*2002年春*


張玉華 / 屬于自己
戴佩[女尼] / Just Sing It
葉樹茵 / 數葉集




5月
葉樹茵 Yeh Su-Yin / 數葉集 1991-2002(特薦!)
なんと繊細で透明な歌声の人なのでしょう。
6年振りの新譜は、新曲3曲と過去の精選14曲から構成されたアルバムです。
まず、新作3曲のなんと素晴らしいことか。
ひんやりした独特の空気、抑えられた演奏、遠くで静かにこだまするスライド・ギター、波のように寄せては返すストリングス、そこに神聖なまでの台湾語のボーカルが乗る1曲目「傷心無心」。
同じリフレインの繰り返しが遠くへ運んでくれる普通話(北京語)の2曲目「哭泣是没有用的」は葉樹茵のオリジナル。ボーカル、メロディーともにとても印象的な名曲です。ぼくはこの曲が最も気に入りました。
3曲目「下雨天」も葉樹茵のオリジナル。深く沈んだ音像が中期コクトー・ツインズのような憂鬱な雰囲気を醸し出していて、トーキング・スタイルのボーカルも衝撃的。
3曲ともギターで参加している門田英司さんのプレイが光ります。
葉樹茵は台湾のシンガーでデビューは1989年頃。小児麻痺を患っており、読書と思索に耽る生活から詩的な詞世界を得たそうです。詞の意味が即座にわからないのが中国語に堪能でない者にとっては残念ですが、それを補って余りある透き通るような柔らかい歌声が素晴らしいです。
4曲目以降の精選集となっていて、楽しげな曲、懐かしい雰囲気の曲などいろんなスタイルの曲が収録されていますが、やはり全体に流れる透明な雰囲気が印象的です。
一曲一曲の詳しいクレジットが記載されていないので製作時期がわかりませんが、4曲目「去聽美人魚唱歌」、11曲目「相簿」、12曲目「愛是甜的」、13曲目「ALAN會喜歡我這麼做」は1993年のアルバム『去聽美人魚唱歌』からのカット。特に表題曲は美しいサビのメロディーが印象的な素敵な曲です。詞のほうもじっくり訳して聴いてみたいと思いました。

4月
戴佩[女尼]Penny Dai / Just Sing It(推薦!)
マレーシア出身のシンガー・ソングライター、戴佩[女尼]の新作が発表されました。
欧米のアーティストに近い感覚の曲作りには定評のある彼女ですが、この3作目ではさらに洗練された感があります。
1stでは溜めて爆発系(?)ロック・ナンバーがあったのですが、本作では最小限の音によるよりシンプルな音作りになっています。
1曲目「Just sing it」は曲というか、アコースティック・ギターをバックに戴佩[女尼]の語りが入った導入部という感じです。中国語がわからないのが申し訳ないですが、音楽を仕事としている現在の音楽に対する気持ちを語っているものと思われます。
2曲目「時間快轉」はアルバムの雰囲気を象徴する曲。ほんの少し「Every Breath You Take」を彷彿とさせるようなミュートの掛かったギターのリフ、シンプルできりっとしたリズム、サビで畳掛けるメロディー・ライン、そこはかとなく漂うイギリス的雰囲気がとてもいい感じです。
6曲目「我還是很愛[イ尓]」はスキップ・リズムの可愛らしい曲で、少しレゲエのリズムを取り入れたりします。
アレンジがシンプルな分、メロディーが際立っているのが本作の特徴でもありますが、8曲目「路」はまさにメロディーの美しいミディアム・ナンバー。土臭い香りがなんとも言えません。
10曲目「等[イ尓]回來」は前作の「好感覺」に通じるマイナー調のナンバー。切れのいいリズムと憂いのあるメロディーがいいです。
ラストの「1999」は恐らくペニー自身のことを歌っていると思われるナンバー。アコースティック・ギターと最小限の楽器で歌われる印象深い曲。
「♪1999年、卒業の際わたしは一つの決定をした。ギターを持って遠くに行った。」

3月
張玉華 Celest / 屬于自己
シンガポールからまた美声のシンガーが登場しました。
なんと言っても特徴はその声でしょう。結構ハスキーな声なんですが、太くなくさらっとしている。
特にハイトーンでファルセットになったときの透き通るような透明な歌声が美しいです。
穏やかなバラードで美声ファルセットが印象的な表題曲「屬于自己」、そのまんま蔡健雅な(笑)ロック・ナンバー「FREE」、さらっとしたポップ感覚も軽快な「愛的副作用」、ドリーミーなミディアム・ナンバー「如果能靠在他身邊」などを収録。
どの曲もいい曲揃い。ただ全体を聴いたときにさらっと聴けてしまって強烈な印象を残すタイプではないかもしれません。2作目、3作目で大いに化けるかもしれません。