*2002年秋* |
11月 |
容祖兒 Joey Yung / 一個人的情歌 ■ある日、たまたまつけたCSの中国語放送を聴いていたら、とてもいいバラード曲が流れてきた。 切なげな歌声、一度聴いただけで耳に残るきれいなメロディー、『明天我愛誰、別讓我流涙』という歌詞がリフレインする。初めて耳にする曲だったけど、画面には確かにジョイ・ヨンが映っている。 『え、このバラード曲を歌っているのは、ジョイ・ヨン?』 ■香港のシンガー、ジョイ・ヨンの10月に出た新譜は、北京語アルバム。そして前述の曲が入っているアルバムがこの「一個人的情歌」です。 1曲目「Dun Dun Dun」はダンサブルなナンバー。 2曲目からはバラード曲が多くを占め、今までの元気なイメージとはちょっと違った仕上がり。 4曲目「放愛自由」はサビのメロディーや歌詞の詰め方がとても良くて、きれいな曲。 6曲目「明天愛誰」は前述の曲。いつまでも歌詞が耳から離れない。 7曲目「壊天氣」は少し趣を変えて、ミディアムテンポのソウル・ポップ・ナンバー。 ラストの「單身X'mas」は可愛らしいスキップ・リズムの曲。『あなたの居ないクリスマス、Merry Xmas to me』と歌われます。 全体に派手さはない落ち着いたつくりですが、聴くほどに心に残るアルバムです。 |
◇◇◇ 許茹芸 Valen Hsu/ 芸開了 ■クラシカルなピアノの音に耳を傾けていると、突然暴力的に割り込んでくる無機質なリズム隊。 許茹芸の新譜はかなりオルタナティブな雰囲気漂うオリジナル曲「如果我離開」で始まります。 この1曲目のせいか、今までのアルバムで一番オルタナティブな印象です。もともとアーティスティックな面を持った人でしたが、かつてのバラード主体だった雰囲気はすっかり影を潜めて、前作のアコースティックで清々しい感じともまた違っているようです。 彼女のオリジナル曲3曲を主軸に、陳珊[女尼]の曲が2曲、伍思凱の曲が1曲収録。またピアノで李泉、アレンジャーで李雨寰が参加しています。 8曲目「此時快樂的代價」もまた彼女のオリジナル曲。古いジャズのフィーリングをたたえ、マイナーの切ないメロディーの曲です。 もう1曲のオリジナル曲は「如果我離開」のJazz版。ウッド・ベースやストリングスを交え、本格的なジャズ・アレンジになっています。 |
◇◇◇ 那英 Na Ying / 如今...(推薦!) ■北京を代表するシンガー、那英のスタジオ録音としては1年2ヶ月振りの新譜の登場です。 彼女の歌声はハスキーで太さふくよかさもあるけど、不思議とさらっとしているのが特徴。 とても歌唱力のある人でもあるのに、決してむやみに声を張り上げたりしない。 尖りすぎたりせず、むしろ大人しい印象を与えるシンガーだけど、決してありきたりなバラード・シンガーにはならない。そんな彼女の歌う歌もまた彼女らしくてとてもいいのです。 ■届けられたアルバムは彼女のイメージどおりの安定した歌が聴けるものですが、歌い方はいつになくさらさらとしていて、ハスキーなのが魅力的です。 1曲目「如今...」は那英得意のバラード曲。歌いだしは消えるような小さな声で始まり、サビの美しいメロディーに入っていく、素敵な曲。歌い終わったあともメロディーを奏でる28人編成のオーケストラの音も美しい。 3曲目「至少」はアップテンポのソウルフルな曲で、力強い歌を聴かせます。 4曲目「離不開」は6拍子のソウル・バラード。ぐいぐいとサビへと持っていく展開で、こういう曲、好きです。 5曲目「一千一萬遍」は一変して鼻にかかったような儚げな歌い方が印象的な、マイナー調の曲。 さらに6曲目「[イ尓]從未離開」で重く悲しげな歌が続いたあと、ほのかに暖かな明かりが差し込むようなバラード曲「No More」が始まります。メイジャー・キーとマイナー・キーの間を行き来するような趣深い曲で、この独特で美しいメロディーを書いているのは、黄韻玲。いい曲です。 アルバムを締めくくるのは、10曲目「留言」。アルバム中、唯一フォーキーというか、ロック・バラードというか土臭さの漂う曲。美しくはかない歌声、土臭いスライド・ギター、リフで入るオルガンの音がなんとも言えないいい雰囲気。『これがわたしがあなたへの最後の伝言・・』という歌詞、途中で入る電話メッセージの科白が生々しい。 |
9月 |
蕭亞軒 Elva / 愛的主打歌・吻(推薦!) ■いつになく気負いのないアルバムジャケット。ブックレットになった特殊ジャケットにはやはり気負いのないたくさんのスナップ写真。Elvaは『紅薔薇』以来、アルバムを聴いていなかったので、近作との比較は出来ませんが、新しい何かを感じさせるジャケット。 ■そして届けられた実際の音も、また自然にすっと溶け込んでくるものとなりました。 1曲目「愛的主打歌」こそ、アップテンポのダンス・ミュージックで、今までのイメージのElvaらしい曲ですが、全体的にはミディアム〜ミディアム・スローのゆったりした曲が多くを占めていて、アルバムのトータル・イメージとなっています。 Elvaの少し細めでクリーンな歌声は、A-Meiとはまた違った魅力があります。 どの曲も、それはオリジナルも洋楽のカバーも含めてですが、魅力的なメロディー・ラインで、最後まで一気に聴けます。最後まで飽きることがない、とてもいいアルバムです。 6曲目「穿越時空遇見[イ尓]」はElvaの作詞作曲。 |
◇◇◇ 張惠妹 A-Mei / 發燒(推薦!) ■前作「真實」から10ヶ月、ア・メイのニューアルバムが届けられました。 最初に思ったのは「ア・メイってこんなにハスキーな声だっけ」。もちろん、そんなに声質が変わっているわけではないのに。きっと滑らかで力が抜けた分、そのように感じたのでしょう。 そして、最近のアルバムでは一番のお気に入りとなりそうです。 ■1曲目「發燒」はアルバムの最初を飾るにふさわしいリズミカルな曲。ダンス・ミュージックというよりはソウルっぽく、ほとんどワン・コードで、ちょっと「Take Me To The River」を思い出しました。冒頭のシャウトも可愛らしいです。ぼくはどちらかというと次の「狠角色」のダンス・ミュージック風曲より、こちらのほうが好きです。 3曲目「知道」は彼女らしいゆったりしたバラード曲。 4曲目「下一個人」は雷の音ではじまります。ソウル色のミディアム・テンポの曲。意外と彼女はこういう曲調の歌は少ない気がしますが、とてもいい雰囲気で、Elvaとはまた違った暖かな雰囲気がします。 5曲目「54321」、6曲目「跟我一起瘋」とダンス・ミュージック+ハードロック(?)調の曲が続きます。 7曲目「別去打擾他的心」は蔡健雅、8曲目「聽見了[口馬]」は順子の曲。どちらも渋めのバラード。 アルバム最大の聴き物は、彼女の日本名を冠した、ラストの「Katsu」でしょう。 冒頭とラストにピュマ族の民謡の一節と、アメイ・ママとアメイ小姪の台詞が入っています。 そして肝心の曲ですが、これが素晴らしい。美しいメロディーに乗った、朗々とよく伸びるハスキーなボーカル全開で、心に沁み入る名曲です。とてもいい余韻の残るアルバムです。 |