8曲目「Strange Times」は♪ソ、ソミソ、というギター・リフがなかなかグッドです。
むちゃむちゃ感動的な9曲目「Words You Say」は壮大なオーケストラとオーボエの音で始まる美メロ・ポップス。この曲はぜひ梁詠hに歌って欲しいですね。
11曲目「Forever Now」もそれに負けない美しいサビのバラード。
そしてラストを飾る「Nothing Change」は、なんとポエット・リーディング。激渋。凄過ぎ。う〜ん。こりゃ、この歳でなきゃ出ない味だな。
改めて美しいメロディー・メーカーとしての実力に驚く、人知れず(?)隠れた好盤です。

小野リサ 「Dream」
暑い暑い!お家で仕事なんてやってられないよって時は、窓を全開にして扇風機を廻して(クーラーは不可)くつろいだ格好で「PUFFY大吉」でも読みましょう。そしてステレオにセットするのは、これしかないでしょう。
小野リサさんと言えば、1989年デビュー以来、その決して短くないキャリアの中で、一貫して彼女のボサノバを歌ってきました。このアルバムはそこから一歩出て、うれしなつかしのスタンダードを集めた作品となりました。スタンダードといえばそれこそ星の数ほどのジャズ・シンガーが歌っているので、正直下手をすればありきたりのつまらないものになってしまいますが、そこはさすが彼女、ブラジルのノリを持ちつつ、素敵なスタンダード集となっています。
録音はブラジルではなくロサンジェルスで行われており、そのためかいつになくざくっとした肌触りのリズム隊が魅力的です。特にドラムは今まで一番かっこいい。
収録曲は「二人でお茶を」「イン・ザ・ムード」「センチメンタル・ジャーニー」とおじさんなら知っている曲ばかり。ぼくは幼少の音楽体験がグレン・ミラーなもんで、これは嬉しいです。
冒頭の3曲こそ今までのスタイルを踏襲したボサノバ・アレンジとなっていますが、4曲目からはブラシ・ドラムも交え、ぐっとジャズ寄りの演奏を聴かせています。そこにふわっと乗るいつもの暖かい歌声。新しい魅力発見です。
白眉はポルトガル語で歌われる「イン・ザ・ムード」(!)。う〜ん。幸せ。かっこいいです!
原曲よりずっとスロー・ダウンしてアンニュイな「センチメンタル・ジャーニー」も秀逸です!
ラストの曲は汽車が発車するのを模したコミカルな演奏で始まる「チャタヌガ・チューチュー」。これまた好きな曲で素晴らしい出来。ところでこの曲を聴くと細野晴臣を思い出してしまうぼくって一体・・・。

ところで、ボサノバって聴く分にはとっても軽やかで爽やかだけど、演奏ははっきりいって難しいです。テンション(不協和音)だらけでシンコペ(裏打ち)でアクセントが入りまくるし。ぼくにはとても弾けません・・。


7月
Sally Oldfield 「Three Rings」
..(心に沁みる歌より続く)ということで、サリー・オールドフィールド1994年発表のアルバムのご紹介です。
初期に見られたファンタスティックで、天空をひらひら遊泳するようなボーカルは影を潜め、もっとずしりと重い手応えの歌世界を聴かせています。
全体にかなりケルト色が濃厚で、曲によっては土着的(アフリカでしょうか)な雰囲気の歌まであります。
マイナー・キーの曲が多く、また荘厳とも言える歌世界は、人によってはもっと息を抜いたところが欲しいと思うかもしれません。しかし一度はまるとなかなか魅力的な歌世界です。
このアルバムもドイツ発売です。確かにコマーシャルなところはありませんが、つくづくもっと「売れて」欲しい人です。

イノトモ 「春風のゆううつ」 (Maxi-Single)
彼女のファースト・フルアルバムは本当に素晴らしいアルバムでした。キャロル・キング、ジェームス・テイラーに通じる暖かな音楽にはうるうるしっ放しでした。
70年代の音楽性云々とか書いてしまうとやけに薄っぺらいあざとさを連想してしまいがちですが、彼女の音楽はそんなことは微塵も感じさせません。ギターを抱え口ずさんだらこうなったという優しさに満ちています。
さて、セカンド・アルバムも待ち遠しいイノトモですが、これは今年4月発表のマキシ・シングルです。ここでも、彼女の作り出す音楽はなんら変わっていません。たった3曲というのが欲求不満ですが、ここは次なるアルバムを期待して、今はこのアルバムを聴くことにしましょう。ローズピアノの音がどこまでも優しい表題曲がお勧めです。


6月
Puffy 「Fever*Fever」
「また、パフィーですかぁ〜?」と言われてしまいそうですが、そうです、またパフィーです(笑)。
彼女たちのファンがこのホームページを見ているとも思えないので、独断と偏見で気に入った曲をピックアップして紹介します。あんまり、参考にはならんかも。
訳わからんおしゃべりと、くるっぱ〜(!?)という掛け声に続いて突如始まる1曲目「Stray Cats Fever」はなかなかタイトでストレートなロックン・ロール。今回奥田民生の曲は入っているもののプロデュースはしていないせいか、全体にストレートな気がします。
4曲目「なんなりとなるでしょう」は吉村由美のソロ・ボーカルで、関西弁で歌っています。曲調が、70年代初頭に和製アメリカン・南部ロックの走りとなった「はっぴーえんど」の世界そのまんま。ぼくは細野晴臣のカバーかと思っちゃいました。あんまり、まんまなんで、笑ってしまいましたが、嫌いじゃないです。
このアルバムでむちゃむちゃ気に入ったのが6曲目「太陽」。70年代の良き日を思わせる素敵な曲で、敢えて例えれば、ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」をテンポ・ダウンして中野律紀(島歌)とザ・バンドを足した感じ(?)。実はたまたまお店でこの曲が流れていて、いっぺんで気に入ってしまいました。お勧め。
8曲目はお馴染み「パフィー de ルンバ」。こういう昭和歌謡風の曲、結構好きだったりします。
9曲目「恋のライン愛のシェイプ」は彼女らが崇拝する鈴木祥子の書き下ろし曲で、ドラムも鈴木祥子が叩いています。ラフでタフなロックン・ロールで、まさに鈴木祥子のロックン・ロールの世界。なかなかPuffyの声にマッチしていてかっこいいです。
10曲目「Always Dreamin' About You」は大貫亜美のソロ・ボーカルでカントリー・ポップス調の愛らしい曲。なんと英語で歌っています。コーラスでEveと「牛」と「大貫父」が参加(笑)。
12曲目「はたらくよ」は「太陽」の次に気に入った曲で、彼女らにしては至極まっとうでドリーミーなスイート・ポップス。
「♪はたらくよ、はたらくの/プロの意地をみせるのよ/泣きたいときこそがんばるよ/みんなに笑顔を見せるため/・・・/母も私もひとつだけ/心に決めてることがある/強い女でいることはやさしい女でいなきゃダメ」という歌詞もホロリときます。
途中で1分に満たないおちゃらけた曲や意味不明なおしゃべりを随所に挟んで、凝ったつくり。
とてもよくまとまっていて、飽きのこないアルバムという気がしました。

Double 「Crystal」
新聞の、しかもごく普通の中日新聞の朝刊の片隅に、姉SACHIKOさんの訃報を見たときは、本当に驚きました。
歌は文句無しに上手いです。声質が似ているからかハモリはとても美しく、非常に洗練された曲調になかなかいいなぁ、かなりブレイクするかもしれないなぁ、と思っていた矢先です。本当に惜しまれてなりません。
ヒップ・ホップとかいった用語にはからきし弱いぼくですが、単純に言えば良質のソウル・アルバムだと思います。
ACOや中華では順子に通じるものが有りますが、もっと曲調はストレートです。
どの曲が特にいいとかいうより、全体を流れる空気感に身を委ねて、しばしぼうっとしていたい、個人的にはそんな気分になるアルバムです。
そんな中でも歌詞が打ち寄せる波のように何重にも重なり合い、「とめどなく、とめどなく・・・」と繰り返し歌われる歌声が胸に染みる「Sweet Time」が気に入りました。
これからはTAKAKOさんひとりで活動を続られるそうですが、ぜひこれからも歌いつづけて欲しいと思います。