２００５年夏

*２００５年夏*

６月

江美琪 Chiang Mei Chi/ 恋人心中有一首歌 Lover's Poem（特薦！）
■この人の歌はどうしてこんなにいいのだろう。
明るくて快活で、さばさばしていて気さくな性格、ひとたび音楽に向かい合ったときの真摯さ、誠実さはどうだろう。
柔らかくで、滑らかで、澄んでいて温かい、聴けば小美とわかる歌声。
ていねいに心を込めて作り上げられたことがわかる、入魂の8作目です。
■伍思凱の娘さんの校庭で録音したようなたどたどしいポエム・リーディングで始まるこのアルバムは、歌詞の朗読と歌がほぼ交互に収められた意欲的な構成。
詞の朗読には小美本人のほか、趙薇、劉若英、蔡明亮といった錚々たる人が参加。
それがまったく違和感なく、全体がひとつの流れをつくり映画を見ているかのようです。
■お茶目な小美、しっとりした小美、せつない表情の小美、今までアルバムごとに、または曲ごとにいろいろな表情をみせてきた小美ですが、さらに繊細で表情豊かに、でも全体を通しては穏やかで統一感のある歌声、という一段と磨きのかかった歌の数々を聴かせます。
曲調もとても豊か。オープニングの生きのいいロック・ナンバー「晴天娃娃」、タップ・ダンスのリズムを取り入れたオールド・タイミーな「我愛夏[上/下]爾(Chagall)」、穏やかなバラード曲「那年的情書」と続きます。
「誰還相信」は、ピアノと弦楽器が芳醇な空気を醸し出すバラード曲。さりげない拍子の移り変わり（4拍子＋2拍子)がかっこいいです。
「是不這就是愛情」は男性歌手、No Nameとのデュエット曲。黄韻玲らしいラテンのリズムを取り入れた明るい曲です。
最高に感動したのは「芥末不辣」。冒頭のひとり多重ハーモニーは美しい！溜めて盛り上がるロック・テーストもかなり好みです。同じあたりの音程を行き来するメロディーラインも好き。
続く「有一天」は張震嶽のペンになる落ち着いたナンバー。
壮大なオーケストラが入った「我心似海洋」は彼女が出演したミュージカル『[足包]路天使』の挿入曲。
「桃樂絲的旅程」はフルートの音にケルト音楽を思い出したりする、ロック・ナンバー。
ラストを飾るのは切ない絶唱が心を打つ「父親[イ尓]是安静的」。テレビドラマ『搭錯車』の曲のようですが、このアルバム発売前に彼女の実父が亡くなられたことを思うと複雑な気持ちです。
アコースティック・ギターのみをバックに歌ったバージョンと、テレビに使われたオーケストラ・バージョンが入っています。
■生のバンド、生の弦楽器による暖かく心に沁みる音楽は、流行のポップスとは一線を画した音。
この誠実な音楽が、親しまれ売れることを願っています。