２００３年秋

*２００３年秋*

１１月

斯琴格日樂 スチングリラ / 尋找（推薦！）
■モンゴル出身のアーティスト、スチングリラの待望のセカンド・アルバムです。
曲はバラエティーに富んだ仕上がり。モンゴル民謡の2曲を除いてすべて彼女自身の作詞作曲です。
■1曲目「尋找」は「新世紀」に通じるハードな仕上がりの曲。
2曲目「幻想」は一変して美しいメロディーのバラード曲。ハイ･トーンへ移るボーカルがとても綺麗。
個人的にはよりシンプルなアレンジの10曲目「幻想(Unplug版)」が好きです。
3曲目「藍瓦頂的寺廟」はモンゴル民謡をアレンジしたもの。編曲は伍佰&China Blue。
5曲目「水中花瓣」はもの悲しいマイナー調のバラード曲。
8曲目「什麼」はギターのリフとトーキング・スタイルのボーカルが印象的なロック・ナンバーです。

◇◇◇

陳潔儀 Kit Chan / [小董]得（推薦！）
■シンガポールのベテラン･シンガー、キット･チャンの１年ぶりの新譜が到着しました。
前作はポップ感を削ぎ落としたオルタナっぽい耽美的な音に驚いたのですが、今作は、前作の雰囲気を残しつつ変化に富んだ楽曲、言い換えれば彼女の集大成ともいえる楽曲が揃っています。
彼女自身、ライナーで「これはどんな種類の音楽かなんて訊かないで。多様でひとことでは言えない。」と記していますから。
■1曲目「有人愛［イ尓］」は、イギリス的な雰囲気とコーラスの掛かったギターが印象的。例えが古いですが、コクトー･ツインズをずっと柔らかく優しくした感じと言えるでしょうか。
2曲目「[小董]得」はたおやかなピアノとチェロの音に乗ってゆったり歌われるバラード。
芯の通った彼女の声は本当に魅力的です。
4曲目「The Moon Song」はやはり英国的なひんやりした音空間の曲で、英語で歌われています。
5曲目「一星期」は打ち込みビートがダンサブルなナンバー。
6曲目「珍重」は、雰囲気ががらっと変わって、柔らかなメロディーにアジアの情緒を感じる美しいバラードナンバー。以前からのファンにはうれしいナンバーでしよう。
中盤～後半は、やや翳りの有るナンバー、独特の浮遊感のある曲が続きます。
10曲目「錯過」は再びしっとりした静かなナンバー。アコースティック･ギターの響きが印象的です。
ラストの「Why Dream Of Love」はシンガポールのミュージカル主題曲で、唯一壮大で歌い上げるナンバーです。

１０月

江美琪 Chiang Mei Chi / 朋友的朋友（推薦！）
■江美琪待望の7作目は、今までの小美とはまた違った魅力に溢れた、それでいてとても小美らしいアルバムです。
これまでの、至近距離で歌っているような、息遣いまで聴こえる様な声の魅力を際立たせた音作りから、楽器の音と一体化し溶け込むような音作りに変化しています。
印象は一見さらっとしていて北欧あたりの洋楽に近い感覚。台湾風のバラードやはじけたポップロックはなく、どの楽曲も、聴けば聴くほど味が沁みてきます。
■アルバムは1曲目「相對的失去　（鋼琴版）」で幕を開けます。
ゆったりしたストリングスの音に乗って、柔らかな小美の歌声が映えます。そんなに待たされたわけではないのに、また懐かしい人に出会えたような感じがするのはなぜなんでしょう。
なお、この曲は2分ちょっとと短く、9曲目がフル・バージョンになっています。
この曲の作曲は永積タカシ（@ハナレグミ）/Bikke。
2曲目「I'm O.K. 謝謝」は、4年振りに2ndアルバムを発表したノルウェーのシンガー・ソングライター、レネ・マーリンの、早くも2ndからのカバー曲。ちょっと翳りのあるミディアム・テンポのナンバーです。
原題は『Disguise』。
3曲目「［イ尓］不公平」は3拍子のゆったりした曲。少し悲しげに始まりますが、サビで夢見る感じになっていい感じです。
4曲目「黑色的翅膀」もミディアム・テンポの曲で、ブルージーなギター・トーンと、適度に混沌と混ざり合う音は、憂いを秘めてていて渋い。
5曲目は表題曲「朋友的朋友」。どことなく懐かしさがこみ上げる和風の優しいメロディーが、とても心に残るいい曲です。
6曲目「You're in Love」はB.A.Dというグループの男性ボーカリスBenとのデュエット。とても爽やかで軽やかな曲調がステキな曲で、Benのさらりとした歌声と小美の透明な歌声の相性もとてもいいです。
7曲目「退一歩傷心」は60年代っぽい曲で、アルバムの中では異色のナンバー。
8曲目「紫色蝴蝶」は軽快なギターがからむミディアム・アップテンポのナンバー。
白眉は9曲目の「相對的失去　（吉他版）」。大きなサビはないが、楽器の粒子とボーカルが現れては消えて絡み合いながらゆったりと流れていく、素晴らしい曲です。
途中男性のフランス語の語りが入るのも少し変わっている。
なお台湾のアーティストLisaがフランス語訳、および多くの曲でコーラスを取っています。
ラストは黄韻玲作曲の「就這麼一輩子」で、雄大な落ち着いたメロディーが印象的なナンバーです。
■初版ボーナス・シングル曲「少林傳奇」は、中華テクノ（？）ポップ。コミカルなラップ調で、小美はこんな曲も歌えるんだと改めてびっくり。本編と分けたのにも納得です。

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徐若[王宣] Vivian Hsu / 我愛［イ尓］Ｘ４（推薦！）
■ヴィヴィアン3年ぶりの中国語ニューアルバムです。
前作は伍佰が曲を提供したりして、退廃的（？）・ロック的なイメージがありましたが、今作は、久々に元気なポップ･アルバムとなりました。
■1曲目「王子變青蛙」は、壮大なスペクタクル映画みたいなイントロで、何が始まるのかなと思っていると、一変して、元気なギター・ポップロックになります。ヴィヴィアンらしい茶目っ気のある歌です。
作曲は、彼女とも仲良しの千秋。
2曲目「四次我愛［イ尓］」は、これは懐かしいNOKKOの1994年のアルバム『Colored』に収録されているナンバー「人魚」のカバー。当時コマーシャルに使われていたので知っている方も多いはず。
3曲目「Dream」はぼくのお気に入りのナンバー。ソウルっぽい曲調で、言葉を詰めて歌うのがかっこいい。生楽器によるグルーヴが心地好い。
4曲目「面具」は、ダルな雰囲気といきなり低い声で始まる歌いだしが、ちょっと変てこで面白い雰囲気を醸し出しています。ラップもあります。
5曲目「決定愛[イ尓]」は元気なポップ･ナンバー。どこかで聴いた気がするのですが思い出せません。
笛の音のようなリフレインがかわいい「結婚對不對」、曲の起伏が面白い「どうして（為什麼）」、軽やかな「Baby Baby」など収録。

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蔡健雅 Tanya / Jupiter (英語アルバム)（推薦！）
■6月に発表された最新中国語アルバム『陌生人』の一ヵ月後に発表された、こちらは全曲英語アルバム。もともと洋楽テイストの素晴らしい曲を書くアーティストですから、英語アルバムも素晴らしい出来です。（シンガポール人の彼女は、恐らく曲作りのときは英語でするのでしょう、実際オリジナル曲の作詞はタニア自身です。）
しかも今回は、中国語と同じ演奏でボーカルのみを英語に差し替えた曲は1曲だけに留まり、それ以外はすべて新曲か別アレンジのテイクとなっていています。
また全体的には、よりアコースティック・ギターのトーンを生かしたフォーク・ロックに近い仕上がりです。
■1曲目「Drops of Jupiter」はシンプルなアコースティック･ギターの演奏が印象的な曲。タニアの感情のこもった歌が素晴らしい。
2曲目「Tell Me」は「［イ尓］説」の英語バージョン。
3曲目「Two of Us」はメローなソウル風味が心地好いナンバー。
4曲目「All I Needed」は『相信』収録の「不[多句]完美」の別バージョンで、ピアノはオミットされて、アコースティック・ギターのみの軽やかな演奏。
6曲目「Sanctuary of Love」はやはり『相信』収録の「衝動」の別バージョンで、少しテンポを落とし、リズムを強調してソウルっぽい仕上がりです。
7曲目「Just Like the Movie」はややブルージーなトーンが印象的なナンバー。
8曲目「Day and Night」は『相信』収録の同曲に比べて、静かでミステリアスな雰囲気を醸し出しています。
10曲目「On This Earth」は本格的なジャズのフォーマットで演奏されるナンバー。ワルツ調の洒落た曲です。