*1998-9年冬*

2月
遊佐未森 / ポプラ (Single CD)
柔らかな空気感、穏やかな歌声、なめらかなメロディー。
より暖かな表情で遊佐未森が戻ってきました。
アナログ・シンセの暖かな音と生のストリングスに導かれて始まる「ポプラ」は、素晴らしい曲。ミュージシャンこそすべて日本人ですが、これまでのアイリッシュ、スコティッシュとの活動が確実に実を結んでいます。
まもなく発売になるフル・アルバムが待ち遠しい。
produced by 遊佐未森、mixed by Calum Malcolm。

広末涼子 / private
へー。こんな声していたんだ。少し鼻にかかったような、ファニーな声。ちょっと、かの香織のようでもある。個性、あると思います。
街の雑踏の音にかき消されそうなとても短い曲「向日葵」でアルバムは始まります。
歌謡ポップス調の広瀬香美、岡本真夜の提供曲は個人的にピンときませんが、古内東子作の「リズム」は緩やかなバラードで彼女の声に合っていてなかなかいい感じです。
続く平岩英子作の軽快な「青い空に浮かぶ月のように」、ゴスペラーズがコーラスでも参加している「Snow Letter」もいい曲です。
そして、最後を飾るアコースティック・ギターと控えめなキーボードだけをバックに歌う広末作詞、かの香織作曲の「あのつくことば。」がベスト・トラック。いいですよ。

Anggun / Anggun
1997年発表のこのアルバム(しかも有名と思われる)を今紹介するのは少し気が引けます。
深く力強くよく通る美しい声。ソウルフルな歌。Anggunの魅力はそこにあるように思います。
彼女はインドネシア出身ですが、幅広い活動をするために夫の出身であるパリに在住しています。
伝統に根ざした音楽性を大切にしながら、スタンスはあくまでポップです。インドネシア語、フランス語でも歌っていますが、アルバムの大半は英語で歌っています。
先入観なしに、ただただ素晴らしいポップ・アルバムとして、女性ボーカル・アルバムとして聴いて欲しいと思います。
蛇足ですが、日本盤とオリジナル盤のジャケットは全く違っていて、いかにも日本人好みなファッショナブルな日本盤ジャケットより、素朴なオリジナル盤(定かではないですが、国内向けかな)のジャケットのほうがより音楽が伝わってくる気がしました。日本盤のほうが収録曲が多いので結局日本盤を買ってしまいましたが。

Dayna Manning / Volume 1
渋いジャケット、シンプル極まりないタイトルが気にかかり、全く知らない人ながら買ってしまいました。
1曲目「Half the Man」は彼女の生ギターの弾き語りで歌われるフォーク調の曲で、アルバムデザインから受ける印象通りの曲。彼女のひとりオーバー・ダブによるコーラスがとてもきれい。ところが、2曲目は一変してバンド・サウンドによるポップ・ロック。3曲目は最初は生ギターではじまり、サビでヘビーなディストーション・ギターとドラムが炸裂するメランコリックな曲。
全曲彼女の自作なのですが、楽曲の幅が広くかなり才能ある人だと思います。
魅力的な楽曲に加え、彼女のちょっと独特な、Kate Bushほどではないにしろ浮遊感漂うボーカルがいい感じです。なお、1曲でショーン・オノ・レノンが参加しています。
1997年リリース。

寺井尚子/ Thinking of You
日本では数少ないジャズ・バイオリニストのデビュー・アルバムです。
神奈川県で生まれ、4歳からバイオリンを弾き始めた彼女は、中学二年のときジャズと出会い、ジャズ・バイオリニストを目指すようになる。19歳のときに名古屋に移住、名古屋ヒルトン・ホテルでたまたま聴いたピアニストの演奏に啓発され、そこで演奏したいと志願したのがプロとしての第一歩だという。
とてもドリーミングな曲が多く、バイオリンにありがちな神経質な高音は皆無です。これは、彼女の、音楽は美しく楽しいものであるというポリシーがひしひしと感じられます。また、幼少からクラッシックで磨かれたせいか、とても端正で安心感のある演奏を聴かせます。
名曲「I Love You, Porgy」など取り上げる中、自作曲も4曲収録。


1月
Aco / 哀愁とバラード (12cm Single)
僕の敬愛するシンガー、Acoのニュー・シングルです。
彼女のスイート・ソウルな楽曲が好きなのですが、甘く、でも媚びることのない声、そして言葉を大切にかみ締めるように歌うところがとてもいいと思うのです。デビュー当時はチャラに似ていると言われもしましたが、むしろ対照的な存在といえるでしょう。
そして、歌詞がいい。とても、女性的なのですが、難しくないとても素直な言葉で歌われているので、男性にも判る気がします。
「哀愁とバラード」は彼女が同棲時代のことを歌った歌だそうですが、別にそれらしい歌詞が出て来る訳ではなく、相変わらずやさしく歌われています。ちなみに、その前の彼氏に聞かせたら、「いい歌だね。」と言ったとか。
2曲目の「ひとつのくもり」は僕が超弱いスロー・バラード。とても、短い歌詞なので載せてみます。

  明日目が覚めると 誰もいなくなって だだっぴろい街に 放り出されたら
  私のはき捨てた言葉に あの人はどれくらい 心をひどく痛めてきたのだろう?
  ココロにひとつのくもり 触れればあたたかい あたたかい。
  明日言葉が失ってしまったら あなたなら どんな風に愛してくれる?
  わたしの血迷った行動に あの人はどれくらい 心をひどく痛めてきたのだろう?
  ココロにひとつのくもり 触れればあたたかい あたたかい。

Everything / Supernatural
久々にまったく知らないバンドのCDを試聴コーナーで気に入ったので買ってきました。
久々の美メロ満載の楽しいポップアルバムです。
アメリカの新人バンドのようで、6人編成。うち2人がギター、キーボードからサックスやクラリネットやペニー・ホイッスル(!)と持ち替えたりして、さながら玉手箱のような音楽はウキウキしっぱなし。これは和めます。ちょっとねじれたアレンジも隠し味に。ただ、ジャケットがめちゃめちゃ地味なので見落とすかも。

Dolly Parton / The Essential Dolly Parton volume two
このホームページを見てくださっている方で何人の方が彼女をご存知でしょうか。でも、ホイットニー・ヒューストンや林憶蓮が歌った"I Will Always Love You"は誰もがご存知でしょう。この歌の原作者でありオリジナル・シンガーこそが、彼女Dolly Partonなのです。このアルバムは1968年から1978年までの比較的初期の曲を集めたコンピレーション・アルバムです。
(彼女は今でも現役でアルバムを発表しています)。
無理にジャンル分けすればカントリー/ポップスということになるのでしょうが、とてもかわいい声と相俟って実に温かで歌心溢れる歌を歌います。
先の"I Will Always Love You"のホイットニー・ヒューストン版は、後半メロディーを崩して絶唱しますが、オリジナル・バージョンのこの部分はなんと「語り」なのです。この素朴でさりげない温かさこそがこの曲の本来の素晴らしさなのではないでしょうか。
また、昔オリビア・ニュートン・ジョンが「水の中の妖精」というアルバムで歌ってヒットした「Jolene」も彼女の曲で、もの悲しいメロディーがこれまた素晴らしい名曲です。
ちなみに、この2曲のオリジナルは1974年発表のアルバム「Jolene」に収録されています。
自作曲に混じって、Carole Bayer Sager作(Chris Hillmanのバージョンも秀逸!、でも、CD化されていないかも)の「Heartbreaker」も取り上げています。
この3曲で十分元は取れそうですが、20曲入りという嬉しさ、ちなみにvolume oneのほうも20曲入り、こちらの方には、彼女が主演したコメディー映画の主題曲「9時から5時まで」が入っていました。
(OL三人がいつも9時から5時までこき使われている上司を暗殺しようと企てるというお話ですね。)

Gene Clark / Gene Clark
通称、「ホワイト・ライト」。祝、世界初CD化!
もと、The Byrdsのメンバーで、繊細で癖のある歌声の持ち主。彼のアルバムの中でもこのアルバムは思いっきり渋く地味なのだけど、なんども聴いているうちに染みてくる不思議なアルバムです。
かく云う私も最初の印象は「なんだあ、(普通の)カントリーかあ・・・。」ぐらいでして。でも、聴き進むと、中にポップ&ロック魂が潜んでいるのが見えてきます。
1991年5月24日、心臓発作で他界してしまいました。1971年オリジナル・リリース。
(もう、28年も前なんて・・・。しんみり。)


12月
村治佳織 / CAVATINA
彼女は1978年生まれ。若干15歳でクラシック・ギタリストとしてデビュー。彼女は迷惑だったに違いないが、天才少女として騒がれたものである。はや、5作目となる本作は、デビュー当時の硬さはまるでなく、本当の素晴らしいギタリストとなった。お嬢さんっぽい風貌からは、この成熟した音はちょっと想像できないかもしれない。
クラシックと聴いて敬遠される方はぜひ本作から聴いて欲しい。アメリカを主とした選曲はとてもポピュラーだし、実際ポヒュラーの名曲、映画「バクダッド・カフェ」の主題歌「Calling You」を取り上げている。これが、泣けるほど美しい。ちょっと誤解を招くかもしれないがWilliam Akkermanとか好きな人にもぜひ聴いて欲しい。

Rikki(中野律紀) / miss you amami
美しい、どこまでも透明で繊細な歌声。彼女はそんな歌手だと思う。特に、彼女が作詞・作曲した「のぼたんぬ河」は涙が出る。全篇奄美言葉なので日本人でも意味は聞いただけでは判りません。それでも、伝わってくるのです。
奄美大島の島歌の歌手として、デビュー。以降、島歌のエッセンスを生かしたポピュラー歌手として3枚のアルバムをリリース。しかし、繊細ゆえプロデュースは難しく、この新作は3年のインターバルを経て、RICEというマイナー・レーベルからのリリースとなりました。
まだ、オーバー・プロデュース気味の曲が全く無いわけではありません。しかし、ずっと自然体となった本作は、より魅力的です。女性ボーカル・ファンは一度聴いてみて欲しいと思います。